関税法基本通達40-1の取扱い区分と実務上の注意点

関税法基本通達40-1が定める保税地域での貨物取扱い区分を正確に把握していますか?許可不要の行為と要許可行為の境界線を誤ると、保税蔵置場の搬入停止処分につながる危険があります。実務担当者が押さえるべきポイントを解説します。

関税法基本通達40-1の取扱い区分と実務の落とし穴

「内容点検は許可なしで大丈夫」と思って進めた作業が、許可違反で搬入停止処分になることがあります。


関税法基本通達40-1 3つのポイント
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第1項:許可不要の取扱い

内容点検・改装・仕分け・その他の手入れの4種類。倉主による記帳のみで実施できる。NACCSではSHN・SHSコードで登録する。

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第2項:税関長の許可が必要な行為

見本の展示・簡単な加工・これらに類する行為。事前にNACCSのCHDコードで申請し、許可を受けてから実施しなければならない。

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違反時のペナルティ

無許可で第2項行為を行うと処分点数が加算され、100点以上で保税蔵置場の許可取消しになる。役員が関与すると30点が自動加算される。


関税法基本通達40-1の全体像と保税地域における位置づけ

関税法基本通達40-1は、保税地域に蔵置されている外国貨物(および輸出しようとする貨物)に対して行うことができる取扱い行為の範囲を具体的に規定したものです。根拠条文は関税法第40条であり、指定保税地域に関する規定として設けられていますが、関税法第49条の準用規定によって保税蔵置場にも同様に適用されます。通関業従事者の日常業務において欠かせない条文です。


まず大前提として、保税地域の意義を押さえておく必要があります。関税法第30条は「外国貨物は、保税地域以外の場所に置くことができない」と規定しており、外国貨物の管理場所を保税地域に限定しています。これは密輸防止や適正な関税徴収の確保を目的とした規制です。保税地域の中でも実務上の取扱件数が最も多いのはコンテナヤード(CY)に代表される指定保税地域であり、次いで保税蔵置場が多くなっています。


基本通達40-1が特に重要なのは、「どの作業が事前許可不要か」「どの作業に税関長の許可が必要か」という2層構造を明確に示している点にあります。この区別を誤ると、現場での日常的な作業が法令違反になりかねません。


保税地域の管理は現在、平成9年に完全移行した「自主管理方式」が採用されています。かつては貨物の搬出入のたびに税関へ届け出て税関職員が立ち会う直接管理方式でしたが、現在は倉主が自らの責任で記帳・管理を行い、税関はその記帳内容を検査する形に変わっています。自主管理方式だからこそ、基本通達40-1の要件を正確に理解しておくことが現場担当者に強く求められます。


また、保税地域を管理する倉主等は、社内管理規定(コンプライアンス・プログラム=CP)を整備し、税関に提出することが義務付けられています。このCPに規定された貨物取扱い手順が実際の基本通達40-1の運用に対応していなければ、担当者が入れ替わった際に知識が引き継がれず、違反につながるリスクが高まります。これは基本ですが、見落としやすいポイントです。


以下の参考ページでは、保税制度全般の役割と自主管理方式の歴史的経緯が詳しく解説されています。


税関|保税制度について(PDF)


関税法基本通達40-1(第1項):許可不要の4つの取扱いと記帳の実務

基本通達40-1の第1項で定める許可不要の取扱いは、①内容点検、②改装、③仕分け、④その他の手入れの4種類です。これらは「倉主の記帳で足りる」とされていますが、記帳なしで行えるという意味ではありません。記帳は必須です。


① 内容点検とは、貨物を開披して内容品の品質または数量を点検すること、あるいはその機能について簡単な点検を行うことを指します。輸入到着後に損傷・不足がないかを確認するための作業がここに含まれます。NACCSでの業務コードは「SHN(貨物取扱登録・内容点検)」です。倉主も登録できるため、通関業者と連携して対応することが実務上のポイントになります。


② 改装は、包装を改める行為全般を指し、一部積戻しのための分割包装なども含まれます。荷主の指示でラベルを貼り替えたり、包材を変更したりする作業がこれにあたります。NACCSコードは「SHS(貨物取扱登録・改装・仕分け)」です。


