FOB契約でも運賃は必ず課税価格に加算されます。
輸入貨物の課税価格は、現実に支払われた価格に運賃などの加算要素を加えた金額です。
これが課税価格の基本です。
関税定率法第4条では、現実支払価格に含まれていない限度において運賃等の額を加算すると規定されています。つまり、インボイス価格に運賃が含まれていない場合は別途加算し、含まれている場合は二重計上を避けるため加算しません。
参考)https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/kanzeihyokashoho.pdf
加算要素には輸入港到着までの運賃、保険料、その他運送関連費用が含まれます。具体的には基本運賃(Base Rate)と割増運賃(Surcharge)の2つが基本です。通関業務従事者はこれらの要素を漏れなく確認する必要があります。
課税価格の算定を誤ると、関税額が正しく計算されません。たとえば通貨単位を1CNY(中国元)と1USD(米ドル)で間違えると、円換算レートの差により課税価格が約7倍にもなるケースがあります。過大申告してしまった場合、輸入許可日から5年以内であれば更正の請求で還付を受けることができます。
実務では、複数の輸入貨物の運賃が一括して支払われる場合、個々の貨物に運賃を按分して課税価格に算入します。運賃の案分は従量や容積などの算定基準に基づいて行われるため、正確な数値把握が求められます。
参考)運賃と課税価格について
インコタームズの取引条件により、運賃や保険料が現実支払価格に含まれるかどうかが変わります。
違いを正確に把握することが重要です。
参考)2025年度版 インコタームズ最新版における建値の種類、その…
FOB(Free on Board / 本船渡し) では、売主は貨物を本船に積み込むまでの費用を負担し、運賃と保険料は買主負担です。このため、FOB契約では運賃は現実支払価格に含まれず、輸入港までの実際の運送費用を課税価格に加算します。インボイス価格に運賃が記載されていない場合でも、加算を忘れると申告漏れになります。
参考)https://www.kanzei.or.jp/sites/default/files/pdfs/book/TOK_hyouka2013_law.pdf
CIF(Cost, Insurance and Freight / 運賃保険料込み) では、売主が運賃と保険料の両方を負担します。CIF価格はインボイス価格に運賃と保険料が含まれているため、別途加算する必要はありません。ただし、CIF条件でも保険条件(ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)など)の確認が必要で、補償範囲外の損害は保険金が出ないためトラブルになるケースがあります。
CPT(Carriage Paid To / 輸送費込み) は、売主が指定仕向地までの運送費を負担しますが、保険料は買主負担です。CPT条件では商品価格に運賃が含まれているため、運賃と商品原価を分けることが難しい場合も多々あります。
参考)「商品の輸入にかかった費用を算出するにはどうしたらいい?」
コンテナ輸送ではFOB・CIF・CFRよりも、それぞれFCA・CIP・CPTの使用が推奨されています。FOBをコンテナ輸送に適用すると、売主がCY(コンテナヤード)から本船積載までの危険を負担する不合理が生じるためです。
| インコタームズ | 運賃負担 | 保険負担 | 課税価格への運賃加算 |
|---|---|---|---|
| FOB | 買主 | 買主 | 必要 |
| CIF | 売主 | 売主 | 不要(既に含む) |
| CPT | 売主 | 買主 | 不要(既に含む) |
| CFR | 売主 | 買主 | 不要(既に含む) |
加算要素には運賃だけでなく、運送に関連する複数の費用が含まれます。どこまでが加算対象かを見極める必要があります。
輸入港到着までの運送に要する運賃、保険料、その他運送関連費用が加算要素です。ここでいう運賃とは、原則として輸入港まで運送するために実際に要した運送費用を指します。航空輸送の場合は、ターミナルハンドリングチャージ(THC)などの空港での貨物取扱費用も含まれます。
運送契約に基づく最低運賃(Minimum Freight)やパーセル運賃(Parcel Freight)が適用される場合、その運賃額を使用できます。また、輸入貨物を運送する船舶が約定の停泊期間を超えて停泊した際の割増料金も運賃に含まれます。予定日数を超える航海日数により支払う割増料金も同様に運賃に該当します。
参考)米国のコンテナ滞留による海上運賃の高騰は関税評価に影響するか…
保険料については、通常CIF価格またはCIP価格の110%が付保対象金額となります。海上保険は日本での貨物の最終目的地まで通しで付保することが推奨されています。保険料も輸入港到着までの運送区間に対応する分が加算要素になります。
