従量税品だけを扱う会社でも、申告価格を誤ると消費税の追徴課税を受けます。
関税の計算において、税額算定の基礎となる数字のことを「課税標準」と呼びます。輸入貨物に関税を課す場合、この課税標準として「価格」を使うか「数量」を使うかで、課税方式の名称が変わります。価格(CIF価格)を課税標準とするものが従価税(Ad Valorem Duty)、数量(個数・重量・容積など)を課税標準とするものが従量税(Specific Duty)です。
従価税は実行関税率表上で「〇〇%」という形式で表示されます。衣類を100万円分輸入して関税率が10%であれば、関税額は10万円になる計算です。輸入貨物の大部分がこの従価税品に該当します。つまり従価税が基本です。
一方、従量税は「〇円/kg」「〇円/L」のように表示されます。肉類、魚介類、酒類などの品目に多く設定されています。たとえば、フランス産スパークリングワイン(輸入統計品目番号:2204.10-000)の関税率は1リットルあたり182円です。100万円のシャンパンを輸入しても、10万円のシャンパンを輸入しても、1リットルあたりの税額は変わりません。
| 区分 | 課税標準 | 実行関税率表の表示例 | 代表品目 |
|------|----------|----------------------|----------|
| 従価税 | 輸入貨物の価格(CIF価格) | 10% | 衣類、機械類、電子部品 |
| 従量税 | 個数・重量・容積など | 182円/L、300円/kg | 酒類、肉・魚介類 |
| 複合税 | 価格+数量(両方加算) | 5%+200円/kg | 一部の乳製品 |
| 選択税 | 価格か数量のどちらか高い方 | 12%又は1kgあたり1,100円 | 毛織物、卵黄、魚油 |
従量税の大きな特徴は、税額を算定しやすい点にあります。
参考:税関ホームページ(関税のしくみ)— 従価税・従量税・混合税の基本解説
https://www.customs.go.jp/shiryo/kanzei_shikumi.htm
実務で課税標準の種類を正確に把握するためには、計算の手順を頭に叩き込んでおく必要があります。それぞれの計算式と、数字を使った例を確認しておきましょう。
従価税の計算式:関税額 = 課税価格(CIF価格)× 関税率
課税価格はインボイスに記載された商品代金(現実支払価格)に、運賃・保険料などの「加算要素」を加えたCIF価格が基準です。たとえば、衣類をCIF価格100万円で輸入し、関税率が10%であれば、関税額は10万円になります。日EU EPAを活用して関税率が5%に軽減された場合は5万円となり、同じ貨物でも5万円の差が出ます。これは使えそうです。
従量税の計算式:関税額 = 課税数量 × 単位あたりの税額
コーヒー豆(焙煎済み、統計品目番号0901.21-000)を例にとると、基本関税率は20%の従価税が適用されますが、焙煎されていない生豆(0901.11-000)は無税です。焙煎の有無だけで、100万円の輸入案件では関税額に最大20万円の差が生じます。
一方、たとえば冷凍牛肉(統計品目番号0202.30-000)には従量税が適用されており、1kgあたりで税額が設定されています。10トン(10,000kg)の牛肉を輸入する場合、単価がいくら高くても安くても、重量に単位税額を乗じた金額が関税額になります。東京ドーム約0.17杯分の牛肉をイメージしてください。数量が課税標準です。
消費税の課税標準にも注意が必要です。 従量税品であっても、輸入消費税は「申告価格(課税価格)+関税額+その他内国税」を課税標準として計算されます。つまり、従量税品を輸入していて関税額が価格に左右されない場合でも、申告価格を誤って低く申告すると、消費税の課税標準が下がり、後日差額分の消費税を追徴されるリスクがあります。
参考:JETROの輸入税額計算方法(日本)解説ページ
https://www.jetro.go.jp/world/qa/04M-100421.html
通関業務の実務で特に注意が必要なのが「混合税」の取り扱いです。混合税には選択税と複合税の2種類があり、それぞれ判断ロジックが異なります。
選択税(従価・従量選択税) は、同一品目に従価税と従量税の両方が設定されており、原則として税額が高くなる方を適用します(一部の品目は低い方)。現在、毛織物、卵黄、魚油、鉛合金の塊などに適用されています。たとえば毛織物で「12%または1kgあたり1,100円」という税率が設定されている場合、課税価格が安い輸入品には従量税が高く出ることが多く、逆に高級品では従価税が上回るケースが多くなります。
具体的に数字で確認します。課税価格が5,000円で重量が1kgの毛織物の場合、従価税は5,000円×12%=600円、従量税は1kg×1,100円=1,100円となり、選択税では高い方の1,100円が適用されます。
複合税(従価・従量併用税) は、従価税と従量税の両方を同時にかけるものです。現在、一部の乳製品に適用されており、たとえば「5%+1kgあたり200円」という形式で表示されます。課税価格10,000円・重量20kgの場合、従価税500円と従量税4,000円の合計4,500円が税額になります。
