海外取引先が提示したHSコードをそのまま使うと追徴課税されます。
HSコード(Harmonized System Code)は、世界税関機構(WCO)が定める国際的な貿易商品分類コードです。通関業務従事者にとって、このコードは関税率の決定、通関手続き、輸入規制の判断に直結する最重要情報となります。
コードの構造は階層的です。最初の6桁が国際共通のHS分類で、全世界で統一されています。しかし日本では7桁目以降に3桁の統計細分番号を追加し、合計9桁で運用しているのが特徴です。
参考)HS商品ネームデータ
たとえばチョコレートの基本分類は「1806」ですが、日本の輸入申告では「1806.90.000」のように9桁まで特定する必要があります。この細分化により、より詳細な関税率の適用と正確な貿易統計の作成が可能になっています。
参考)輸入通関で必須のHSコードとは?仕組み・調べ方・実務対策
財務省関税局は、この分類体系を「実行関税率表」として公開しており、通関業務ではこの表を基準に申告を行います。
参考)https://www.customs.go.jp/tariff/
実行関税率表は、財務省税関のウェブサイトで無料で閲覧できます。この表には、関税率だけでなくWTO協定税率、EPA特恵税率、統計品目番号など、通関に必要な全情報が集約されています。
調べる際の基本手順は以下の通りです。まず輸入する商品の素材、用途、形状を明確にします。次に実行関税率表の21の「部」から該当する大分類を特定し、徐々に細分化していきます。
参考)事前教示制度を活用してHSコードを確定し通関リスクを前倒しで…
注意すべきは優先順位です。同じ品目でも複数の税率(基本税率、暫定税率、WTO税率、EPA税率など)が設定されている場合、最も低い税率が自動的に適用されるわけではありません。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/process/i-step3.html
実務では必ず各税関に事前確認することが推奨されています。空欄がある場合はその税率設定がないことを意味し、次の優先順位に進みます。つまり表の読み方自体が専門知識です。
HSコードの誤りは、単なる事務ミスでは済まされません。過失による誤分類であっても、税関から調査通知を受けた後に修正申告を行うと、増加税額の5%に相当する過少申告加算税が課されます。
より深刻なのは故意の誤分類です。低い関税率のコードを意図的に使用した場合、35%の重加算税が適用され、さらに関税法違反として刑事告発の対象になる可能性があります。継続的に同じ誤りを繰り返していると、悪質性が高いと判断され厳しい対応を受けることになります。
参考)過少申告加算税と重加算税の違いと防止策
具体的なトラブル事例も報告されています。ある企業では家具部品を「完成品の家具」として誤申告し、高額な関税が発生して海外バイヤーがキャンセルになりました。別のケースでは、リチウム電池を含む製品を一般電子部品として申告したところ、危険物の誤処理として税関で貨物が差し止められました。
参考)HSコードの付け間違いで起こるトラブル事例とは? - アラウ…
FTA適用時にも注意が必要です。原産地証明書とインボイスのHSコードに相違があると、関税特恵が適用されず現地で高額な関税を徴収されるケースが発生しています。これは書類の不一致が原因です。
最も危険なのは、海外取引先から提供されたHSコードをそのまま使用することです。HSコードは6桁までは国際共通ですが、7桁以降は各国独自の分類となるため、輸出国のコードと日本の輸入時のコードは必ずしも一致しません。
インボイスに相手国側のHSコードが記載されていても、日本側のHSコード適用には何の影響も与えません。日本の税関で独自に確認する作業が絶対に必要です。
初めて輸入する品目は特に注意が必要です。正しいコードを把握していないまま、類似品と同じコードで申告してしまうケースが多発しています。たとえば同じ電子機器でも、部品として扱われるか完成品として扱われるかで税率が大きく異なります。
参考)HSコードの基本と分類のポイント(1) - 通関士ブログ
衣類の輸入では、素材や用途によってHSコードが非常に細かく分類されており、それに合わせて税率も細分化されています。この複雑さが誤分類の温床になっています。厳しいところですね。
図面や仕様書との突き合わせ確認も不可欠です。抽象的な品名や社内呼称で流すのではなく、実際の形状・用途・構造が該当するHSコードと照合し、不明点は逐一クリアにする姿勢が求められます。
事前教示制度は、通関前に税関へ商品のHSコードや関税分類について正式な見解を照会できる公式制度です。この制度を利用することで、通関段階でのトラブルやリスクを未然に完全に防ぐことができます。
参考)何をどうすれば?HSコードの調べ方を徹底解説!
申請方法は以下の流れです。まず分類判断が難しい貨物や重要度の高い調達品目をピックアップします。次に現物の写真、図面、カタログなど「貨物の実態を客観的に説明できる資料」を準備します。
税関提出用の「事前教示申請書(C-1000号)」に、貨物の名称、素材、用途、どの分類判断が難しいかを具体的に記載します。記述が曖昧だと受理されないため、設計者や技術者と連携して客観的な事実を論理立てて書くことが重要です。
税関は照会内容を審査し、原則30日以内に「事前教示回答書」を発行します。回答書の内容は3年間尊重され、輸入手続きの際に活用可能です。つまり一度取得すれば大丈夫です。
この制度を活用すれば、後になって追加関税、罰金、輸入差し止めといった重大トラブルに発展するリスクを前倒しで解消できます。製造業の調達購買、海外工場運営、品質管理の現場では極めて重要な手段となります。
HSコード管理で最も効果的なのは、社内でコード台帳を整備することです。商品ごとのHSコードと適用関税率を一覧化しておけば、繰り返し輸入する品目の申告ミスを大幅に減らせます。
台帳には、過去の事前教示回答書の内容も含めて記録しておくと効果的です。回答書は3年間有効なので、その期間内は同じ分類が適用されるため、再照会の手間が省けます。
複雑な商品の場合、図面や仕様書とHSコード解説の突き合わせ確認を習慣化することが重要です。特に昭和から続くアナログ色の強い製造業界では、経験や慣習に頼った運用が根強く、最新ルールへの知見不足が課題となりがちです。
定期的な社内研修も有効です。HSコードは数年ごとに改正されるため、最新の分類ルールを常に把握しておく必要があります。税関が実施する説明会や、日本関税協会のセミナーなどを活用すると良いでしょう。
万が一誤りを発見した場合は、速やかに修正申告を行うことで加算税を最小限に抑えられます。放置すると悪質性が高いと判断されるリスクが高まります。
財務省税関の公式サイトでは、実行関税率表だけでなく、関税率表解説や分類例規も公開されています。これらの資料を日常的に参照する習慣をつけることで、分類精度を大きく向上させることができます。
参考)https://www.customs.go.jp/yusyutu/
財務省税関:輸入統計品目表(実行関税率表)
実行関税率表の最新版がダウンロードでき、特殊関税の課税対象品目等も確認できます。
税関:納税申告に誤りがあった場合の対応
修正申告や更正の請求の手続き方法と、過少申告加算税の計算方法が詳しく解説されています。