民事罰と刑事罰の違いを通関業従事者が正しく理解する方法

通関業務において民事罰と刑事罰はどう違うのか?関税法・通関業法上の罰則構造から両罰規定の実務上の注意点まで、通関業従事者が知っておくべき法的リスクを解説します。あなたは両方同時に問われる可能性を理解していますか?

民事罰と刑事罰の違いを通関業従事者が正しく理解する

刑事罰で有罪になっても、民事の損害賠償は別途ゼロ円にならない。


📋 この記事の3つのポイント
⚖️
民事罰・刑事罰は目的も手続きも異なる

刑事罰は「国が犯罪者を罰する」手続き、民事罰は「被害者が損害回復を求める」手続きです。同一の行為でも両方が同時に発生します。

🏢
両罰規定で会社も罰せられる

通関業者の従業員が違反を犯した場合、行為者個人だけでなく法人(会社)にも最大3億円の罰金が科される両罰規定が存在します。

🚨
「知らなかった」は免罪符にならない

過失による違反でも刑事罰の対象となるケースがあります。外為法違反では法人に最大10億円の罰金が科される可能性があります。

民事罰と刑事罰の違い:通関業での基本的な定義

通関業に携わる以上、「民事罰」と「刑事罰」は混同しやすい概念です。結論から言うと、この2つは「誰が誰を罰するか」という点で根本的に異なります。


刑事罰とは、国(検察官)が犯罪者に対して科す制裁です。 関税法違反通関業法違反などが該当し、懲役・罰金・拘禁刑といった形で科されます。対して民事罰とは、被害を受けた個人や法人が加害者に損害賠償を請求する手続きです。 国が動くのではなく、あくまで当事者間の問題として処理されます。izawa-law+1

比較項目 刑事罰 民事罰
当事者 国(検察官)vs 被告人 原告(被害者)vs 被告
目的 犯罪者への制裁・社会秩序維持 被害者の損害回復
訴訟提起者 検察官のみ(起訴) 被害者が自ら提起
主な制裁内容 懲役・禁錮・罰金・拘禁刑 損害賠償・差止請求
根拠法令 刑法・関税法・通関業法等 民法・不法行為法等

通関業務では、関税法・通関業法・外国為替及び外国貿易法(外為法)が主な刑事罰の根拠法令になります。 民事罰は、不適切な通関手続きによって荷主が損害を被った場合などに、民法709条(不法行為)や415条(債務不履行)を根拠に請求されます。timewell+1

通関業法・関税法における刑事罰の具体的な内容

刑事罰の厳しさは、想像以上です。


通関業法・関税法の刑事罰で最も重いのは、「輸出入してはならない貨物(禁制品)の密輸出入」で、10年以下の懲役または3,000万円以下の罰金、もしくはその両方が科されます。 銃器・麻薬・爆発物などが対象で、未遂犯も既遂と同様に処罰されます。これは刑法の一般的な詐欺罪(10年以下の懲役)に並ぶ重さです。


参考)https://www.customs.go.jp/shiryo/batsujo.htm


外為法違反になると、さらに深刻です。 法人に対しては最大10億円の罰金が科され、個人でも最大3,000万円の罰金プラス最大10年の拘禁刑という重い制裁があります。


参考)【2026年版】輸出管理違反のペナルティ完全解説|刑事罰・行…


  • 🚫 密輸出入犯:10年以下の懲役または3,000万円以下の罰金(関税法108条の4・109条)
  • 📄 無許可輸出入・虚偽申告犯:5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(関税法111条)
  • ⚠️ 外為法違反(法人):10億円以下の罰金または違反貨物価格の5倍以下
  • 🏢 通関業法違反(無許可営業等):拘禁刑(通関業法第44条等)

通関業者は「委託を受けて通関業務を行う者」であるため、直接の納税義務者ではありませんが、関税を免れる行為に関与した場合は「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金」が科される可能性があります。 これが通関業従事者にとって最も注意すべき点です。つまり関与形態によっては同じ罰則対象になるということですね。


参考)『関税法 (罰則)と(通関業者)ー②』 : 貿易ともだち


通関業者に関係する民事罰の実態とリスク

民事罰は「お金で終わり」と思われがちですが、実際は事業継続を脅かすリスクがあります。


通関業務上の過失(申告書類の誤記、品目分類のミス、輸入禁制品の見落としなど)によって荷主が損害を被った場合、通関業者は民法415条(債務不履行)または民法709条(不法行為)に基づく損害賠償責任を負います。 特に高額貨物の通関を誤った場合、賠償額が数千万円規模になることもあります。