③ 仕分けは、貨物を記号・番号別、荷主・仕向地別、または名称等級別などで分類・選別する行為です。大口コンテナを個別の荷主向けに振り分けるデバン作業がその典型例です。


④ その他の手入れには、貨物の記号・番号の刷換え、さびみがき、油さし、虫ぼし、風入れ、洗浄、ワックスがけ、原産地虚偽表示の抹消・訂正作業などが含まれます。原産地表示の是正作業がここに含まれる点は、実務担当者があまり認識していないケースがあります。これは第1項の許可不要行為です。


これら第1項の取扱いを行った場合、関税法施行令第29条の2第1項第2号に基づいて帳簿に記帳しなければなりません。記帳事項は「当該貨物の記号、番号、品名及び数量、当該行為の種類、内容及び年月日並びに当該行為により貨物の記号、番号または数量に変更があったときはその変更の内容」です。帳簿の保存期間は、記載すべき事項が生じた日から2年間(保税業務検査を受けた場合は、当該検査を受けた日まで)です。


記帳を怠ることは基本通達48-1別表1の「2.②」に該当する非違行為であり、件数に応じた処分点数が加算されます。1件あたり2点の基礎点数が設定されており、10件を超えるごとに加算されます。たとえば神戸税関の事例では、45件の見本持出し未記帳で発覚した案件があり、顧客管理責任者が兼務していたことから加算点数10点が上乗せされました。この事例は、担当者の引継ぎが不十分だったことが根本原因です。


つまり第1項行為は許可不要ですが、記帳義務は絶対です。


ジェトロ|保税蔵置場の管理方法と記帳義務(記帳すべき事項一覧)


関税法基本通達40-1(第2項):税関長の許可が必要な行為と申請の実務

基本通達40-1の第2項が規定する行為は、①見本の展示、②簡単な加工、③その他これらに類する行為の3種類です。これらは事前に税関長の許可を受けなければ実施できません。許可なしで行うと、関税法第40条第2項違反として処分の対象になります。


① 見本の展示とは、注文の取集め等のために蔵置貨物の一部を一般の閲覧に供することです。バイヤーに対して保税蔵置場内でサンプルを見せるケースがこれにあたります。個別に識別・管理された蔵置貨物を閲覧に供する行為も「これらに類する行為」として同様に許可が必要です。


② 簡単な加工とは、単純な工程によるもので、加工後において加工前の状態が判明できる程度のものを指します。具体例としては食料品等の加熱処理がありますが、専ら関税の引下げや非自由化品目の自由化を目的とする場合は認められません。簡単な加工として認められる範囲は、食品の小分け・加熱、金属くず・繊維製品のくずにおいてくずとして確認するための加工、糖蜜の変性(不可飲食処理)などに限定されます。


③ その他これらに類する行為の代表例は、輸出しようとする貨物の破損部分または不良品をこれと同種の完全品と交換することです。この不良品交換は第2項の「類する行為」に該当するため、許可が必要です。第1項の改装と混同されやすいので注意が必要です。


NACCSでの申請業務コードは「CHD(貨物取扱許可申請)」です。申請書の「取扱貨物の明細」欄には、加工に使用する外国貨物または内国貨物および加工後の品名・数量を記載する必要があります。税関に事前相談してから申請することを強く推奨します。


無許可で第2項の行為を行った場合、基本通達48-1別表1の「1.⑤」に該当する非違行為となります。この区分の基礎点数は「1.」の区分に属し、件数と性質に応じて点数が計算されます。さらに、被許可者(法人の場合はその役員)が直接関与している場合は30点が加算され、代理人・主要従業者が関与している場合は10点が加算されます。


100点以上で保税蔵置場の許可取消しが原則適用されます。これは業務の継続そのものが不可能になる最大の処分です。一方、違反を自主的に申し出た場合は算出点数の2分の1を減算できる規定があります(税関が具体的な指摘をした後の申し出を除く)。早期発見・早期申出がいかに重要かが分かります。


神戸税関|保税蔵置場等非違事例(実際の処分事例を収録)


