最低運賃トラック新法で変わる荷主の輸送コスト対策

トラックの最低運賃制度は2028年に適正原価として義務化される予定です。荷主・輸入業者にとって何が変わり、どう対応すればコスト増を最小限に抑えられるのでしょうか?

最低運賃とトラック新法が荷主の輸送コストを変える

白トラに仕事を頼んでいると、2026年4月から荷主にも100万円以下の罰金が科されます。


📦 この記事の3つのポイント
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最低運賃制度の現状

国土交通省が告示する「標準的な運賃」は2024年6月に平均8%引き上げられ、2028年には「適正原価」を下回る契約が法律で禁止される予定です。

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荷主・輸入業者への影響

2026年4月施行の改正法では白トラへの委託が荷主にも100万円以下の罰金の対象に。9万トン以上の荷主は特定事業者として届出・計画策定の義務が生じます。

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今からできる対応策

運賃交渉の前に「原価の可視化」と「付帯作業の棚卸し」が最優先。契約書・発注書の書面化は2025年4月から義務化済みです。


最低運賃トラックの基本:標準的な運賃とは何か


トラック輸送の「最低運賃」を語るうえで、まず押さえておくべき制度が「標準的な運賃」です。これは国土交通省が2020年4月に告示した、実運送事業者が法令を遵守しながら持続的に事業を行うための参考運賃で、一般貨物自動車運送事業者・特定貨物自動車運送事業者が対象となります。


つまり「最低限これだけは受け取れ」という目安です。


車種は小型車(2tクラス)・中型車(4tクラス)・大型車(10tクラス)・トレーラー(20tクラス)の4区分で設定されており、距離制運賃と時間制運賃の2種類があります。運賃には人件費・燃料費・車両費などの変動費・固定費・利潤がすべて含まれた水準で計算されています。


運賃の目安感をつかむための具体例を見てみましょう。九州内の熊本から東京まで1,200kmを10tクラスのドライバンで運ぶ場合、標準的な運賃の告示ベースで約29万7,500円(税抜き)になります。熊本〜大阪(750km)の同じ条件なら約19万2,500円です。東京から大阪(約500km)の4tクラスでも、おおよそ7万〜8万円台が目安となります。


一つの荷物の国内配送に、これだけのコストがかかるということですね。


また、地域差も重要なポイントです。関東運輸局管内と九州運輸局管内では同じ距離・車種でも金額が異なり、東京都内のような物価水準が高い地域では全体的に運賃が高くなる設計になっています。さらに、冷蔵・冷凍車は特殊車両割増として基本運賃の2割増し、深夜・早朝や休日の運行はさらに2割増しとなります。


国土交通省「標準的な運賃」について(公式ページ)


ただし、ここで重要な事実があります。この標準的な運賃には、2024年6月時点でも「法的拘束力がない」という現実があります。あくまで「参考」であり、荷主がこの運賃に応じる義務はありませんでした。実際、2022年度時点で荷主から一定の理解を得られた実運送事業者は全体の約43%にとどまっており、過半数には至っていません。これが問題視され、次の制度改正につながっていきます。


最低運賃が義務化されるトラック新法の全体像

2025年6月4日に成立・6月11日に公布された改正貨物自動車運送事業法(いわゆる「トラック新法」)により、最低運賃の位置づけが大きく変わります。これが変化の核心です。


新法の最大の柱が「適正原価制度」です。燃料費・人件費・車両維持費・委託手数料など事業運営に必要な費用を積み上げて算出した「適正原価」を下回る運賃での契約を禁止するという制度で、原価割れ運賃での契約は法令違反になります。


施行は2028年度(早くとも2028年6月以降)を予定しています。スケジュールを整理すると次のようになります。
























時期 主な変化内容 対象
2025年4月〜(施行済) 運送契約締結時の書面交付義務化・実運送体制管理簿の作成義務 一般貨物自動車運送事業者
2026年4月〜 特定事業者の届出制度開始・白トラへの委託禁止(荷主にも100万円以下の罰金)・再委託2回以内の努力義務 特定荷主・特定運送事業者
2028年度〜 適正原価制度施行(原価割れ運賃の禁止) 荷主・運送事業者すべて


