蔵入承認と移入承認の違いと保税地域の蔵置期間の注意点

蔵入承認(IS)と移入承認(IM)の違いを通関業従事者向けに解説。保税蔵置場・保税工場・総合保税地域ごとの蔵置期間や手続きのポイントを知っていますか?

蔵入承認と移入承認の違いを保税蔵置期間から正しく理解する

3カ月を過ぎた段階で移入承認を取らないと、関税法違反で許可取り消しになることがあります。


この記事の3つのポイント
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対象となる保税地域が違う

蔵入承認(IS)は保税蔵置場、移入承認(IM)は保税工場、総保入承認(IA)は総合保税地域と、それぞれ使う承認の種類が異なります。

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移入承認は3カ月以内でも必要なケースがある

保税工場で保税作業を開始する場合は、搬入から3カ月以内であっても移入承認が必要です。蔵入承認との大きな違いのひとつです。

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21種の他法令は蔵入承認前にクリアが必須

大麻取締法・火薬類取締法など21の他法令に該当する貨物は、蔵入承認申請の時点で要件をクリアしていないと承認されません。


蔵入承認(IS)の基本:保税蔵置場での蔵置期間を延長する手続き

外国から日本に到着した貨物は、輸入許可が下りるまでの間、「外国貨物」として保税地域に置かれます。保税蔵置場への搬入後、特別な手続きをしない場合に蔵置できる期間は原則として3カ月です。


3カ月以内に輸入通関が完了しない場合、蔵入承認(IS:Import for Storage)の手続きが必要になります。これが原則です。


この承認を受けることで、最初に置くことが承認された日から2年間、外国貨物のまま保税蔵置場に置くことが可能になります。たとえば、市況を見ながらタイミングを計って輸入したい場合や、販路がまだ確定していない段階で貨物が到着してしまった場合などに活用される手続きです。


蔵入承認を受けた後の選択肢は、大きく3つあります。①輸入通関(蔵出輸入・ISW)、②外国貨物のまま積戻し(再輸出)、③廃棄・滅却処分です。通関できない事由が解消されたら速やかにISWを行い、関税と輸入消費税を納付して内国貨物にするのが一般的な流れです。


なお、蔵入承認の期間は「最初に保税蔵置場等に置くことが承認された日から通算して2年」が原則です。複数の保税蔵置場を移動した場合でも、最初の承認日から通算してカウントされる点に注意が必要です。


2年を超えてどうしても蔵置が必要な場合は、税関長に申請し、特別の事由が認められた場合に限り延長が可能です。この延長は自動的に許可されるわけではなく、個別判断になります。延長が必要と思われる。


実務上の業務コードはNACCSで「IS」として入力します。承認後に輸入通関を行う際は「ISW」(Import from Storage Warehouse、蔵出輸入)の業務コードで手続きします。このセットを覚えておけばOKです。


税関「保税関係用語集」:IS(蔵入承認)とIM(移入承認)の定義をはじめ、保税地域に関わる用語が一覧で確認できます。


移入承認(IM)の基本:保税工場で保税作業をする前に必要な承認

移入承認(IM:Import for Manufacturing)は、保税工場に搬入された外国貨物に対して行う承認です。蔵入承認が「長期蔵置のための手続き」であるのに対し、移入承認は「保税作業を行うための手続き」という位置づけが核心にあります。


移入承認が必要になる条件は2つあります。


- 搬入から3カ月を超えて保税工場に置こうとする場合(蔵入承認と同様の条件)
- 搬入から3カ月以内でも、保税作業を開始しようとする場合


2つ目の条件が重要です。これが蔵入承認との大きな違いです。保税作業(加工・製造・混合など)を始めるためには、たとえ搬入から1週間しか経っていなくても、移入承認を事前に受けておかなければなりません。承認なしに保税作業を始めてしまうと関税法違反になります。


移入承認を受けた外国貨物は、承認を受けた日から2年間、保税工場に置くことができます。保税蔵置場の蔵入承認が「最初の承認日から通算して2年」であるのに対し、保税工場の移入承認は「それぞれの移入承認を受けた日から2年」という計算方法になります。


つまり、A保税工場からB保税工場へ貨物を移してB工場で改めて移入承認を受けた場合、Bでの移入承認日から新たに2年のカウントが始まります。これは蔵置期間のリセットが起こる点で、保税蔵置場の通算ルールとは明確に異なります。


ただし例外があります。同一法人が許可を受けた2以上の保税工場間で一貫した保税作業が行われる場合は、関税法基本通達61の4-6により、移入承認の手続きを省略できることがあります。この場合は最初の移入承認日から通算して2年となります。つまりルールは2段階で理解する必要があります。


移入承認のNACCS業務コードは「IM」です。移入承認後に輸入通関する際は「IMW」(移出輸入)となります。


ジェトロ「保税工場に貨物を蔵置する際の期間と移入承認」:移入承認の発生条件と蔵置期間の延長に関する実務的な解説が掲載されています。


蔵入承認と移入承認の違いを表で整理:申請タイミングと対象地域

蔵入承認と移入承認を正確に区別するには、以下の4つの軸で整理するのが有効です。①対象となる保税地域、②申請が必要になるタイミング、③蔵置期間の起算方法、④通関時のNACCS業務コードです。














