関税法基本通達40-1に関連する「簡単な加工」の境界線と見落とされやすい実務上のグレーゾーン

通関業従事者が現場でよく迷うのが、「この作業は第1項の手入れか、それとも第2項の加工か」という判断です。境界線を誤ると、日常的に繰り返していた作業が全件無許可違反として処分の対象になります。これは知らないと非常に大きなリスクです。


第1項の「その他の手入れ」と第2項の「簡単な加工」の違いは、大きく言えば「現状維持を目的とした行為か、それとも形態・品質に変化を加える行為か」という点にあります。さびみがきや油さし、洗浄・ワックスがけは「現状維持」のための手入れとして第1項に該当します。一方、食品の加熱処理のように品質に変化を与える行為は「加工」として第2項に該当し、許可が必要です。


たとえば、冷凍食品を保税蔵置場内で解凍した場合、それが「食料品等の加熱」に類する変化を与えているとみなされれば第2項の簡単な加工に該当します。これは通関業従事者の感覚からすると意外に感じられるポイントです。同様に、ラベルを貼り替える行為も、単なる記号・番号の刷換えなら第1項ですが、内容や原産地に関わる表示を新たに付する場合は判断が変わってきます。


実務でのグレーゾーンが生じやすい事例として、以下のようなケースがあります。


作業内容 区分 理由
包装の開封・再梱包(積戻しのための分割) 第1項(改装) 形態変更なし・包装を改める行為
仕向地ラベルの貼付 第1項(記号刷換え等) 現状維持のための手入れ
食料品の加熱処理(品質変化あり) 第2項(簡単な加工) 加工前後の状態が判明できる程度の加工
輸出貨物の不良品交換 第2項(類する行為) 物品を入れ替える行為のため許可必要
原産地虚偽表示の抹消・訂正 第1項(その他の手入れ) 基本通達で第1項に明示


このグレーゾーンへの対処として最も有効なのは、作業前に管轄税関の保税担当部門へ事前相談することです。税関は「簡単な加工等は事前に税関へ相談」と明示的に呼び掛けています。事前相談の結果を記録に残しておくことで、後日問題が生じた場合の対応がスムーズになります。


また、自社の社内管理規定(CP)に取扱い作業の判断フローを明記しておくことも重要です。「この作業は第1項か第2項か」を担当者が自己判断するだけでなく、疑義があれば上長や税関に確認するというルートをCP上に規定しておくと、人事異動があっても知識が継続されます。


なお、保税地域外での作業には許可が別途必要です。神戸税関の事例では、倉庫が満庫のためやむなく許可されていない隣接スペースで検品作業を行い、保税巡回中の税関職員に発見されたケースがありました。「すぐ戻すから大丈夫」という安易な判断が23日間の搬入停止処分に直結した実例です。第1項行為であっても、保税地域の許可エリア外での実施は別問題になります。


税関|関税法基本通達 第4章 保税地域(原文PDF・40-1条文本文)


関税法基本通達40-1違反が引き起こす処分点数制度と保税蔵置場への影響

関税法基本通達48-1は、保税蔵置場に対する処分基準を点数制で規定しています。通関業従事者はこの処分点数の仕組みを正確に理解することで、日常業務のリスク管理に活かすことができます。


処分点数の計算は、別表1の非違の種類と件数による「基礎点数」に、関与者の立場・再犯状況による「加算点数」を加え、自主申出や再発防止策による「減算」を反映して最終点数を算出します。


主な基礎点数は以下のとおりです。


  • ❶ 禁止行為・無許可行為(無許可での簡単な加工・見本展示など):1件で3点(10件ごとに3点加算、上限なし)
  • ❷ 記帳義務違反(記帳漏れ・虚偽記帳):1件で2点(10件ごとに2点加算、合計上限60点)
  • ❸ 故意に非違を行った場合:10点を加算(隠蔽目的・関税ほ脱目的の場合は20点)
  • ❹ 役員が直接関与:30点を加算
  • ❺ 主要な従業者(顧客管理責任者など)が関与:10点を加算


