個人輸入で購入したサプリメントを店舗で販売すると、最大3年の懲役または300万円以下の罰金になります。
輸入サプリメントが日本の港に到着した瞬間から、複数の法令が同時に適用されます。関税法はもちろん、食品衛生法・薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)・不正競争防止法など、分野をまたいだ規制の網がかかるのが輸入サプリメントの特徴です。
通関業従事者にとって、まず押さえるべきは食品衛生法に基づく輸入食品届出です。日本に到着したサプリメント(健康食品として分類されるもの)は、原則として輸入者が厚生労働省に「食品等輸入届出書」を提出し、検疫所の審査を受けなければなりません。届出なしに通関させると、輸入者だけでなく手続きを代行した通関業者にも責任が及ぶケースがあります。
次に重要なのが薬機法との関係です。サプリメントが「医薬品的な効能・効果」を標ぼうしていると判断された場合、食品ではなく未承認医薬品として扱われ、輸入・販売が禁止されます。たとえば「血糖値を下げる」「ガンに効く」などの表現がパッケージにある場合、これにあたる可能性があります。通関段階でパッケージ表示を確認することが、現場での一次リスク管理として機能します。
輸入者(荷主)から依頼を受けた通関業者が申告を代行する際には、HSコード(品目分類番号)の選択も重要な判断です。サプリメントは内容成分によって2106.90(調製食品)、2936(ビタミン類)、3004(医薬品)などに分類が分かれます。誤ったHSコードを使用すると関税率の過少・過大申告となり、修正申告や過怠税のリスクにつながります。
つまり通関業務はHSコードと輸入届出の2点が基本です。
厚生労働省:輸入食品の安全確保(輸入届出・検疫の仕組みを解説)
通関をクリアしたサプリメントを実際に店舗で販売するには、通関とはまた別の手続きが必要です。これを知らずに「通関が終わったから売れる」と思い込むのは、非常に危険な認識です。
まず確認が必要なのが、食品衛生法に基づく食品等輸入届出の受理です。検疫所による審査が完了し「受理」が下りて初めて、国内流通が可能になります。届出が受理されていない段階での販売は食品衛生法違反となり、輸入者に対して2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられます。
次に、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品として販売する場合は、消費者庁への届出・許可取得が必要です。海外のサプリメントをそのまま「〇〇に効果あり」と書いて売ることはできません。この許可を取らずに機能性を表示した状態で店頭に並べると、景品表示法および食品表示法による行政処分の対象になります。
店舗販売に際してはさらに、製品に日本語ラベルを貼付することが義務付けられています。食品表示法に基づき、原材料名・内容量・賞味期限・製造者(輸入者)情報・アレルゲン情報などを日本語で表示する必要があります。英語表記のみの状態で店頭に置くことは明確な違反です。
これは見落としやすいポイントです。
消費者庁:食品表示法の概要(ラベル表示義務の詳細を確認できます)
| 手続き | 担当省庁 | タイミング |
|---|---|---|
| 食品等輸入届出 | 厚生労働省(検疫所) | 輸入前〜通関時 |
| 食品表示(日本語ラベル)対応 | 消費者庁 | 販売前 |
| 機能性表示食品届出(任意) | 消費者庁 | 販売前 |
| 関税申告・HSコード分類 | 財務省(税関) | 通関時 |
通関業従事者が見落としやすい落とし穴として、薬機法に抵触するサプリメント成分の問題があります。たとえば「DMAA(ジメチルアミルアミン)」を含むプレワークアウト系サプリメントは、2012年以降、日本では医薬品成分として指定されており、輸入・販売は薬機法違反になります。
厚生労働省は「無承認無許可医薬品」として輸入禁止成分のリストを随時更新しており、2024年現在でも新たな成分が追加されています。通関業者の立場では荷主から渡された書類だけを見て申告するケースが多いですが、明らかに医薬品的成分を含むと疑われる製品の場合、事前確認を怠ると「情を知って輸入を幇助した」とみなされるリスクがゼロではありません。
