CIF輸入でも、揚げ地のTHCはあなたが払うことになります。
THCとはTerminal Handling Chargeの略で、コンテナターミナル内でコンテナを取り扱う際に発生する費用です。船会社(キャリア)が荷主に請求するサーチャージの一種で、正式にはコンテナ・ハンドリング・チャージ(CHC)とも呼ばれます。
具体的には、コンテナヤード(CY)内でのコンテナの移動・保管・位置決め、本船への積み込みや荷降ろし、クレーン作業など、ターミナル内で行われる一連の作業コストが対象です。つまり「港の中の手間賃」と考えると理解しやすいでしょう。
重要なのは、THCは原則として積み地と揚げ地の両方で発生するという点です。
| 発生タイミング | 内容 | 一般的な負担者 |
|---|---|---|
| 積み地(輸出港) | コンテナを本船に積み込む前の取り扱い費用 | 輸出者(売主) |
| 揚げ地(輸入港) | 本船から降ろした後のコンテナ取り扱い費用 | 輸入者(買主) |
もともとTHCは海上運賃の中に含まれていました。1990年代に欧州の海運同盟が「運賃の透明化」を理由に運賃と分離してサーチャージ化したことが始まりで、その後アジア域内を含む全世界に広がりました。実際には、船会社が値下げ競争の中でも利益を確保するために外出しにした費用という側面があります。これは意外ですね。
FCL(フルコンテナ)の場合はコンテナ単位で課金され、LCL(混載)の場合は1RTあたりで課金されます。これが基本です。
相場を知らないと、請求書を受け取ったときに「高い」のか「普通」なのか判断できません。
まず日本の相場から確認します。2025年4月以降、ハパックロイドをはじめ複数の船会社が日本のTHCを改定しています。以下が改定後の目安です。
| コンテナサイズ・タイプ | 料金(円・コンテナ1本あたり) |
|---|---|
| 20フィート ドライ | 34,000円〜 |
| 40フィート ドライ | 50,000〜51,000円 |
| 20フィート リーファー(冷凍) | 45,000円〜 |
| 40フィート リーファー(冷凍) | 65,000円〜 |
2014年以前は40ftドライコンテナで37,000円台、さかのぼると2010年以前は16,500円だったことを考えると、この10数年で約3倍に跳ね上がっています。
ではグローバルで見るとどうか。Ocean Network Express(ONE)の調査データ(米ドル換算)では、40ftドライコンテナで日本は約376ドルと世界第5位の高水準です。
| 順位 | 国・地域 | 米ドル換算(40ftDry) |
|---|---|---|
| 1位 | カナダ | $740 |
| 2位 | アメリカ | $710 |
| 3位 | ニュージーランド | $486 |
| 4位 | ロシア | $405 |
| 5位 | 🇯🇵 日本 | $376 |
| 6位 | 香港 | $364 |
| 9位 | ドイツ | $310 |
| 34位 | 中国 | $120 |
日本のTHCが中国の約3倍以上であることは、多くの輸入担当者にとって盲点になりがちです。日中間の短距離航路でも、揚げ地の日本THCだけで4〜5万円かかることになります。痛いですね。
また、過去5年間でTHCが最も値上がりした国はスウェーデン(+74%)、次いでスペイン(+35%)、イギリス(+30%)です。日本は同期間で+4%とほぼ横ばいで推移してきましたが、2025年にはさらに追加値上げが発生しています。
参考になる情報として、ONEのサイトでは国別・航路別のTHC料金を実際に検索できます。
CIF契約輸入におけるTHCの費用配分について、ジェトロが詳しく解説しています。
CIF契約輸入におけるTHC費用配分とその留意点:日本 – ジェトロ
「CIFで輸入しているから相手が払ってくれる」と思っていませんか?それは半分しか正しくありません。
THCの負担者は、売買契約で使用するインコタームズ(国際商業条件)によって決まります。ただし実務上は「契約で特に定めがない限り、揚げ地のTHCは輸入者負担」というのが一般的な商慣習です。
