展示会後の再輸出を忘れると関税全額を即座に徴収されます
保税展示場の一覧は、全国の税関が公式ウェブサイトで公開しています。財務省税関のサイトでは、全国共通の保税展示場リストがExcel形式でダウンロード可能です。各地域別に確認したい場合は、函館税関・東京税関・横浜税関・名古屋税関・大阪税関・神戸税関・門司税関・長崎税関の管内一覧を個別に参照できます。
参考)https://www.customs.go.jp/hozei/hozeiichiran.htm
東京税関の管内では、保税展示場の一覧がPDF形式で提供されており、サイズは約43KBです。大阪税関の管内でも同様に保税展示場リストが公開されています。これらの一覧には、許可を受けた施設の名称・所在地・許可期間などの基本情報が記載されています。
参考)https://www.customs.go.jp/tokyo/hozei/ichiran.htm
保税展示場の多くは展示会ごとに都度許可を取得する形式です。例えば東京モーターショー(現JAPAN MOBILITY SHOW)では、開催の都度「第46回東京モーターショー2019 保税展示場」として一般社団法人日本自動車工業会が許可を受けています。大阪・関西万博も会場全体が保税展示場として大阪税関から許可を受けました。
参考)保税地域/保税展示場 « 豊橋商工会議所 海外…
唯一の例外が愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo)です。この施設は2019年8月に開業した日本初かつ国内唯一の常設保税展示場です。中部国際空港島内に位置し、展示面積は最大60,000平方メートルを誇ります。常設型のため、主催者は展示会ごとに保税展示場の許可申請をする必要がなく、簡易な手続きで外国製品を展示できます。
財務省税関「保税地域一覧表・承認工場一覧表」
全国の保税展示場リストをExcel形式でダウンロードできる公式ページです。
保税展示場の許可は税関長が行い、許可期間は「税関長が必要と認める期間」とされています。つまり展示会やイベントの開催期間に応じて個別に決定されるということですね。一般的な保税蔵置場が2年間の許可期間(延長可能)であるのに対し、保税展示場は柔軟な期間設定が特徴です。
参考)https://www.customs.go.jp/hozei/pdf-data/hozeishinsei.pdf
許可申請の流れは、まず税関への事前相談から始まります。保税蔵置場の場合は申出から許可まで数ヶ月〜1年程度かかるのが一般的ですが、保税展示場の場合は展示会・博覧会などの開催スケジュールに合わせた審査が行われます。申請には施設の構造・棟数・延べ面積などの詳細情報が必要です。
参考)https://www.customs.go.jp/tokyo/content/kokokur1-288.pdf
許可申請にかかる手数料は施設の面積によって異なります。例えば2,500平方メートル未満の場合は月額6,800円、2,500平方メートル以上5,000平方メートル未満は月額9,500円です。大規模な展示場では40,000平方メートル以上70,000平方メートル未満が月額42,100円、70,000平方メートル以上が月額54,800円となります。
参考)https://www.customs.go.jp/shiryo/tesuuryo.htm
許可後は関税法に基づいた運営管理が求められます。承認を受けずに外国貨物を保税展示場に入れることは違反行為です。また、保税展示場で販売用貨物の蔵置場所の制限に反して外国貨物を蔵置することも禁止されています。
これらの違反は処分の対象になります。
参考)https://www.kanzei.or.jp/sites/default/files/images/hozei/hozei_syobun.pdf
保税展示場は外国貨物を展示する会場として税関長が許可した場所です。国際的な規模で行われる博覧会、公的機関が開催する見本市や展示会などの運営を円滑にするため、外国貨物に関税などを課さないまま簡易な手続きで展示・使用できます。
参考)保税地域の目的と利用方法:日本
ただし展示できる貨物には制限があります。有償で観覧または使用に供される貨物は保税展示場に入れることはできますが、展示・使用はできないとされています。これらは「蔵置、積卸し、運搬、内容の点検及び改装、仕分その他の手入れ」のみが認められます。つまり有料イベントの展示物は基本的に使用できません。
参考)保税展示場では万博以外に何ができるか
税関としては、専ら外国貨物の展示を目的とする施設に対しては保税展示場を適用し、保税蔵置場の許可は行わない方針です。これは保税制度の本来の趣旨である「展示」機能を明確にするためですね。