処分の決定基準はシンプルです。10点以下は原則として処分なし、10点超から100点未満は超過1点につき1日の搬入停止処分、100点以上は原則として許可取消しとなります。


実際の事例で見てみましょう。ある保税蔵置場で、役員(代表取締役)が直接指示して保税地域外に外国貨物を持ち出し検品した事案では、外国貨物を置く場所の制限違反(1件)の基礎点数に、役員関与の加算30点が加わり、合計で23日間の搬入停止処分となりました。1件の違反でも役員が絡むと一気に処分が重くなります。


一方で、自主申出の減算効果は大きいです。搬入停止処分中でなく、かつ税関からの具体的指摘前に申し出た場合は、算出点数の2分の1を減算できます。さらに直ちに再発防止策を講じた場合は最大10点の追加減算も認められます。神戸税関の45件の見本持出し未記帳案件でも、自主申出と再発防止措置が評価されて搬入停止を免れています。


つまり、自主的な発見・申告が処分を大きく左右します。


定期的な社内保税業務検査(内部監査)を実施して未記帳や手続き漏れを自発的に発見・修正する体制は、違反発生防止だけでなく、万が一の処分軽減にも直結します。日本関税協会が提供する保税業務研修(新任者向け・管理者向け)への定期参加も、知識の維持・更新に有効です。


日本関税協会|関税法基本通達 保税蔵置場に対する処分の基準(48-1・別表付き)


通関業従事者が見落としがちな関税法基本通達40-1の独自視点:NACCSコード登録漏れが記帳義務違反になる構造

実務の現場でよく起きるが、あまり注目されていない問題があります。それは「NACCSに登録したつもり」による記帳漏れです。基本通達40-1で第1項の取扱いを行った場合、その事実を帳簿に記帳することが法定義務です。現在、ほとんどの保税蔵置場ではNACCS民間管理資料を帳簿として代用しています。ここに構造的なリスクが潜んでいます。


NACCSと自社システムを併用している蔵置場では、自社システムへの入力とNACCSへの登録が別作業となります。自社システムに入力済みだから問題ないと思い込み、NACCS登録を失念するケースが繰り返し発生しています。これが関税法第34条の2違反(記帳義務違反)に直結します。


また、NACCS民間管理資料の取得には「配信日を含む7日間」という保存期限があり、その期間内に取得できなかった場合は「再取出し業務」(62日間)を使う必要があります。この仕組みを知らないまま「翌週まとめて取得できる」と誤認して記帳漏れになった事例も現実に存在します。


実務での対策として以下が有効です。


  • 📌 SHN(内容点検登録)・SHS(改装仕分け登録)は作業当日中に必ずNACCSで完了させる社内ルールを設ける
  • 📌 NACCS民間管理資料の取得日を固定し、取得済みかどうかを別途チェックリストで確認する
  • 📌 引継ぎの際は必ずNACCS業務コードと記帳タイミングを明示したマニュアルを渡す
  • 📌 週1回程度の在庫確認照会(NACCSで在庫情報を取得・突合)を実施して、搬出入記帳の漏れを早期発見する


さらに見落とされやすいのが「その他の手入れ」の記帳です。さびみがきや油さしは日常的な現場作業であるため、「保税台帳に記帳が必要な行為だ」という意識が現場作業員レベルに届いていないことがあります。コンプライアンス・プログラム(CP)に「その他の手入れを行った場合のNACCS登録ルール」を明確に記載し、現場作業員向けの教育訓練に織り込むことが必要です。


実は、貨物の取扱いに関するNACCS業務コードは複数あり、それぞれ対応する作業が異なります。SHNは内容点検・その他の手入れ、SHSは改装・仕分け、CHUは仕合せ(異なる貨物の一体管理)、CHDは第2項の取扱許可申請です。業務コードの使い分けを誤ると、記帳内容が実際の作業と乖離し、保税業務検査で指摘を受けることになります。


よりスムーズな保税管理のために、最新のNACCS業務仕様書や税関・NACCSセンターが提供する研修資料を定期的に確認することをおすすめします。


ジェトロ|保税蔵置場で許可される作業(取扱い区分の対比が分かりやすく整理されている)