厳しいところですね。
実務上、リスク管理の手段として有効なのが、荷主に成分証明書(Certificate of Analysis)の提出を求めることです。この書類には製品に含まれる全成分と含有量が記載されており、禁止成分の有無を事前に確認できます。また、厚生労働省の「薬事工業生産動態統計」や税関の「輸入差止事例」データベースを定期的にチェックし、問題製品の情報をアップデートする習慣をつけることも実務上有効です。
輸入差止リスクが高い成分カテゴリとしては以下が挙げられます。
成分の確認が原則です。
厚生労働省:無承認無許可医薬品(禁止成分リストと事例を掲載)
コスト計算の面でも、通関業従事者として正確な知識を持つことが重要です。輸入サプリメントにかかる関税率は品目分類によって異なりますが、一般的な健康食品(2106.90)は関税率6.4〜12%程度が適用されます(EPA・FTA締結国からの輸入では軽減税率が適用される場合があります)。
消費税は輸入時点でも課税されます。計算式は「(CIF価格+関税)×10%」です。たとえばアメリカから1コンテナ分のサプリメントをCIF価格100万円で輸入した場合、関税が約6〜12万円、消費税が約10〜11万円かかり、合計で約16〜23万円の税負担が発生します。荷主への費用見積もりの際に関税+消費税を含めた総コストを伝えないと、後でトラブルになるケースがあります。
これは使えそうです。
また、アメリカ・EUからのサプリメント輸入では、日米貿易協定やEPA(日EU経済連携協定)の適用可否を確認することで、関税コストを削減できる場合があります。日EU・EPAでは多くの食品加工品に対して関税が段階的に撤廃されており、2024年時点で一部品目はすでに0%になっています。荷主に対してこの情報を提供できる通関業者は、付加価値の高いサービスを提供していると評価されます。
実務上、原産地証明書(Certificate of Origin)の取得を荷主に求めるかどうかは案件ごとの判断が必要ですが、FTA適用による関税削減額が数万円以上になる場合は積極的に検討を促すのがよいでしょう。関税削減が条件です。
財務省関税局:実行関税率表(HSコード別の最新関税率を確認できます)
ここでは一般的な解説書にはほとんど書かれていない視点として、通関業者が輸入サプリメントの店舗展開に対してどのような付加価値サービスを提案できるかについて触れます。
単なる申告代行だけでなく、サプリメント輸入に強い通関業者として差別化するためのポイントがいくつかあります。まず「成分事前スクリーニングサービス」の提供です。輸入前に成分表(CoA書類)を受け取り、厚生労働省の禁止リストと照合した上で「この製品は問題なく通関できる見込みです」という事前確認レポートを荷主に提供する業者は、国内でも極めて少数です。
次に、食品衛生法の輸入届出サポートです。通関業者の中には「通関だけ」「届出は荷主任せ」というスタンスが少なくありませんが、輸入届出から通関・配送手配までワンストップで対応できる業者は荷主から非常に高い評価を受けます。実際、大手ドラッグストアチェーンやECサイト運営企業が海外サプリメントを定期輸入する際に、この種の一括サポートを提供できる通関業者を探しているケースは多いです。
これは意外ですね。
さらに、税関との事前照会(事前教示制度)の積極活用も差別化につながります。事前教示とは、輸入前に税関に対してHSコードや関税率について照会できる制度で、回答が出るまで平均4〜6週間かかりますが、新規品目や成分が複雑な製品については事前確認しておくことでトラブルを未然に防げます。この制度を活用して「事前教示取得済み」のステータスを荷主に提示できる通関業者は、信頼性の面で大きなアドバンテージを持ちます。
荷主にとっての最大の不安は「日本に届いてから売れなかった」というリスクです。そのリスクを通関段階で先回りして排除できる通関業者こそが、今後の輸入サプリメント市場で求められる存在と言えます。
財務省関税局:事前教示制度の概要(申請方法・回答までの流れを解説)