参考)詐欺罪とは?構成要件・窃盗罪や横領罪との違い・被害に遭った企…


民事損害賠償の主なリスク場面は以下のとおりです。


  • 💸 関税等の申告額を誤り、荷主が過大に納税した場合の賠償
  • ⏱️ 通関遅延により荷主が機会損失(販売機会喪失など)を被った場合
  • 📦 輸入禁制品の見落としにより荷主が刑事責任を問われた場合の損害
  • 🔏 守秘義務違反(通関業法第19条)により荷主のビジネス情報が漏洩した場合

ここで重要なのは、刑事罰と民事罰は「併科」される点です。 たとえば偽った申告書類を提出して関税を免れた場合、刑事上は「5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金」を受けつつ、民事上は荷主や国から損害賠償請求を受けることがあります。刑事罰を受けただけでは民事の責任は消えないということです。


参考)民事責任と刑事責任とは違うこと


両罰規定:通関業従事者が見落としがちな「会社も罰せられる」仕組み

個人が違反しても、会社は無関係とはいきません。


関税法・通関業法・外為法にはいずれも「両罰規定」が設けられています。 これは、従業員が業務に関連して違反行為をした場合、行為者本人を罰するだけでなく、その法人(会社)に対しても罰金刑を科す規定です。法人は「自然人」ではないため懲役刑には処せられませんが、罰金刑の対象となります。amita-oshiete+1
たとえば通関業者の担当者が虚偽申告を行った場合、次のような処罰が同時に発生します。


  • 👤 行為者(従業員・通関士:5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金
  • 🏢 法人(通関業者):同様の罰金刑(最大1,000万円)

外為法の場合は法人に最大10億円の罰金が科されます。 担当者1人のミスが、会社全体に致命的なダメージを与えるということです。痛いですね。


会社が両罰規定の適用を免れるためには、「業務を適切に管理・監督していた」ことを証明する必要があります。 具体的には、コンプライアンス規程の整備、輸出入管理体制の構築、定期的な研修実施などが「監督義務を果たした証拠」として有効です。両罰規定を避けるには社内体制が条件です。


参考)301 Moved Permanently


通関業従事者だけが知るべき「行政罰との三重リスク」

実は、民事罰・刑事罰に加えて「行政罰(行政処分)」という第3の制裁が存在します。これが通関業特有のリスクです。


通関業法では、財務大臣(税関)が通関業者に対して「業務改善命令」「業務停止(6ヶ月以内)」「許可の取消し」という行政処分を科すことができます。 また、通関士個人に対しても「戒告」「1年以内の業務停止」「通関士資格の取消し」という懲戒処分が課されます。shikaku-compass+1

罰の種類 科す主体 通関業者への制裁 通関士への制裁
行政罰(監督処分) 財務大臣・税関 業務停止・許可取消 戒告・業務停止・資格取消
刑事罰 国(検察官) 両罰規定で罰金刑 懲役・罰金・拘禁刑
民事罰 被害者(荷主等) 損害賠償命令 損害賠償命令

行政罰と刑事罰は「目的と手続きが全く異なる」ため、両方が同時に科されることがあります。 たとえば無許可通関業営業をした場合、刑事罰(拘禁刑)を受けながら、行政処分として許可取消も同時に受けます。民事・刑事・行政の三重に問われるケースがあるということですね。これは通関業特有の構造であり、一般企業のビジネスパーソンにはない重層的なリスクです。


参考)【通関業法】条文別徹底解説シリーズ(第5回:罰則・雑則)


このリスクを日常業務で管理するには、関税法・通関業法・外為法の最新改正を追いかけることが不可欠です。財務省関税局や税関の公式サイトは定期的にチェックする習慣をつけておきましょう。


以下のリンクは、関税法の罰条(禁制品密輸・虚偽申告・無許可輸出入の法定刑一覧)が掲載されている税関公式資料です。通関業務での刑事罰リスクを確認する際に役立ちます。


関税法の罰条一覧(財務省税関公式)
以下は通関業法の条文(罰則・両罰規定を含む)を確認できる通関業協会の公式資料です。両罰規定(第45条)の確認に活用できます。


通関業法(日本通関業連合会)
以下は輸出管理違反の刑事罰・行政制裁リスクをまとめた解説記事です。外為法の罰則(個人3,000万円・法人10億円)の詳細確認に役立ちます。


輸出管理違反のペナルティ完全解説(2026年版)