項目 蔵入承認(IS) 移入承認(IM) 総保入承認(IA)
対象保税地域 保税蔵置場 保税工場 総合保税地域
申請が必要な条件 搬入後3カ月を超えて置く場合 3カ月超の蔵置 または 3カ月以内でも保税作業開始時 3カ月超の蔵置・加工・製造・展示等に使用する場合
蔵置期間の起算 最初に置くことが承認された日から通算2年 各移入承認を受けた日から2年(原則) 移入承認を受けた日から2年
NACCSコード(承認) IS IM IA
NACCSコード(輸入通関) ISW(蔵出輸入) IMW(移出輸入) IAC(総保出輸入)
関税法の根拠条文 第43条の3 第56条・第57条 第62条の9


こうして並べると、移入承認だけが「保税作業の開始」という独自の申請トリガーを持っていることがわかります。これが実務で混乱しやすいポイントです。


総合保税地域への総保入承認(IA)は、保税蔵置場・保税工場・保税展示場の機能を1つの場所に集約した地域を対象にしたものです。3カ月超の蔵置だけでなく、加工・製造・展示などに使用する場合も承認が必要になります。総合保税地域が複数の機能を持つ分、申請のトリガーも多い点が特徴です。


実務では、貨物がどの保税地域に置かれているかを確認してから承認種類を判断することが基本です。


蔵入承認が認められない21の他法令:事前クリアが必須の落とし穴

蔵入承認には重要な制限があります。他法令の確認に時間がかかっているから蔵入承認で時間を稼ごう、という考え方が通用しないケースがあります。


関税法基本通達(第4章・令第36条の3第8項)では、蔵入承認の申請時点で他法令の要件をクリアしていないと承認されない法令が明示されています。該当する主な法令は以下のとおりです。


- 大麻取締法
- 覚醒剤取締法
- 麻薬及び向精神薬取締法
- 毒物及び劇物取締法
- 火薬類取締法
- 高圧ガス保安法
- 銃砲刀剣類所持等取締法
- 植物防疫法・狂犬病予防法・家畜伝染病予防法
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
- 外国為替及び外国貿易法外為法
- その他、アルコール事業法・石油備蓄法など合計21法令


これら21の法令に該当する貨物については、蔵入承認申請の時点で許可・承認・証明等がそろっていないと、蔵入承認自体が拒否されます。痛いですね。


たとえば、医薬品・医療機器(薬機法対象品目)は、現地出荷前に薬機法上の手続き状況を確認しておかなければ、3カ月を過ぎたタイミングで蔵入承認を受けようとしても認められない事態になります。輸入側のスケジュール管理が遅れた場合、保税蔵置場での超過蔵置が「収容」の対象になるリスクがあります。


逆に言えば、食品衛生法については事前クリアの義務化対象ではないため、食品衛生法の確認に時間がかかっている場合に限り、蔵入承認によって蔵置期間を確保しながら並行して対応することが可能です。これは使えそうです。


現地の船積み前に、輸入する貨物に関係する他法令を必ずリストアップし、どの法令が事前クリア必須かを確認しておくことが実務上の鉄則です。通関士として荷主に的確にアドバイスするためには、21法令のリストを日常的に参照できる状態にしておくことが求められます。関税法基本通達の該当箇所(第4章・令36条の3第8項)を手元のリファレンスとして整備しておくと安心です。


税関「関税法基本通達 第4章 保税地域」:蔵入承認申請時に事前クリアが必要な他法令の一覧(令第36条の3第8項)が記載されています。


蔵入承認・移入承認の蔵置期間が「通算」か「リセット」かを正確に判断する方法

実務でよく起きる混乱として、複数の保税地域をまたがって貨物を移送した場合の蔵置期間の計算があります。この点を正確に押さえておくことが、通関業務ミスの防止につながります。


まず保税蔵置場の蔵入承認の場合、関税法第43条の2に「最初に保税蔵置場に置くことが承認された日から2年」と規定されています。これは複数の保税蔵置場を経由しても通算されます。つまり、A蔵置場で蔵入承認を受けてから1年後にB蔵置場に移送した場合、B蔵置場で使える残り期間は1年しかありません。2年ではありません。これが原則です。


一方、保税工場の移入承認は「各移入承認を受けた日から2年」が原則です。A工場での移入承認から6カ月経過後にB工場へ貨物を移送し、B工場で改めて移入承認を受けた場合、B工場ではその承認日から新たに2年のカウントが始まります。


ただし、先ほど触れた「同一法人が管轄を異にする複数の保税工場で一貫した保税作業を行う場合(関税法基本通達57-1(2)・61の4-6)」には、移入承認の手続きが省略され、第1次保税作業の移入承認日から通算して2年というルールが適用されます。


整理するとこうなります。


| 状況 | 蔵置期間の計算 |
|------|--------------|
| 保税蔵置場(複数経由) | 最初の蔵入承認日から通算2年 |
| 保税工場(各工場で移入承認) | 各移入承認日から2年(リセット) |
| 保税工場(同一法人・一貫作業・手続省略) | 最初の移入承認日から通算2年 |


この違いを把握していないと、保税工場への移入承認後に「まだ2年ある」と思っていたのに実は通算カウントが適用されてしまい、気づかないうちに蔵置期間超過になるリスクがあります。貨物ごとに「どの根拠で蔵置期間を計算しているか」を台帳に明記しておくことが、亡失・収容リスクを防ぐ実務上の重要な対策です。


各承認の起算日はNACCSの管理資料(IWSなど)で確認できます。定期的に貨物在庫状況照会を行い、蔵置期間の残日数を把握する運用体制を整えておくことを強くおすすめします。


NACCS「蔵入承認(IS)された貨物情報での移入承認(IM)申請の可能化」:NACCSシステム上でISからIMへの申請連携に関する仕様変更の内容が確認できます。