海上運送状とはB/Lと異なる通関業務での活用と注意点

海上運送状(Sea Waybill)とは何か、B/Lとの違いや通関現場での取り扱い、電子化の動向まで通関業従事者向けに詳しく解説します。サレンダーB/Lとの使い分けで損をしていませんか?

海上運送状とはB/Lとの違いと通関での実務ポイント

海上運送状を使うと、書類原本がなくても貨物を受け取れます。


🗂️ この記事の3ポイント
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海上運送状はB/Lと別物

有価証券ではなく流通性がないため、荷受人の本人確認だけで貨物を引き取れます。

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使い分けのミスがリスクに直結

B/Lが必要な信用状取引で海上運送状を使うと、銀行決済が通らず貨物が足止めになる場合があります。

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電子化(e-SWB)が急速に普及中

NACCSでの電子提出が標準化され、現場の手続きが大きく変わっています。


海上運送状とは何か:Sea Waybillの基本的な定義と役割



海上運送状(Sea Waybill、略称SWB)とは、荷主と船会社の間で結ばれた運送契約書と、船会社による貨物受領書の両方の機能を一枚で兼ね備えた書類です。 英語では「Sea Waybill」と呼ばれ、1974年に航空貨物で普及していたAir Waybillの仕組みを海上貨物に応用したものとして登場しました。 ots-jpn(https://ots-jpn.com/international_transportation/sarendado-bl/)


海上運送状の最大の特徴は「有価証券ではない」という点です。 これはつまり、裏書譲渡ができず、書類そのものに市場流通性がないことを意味します。B/L(船荷証券)と表面の記載事項はほぼ同じ構成でありながら、法的な性質がまったく異なります。つまり「外見はB/Lとそっくり、中身は別物」です。 ntl-naigai.co(https://www.ntl-naigai.co.jp/glossary/s/sea-waybill.html)


通関業務の現場では、この「流通性のなさ」が実務に直結します。海上運送状に記載された荷受人(CONSIGNEE)であることが確認できれば、書類の原本提示なしに貨物を引き取ることができます。 荷受人の本人確認が条件です。 maersk(https://www.maersk.com/ja-jp/support/faqs/what-is-seaway-bill)


書類の郵送・輸送コストや時間を削減できる点が、海上運送状が選ばれる主な理由のひとつです。 短距離航路や親子会社間取引など、書類が船便より先に届くのが難しいケースで特に活用されています。 lab.pasona.co(https://lab.pasona.co.jp/trade/word/13/)


項目 海上運送状(Sea Waybill) B/L(船荷証券)
有価証券か ❌ 非有価証券 ✅ 有価証券
原本提示 不要(本人確認のみ) 必要(原本と引換え)
流通・譲渡 ❌ 不可 ✅ 裏書譲渡が可能
信用状(L/C)決済 ❌ 原則不可 ✅ 可能
書類郵送の手間 不要(電子化しやすい) 必要(原本3通が標準)
適した取引形態 親子会社・信頼関係ある先 第三者・信用状取引


海上運送状とB/Lの違い:通関業従事者が混同しやすい3つのポイント

通関業務に携わる方の多くは、B/Lを「貿易書類の基本」として学んできます。そのため、海上運送状を「簡易版B/L」と誤解していることがあります。これは大きな認識のズレです。


ポイント①:所有権の有無


B/Lは貨物の所有権を表彰する権利証券であり、B/Lを持っている人が貨物の法的所有者です。 一方、海上運送状には所有権を表す機能がありません。 「持っている=所有者」ではないということです。輸入者が変更になった場合でも、B/Lなら裏書で対応できますが、海上運送状では対応できません。 ups(https://www.ups.com/jp/ja/supplychain/resources/glossary-term/sea-waybill)


ポイント②:貨物引取り時の手続き


B/Lは原本3通(Full Set)が発行され、輸入地の港で原本と引換えに貨物が引き渡されます。 海上運送状の場合は、原本の提示そのものが不要で、荷受人であることを証明するだけで引き取れます。 結果として現地での引取り手続きが大幅に短縮されます。これは使えそうです。 n-avigation.nissin-tw(https://n-avigation.nissin-tw.com/threebl/)


ポイント③:信用状(L/C)取引との相性


国際決済に信用状(Letter of Credit)を使う場合、銀行は原則としてB/L原本の提出を求めます。海上運送状は「非流通性書類」のため、L/C条件書類としては原則として認められません。 信用状取引に海上運送状を使うと銀行決済が通らず、貨物が足止めになるリスクがあります。L/C取引には必ずB/Lが条件です。 lab.pasona.co(https://lab.pasona.co.jp/trade/word/13/)


海上運送状とサレンダーB/Lの違い:通関現場での使い分け判断基準

海上運送状と並んでよく混同されるのが「サレンダーB/L(Surrendered B/L)」です。どちらも「原本なしで貨物を引き取れる」という実務上の結果は同じに見えますが、法的な仕組みはまったく異なります。意外ですね。


サレンダーB/Lとは、もともと有価証券として発行されたB/L原本を、荷主が出発地の運送人(船会社・フォワーダー)に返還(サレンダー)し、仕向地側では原本提示なしに貨物を引き取れるようにした手続きです。 つまり「一度B/Lとして発行した後に権利を放棄した状態」です。 ots-jpn(https://ots-jpn.com/international_transportation/sarendado-bl/)


一方、海上運送状は最初から有価証券として発行されることなく作成された書類です。 B/Lが「一時的に発行されて放棄された」のに対し、海上運送状は「最初からB/Lにしない選択」という点で出発点が違います。 jetro.go(https://www.jetro.go.jp/world/qa/04C-070301.html)