以下に、主要なインコタームズ別にまとめます。
| インコタームズ | 積み地THCの負担 | 揚げ地THCの負担 |
|---|---|---|
| EXW(工場渡し) | 買主 | 買主 |
| FOB(本船渡し) | 売主 | 買主 |
| CIF(運賃・保険料込み) | 売主 | 原則として買主 |
| DDP(関税込み持込渡し) | 売主 | 売主 |
CIF契約では「指定仕向港まで」の費用を売主が負担しますが、揚げ地のTHCは「運送契約に含まれている場合」にのみ売主負担となります。これが原則です。
実務ではフォワーダーを経由してTHCが請求されることも多く、FOBなのに積み地のTHCを輸入者に転嫁するケース、CIF契約で揚げ地THCを巡り売主と買主の間でトラブルになるケースが少なくありません。
トラブルを防ぐためのポイントは1つだけです。売買契約書に「どちらがどのTHCを負担するか」を明文化することです。
ジェトロの解説では、「当事者間のトラブルを避けるために、売主または買主のいずれが負担すべきかを売買契約で事前に明確に規定する必要があります」と明記されています。
貿易実務で見落としやすいポイントがここです。
日本では輸入貨物の関税は原則としてCIF価格(運賃・保険料込みの価格)を課税価格として計算します。THCは船会社から請求されるサーチャージであるため、「これも課税価格に加算しなければならないのでは」と思いがちです。しかし、そうではありません。
税関(財務省)の公式見解では、次のように明確に回答しています。
「貴社が支払うターミナル・ハンドリング・チャージは、輸入港到着後の運送に関連する費用であることから、現実支払価格に加算する必要はありません。」
(税関 質疑応答事例 関税評価 第11号)
理由は、課税価格に加算できる運送関連費用は「輸入港に到着するまでの費用」に限られるからです。揚げ地でのTHCは輸入港到着後に発生するため、加算の対象外となります。
これは円建てでも米ドル建てでも変わりません。
| 費用の種類 | 課税価格への加算 |
|---|---|
| 輸出地のTHC(積み地) | 加算が必要(CIF価格の一部) |
| 輸入地のTHC(揚げ地) | 加算不要 |
| 内陸輸送費(輸入港到着後) | 加算不要 |
つまり、輸入許可前に発生する積み地THCと、輸入許可後に発生する揚げ地THCでは、関税上の取り扱いが異なります。これは知っておけば得する知識です。
なお消費税の観点からも、輸入通関前に発生する費用(THCを含む)は外国貨物の取り扱いに該当するため、消費税が課されない免税扱いとなります。ただしD/O Fee(書類引き渡し手数料)のみは例外で課税扱いです。
税関の公式事例資料(関税評価・質疑応答事例)はこちらで確認できます。
船会社に支払う輸入港におけるターミナル・ハンドリング・チャージ(税関 関税評価事例)
THCは「避けられないコスト」と言われますが、削減できる余地は実は複数あります。
まず、LCL(混載貨物)のTHC相場について確認します。ジェトロの情報では、混載フォワーダー経由の場合は1,500〜2,500円/RTが目安です。ただしフォワーダーによって設定が異なるため、複数社への見積もり比較は必須です。
以下に主な削減アプローチをまとめます。
また、フォワーダー選定の際にはTHCの料率が「起用船社により異なります」と曖昧に記載されているケースもあります。これは注意が必要です。見積もり段階でTHCの金額が明示されているかどうかを必ず確認しましょう。
フォワーダーの料金体系や比較の参考として、国際物流に関する海上運賃の詳細解説があります。
これを読めば海上運賃まるわかり!(各サーチャージの解説つき)– MOLロジスティクスグループブログ
THCはサーチャージの中でも「交渉しにくい費用」と言われることもありますが、出荷量が多い企業や定期契約をしている企業は十分に交渉の余地があります。結論は「見積もりを複数社で比較する」が最初の一歩です。