実は簡易申告制度という名称は2021年から使われていません。
平成13年(2001年)3月から実施されていた「簡易申告制度」は、令和3年(2021年)に「特例輸入申告制度」へ正式に名称変更されました。この変更は制度の実態を正確に反映するためのものです。
参考)https://www.customs.go.jp/news/news/210302.htm
制度導入当初は、輸入貨物を国内へ引き取った後に納税申告を行うことで通関手続全体の迅速化を目指していました。しかし平成19年度(2007年度)以降の関税改正により、法令遵守規則の制定が承認要件に追加されるなど、大きな変化がありました。
現在では単なる手続きの簡素化ではなく、貨物のセキュリティ管理と法令遵守の体制が整備された輸入者に対するAEO制度として定着しています。
つまり、優良な事業者を認定する制度ですね。
世界税関機構(WCO)が2006年の総会でAEO(Authorized Economic Operator)制度のガイドラインを採択したことを受け、日本も国際基準に合わせた制度設計を行いました。これにより、国際的な相互承認も可能になっています。
特例輸入者として承認されるには、厳格な要件をクリアする必要があります。
最も重要なのが法令遵守の履歴です。
過去3年以内に関税法違反で重加算税を課されていないことが絶対条件となっています。関税や輸入品に係る消費税・地方消費税について重加算税を課された場合、その日から3年間は承認を受けられません。
重いペナルティですね。
同様に、過去3年以内に関税や消費税を滞納した履歴がある場合も承認されません。刑事罰についても厳しい基準があり、関税法その他の国税に関する法律違反で刑に処された場合、刑の執行終了から3年経過していることが求められます。
さらに法令遵守規則の制定が必須です。この規則には以下の事項を明記する必要があります:
NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)を使用して特例申告を行える能力も必要です。暴力団員等との関係がないことも要件に含まれます。
申請には「特例輸入者等承認・認定申請書(C-9000号)」を関係書類とともに税関に提出し、税関長の承認を受ける必要があります。
特例輸入申告制度の最大の特徴は、輸入申告と納税申告が分離される点です。通常の通関では貨物の引取前に納税申告を完了させる必要がありますが、この制度では納税申告の前に貨物を引き取ることが可能になります。
具体的な流れは以下の通りです。まず特例輸入者は輸入申告(引取申告)を行い、税関の許可を受けて貨物を引き取ります。
この段階では詳細な納税申告は不要です。
その後、輸入の許可を受けた貨物について「特例申告書」を作成します。提出期限は許可の日の属する月の翌月末日までとなっています。つまり月単位でまとめて申告できるということですね。
この仕組みにより、継続的に輸入している貨物について手続きの効率化が図られます。貨物を先に引き取れるため、物流のスピードが大幅に向上します。
ただし、特例申告書を提出期限までに提出する義務や、所要の帳簿を備え付ける義務が発生します。これらの義務を怠ると承認取消のリスクがあるため、管理体制の整備が不可欠です。
参考)https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/oto/otodb/japanese/mondai/subject/200210713.html
特例輸入申告制度の導入により、通関業務に多くのメリットが生まれます。
最大のメリットは貨物引取の迅速化です。
納税申告前に貨物を引き取れるため、輸入貨物の一層迅速かつ円滑な引取が可能になります。物流リードタイムが短縮され、在庫管理の効率も向上します。
申告手続きの簡素化・効率化も大きな利点です。個別の輸入ごとに詳細な納税申告を行う必要がなくなり、月単位でまとめて申告できます。これにより事務作業の負担が大幅に軽減されます。
輸入者のコスト削減効果も期待できます。作業時間の短縮により人件費が削減され、貨物の早期引取により倉庫保管料などの物流コストも削減可能です。
NACCSを活用した電子申告により、ペーパーレス化も進みます。書類の物理的な保管スペースが不要となり、情報の検索や更新が迅速に行えるようになります。
参考)簡易申告制度とは? 輸入貨物の通関手続を効率化するペーパーレ…
税関からの信頼度が高まることも見逃せないメリットです。AEO事業者として認定されることで、他国との相互承認により海外でも優遇措置を受けられる可能性があります。
対象貨物については、継続的に輸入している種類の貨物として税関長の指定を受けたものが該当します。過去1年間に6回以上の輸入実績があることが目安とされています。
特例輸入申告制度にはメリットがある一方で、いくつかの制約やリスクも存在します。まず承認取得までのハードルが高い点が挙げられます。
法令遵守規則の制定には相当な労力が必要です。業務の総括部門、輸入申告部門、納税管理部門、貨物管理部門、監査部門など、複雑な組織体制を文書化しなければなりません。
中小企業にとっては大きな負担になります。
過去の違反履歴が厳しくチェックされる点も注意が必要です。過去3年以内に重加算税を課されていたり、関税・消費税を滞納していたりすると、承認を受けられません。一度承認を取り消されると、その日から3年間は再申請できません。
担保の提供が求められるケースもあります。取引のリスクに応じた金額の担保を税関が個別に判断するため、追加の資金負担が発生する可能性があります。
帳簿の備え付け義務も重要です。特例申告に関する詳細な記録を保管し続ける必要があり、税関の事後調査に対応できる体制を維持しなければなりません。記録管理が不十分だと承認取消のリスクがあります。
継続的な法令遵守が求められるため、社内教育や研修の実施も義務となります。従業員への定期的な教育プログラムを実施し、法令違反を防ぐ体制を構築する必要があります。
特例申告書の提出期限を守れなかった場合、延滞税などのペナルティが発生します。月末の業務が集中する時期に申告漏れが起きやすいため、スケジュール管理が重要です。
参考:税関のAEO制度に関する詳細情報
https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/index.htm
参考:特例輸入者の承認要件の詳細
https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/faq/a1-1-1.htm