輸入食品届出が不要になる条件と通関実務の落とし穴

輸入食品届出は必ずしも毎回必要ではありません。サンプルや計画輸入など届出が不要になるケースを知らないと、余分なコストや時間のロスが発生します。通関業従事者が押さえるべきポイントとは?

輸入食品届出が不要になるケースと通関実務での判断基準

サンプル10kg以下でも確認願を出さないと、全量積戻しになることがあります。


📋 この記事の3つのポイント
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届出不要の条件は「用途」で決まる

食品衛生法第27条の届出義務は「販売・営業上使用」が目的かどうかで判断されます。個人使用・試験研究用・社内検討用など6つの用途は届出不要です。

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「届出不要」でも確認願の提出が必要

届出が不要なケースでも、税関に「確認願」を提出しなければ通関が止まります。届出不要=書類なし、という思い込みが現場トラブルの原因になります。

計画輸入制度で毎回の届出をゼロにできる

同一食品を繰り返し輸入する場合、計画輸入制度を活用すれば最長3年間、輸入のたびの届出が不要になります。通関業者として荷主に積極的に案内したい制度です。


輸入食品届出が不要になる6つの用途と食品衛生法第27条の基本構造

食品等輸入届出(いわゆる「食品届」)は、食品衛生法第27条に基づく制度です。「販売の用に供し、又は営業上使用する食品等を輸入しようとする者は、そのつど厚生労働大臣に届け出なければならない」と定めています。つまり、届出義務が発生するかどうかの分岐点は「販売・営業使用目的かどうか」という一点に集約されます。


用途が以下のいずれかに該当すれば、食品等輸入届出書の提出は不要です。


  • 🏠 個人使用目的(自分で食べる・使う)
  • 🔬 試験研究用(成分分析・開発試験など)
  • 🏢 社内検討用サンプル(採否検討・品質確認)
  • 🎪 展示用(見本市・展覧会での展示のみ)
  • 🎨 装飾用(食べることを目的としない飾り)
  • 📦 贈り物(個人間)(不特定多数への配布ではないもの)


重要なのは「不特定多数への提供を目的としない」という条件です。たとえ展示用であっても、展示会場で試食として来場者に配布すれば、その時点で届出が必要になります。つまり用途が条件です。


また、届出不要な品目として施行規則上で個別に列挙されているものもあります。原塩・コプラ・食用油脂製造用動植物性原料油脂・粗糖・粗留アルコール・糖蜜・麦芽・ホップの8品目は、製造原料用途であれば食品届の対象外と明示されています。これは意外ですね。ビール製造用の麦芽やホップの輸入に食品届が不要と聞いて驚く方も少なくありません。


通関業に従事していると、荷主から「これは届出いりますか?」と聞かれる場面は日常的です。食品かどうかだけでなく「何に使うのか」を必ず確認することが、最初の判断ステップになります。


厚生労働省「食品等輸入手続について」(届出不要の要件・各種制度の公式情報)


輸入食品届出が不要でも必須の「確認願」とは何か

「届出が不要」と判断された場合でも、税関への申告でそのまま通関できるわけではありません。これが現場でよくある誤解のポイントです。


届出不要の貨物を輸入する際は、税関に「確認願(食品衛生法に該当しないことの確認書)」を提出する必要があります。確認願とは「この貨物は食品衛生法に基づく輸入届出が不要であることを確認してください」と検疫所に申し出る書類であり、検疫所の食品監視課が確認印を押したものを税関に提出します。


届出不要=書類不要、ではありません。


確認願の取得フローをまとめると、次のとおりです。


  1. 輸入者(または通関業者)が「確認願」に用途・数量・品名等を記載する
  2. 通関場所を管轄する検疫所の食品監視課へ提出する
  3. 検疫所が届出不要に該当すると判断すれば、確認印を押して返却する
  4. 確認印のある書類を税関申告時に提示し、通関する


ここで注意すべきことがあります。サンプルや社内検討用として輸入する食品の重量が10kgを超える場合は、検疫所から届出を「勧奨」される運用が実際にあります。重量が多いと「本当に個人使用・社内検討用か」と疑義が生じるためです。また10kg以下であっても、頻繁に繰り返して輸入している場合や、税関が確認を必要と認めた場合は同様の対応を求められることがあります。


厚生労働省の公表事例(2007年)では、釣り餌と称して届出なしで輸入されたカキが食品として販売されていたことが発覚し、関連する食品店への調査が実施されました。このケースでは300kgを超える牡蠣が問題になっています。用途の虚偽申告は食品衛生法違反になりえるため、現場での用途確認は荷主任せにせず、通関業者としても慎重に確認する姿勢が求められます。


税関「食品衛生法に基づく輸入規制の税関における確認内容(カスタムスアンサー1802)」


輸入食品届出が毎回不要になる計画輸入制度の仕組みと条件

同一の食品を繰り返し輸入する場合、毎回届出書を提出するのは手間とコストがかかります。そこで活用したいのが「計画輸入制度」です。これは食品衛生法施行規則第32条別表第12に定められた食品を対象に、一定の手続きを経ることで、輸入のたびの届出を省略できる制度です。


計画輸入制度が使える食品はあらかじめ指定されています。


初回輸入時に提出が必要な書類は、食品等輸入届出書・今後1年間の輸入計画書・一部の食品については提出日前3年間の輸入実績書の3点です。これらを検疫所に提出し、審査・検査で問題なしと判断されると、その後1年間(品目によっては3年間)は輸入のたびの届出が不要になります。