保税展示場内で販売される貨物や消費される貨物は展示等申告の対象ですが、そのままでは保税展示場内で展示・使用ができません。この点は展示会主催者や出展者が事前に理解しておく必要があります。展示会で実演や体験を伴う場合は、有償性の有無を慎重に確認することが重要です。
保税展示場に入れられた外国貨物を一時的に場外で使用する必要がある場合があります。例えば展示会場外でのデモンストレーションやプレゼンテーションなどです。このような場合、博覧会等の運営のため必要があり、取締り上支障がないと認められるときは、税関長の許可を受けて場外使用が可能です。
参考)外国貨物の保税展示場外使用について
許可を受けると、税関長が指定した期間及び場所において保税展示場外での外国貨物の使用が認められます。指定場所に出されている外国貨物は、指定期間の満了まで元の保税展示場にあるものとみなされます。このため外国貨物の亡失責任、記帳義務などの義務は継続します。
注意すべきは指定期間の遵守です。指定された期間が経過した時点で、その指定場所に許可を受けた外国貨物があると、保税展示場の許可を受けた者から直ちに関税を徴収されます。期限を1日でも過ぎれば即座に課税対象になるということです。
この制度を活用する場合は、場外使用の期間と場所を明確に管理する体制が必須です。展示会関係者全員が返却期限を共有し、確実に元の保税展示場に戻す手順を確立しておくべきですね。GPS追跡や管理台帳の活用も検討に値します。
展示会場が保税展示場の許可を受けていない場合でも、外国貨物を免税で展示する方法があります。
1つ目は再輸出免税制度の活用です。
関税定率法第17条第1項第9号に基づき、1年以内に再輸出する条件で博覧会・展覧会・共進会・品評会などに出品する物品は免税扱いになります。
2つ目の選択肢がATAカルネの活用です。出展する外国業者がATAカルネを取得していれば、関税納付や担保の差し入れなしで出展物を免税で一時的に日本国内に輸入できます。ATAカルネは物品の一時輸入のための通関に関するATA条約に基づく通関手帳です。
世界約80カ国以上で導入されています。
参考)ATAカルネとは?展示会・一時輸出入で役立つ国際通関制度のす…
ATAカルネの使用には厳格なルールがあります。販売・譲渡する物品、消耗品や食品サンプルなど使用後に残らないもの、修理・加工を目的とした物品には使用できません。また全品の持ち帰り義務があり、紛失・盗難・破損等により現地で廃棄・譲渡する場合は課税対象と判断されることがあります。
再輸入期限は通常1年以内で、期限を超えるとカルネが無効となり課税対象になります。再輸出前には現地の税関で出国記録(ストランス通関)を忘れず取得する必要があります。展示会の規模や性質に応じて、保税展示場・再輸出免税・ATAカルネの中から最適な制度を選択することが大切です。
愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo)は2019年8月に中部国際空港島内に開業しました。国内唯一の常設保税展示場として、展示会ごとの許可申請が不要という圧倒的な利便性を持ちます。主催者は簡単な手続きで外国製品を展示する展示会を開催でき、出展者は輸入通関なしで関税などが課されないまま出展できます。
参考)愛知県国際展示場 - AichiSkyExpo(愛知県国際展…
東京ビッグサイトや幕張メッセは、展示会ごとに課税免除を申請する必要があり、その手続きの煩雑さが課題でした。Aichi Sky Expoでは常設型のため、この手間が完全に省略されます。さらに料金基準も他の主要展示場の6割程度に抑えられており、主催者の利便性を高めています。
参考)空港島に計画中の「愛知県国際展示場」(6万平方メートル)が着…
施設規模も国内最大級です。展示面積は60,000平方メートルで、各ホール10,000平方メートルの広さがあります。ホールBからFは連結可能で、最大50,000平方メートルの総展示面積を演出できます。天井高20メートルの無柱空間や約36,000平方メートルの屋外多目的利用地も備えています。
参考)国際展示場室 - 愛知県
国際空港直結という立地も大きな強みです。海外からの出展者や来場者が航空機から会場まで短時間で移動できます。展示会・見本市だけでなく、大規模コンサート・フェス・スポーツ・eスポーツ大会・式典・学会・国際会議など幅広いイベントに対応可能です。通関業務従事者にとっては、常設保税展示場を活用した効率的な国際展示会運営の提案が新たなビジネス機会になるでしょう。
参考)「Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)」へのアク…