少額輸入貨物 免税 革製品も除外 通関業務従事者の注意点

通関業務で見落としがちな少額輸入貨物の免税制度。1万円以下なら安心と思っていませんか?革製品やニット衣類など免税適用外の品目、個人使用0.6掛けルール、さらに2026年度の制度見直しまで、通関業務従事者が押さえるべき最新情報を徹底解説。あなたの通関業務、本当に正確ですか?

少額輸入貨物 免税

あなたが1万円以下と判断した革製バッグ、実は課税対象です。


この記事の3つのポイント
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少額免税制度の基本

課税価格1万円以下で関税・消費税が免除されるが、個人使用品は0.6掛けで計算するため実質16,666円までが対象となる

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免税適用除外品目

革製品・ニット衣類・履物など特定品目は1万円以下でも課税され、酒税・たばこ税も免除対象外

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2026年度制度見直し

越境EC増加により免税制度の廃止が検討され、海外販売事業者への消費税納税義務化が進行中

少額輸入貨物の免税制度とは

少額輸入貨物の免税制度は、課税価格の合計額が1万円以下の輸入貨物について関税と消費税を免除する仕組みです。この制度は「デミニミスルール(法は些細なことにこだわらない)」という考えに基づき、円滑な通関手続きと納税事務の負担軽減を目的としています。


参考)https://www.customs.go.jp/tsukan/kanizeiritsu.htm


ただし個人使用目的の輸入品には特例があります。課税価格は海外小売価格の0.6倍で計算されるため、実際には16,666円以下の商品まで免税対象となります。つまり海外で150ドル(約16,500円)の商品を個人使用目的で購入した場合、課税価格は約9,900円(16,500円×0.6)となり免税適用されるということですね。


参考)https://www.amt-law.com/asset/pdf/bulletins5_pdf/250623.pdf


この制度を利用すると、少額貨物簡易通関扱いも受けられます。課税価格20万円以下の貨物では、輸入申告項目の一部を省略できる簡易な手続きが可能です。


参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1002_jr.htm

少額輸入貨物の免税適用除外品目

課税価格が1万円以下でも免税にならない品目があります。革製のバッグ・財布・手袋・履物、ニット製衣類(Tシャツ・セーターなど)、パンスト・タイツ、スキー靴などは少額免税制度の対象外です。


参考)個人輸入の関税・消費税・免税範囲は?


これらの品目は「個人的な使用に供されるギフトとして居住者に贈られた場合」を除き、必ず関税が課されます。たとえば8,000円の革製財布を輸入する場合、通常なら免税対象の価格帯ですが、革製品という理由だけで課税対象となります。革製品が除外される理由は国内生産者保護のためです。


参考)https://www.mipro.or.jp/Document/hti0re0000000vi2-att/iruiyunyu.pdf


なお「革製品」とは動物の革を使った本革製品を指します。ポリウレタンやナイロンの合成皮革(合皮)は対象外なので、素材の見極めが重要ですね。


参考)輸入ビジネスで仕入れられないものは?ケーススタディで解説

酒税とたばこ税・たばこ特別消費税も1万円以下でも免除されません。これらの税金は価格に関係なく常に課税されます。

通関業務では申告書類で素材を正確に確認する必要があります。輸入者が「合皮バッグ」と申告していても、実際には本革が一部使用されているケースがあり、その場合は免税適用除外となります。


HS番号(関税分類番号)の確認が必須です。


税関ウェブサイトの少額輸入貨物の簡易税率ページには、免税適用除外品目の詳細リストが掲載されています。

少額輸入貨物の簡易通関手続き

課税価格が20万円以下の貨物は、少額貨物簡易通関扱いを利用できます。この制度では輸入申告書の品名欄の各欄が20万円以下であれば、通常の輸入申告よりも簡易な手続きで通関可能です。

手続きは輸入申告書に「少額貨物簡易通関扱」と表示して申告するだけです。ただし輸入貿易管理令第4条第1項の輸入承認が必要な貨物や、特定の減免税規定を適用する場合は対象外となります。

簡易通関の注意点は税番・税率・他法令の要否が先例とならないことです。今回の申告で使用したHS番号や適用税率は、次回の輸入申告時に自動的に適用されません。


つまり毎回正確な確認が基本です。



2024年には少額貨物の輸入件数が約1億7千万件に達し、全体の通関許可件数の約90%を占めています。これは東京都の人口(約1,400万人)の12倍以上の件数に相当します。この膨大な件数が税関業務の負担となっており、偽ブランド品や違法物品の水際対策にも影響を与えています。


参考)少額品販売事業者に課税へ 政府調整、中国通販サイトとの不公平…


少額輸入貨物の免税制度見直しの動向

2026年度税制改正で少額輸入貨物の免税制度が大幅に見直される予定です。政府は課税価格1万円以下の輸入品に対する消費税免除を廃止し、海外EC販売事業者に納税義務を課す方向で調整しています。


参考)https://news.yahoo.co.jp/articles/1361e5e3ddeb783650f4de9b5057aaa991906f2d


見直しの背景は中国発の通販サイト(SHEIN・Temuなど)が免税制度を利用して低価格攻勢をかけ、国内事業者との競争が不公平になっているためです。年間売上50億円を超える海外事業者が課税対象となる見込みです。


参考)財務省 越境EC増加を踏まえ少額貨物免税制度見直しへ


個人使用品の0.6掛け特例も廃止される方向です。これが実施されると、海外小売価格そのものが課税価格となり、実質的な免税範囲が大幅に縮小します。

EU・オーストラリア・米国でも同様の見直しが進んでいます。特に米国では2025年にデミニミスルール(少額免税制度)の廃止が実施され、国際郵便の取扱いルールが変更されました。各国が越境ECの急増に対応しているということですね。


参考)https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/syogakuyunyuwg/syogakuyunyuwg_gijihaihu/20251017/shiryo1.pdf


通関業務従事者は制度変更後の申告手続きに備える必要があります。特に販売事業者が登録業者かどうかの識別や、二重課税を避けるための確認作業が新たに発生する可能性があります。


参考)https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/7digital-noukan2kai5.pdf

財務省の「急増する少額輸入貨物の課題と対応の検討」資料では、制度見直しの詳細な背景データが公開されています。

少額輸入貨物の通関業務での実務対応

通関業務では貨物の課税価格を正確に算出する必要があります。インボイス価格に運賃と保険料を加算し、個人使用品なら0.6を乗じて課税価格を計算します。


免税適用除外品目の判定は素材とHS番号の両方で確認してください。革製品の場合、商品説明に「レザー」「本革」「genuine leather」などの表記があれば免税対象外です。迷った場合は一般税率を適用するのが原則です。


複数品目を同時に輸入する際は合計課税価格で判断します。たとえば5,000円の衣類と6,000円の雑貨を同じ申告で輸入すると、合計11,000円となり免税対象外となります。こうした計算ミスが課税漏れにつながりますね。

酒類とたばこは価格に関係なく課税されるため、必ず酒税・たばこ税の計算を行ってください。少額だから免税と思い込むと、税関検査で指摘を受けることになります。

制度改正に備えて、越境EC貨物の販売事業者情報を収集しておくことをおすすめします。登録事業者リストや納税義務者の確認方法など、新しい実務手順の準備が重要です。


アンダーソン・毛利・友常法律事務所の「輸入貨物に係る少額免税制度の見直しについて」レポートには、法的観点からの詳細な解説があります。