機能性表示食品は、国の審査を一切受けずに販売できます。
特定保健用食品、いわゆる「トクホ」は、消費者庁長官の個別許可を受けた食品です。健康の維持や増進に役立つ成分を含み、その効果を商品パッケージに表示できる点が最大の特徴といえます。
許可取得には、有効性・安全性・品質管理に関する科学的根拠を揃えた申請書類を消費者庁へ提出し、食品安全委員会によるリスク評価と薬事・食品衛生審議会の審議を経る必要があります。これは平均して数年単位の審査期間を要する、非常に厳格なプロセスです。つまり、許可を得た製品には国のお墨付きがあるということです。
通関業務においては、トクホ製品は「許可証票(消費者庁長官の許可マーク)」の有無が書類確認の起点となります。輸入申告書に添付する資料として、原産国での販売許可証や成分証明書に加え、日本の消費者庁データベースとの照合が求められる場面があります。許可番号はすべて公開されています。
2024年時点でのトクホ許可件数は約1,000品目前後で推移しており、ピーク時(2006年前後の約1,100件超)から横ばいか微減傾向にあります。この数字は、それだけ少数の製品しか審査をクリアできていないことを意味します。厳しいですね。
表示できる内容は「お腹の調子を整えます」「骨の健康維持に役立ちます」など、許可された範囲に限定されます。勝手に表示文言を変えることは一切認められていません。表示文言の変更は再許可申請が条件です。
機能性表示食品は2015年に創設された比較的新しい制度です。事業者が科学的根拠を添えて消費者庁へ届け出ることで、国の審査なしに機能性を表示できる仕組みになっています。
届出から受理まで60日間の「待機期間」がありますが、この間に消費者庁が積極的に審査・却下を行うわけではありません。届出内容が公開され、問題があれば取り下げを求められる場合がありますが、基本的には「事業者責任の制度」です。これが制度上の最大の違いです。
特定保健用食品との主な違いを整理すると以下のようになります。
| 比較項目 | 特定保健用食品(トクホ) | 機能性表示食品 |
|---|---|---|
| 根拠となる法令 | 健康増進法・食品表示法 | 食品表示法 |
| 国の審査 | あり(個別許可) | なし(届出制) |
| 科学的根拠 | 臨床試験が原則 | 文献レビューでも可 |
| 対象製品形態 | 一般食品形状が原則 | 生鮮食品も含む |
| 表示マーク | 許可マーク(〒型)あり | 統一マークなし |
| 届出・許可件数 | 約1,000件前後 | 7,000件超(2024年時点) |
機能性表示食品の届出件数はトクホの約7倍以上にのぼります。これはつまり、審査なしで機能表示ができる手軽さが事業者に支持されているということです。
届出情報はすべて消費者庁の「機能性表示食品届出情報検索」データベースで公開されており、届出番号を使って検索できます。通関業務でこのデータベースを確認する習慣をつけておくことは、申告精度を高める上で非常に有効です。
通関業務においてこの2つの制度の違いが最も直接的に影響するのは、輸入申告時の書類確認と関税分類(HSコード)の判断です。見た目が似ていても、制度的背景が異なる以上、取り扱いが変わる場面があります。
まず確認すべきなのは、輸入しようとする食品が日本の「特別用途食品」または「保健機能食品」の区分に該当するかどうかです。保健機能食品には「特定保健用食品」「機能性表示食品」「栄養機能食品」の3種が含まれます。これが原則です。
HSコード分類では、製品の形状・成分・用途が判断基準となります。たとえばカプセル・錠剤状の食品は、通常の食品よりも「医薬品に該当しないか」の確認が優先されます。薬機法(医薬品医療機器等法)に抵触するかどうかを判断するのは厚生労働省・税関の協議事項となるため、疑義がある場合は事前確認が欠かせません。
機能性表示食品は届出番号がパッケージに記載されています。「Aで始まる番号」はサプリメント形状、「Gで始まる番号」は生鮮食品など形状によって届出区分が異なります。届出番号の頭文字は区分を示す指標です。
食品として申告したものが実態として医薬品と判断された場合、薬機法違反として行政指導や輸入差止の対象となります。事前に書類を整えることが、最大のリスク回避策といえます。
厚生労働省:輸入食品等の監視・指導について(輸入手続き関連)
表示ルールの違いは、通関書類の内容確認においても重要な視点です。商品ラベルの表示内容が日本の食品表示法に適合しているかは、輸入後の販売可否に直結します。
トクホの場合、パッケージには必ず「特定保健用食品」の文字と許可マーク(〒型のロゴ)が表示されています。さらに「摂取目安量」「注意事項」「関与成分の含有量」の記載も義務付けられています。これらが欠けている場合、正規の許可品でない可能性を疑う必要があります。
機能性表示食品の場合は、以下の項目が必ず記載されています。
この免責文言の存在が、両者の制度的立場の違いを最もわかりやすく示しています。表示が日本語であることも求められるため、外国語ラベルのままでは国内販売できません。つまり輸入後にラベルを貼り替える必要がある場合は、その作業も輸入計画に含める必要があります。
2023年に実施された食品表示基準改正により、機能性表示食品の届出情報の公開粒度が高まり、事後チェックが強化されています。制度は常に変化しています。通関実務担当者として、消費者庁の更新情報を定期的にチェックする習慣が今後さらに重要になります。
「特定保健用食品と機能性表示食品の違い」をテーマに語られることが多い一方で、通関現場では「栄養機能食品」という第3の区分が意外な落とし穴になることがあります。この区分は、保健機能食品の中でも最も届出負担が少なく、一定の栄養素含有量を満たせば届出すら不要です。
栄養機能食品は、ビタミン・ミネラル・脂肪酸など20種類の規格基準が国によって定められており、その基準を満たしていれば自動的に「栄養機能食品」として表示できます。「亜鉛は味覚を正常に保つのに必要な栄養素です」「ビタミンCは抗酸化作用を持つ栄養素です」といった表示がこれに該当します。届出不要が基本です。
ここで通関実務上の盲点が生じます。輸入食品がカプセルや錠剤形状で「ビタミンC含有」などの表示があった場合、それが「栄養機能食品」なのか「機能性表示食品」なのか「単なるサプリメント」なのか、見た目だけでは判断できません。
さらに問題なのは、日本に「サプリメント」を定義する法律が存在しないことです。カプセル・錠剤・顆粒状の食品は、形状だけでは食品・医薬品いずれにも分類し得る「グレーゾーン」に位置します。このグレーゾーンに注意が必要です。
実務上の対応としては、以下の判断フローを使うと整理しやすくなります。
この判断フローを現場でルーティン化することが、薬機法違反リスクを大幅に下げる実践的な方法です。これは使えそうです。
また、2022年以降の輸入通関では電子システムの整備が進み、NACCSを通じた食品衛生法関連の届出処理が標準化されています。NACCSの食品輸入届出機能と消費者庁データベースを組み合わせたダブルチェック体制を組むことが、今後の通関品質管理の基準になりつつあります。
NACCS(輸出入・港湾関連情報処理センター):通関電子システム公式サイト