比較項目 サレンダーB/L 海上運送状(SWB)
発行の始まり B/Lとして発行後に返却 最初からSWBとして発行
原本の存在 一時的に存在する 原本自体がない
法的リスク 返却前に原本が流通するリスクあり 流通リスクなし
使いやすさ B/L発行後に変更可能 当初から選択が必要
権利放棄の有無 あり(荷主が権利放棄) そもそも権利が発生しない


通関業従事者として重要なのは「どちらを選ぶか」を荷主側の取引条件を確認した上で決める点です。 長年の取引先で信頼関係が確立されている場合や、親子会社間取引であれば、海上運送状が最もシンプルで合理的な選択です。サレンダーB/Lは「B/Lで始めた手続きを途中から簡略化したい場合」に使われる手段と理解しておくと判断が早くなります。 n-avigation.nissin-tw(https://n-avigation.nissin-tw.com/threebl/)


参考:JETROによるサレンダードB/Lと海上運送状の法的違いの解説
JETROグローバルネット:サレンダードB/Lと海上運送状(Sea Waybill)の違い


海上運送状の電子化(e-SWB):NACCSと通関実務への影響

近年、海上運送状の電子化(e-SWB:Electronic Sea Waybill)が急速に普及しています。 2012年3月には、日本のNACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)の第5次システム改変において、海上運送状に必要な情報の作成・交換がNACCS上で可能となりました。 rakuraku-boeki(https://www.rakuraku-boeki.jp/boueki-ginkou-gaitame/2021-01-04)


電子化の最大のメリットは「書類の原本郵送が不要になる」ことです。 従来、海上運送状は紙で作成・郵送していたため、荷受人への送付に数日のタイムラグが発生していました。e-SWBでは、この待ち時間がほぼゼロになります。これは実務効率の改善に直結します。 rakuraku-boeki(https://www.rakuraku-boeki.jp/boueki-ginkou-gaitame/2021-01-04)


通関業従事者にとって実務上注意したいのは、2025年10月以降を目標に進められているペーパーレス化の動向です。 税関への通関関係書類の提出については、電磁的記録(PDFなど)による提出が「原則」へと移行が推進されており、対応が遅れると手続きのタイムロスになりかねません。電子提出への移行確認は必須です。 customs.go(https://www.customs.go.jp/news/news/paperless/annex01.pdf)


一方、原本性の確認が必要な書類(原産地証明書など)は現在も一部書面対応が残っています。 すべての書類が電子化できるわけではない点に注意が必要です。「SWBは電子化できるが、原産地証明書は書面が必要」という組み合わせが実際の現場では発生します。電子と紙の使い分け管理が条件です。 customs.go(https://www.customs.go.jp/news/news/paperless/annex05.pdf)


税関:通関関係書類の電磁的記録による提出に係るQ&A(NACCSでの海上運送状電子化の詳細)


海上運送状の通関業実務での活用:独自視点「CONSIGNEEの記載ミスが引き起こす荷渡し不能リスク」

海上運送状では「荷受人(CONSIGNEE)の本人確認」によって貨物が引き渡されます。 これはB/Lと異なり、書類の現物よりも「記載された名前・社名」が最重要情報になることを意味します。ここが実務上の落とし穴です。 ntl-naigai.co(https://www.ntl-naigai.co.jp/glossary/s/sea-waybill.html)


B/Lの場合、原本を持参すれば貨物を受け取れるため、多少の書類上の誤記があっても「現物の提示」でカバーできる場面があります。しかし、海上運送状ではCONSIGNEE欄の記載と実際の荷受人情報が一致しなければ、荷渡しを拒否される可能性があります。 会社名の表記ゆれ(「Co., Ltd.」と「Co.Ltd.」の違いなど)でも問題が発生した事例が報告されています。厳しいところですね。 maersk(https://www.maersk.com/ja-jp/support/faqs/what-is-seaway-bill)


特に注意が必要なのは「NOTIFY PARTY(着荷通知先)」との混同です。海上運送状には、貨物を受け取る権限のある人物(CONSIGNEE)と、到着時に連絡する着荷通知先(NOTIFY PARTY)の両方が記載されます。 この2つを別々に管理していないと、通知だけ届いて引取りができないというトラブルになります。 ups(https://www.ups.com/jp/ja/supplychain/resources/glossary-term/sea-waybill)


通関業者として書類作成を支援する立場では、荷主から受け取ったCONSIGNEE情報が「法人登記上の正式名称と一致しているか」を事前に確認するフローを設けておくことが、トラブルを未然に防ぐ最も効果的な対策です。 確認は発行前に一度だけ行えばOKです。書類作成の際には確認を工程に組み込むことを習慣にすると良いでしょう。 optec-exp(https://optec-exp.com/handcarry/column/454/)


通関書類の記載ミスによるリスク事例については、以下の参考情報も役立ちます。


輸出入書類の記載ミスが引き起こす実際のリスク事例(オプテック)


| 書類 | A/Nとの関係 |
| ---------------------- | ------------------------------------ |
| B/L(船荷証券) | Notify Party宛にA/Nが届く。B/L受領と引換にD/Oを取得 |
| Freight Invoice(運賃請求書) | A/Nに含まれることがある。インコタームズと照合必須 |
| Invoice / Packing List | 個数・重量・コンテナ番号をA/Nと照合する |
| 輸入申告書(輸入申告) | 保税地域搬入(=A/N受取後)に申告。A/Nで管轄官署を特定 |
| D/O(荷渡指図書) | A/N受取→運賃精算→D/O取得の順が基本フロー |






週刊文春 2026年6月11日号[雑誌]