注目すべきは、旧来の「標準的な運賃」が廃止され、より強制力のある「適正原価」制度に置き換わるという点です。厳しいですね。


また同時進行で改正下請法(取適法)も2026年1月から施行されており、荷主から運送事業者への適正原価を下回る価格設定の強要は下請法違反にもなり得ます。法的リスクが二重に発生する構造になっているのです。


適正原価トラックはいつから?2026年〜2028年の実務対応(b2b-logi.com)— 施行スケジュールと各フェーズの対応内容を詳しく解説


最低運賃の仕組み:距離制・時間制と割増料金の構造

実際の運賃がどのように計算されるかを理解しておくと、コスト交渉や見積もりの精度が格段に上がります。これは使える知識です。


距離制運賃は、輸送距離と車種の組み合わせで基本金額が決まる方式です。先述の通り200kmまでは一定区間ごとに加算額が積み上がり、200kmを超えて500kmまでは20kmごとに加算、500kmを超えると50kmごとに加算する累進構造になっています。


時間制運賃は8時間制・4時間制の2種類があり、基礎走行キロを超えた分は10kmごとに加算され、基礎作業時間を超えた分は1時間ごとに加算される仕組みです。配送センター内での作業が長い場合や、渋滞が多い都市内配送では時間制の方が現実に近くなるケースもあります。


実際の請求額はここにさまざまな割増・割引が加算されます。


































割増・加算の種類 割増率 備考
冷蔵・冷凍車(特殊車両) +20% 海上コンテナ輸送車・ダンプ車なども対象
休日割増 +20% 深夜・早朝のみの場合も同率
休日+深夜・早朝の両方 +44%相当 20%×20%の複合割増
荷待ち・荷役合計2時間超 +50% 2024年6月告示から新設
速達割増 別途設定 リードタイムが短い場合


意外なのが「荷待ち・荷役合計2時間超で5割増し」という規定です。輸入貨物の場合、港から倉庫への搬入時に長時間の荷待ちが発生することは珍しくありません。30分以内であれば無料ですが、港湾や倉庫での荷待ちが2時間を超えれば運賃が一気に1.5倍になります。


荷待ち時間の管理は費用直結の問題です。


さらに2024年6月の告示改正では「積込料」「取卸料」も新たに設定されました。手積みの場合、30分あたり2,000円〜(フォーク利用なら別単価)という水準で、ドライバーに無償で荷役させることへの規制強化を意味します。


Hacobu「標準的な運賃とは?概要や目的、対象範囲、改正のポイントなどを解説」— 運賃表の詳細と割増率の仕組みを図解でわかりやすく説明


最低運賃の引き上げが関税コストに影響する理由

関税に関わる仕事をしている方にとって見落としがちなのが、「国内トラック運賃の上昇が、輸入貨物の関税コストにも間接的に影響する」という視点です。これは意外ですね。


直接的な関係として、輸入貨物の関税定率法第4条に基づく課税価格には、「輸入港到着までに要した運賃および保険料」が含まれます。具体的には海外からのCIF運賃(Cost, Insurance and Freight)が課税価格の基礎となるため、国際運賃の変動が直接関税額を左右します。


国内トラック運賃はこの課税価格には直接含まれませんが、間接的なコスト増として輸入業者の利益を圧迫します。つまり、輸入価格が同じでも国内配送コストが上がれば手取り利益が減る構造です。


トランプ関税の影響も無視できません。物流データによれば、2025年7月時点でトラック運賃指数が前年同月比+2の104を記録しており、その要因の一つとして「トランプ関税措置の不確実性による輸出の駆け込み需要増加」が挙げられています。つまり関税政策の変動が国内トラック需給を直接動かし、最低運賃の実勢水準を押し上げるケースが現実に発生しています。