ただし、輸入港到着後の国内配送費用や通関費用は課税価格に含めません。DDP(関税持込渡し)条件で輸入する場合、インボイス価格に国内運送費が含まれますが、この金額が明らかであれば課税価格から控除できます。控除できない場合は、その費用も含めて申告することになります。
参考)https://www.kanzei.or.jp/wp-content/uploads/2025/06/20250319.pdf
課税価格の誤算定は過大納税や修正申告を招くため、通関業務従事者は細心の注意が必要です。
代表的なミスを知ることが対策になります。
通貨単位の取り違えは深刻です。たとえば1CNY(中国元)を1USD(米ドル)と間違えると、2024年2月時点の円換算レートでは20.52円と147.24円の差があり、課税価格が約7倍になってしまいます。この場合、誤った申告価格に基づいて計算される税額も過大になるため、通貨表記の確認が不可欠です。
FOB契約で運賃の加算を忘れると、課税価格が過少申告となります。逆に、CIF契約で運賃を二重に加算すると過大申告です。どちらのケースも修正が必要となり、過少申告の場合は修正申告と延滞税のリスクが生じます。
加算要素がインボイスに記載されていない場合は、評価申告書の提出が必要です。評価申告書により、仕入書・運賃明細書等で明らかにならない加算要素を別途加算します。ただし、関税が無税または従量税の貨物、課税価格の総額が100万円以下の場合は評価申告書が不要になることもあります。
運賃が一括請求された場合、按分計算のミスも起こりやすいです。按分は運賃の算定基準(重量、容積など)に基づいて行うため、算定根拠を明確にする必要があります。客観的かつ数値化された資料がない場合、関税定率法第4条の2以下の規定により課税価格を計算することになります。
参考)https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/kanzeihyouka/hourei/k_tsutatsu.htm
保険に関するトラブルも実務で頻発しています。FOB条件で買主が保険に未加入のまま海上事故で全損となり、約3,000万円を自己負担したケースがあります。CIF条件でも、売主がICC(C)しか付保しておらず、輸送中の破損が補償範囲外だったため買主が不満を抱く事例もあります。
過大に納税してしまった場合、輸入許可日から5年以内であれば更正の請求により還付を受けられます。更正の請求では、税関が内容を検討し、納める税金が多いと認めた場合に還付が行われます。
税関の「関税評価の初歩」(PDF)では、関税評価の基礎知識と加算要素の詳細が解説されています
海上運賃の高騰や異常事態が課税価格に与える影響も、通関業務従事者は理解しておくべきです。
特別な事情がある場合の対応が求められます。
米国西岸の主要港でのコンテナ船沖待ちや、空コンテナの内陸部での滞留により、海上運賃が異常な高値となった時期がありました。このように運賃が極めて異常な状態で、各荷主の責任で生じたものでない場合、「特別の事情がある」として、そのままの価格を課税価格の計算に用いるのは酷であるという判断の余地があります。関税定率法施行令の規定と併せた検討が必要です。
輸入貨物の数量が増えると、税関監視システムが取得するデータ量も増大し、リスク管理手法が広く使われるようになっています。税関のリスク評価では、輸入企業のリスクを事前に把握し、適切なコンテナ監査の選定が行われます。通関業務従事者は、データの正確性と信頼性の確保により、税関のリスク評価に影響を与えないよう注意する必要があります。
評価申告の際、インボイスがプロフォーマー(仮)である場合や、国内販売価格または控除する国内費用等が未確定な場合は、輸入申告を行う通関官署に相談することが推奨されます。不明確な状態で申告すると、後で修正申告や更正の請求が必要になるリスクが高まります。
日本関税協会の「関税評価について」(PDF)には、課税価格の決定方法と適用順序が詳しく記載されています
取引条件の誤解を防ぐため、インコタームズを使用する際は引渡地・仕向地などの取引条件を明確にすることも大切です。引渡地を「JAPAN」とだけ記載すると詳細が不明確で、トラブルが生じる可能性があります。工場や倉庫の住所を明確に記載することが望ましいといえます。
参考)https://www.post.japanpost.jp/bizpost/column/logistics34/dap-cif/
国際物流リスクの管理は国際貿易の円滑な運営に不可欠で、原因、責任者、結果を体系的に研究することが求められています。通関業務従事者も、運賃込み価格の正確な申告により、貿易プロセス全体のリスクを低減する役割を担っています。
参考)https://www.mdpi.com/2071-1050/14/5/2640/pdf?version=1645705352