インドから輸入するとき、一般特恵では無税なのにEPAを使うと2.2%の関税を払うことになります。
日本の特恵関税制度では、2026年2月時点で130か国・地域が適用対象となっています。対象は大きく分けて、一般特恵受益国(開発途上国)86か国と、特別特恵受益国(LDC:後発開発途上国)44か国の2つに分類されます。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1504_jr.htm
一般特恵受益国には、インド、インドネシア、フィリピン、ベトナム、パキスタン、エジプト、トルコ、アルゼンチン、コロンビア、ペルー、南アフリカ共和国などが含まれます。これらの国からの輸入品は、品目や条件を満たせば通常より低い特恵税率が適用されます。
特別特恵受益国には、バングラデシュ、ミャンマー、カンボジア、ラオス、ネパール、アフガニスタン、エチオピア、ウガンダ、マダガスカル、マリ、ルワンダなど44か国が含まれます。後発開発途上国からの輸入に対しては、ほぼ全品目で無税の特別特恵関税が適用されるため、一般特恵よりさらに有利です。
参考)https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/t_kanzei/index.html
対象国リストは税関のカスタムスアンサー1504番で確認できます。リスト中の*印がLDC、下線は部分卒業による一部品目除外を示しています。
経済発展を遂げた国は特恵関税の対象から除外されます。2019年度には中国、タイ、メキシコ、マレーシア、ブラジルの5か国が全面卒業しました。2021年度にはパラオも全面卒業の対象となっています。
全面卒業の基準は、3年連続で次のいずれかを満たした国です。①世界銀行統計で「高所得国」(1人当たり国民総所得が12,476ドル以上)に該当、②世銀統計で「高中所得国」(4,036~12,475ドル)に該当し、かつWTO統計で世界の総輸出額に占める当該国の輸出額が1%以上。つまり、高所得または貿易競争力が強い国は卒業するということですね。
参考)https://www.customs.go.jp/shiryo/tokkeikanzei/minaoshi.htm
部分卒業は全面卒業の前段階で、特定品目のみ特恵税率が適用除外となります。基準は、世銀統計で「高所得国」に該当、または「高中所得国」で世界の総輸出額シェアが1%以上の国です。部分卒業の対象国は、国別・品目別に除外品目が設定されており、インドネシアやベトナムなど多くの国が該当します。
この卒業制度により、適用可能だった貨物が突然対象外になるリスクがあるため、年度初めの4月には必ず最新の適用国リストを確認する必要があります。
すべての品目に特恵税率が適用されるわけではありません。農水産品と鉱工業品で異なる方式が採用されています。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1501_jr.htm
農水産品(HSコード1~24類)は、ポジティブ・リスト方式で約340品目のみに特恵税率が設定されています。
つまり、指定された品目だけが対象です。
鉱工業品(HSコード25~97類)は、ネガティブ・リスト方式で約3,300品目に特恵税率が適用されます。原則すべての品目が対象ですが、石油製品、絹織物、革・革靴などは「特恵関税例外品目」として除外されています。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/pdf/FAX1503.pdf
後発開発途上国向けの特別特恵関税にも例外品目があります。関税暫定措置法別表第5に記載された「特別特恵関税例外品目」(農水産品約170品目、鉱工業品約50品目)は、LDCからの輸入でも無税になりません。これは国内産業保護の観点から設定されているものです。
参考)https://www.customs.go.jp/roo/pages/news/ippan.pdf
国別・品目別の特恵適用除外措置も存在します。たとえば、インドネシアからの一部繊維製品やタイからの特定の化学品など、国と品目の組み合わせで除外されるケースがあります。実行関税率表の特恵欄を確認すれば、どの品目が適用対象か判別できます。
参考)https://www.jimga.or.jp/files/news/sangyo/160527_3_beppyou_H29.pdf
特恵税率とEPA税率の両方が存在する国からの輸入では、どちらを選ぶかが重要です。法律上の税率適用順位は、①特恵税率、②EPA税率、③協定税率、④暫定税率、⑤基本税率の順です。
参考)特恵関税制度とは?概要と各税率の適用順位について - 物流手…
原則としてEPA税率が優先され、一般特恵税率は適用できません。例外は、一般特恵税率がEPA税率より低い場合のみ、両方が適用可能となります。具体例として、インドからの輸入で一般特恵税率が無税、EPA税率が2.2%の品目では、一般特恵を選択する方が0%の税率で有利になります。
参考)一般特恵(GSP)とEPAが両方存在する国 – 関税削減.c…
計算式で確認すると、「GSP税率 < EPA税率」が成立する場合に両方適用可能です。逆に「EPA税率 ≦ GSP税率」の場合は、EPA税率のみが適用されます。申告者が希望すればEPA税率を選ぶこともできますが、通常は税率が低い方を選択するのが合理的です。
特別特恵税率(LDC向け)については、ほぼ全品目が無税のため、EPA税率より有利になる場合が多く、両方適用可能なケースが増えます。実務では、輸入申告前に実行関税率表で各税率を比較し、最も低い税率を選択することが重要です。
特恵関税の適用には、原則として原産地証明書の提出が必要です。この書類は、特恵受益国等を原産地とする物品であることを証明するもので、輸入申告の際に税関へ提出します。
ただし例外があります。1申告の課税価格の総額が20万円以下の物品は、原産地証明書の提出が不要です。20万円以下なら手続きが簡素化されるということですね。また、物品の種類や形状によりその原産地が明らかであると税関長が認める品目についても、原産地証明書の提出は一部の例外を除き不要とされています。
原産地規則も確認が必要です。日本の特恵原産地基準の原則は「HSの項(4桁)の変更」で、特恵受益国で他国から輸入した原材料を加工した製品は、HS4桁レベルの変更を伴う製造・加工が必要です。
このような製品を「実質加工品」と呼びます。
参考)https://www.customs.go.jp/roo/origin/gsp_roo.pdf
原産地証明書は発給権限を持つ機関(多くは商工会議所や政府機関)が発行します。フォームAと呼ばれる統一書式が使用されることが一般的です。EPAの場合は原産地証明書の様式が異なるため、特恵関税とEPAで必要書類が変わる点にも注意が必要です。
税関「特恵原産地証明書について(カスタムスアンサー1502)」では、原産地証明書の詳細な要件と提出免除の条件が解説されています
税関「特恵適用国・地域一覧(カスタムスアンサー1504)」では、最新の適用対象国130か国・地域の完全なリストが確認できます
外務省「特恵関税制度」のページでは、制度の目的と対象国の区分(一般特恵受益国とLDC)について公式な説明が掲載されています