また、輸入業者の多くは通関後の国内配送を「サービス料込み」や「込みで安く」という感覚で発注しているケースがあります。しかし2025年4月以降、運賃と付帯作業料は書面で分けて明記することが義務化されました。荷役がサービス扱いのままになっている場合、今後は別途請求が来るようになります。
























コスト項目 輸入業者・荷主への影響
国内トラック運賃の引き上げ 通関後の国内配送費が上昇。仕入れ単価に転嫁できなければ利益率を圧迫
荷待ち・荷役の別途請求 港湾・倉庫での荷待ちが2時間超になると50%増。今まで無償だった荷役が有料に
書面交付義務化 「込み価格」の発注ができなくなり、実費の透明化が進む
2028年適正原価制度 原価割れ運賃での契約が違法化。安値発注が通用しなくなる


コスト管理は2年先を見越して動く必要があります。


税関「運賃特例が適用される輸入貨物に関する運賃及び保険料の取扱い」— 輸入貨物の課税価格に含まれる運賃・保険料の計算根拠を解説


最低運賃の違反リスクと荷主・輸入業者が取るべき対応策

「まだ2028年の話だから大丈夫」と思っていると危険です。制度の罰則は段階的に迫ってきています。


2026年4月に迫る白トラ規制の罰金リスクが最も緊急性の高い問題です。これまで白ナンバートラック(無許可営業の白トラ)への委託は運送事業者側だけの問題でしたが、2026年4月以降は依頼をした荷主側にも100万円以下の罰金が科されます。さらに国土交通大臣から要請・勧告を受け、場合によっては社名が公表されるリスクもあります。


「使っている運送会社が許可を持っているかどうか」は今すぐ確認すべきです。


特定事業者に該当する荷主(年間取扱貨物9万トン以上の企業:上位約3,200社が対象)は、2026年4月から荷待ち時間削減・積載率向上・共同配送などの中長期計画を作成・提出する義務があります。違反した場合の罰則は50万円以下の罰金です。また、計画未提出や虚偽報告で命令に違反した場合は100万円以下の罰金が課されます。


対応の優先順位を整理しましょう。



  • 【今すぐ】 取引している運送会社の許可番号・ナンバープレートを確認し、書面(契約書発注書)で記録を残す

  • 【今すぐ】 運送契約書に「運賃」と「附帯業務料(荷役・待機)」が分けて明記されているか確認する

  • 📋 【2026年4月まで】 自社が特定事業者(9万トン/年以上)に該当するか確認し、CLO(物流統括責任者)の選任準備を行う

  • 📋 【2027年中】 主要な運送会社との運賃契約を見直し、適正原価に基づく水準への移行スケジュールを合意しておく

  • 📋 【2028年施行前まで】 適正原価を下回る発注を排除し、契約書・見積書を整備する


コスト増への備えは「交渉」ではなく「計画」から始まります。


適正原価制度施行後の荷主にとって重要な姿勢の転換は、「運賃を叩いてコストを下げる」という発想から「適正なコストを払い、物流の持続可能性を確保する」という方向への切り替えです。これは単なる価格交渉の話ではなく、安定した物流を維持できるかどうかという経営の問題でもあります。物流が止まれば輸入業務そのものが滞ります。


参考となる運賃シミュレーションは全日本トラック協会のウェブサイトで試算ツールが公開されており、令和7年6月から地図から運賃を簡単に確認できる「標準的運賃 地図からの運賃」ツールの提供が予定されています。


OSK「準備はOK?2026年4月から問われる荷主・運送者の新たな責任」— 白トラ規制・届出義務・書面交付義務の実務対応を荷主向けに解説(2026年2月更新)


全日本トラック協会「トラック輸送の標準的な運賃」— 運賃表の公式情報と計算ツールへのリンクを提供




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