書類が整っていても、輸出国の証明書が原本でなければ通関で差し止められて前科がつきます。

象牙の国際取引が全面的に規制されることになったきっかけは、1970〜80年代にかけて激化したアフリカゾウの密猟です。 1980年代には毎年数万頭規模のゾウが密猟によって殺されたとされ、アフリカゾウの個体数は急速に減少しました。 ja.wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B1%A1%E7%89%99)
この危機に対応するため、1989年のワシントン条約(CITES)締約国会議でアフリカゾウが附属書Ⅰに掲載され、1990年以降は商業目的での国際取引が原則禁止となりました。 アジアゾウはより早く、1975年から附属書Ⅰに掲載されています。 meti.go(https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/download/20180523_caution_zougehanbai.pdf)
通関業者にとって重要なのは、「輸入禁止」の根拠が国際条約と国内法の二重構造になっている点です。 国際的にはCITESの附属書Ⅰ規制、国内的には「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」が適用されます。どちらかだけを確認していると申告漏れになるリスクがあります。 meti.go(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/seikatsuseihin/zougebekkou/main_07.html)
参考:象牙取引の国際規制と国内制度について(環境省)
https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/species/trade/system-ivory/
「原則禁止」という言葉のとおり、例外は存在します。 アフリカゾウが附属書Ⅰに掲載される前(1976年2月25日以前)、アジアゾウについては1975年6月30日以前に取得した象牙であれば、一定の条件を満たすことで輸入が可能です。 env.go(https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/conservation/ivory/general/)
ただし「可能」と「簡単」はまったく別の話です。
条件を満たすには次の3ステップが必要となります。 env.go(https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/conservation/ivory/general/)
特に注意が必要なのは年代測定のコストです。 自然環境研究センターへの登録では全形牙1点につき手数料5,000円が必要であり、さらに放射性炭素年代測定を外部機関に委託すると数万円規模の費用が別途かかります。 jwrc.or(https://www.jwrc.or.jp/service/cites/regist/kikan/1.htm)
書類の不備が一つあれば輸入承認は下りません。通関書類の一式確認は必須です。 jwrc.or(https://www.jwrc.or.jp/service/cites/regist/kikan/1.htm)
参考:輸入例外の手続きと必要書類の詳細(自然環境研究センター)
https://www.jwrc.or.jp/service/cites/regist/kikan/1.htm
象牙の無許可輸入は、1つの行為で複数の法律に同時に抵触する可能性があります。 通関業者にとっては特に見落としやすいポイントです。 meti.go(https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/download/20180523_caution_zougehanbai.pdf)
具体的に適用されうる法令は以下のとおりです。
3つが重なると刑事事件として扱われ、前科がつく可能性があります。 罰金刑だけで済まず、事業者登録の取り消しや、取り消し後5年間の再登録不可という行政上のペナルティも加わります。 痛いですね。 env.go(https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/species/trade/system-ivory/)
依頼人から「昔から家にあった象牙だから大丈夫」と言われても、それだけでは通関を通す根拠になりません。 客観的な書類が揃っているかどうかを必ず確認する、これが原則です。 jwrc.or(https://www.jwrc.or.jp/service/cites/regist/kikan/1.htm)
参考:種の保存法改正の内容と象牙取扱事業者向け解説(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/seikatsuseihin/zougebekkou/main_07.html
実務でよく起きる混乱のひとつが、「全形牙」と「象牙製品」の扱いの違いです。 規制の内容が異なるため、現物を見て正確に分類できるかどうかが申告の正確さに直結します。 meti.go(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/seikatsuseihin/zougebekkou/main_07.html)
全形牙(生牙・磨牙・彫牙など、牙の形状を保持しているもの)は、種の保存法のもとで譲渡し等が原則禁止です。 一方、カットピース・印材・象牙製品(加工品)については、個人が個人の財産として処分するケースでは手続きなしでの売買も認められています。 meti.go(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/seikatsuseihin/zougebekkou/main_07.html)
ただし事業として取り扱う場合は別です。 法人・個人事業主を問わず、有償・無償にかかわらず象牙製品を事業として扱う場合は、一般財団法人自然環境研究センターへ「特別国際種事業」の登録が必要になります。 meti.go(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/seikatsuseihin/zougebekkou/main_01.html)
登録をせずに事業として取り扱った場合、違法と判断されます。「登録しているつもり」ではなく、登録証の有無を現物で確認することが条件です。
参考:全形牙と象牙製品の取引制度(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/seikatsuseihin/zougebekkou/main_01.html
法的な罰則に注目が集まりがちですが、通関業者が見落としやすいのは民事上のリスクです。これは検索上位の記事にはほとんど書かれていない視点です。
具体的には、依頼人が「証明書なしでも持ち込めると思っていた」と主張して、差し止めや没収に対する損害賠償を通関業者に求めるケースが起きえます。経済産業省の注意喚起文書には「顧客に伝えてください」という文言が明記されており、説明義務を怠った事業者側の責任が問われる根拠となります。 meti.go(https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/download/20180523_caution_zougehanbai.pdf)
説明義務の観点で、通関業者が依頼人に確認すべき事項は次のとおりです。
これらをチェックリスト化して依頼受付時に提示しておくことが、民事リスクを下げるための実務的な対策になります。 口頭確認だけでは後から「聞いていない」と言われるリスクが残ります。 meti.go(https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/download/20180523_caution_zougehanbai.pdf)
書面での確認が最低限の自衛策です。 meti.go(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/seikatsuseihin/zougebekkou/main_07.html)
また、2018年の種の保存法改正以降、象牙取扱事業者の登録簿は一般公開されています。 依頼人が登録事業者かどうかは事前に検索で確認できるため、通関前に自社でチェックする習慣をつけると申告漏れリスクを早期に発見できます。 env.go(https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/species/trade/system-ivory/)
参考:輸出入に関する象牙販売事業者向け注意喚起(経済産業省PDF)
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/download/20180523_caution_zougehanbai.pdf
| 仕出国 | 件数ベース構成比 |
| ----- | ---------- |
| 中国 | 約80〜85% |
| ベトナム | 数%(近年増加傾向) |
| タイ | 数%(近年増加傾向) |
| 韓国・台湾 | 中堅圏 |