返却予定でも見本持出許可は必須です。
保税地域にある外国貨物を見本として持ち出す場合、税関長の許可を受ける必要があります。この制度は商取引の利便性を図る観点から設けられたものですが、取締り上および課税上問題がなく、かつ少量のものに限定されています。
許可申請には「見本持出許可申請書」を税関長に提出します。申請書には持出期間開始年月日、終了年月日、持出先、個数、数量、品名、価格などを記載する必要があります。NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)を利用する場合は「見本持出許可申請」業務(業務コード:MHA)で申請を行います。
税関ホームページの見本持出許可申請書様式
許可基準は明確な数量の上限が定められているわけではありません。通達では「課税上問題がなく、かつ、少量のものに限られる」という表現にとどまっています。
つまり基本です。
参考)保税地域での見本一時持出しの搬出記帳を廃してはどうか GTC…
見本持出の許可を受けた貨物を保税蔵置場等から持ち出した場合、保税台帳への記帳が義務付けられています。記帳すべき事項は、持ち出した貨物の記号・番号・品名・数量・持出許可期間・持出先・持出年月日です。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/c3687cc3ee098daebbfeead5faabd0052ab2eef3
NACCSでは「見本持出確認登録」業務(MHO:海上、MMO:航空)により持出年月日を登録すると、システム上、保税台帳に記帳したこととなります。
ただし重要な期限があります。
許可された持出期間終了年月日からMHOは7日以内、MMOは2日以内に入力が必要です。
この記帳義務は関税法施行令第29条の2に定められています。記帳を怠った場合は関税法基本通達48-1別表により処分点数2点が課されます。繁忙期に「事後にまとめて記帳するつもりが忘れた」というケースや、貨物管理担当者とNACCS担当者の連絡ミスによる記帳失念が非違の典型例です。
記帳漏れ防止には有効です。チェックリストを活用したダブルチェック体制の構築が推奨されています。また、貨物取扱一覧データを活用した見本持出登録確認や、ICG/IAW業務でMHO/MMO業務の実施状況を確認する方法も効果的です。
許可を受けずに外国貨物を見本として持ち出した場合、処分点数3点が課されます。これは記帳漏れの2点より重いペナルティです。
典型的な非違事例として、保税蔵置場に蔵置されている外国貨物について、見本持出の許可を受けずに動作確認のため一部を搬出したケースがあります。このケースでは持ち出し分が返却された後、残りの外国貨物と合わせて通関手続きが行われましたが、無許可持出しとして非違に該当しました。
無許可持出しが発生する原因には、「消費されずに返却される貨物だから許可は不要」という誤認や、「少量なら許可は不要」という誤解があります。しかし返却予定であっても、少量であっても、見本として持ち出す場合は必ず税関長の許可が必要です。
関税法第32条に違反して許可を受けずに外国貨物を見本として持ち出した者は、関税法第112条により罰則の対象となります。
つまり違反です。
行政処分にとどまらず刑事罰の対象にもなりうる重大な違反行為であることを認識する必要があります。
参考)e-Gov 法令検索
見本として持ち出した外国貨物を成分分析等のために使用・消費した場合でも、特別な扱いが認められています。一時持出された外国貨物がその成分の分析等のために使用、消費されて元の保税地域に持ち帰ることができない場合、持ち帰ったものとみなして残りの貨物と一括して輸入の許可を受けることができます。
参考)302 Found
具体的には、荷主が保税蔵置場に蔵置されている外国貨物について成分分析のための見本持出の許可を受け、持ち出し分のすべてを成分分析にて消費した場合、残りの外国貨物に持ち出し分の数量を足して通関手続きを行い、国内に引取ることができます。
ただし、見本が少量かつ低価値である等により、輸入申告者が数量(価格)の修正等を望まないときは、元の数量のままで申告し、許可を受けても問題ないとされています。この柔軟な運用により、通関業務の実務的な負担が軽減されています。どういうことでしょうか?
つまり、消費した見本分を含めて申告するか、消費分を除外して申告するか、どちらも選択可能ということです。輸入者の判断で申告方法を決められる点が実務上のメリットです。
見本持出許可申請では、持出期間開始年月日と終了年月日を明記する必要があります。この期間設定は申請時に慎重に検討すべき事項です。
参考)https://bbs.naccscenter.com/naccs/dfw/web/data/customs/jimu/pdf/tetsu/air/kamotsu/tak_020_080_000.pdf
期間終了後の記帳入力期限にも注意が必要です。許可された持出期間終了年月日からMHO(海上)は7日以内、MMO(航空)は2日以内に見本持出確認登録業務による入力が必要です。この期限を過ぎると見本持出情報がシステムから削除されてしまいます。
返却予定の貨物であっても見本持出許可は必須です。「返却するから許可不要」という誤認が非違につながる典型例として税関の保税Tipsでも紹介されています。動作確認後に返却する場合でも、少量の場合でも、例外なく許可申請が必要です。
包括許可を受けている場合、1回当たりの持出限度数量が指定されています。この限度数量を超える貨物を見本として持ち出そうとする場合には、別途手続きが必要になります。
つまり例外です。
参考)https://www.customs.go.jp/kaisei/zeikantsutatsu/kihon/TU-S47k0100-s04-01~03.pdf
見本持出しに関する非違を防止するには、組織的なチェック体制の構築が不可欠です。税関が推奨する対策として、チェックリストを活用したダブルチェック体制の構築があります。
貨物取扱一覧データを活用した見本持出登録確認も効果的な方法です。これにより持出許可を受けた貨物について、確実に記帳処理が行われたかを確認できます。ICG/IAW業務を通じてMHO/MMO業務の実施状況を確認することも可能です。
外部研修の受講や社内研修の実施も有効な対策として挙げられています。通関業務は法令改正や実務運用の変更が頻繁にあるため、継続的な教育が重要です。
いいことですね。
実務上、貨物管理担当者と記帳担当者(NACCS担当者)の連絡ミスにより持ち出しの事実が共有されず、記帳が漏れるケースが散見されます。部署間の情報共有フローを明確化し、持出許可から記帳までのプロセスを可視化することが、非違防止の鍵となります。
税関の保税Tips(見本持出に係る非違事例と対策)
通関業務従事者にとって、見本持出しは頻繁に発生する手続きだからこそ、基本的なルールの徹底と組織的なチェック体制が不可欠です。無許可持出しの処分点数3点、記帳漏れの2点というペナルティは決して軽くありません。日常業務の中で確実に許可申請と記帳を行う習慣を定着させることが、コンプライアンス維持の第一歩です。