積戻しでも他法令の輸出許可が必要です。
積戻しとは、外国から日本に到着した貨物を輸入許可を受ける前に、保税地域から外国へ向けて送り出すことを指します。関税法第75条で規定されており、貿易現場では「シップバック」とも呼ばれています。
参考)「輸出」「積み戻し」「再輸出」の違いを説明できますか?
外国貨物とは、輸入通関前の保税地域にある状態の貨物のことです。これに対して、内国貨物を外国へ送り出すのは「輸出」、輸入通関後の内国貨物を再び外国へ送るのは「再輸出」と呼ばれ、積戻しとは明確に区別されています。
参考)国際海上輸送で避けたい「シップバック」&積み戻し、再輸出違い…
積戻しが必要になる典型的なケースは、内容点検時に契約内容と異なる違約品であることが判明した場合です。この状況では、積戻しするか、一旦輸入して再輸出するかを選択することになります。
参考)二つの意味がある?「シップバック」に注意!
違約品が発覚したら、まず輸出者に連絡して承諾を得る必要があります。契約内容と相違することを伝え、積戻しや廃棄について合意を取ることが基本です。
参考)税関から貨物をとめられた!(通関トラブルあれこれ)~輸入編③…
積戻しは貨物を外国へ送り出す点で実質的に輸出と同じであり、輸出に関する規定が準用されます。税関長に対して積戻し申告を行い、必要な検査を経て許可を受けなければなりません。
参考)積戻し(Re-ship)とは| 必要な手続きと対応方法につい…
手続きの流れは以下の通りです。
これらはすべて積戻し申告をする者の責任で行う必要があります。
輸出(積戻し)申告書を税関に提出することで申告を行い、この申告書に記載する事項を申告事項と呼びます。申告事項には貨物の記号・番号などが含まれます。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/extsukan/5008_jr.htm
保税運送の承認を受けた場合は、積戻し許可書に運送期間が記入されます。積戻しの許可を受けて保税運送された貨物は、到着の確認を受けた日から1月以内に処理する必要があります。
参考)https://www.customs.go.jp/kaisei/zeikantsutatsu/kihon/TU-S47k0100-s05.pdf
積戻しでも他法令の確認が必須です。外国為替及び外国貿易法48条1項の規定により経済産業大臣の輸出許可を受けなければならないものについては、税関長への積戻し申告と併せて必要な検査を経て許可を受ける必要があります。
参考)外国貨物の積戻しについて
他法令の規制に該当する場合は、所管官庁の許可・承認を取得しなければなりません。これは輸出規制に該当するかの確認を指しており、誤送品の積戻しの場合は日常的に取り扱っていないために貨物に関する情報が不足していることが多く、確認が容易にできないケースがよくあります。
思い込みや勝手な判断で手続きの確認をおろそかにしてはいけません。他法令の確認を怠ると、法的リスクを伴う重大な違反になります。
知的財産侵害物品の場合は特に注意が必要です。商標権・著作権・著作隣接権の侵害認定貨物は輸出承認されず、特許権・実用新案権・意匠権の侵害認定貨物は積戻し先の国で権利者の有する同種の権利を侵害しない等の場合に限って経済産業大臣の輸出承認がされます。
参考)https://www.jpaa.or.jp/old/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201310/jpaapatent201310_036-048.pdf
経済産業省の窓口、郵送、電子申請のいずれかの方法で許可の申請手続きができます。輸出承認の取得については、権利者の同意が必要になるケースもあります。
参考)https://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/qa_002.htm
積戻しには高額な費用がかかることが多く、事前に十分な検討が必要です。実際の失敗事例では、指定検疫施設のない国から食肉製品を輸入しようとしたケースで、積戻しの通関諸費用5万円、保管や倉庫作業などの費用50万円、積戻しのフレート100万円の合計155万円がかかっています。
別の事例では、日本のポジティブリストに適合していない貨物を積戻しした際に、長期の保管料30万円、積戻しの通関諸費用5万円、倉庫作業費用40万円、積戻しのフレート100万円の合計175万円がかかりました。
費用の内訳は主に以下の通りです。
保管期間が長くなるほど保管料が増加するため、迅速な判断と対応が求められます。費用は貨物の種類、数量、保管期間、仕向地によって大きく変動します。
滅却(廃棄)を選択する場合と比較検討することも重要です。商品が高額である場合や日本以外の市場で販売できる可能性がある場合は積戻しが選ばれることが多いですが、費用対効果を慎重に判断する必要があります。
参考)輸入許可が下りない!?滅却か積戻しか?賢い判断基準とは?
積戻し、輸出、再輸出は貿易実務において明確に区別されており、それぞれ異なる法的扱いを受けます。
輸出は内国貨物を外国に向けて送り出すことです。関税法第2条第1項第2号で定義されており、日本国内にある日本の貨物を外国に送る一般的な輸出を指します。
参考)https://bunsekichina.com/yushututotumimodoshi/
積戻しは外国貨物を外国に向けて送り出すことです。関税法第75条で規定されており、輸入通関前の保税地域にある状態の貨物を外国貨物といいます。つまり積戻しは日本の物ではなく外国の物を送り出す点が特徴です。
再輸出は輸入した貨物を再び外国に向けて送り出すことです。輸入通関した内国貨物を原形のまま再び輸出されるケースと、保税地域などで修繕や加工を施されて再び輸出されるケースがあります。
区別のポイントは以下の表の通りです。
| 項目 | 輸出 | 積戻し | 再輸出 |
|---|---|---|---|
| 対象貨物 | 内国貨物 | 外国貨物 | 内国貨物(元は輸入品) |
| 通関状態 | 日本の貨物 | 輸入許可前 | 輸入許可後 |
| 根拠法令 | 関税法第2条第1項第2号 | 関税法第75条 | 輸出規定を適用 |
| 別称 | 通常の輸出 | シップバック | - |
関税法上、内国貨物の輸出と外国貨物の積戻しは明確に区別されています。実務では外国貨物のままですが、税関に対して積戻し申告を行わなければならず、実質的には輸出となり輸出申告に準じた手続きが必要です。
税関の保税関係用語集では、積戻しの定義と手続きについて詳しく解説されています