つまり1回の手続きで最長3年間の届出省略が可能です。


なお、計画輸入制度を利用して輸入した食品等については、年度ごとに輸入実績を報告する義務があります。この実績報告を忘れると次回の更新に支障が出るため、カレンダー管理などで漏れなく対応することが大切です。


計画輸入制度と似た制度に「同一食品等の継続輸入制度」があります。こちらは検査成績書を初回届出書に添付し、問題なければ次回から一定期間の「指導検査」を省略できるというものです。届出そのものを省略する計画輸入制度とは、省略できる内容が異なります。荷主の輸入頻度・品目に応じて、どちらの制度が適切かを見極めることが通関業務のプロとしての視点です。


これは使えそうです。計画輸入制度は年間何十件もの食品届出を処理している通関業者であれば、荷主のコスト削減提案としても活かせます。


ジェトロ「食品等輸入届出手続きの簡素化・迅速化制度:日本」(計画輸入制度・品目登録制度の詳細)


輸入食品届出が不要でも見落としがちな「乳幼児おもちゃ」と「容器包装」の注意点

食品届出の対象を「食品だけ」と思い込んでいると、思わぬ通関トラブルに直面することがあります。食品衛生法上の「食品等」には、食品・食品添加物だけでなく、器具・容器包装・乳幼児用おもちゃも含まれるからです。


具体的には次のものが対象です。


  • 🍽️ 器具:食品に直接触れる調理用具・食器・調理機械など
  • 📦 容器包装:食品を入れる缶・袋・ラップ・ボトルなど
  • 🧸 乳幼児用おもちゃ:6歳未満の子どもが口に触れる可能性があるおもちゃ


おもちゃは食品ではないにもかかわらず、乳幼児が口にする可能性があるという理由から、食品と同等の安全基準が設けられています。そのため、おもちゃを輸入する際にも食品届が必要になるケースがあり、通関業者としては見落としやすい落とし穴の一つです。厳しいところですね。


一方で、乳幼児用おもちゃも「展示用・社内検討用サンプル」として輸入する場合は、食品届が不要となります。同じおもちゃでも用途次第で手続きが変わる点は、食品と同じロジックで考えてかまいません。


また、食品を包む容器包装を輸入する際も届出対象です。たとえば海外製の食品用プラスチック容器や食品用ラップフィルムは、食品そのものでなくても食品届の対象になります。実務では「食品が入っていないから届出不要」と誤判断するケースが報告されています。食品が入っていても入っていなくても、「食品等に触れるもの」は届出対象と覚えておくことが基本です。


さらに、浄水器も「食品に触れる器具」として食品衛生法の対象になる場合があります。器具の定義が広いため、一見食品と無関係に見える製品でも届出が必要なことがあります。判断に迷う品目は事前に最寄りの検疫所窓口に相談するのが確実です。


厚生労働省検疫所FORTH「初めての食品等輸入届出〜Q&A〜」(器具・容器包装・おもちゃに関する届出Q&A)


輸入食品届出が不要なケースの判断を効率化する通関業者ならではの実務視点

通関業務の現場では、荷主から「これは食品届いりますか?」という問い合わせが後を絶ちません。判断を間違えると、貨物が税関で止まるだけでなく、最悪の場合は積戻しや廃棄処分という結果になりかねません。そうなると荷主への損害が発生し、業者間の信頼問題にも発展します。


通関業者としての判断フローは「2段階確認」で考えると整理しやすいです。


第1段階:品目の確認


| 品目カテゴリ | 届出対象 |
|---|---|
| 食品・食品添加物 | ✅ 対象(原則) |
| 食品用器具・容器包装 | ✅ 対象 |
| 乳幼児用おもちゃ(6歳未満向け) | ✅ 対象 |
| 一般のおもちゃ(6歳以上向け) | ❌ 対象外 |
| 原塩・粗糖・麦芽・ホップ等8品目 | ❌ 対象外(施行規則別表) |
| 医薬品・医薬部外品 | ❌ 薬機法が適用(食品衛生法対象外) |


第2段階:用途の確認


品目が対象に該当しても、用途が個人使用・試験研究用・社内検討用・展示用・装飾用・個人間贈答のいずれかであれば、届出不要になります。ただしこの場合も確認願の提出が必要です。


届出不要かどうかを判断するのは、最終的には検疫所の食品衛生監視員です。通関業者が独自に「不要」と判断して確認願なしで申告することは避けるべきです。曖昧なケースは検疫所への事前相談を活用し、文書で回答をもらっておく習慣をつけると、後々のトラブル防止になります。


なお、食品衛生法第27条に違反して無届で食品等を販売した場合の罰則は重大です。食品衛生法の規定では、違反者には3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科され、情状によっては懲役と罰金が併科されることもあります。荷主だけでなく、届出代行を担う通関業者としても正確な判断が求められます。


食品届の代行を依頼される通関業者のなかには、FAINSシステムによるオンライン届出に対応しているところも増えています。NACCSの利用者コードに紐づいたFAINSの設置届を事前に行っておくことで、電子的に届出を送信でき、書面提出より迅速に処理を進められます。未対応の事業者は、導入検討の価値があります。


ジェトロ「食品等輸入届出書の概要と提出先・提出方法等:日本」(届出対象品目・審査基準・FAINSの概要)