どちらを選択すべきか、あるいは両方加算するのかを誤ると申告ミスに直結します。厳しいところですね。もし税関の調査通知を受ける前に自主的に修正申告すれば過少申告加算税は原則かかりませんが、調査後の発覚では追徴課税に加算税まで課せられます。
実行関税率表の表示で「又は」と記載されていれば選択税、従価税と従量税の税率が並記されて足し合わせる形なら複合税、と覚えておくとミスが減ります。これが条件です。
参考:OTSジャパン「従価税・従量税の違いと輸入関税の計算方法」
https://ots-jpn.com/international_transportation/advaloremtax-specifictax/
「うちは酒類や水産物ばかりだから、課税価格の細かい計算は関係ない」と考えている通関担当者は要注意です。これは大きな落とし穴になります。
従量税品の場合、関税額そのものは輸入価格に左右されません。シャンパン1リットル182円は、10万円のボトルでも100万円のボトルでも同じです。その意味では、確かに課税価格が関税額を変動させることはありません。
しかし、輸入消費税の計算においては申告価格が直接関わります。 輸入消費税の課税標準は「課税価格(CIF価格)+関税額」です。仮に課税価格を100万円と申告すべきところを70万円で申告した場合、30万円分の課税標準が不足します。消費税率10%で計算すると3万円の追徴が発生し、さらに過少申告加算税が上乗せされます。
具体的なリスクとして、たとえば継続取引において毎回申告価格を誤っていた場合、税関の事後調査で3年分さかのぼって修正を求められた事例が報告されています。3年間で積み重なった申告価格の誤りは、最終的に数十万円規模の追徴課税と加算税に膨らむことがあります。痛いですね。
また、インボイスに記載されていない「加算要素」の漏れも申告ミスの原因になります。たとえば、輸入者が輸出者に無償提供した金型や部材の費用、ロイヤルティ、買手から売手に支払った手付金などは、現実支払価格に加算しなければなりません。通関業者はインボイスだけを見て処理しがちですが、これらの情報は輸入者から連絡がない限り加算されません。
📌 実務上の対策として: 従量税品を主に扱う現場でも、年に1回は申告価格の計算ロジックを棚卸しする機会を設けることが有効です。JETROが公開している「輸入と関税Q&A」(無料)は、加算要素の具体例が豊富で、社内教育の補助資料としても活用できます。
参考:GTConsultant.net「取引価格を理解することから始めよう」— 従量税品と申告価格の関係
https://gtconsultant.net/valuation-actual-price/
どの品目にどの課税方式が適用されるかは、実行関税率表(輸入統計品目表)を参照することで確認できます。税関ホームページで誰でも無料で閲覧可能です。手順を整理しましょう。
ステップ1:品目の類(第1類~第97類)を特定する
貨物がどの類に該当するかをまず確認します。たとえばコーヒー豆は第9類(コーヒー、茶、マテ及び香辛料)、酒類は第22類(飲料、アルコール及び食酢)に分類されます。
ステップ2:統計品目番号(9桁)を特定する
類の中でさらに「項」「号」と細分化され、最終的に9桁の統計品目番号(HSコードの下位互換)が決まります。この番号を誤ると適用税率が変わるため、細心の注意が必要です。
ステップ3:税率の形態を確認する
実行関税率表で税率を確認した際、「%」表示なら従価税、「円/kg」「円/L」表示なら従量税、二つが併記されていれば混合税です。混合税の場合はさらに「又は」(選択税)か加算形式(複合税)かを判断します。
ステップ4:適用優先順位を確認する
税率には①基本税率、②暫定税率、③WTO協定税率、④EPA税率(特恵税率・特別特恵税率)があり、EPA税率が最も優先度が高く設定されています。EPA税率は基本税率より大幅に低いケースが多く、たとえば日EU EPAでは特定の繊維製品の関税率が通常10%から5%に半減します。ただしEPA税率を適用するには原産地証明書(または原産品申告書)の提出が必須です。
🔎 確認作業の効率化ポイント: 公益財団法人 日本関税協会が提供している「Webタリフ」を使うと、品目番号から税率の種類・数値を素早く検索できます。実務で品目判断に迷ったときは、税関の「事前教示制度」を活用して書面・メールで照会することも可能です。事前に回答を得ておくことで、申告後の修正申告リスクをゼロに近づけられます。
参考:税関ホームページ「実行関税率表(2025年4月1日版)」— 品目別税率を公式に確認
https://www.customs.go.jp/tariff/2025_04_01/index.htm
参考:有森FA法律事務所「課税標準について」— 従価税品・従量税品・選択税品の類型整理
https://aog-partners.com/kazeihyouzyunnnituite/