グレーマーケット品であっても、適切な申告をしなければ関税法違反として貨物が没収されるケースがあります。
グレーマーケット(Grey Market)とは、正規の販売代理店ルートを通らずに流通する真正品(本物)の市場を指します。偽造品や模倣品を扱うブラックマーケットとは根本的に異なり、商品そのものの真正性は保証されています。ここが大きなポイントです。
ブランド品の文脈で言えば、たとえばルイ・ヴィトンの正規品をアメリカの免税店で購入し、日本の正規代理店を通さずに国内で販売するようなケースがグレーマーケットに該当します。商品は本物ですが、日本国内の正規販売網を迂回しているという意味で「グレー」と呼ばれます。
並行輸入との違いはどうなりますか?
並行輸入はグレーマーケット取引の一形態と見ることもできますが、日本の法律上、並行輸入品はいくつかの条件を満たせば「適法」と認められています。最高裁判所の判例(1998年・フレッドペリー事件)では、並行輸入が適法とされる3要件が確立されました。具体的には「商標権者が同一であること」「品質が国内正規品と同一であること」「一般消費者が出所を混同しないこと」の3点です。
グレーマーケット品がすべてこの3要件を満たすとは限りません。それが実務上の問題です。
| 区分 | 商品の真正性 | 販売ルート | 法的地位 |
|---|---|---|---|
| 正規品 | 本物 | 正規代理店経由 | 合法 |
| グレーマーケット品(並行輸入) | 本物 | 非正規ルート | 条件付きで合法 |
| 偽造品・模倣品 | 偽物 | 非正規ルート | 違法 |
通関業従事者にとって重要なのは、「本物かどうか」という真正性の判断だけでは不十分だという認識です。税関は商標権侵害の観点からも審査を行うため、真正品であっても差し止め対象になり得るケースがあります。つまり本物≠通関OK、ということですね。
税関での差し止めと聞くと、偽造品の話だと思う方も多いでしょう。実態は違います。
真正ブランド品であっても、税関が輸入差し止めを行うケースが実在します。その根拠は関税法第69条の11および商標法に基づく知的財産侵害物品の規制です。財務省・税関が公表している「知的財産侵害物品の差し止め状況」(令和5年度)によれば、年間の差し止め件数は約2万8,000件を超えており、商標権侵害が全体の約7割を占めています。
財務省税関「知的財産侵害物品の差し止め状況」(最新年度データ)
上記のリンクは税関が公式に公表している知的財産侵害物品の差し止め件数・品目別内訳のデータページです。グレーマーケット品の通関実務における実態把握に活用できます。
並行輸入の適法3要件のうち、特に問題になりやすいのが「品質の同一性」です。たとえば海外向けに製造されたブランド品の場合、同じブランド名・ロゴであっても国内向けと原材料や仕様が異なるケースがあります。香水・化粧品・食品添加物を含む製品などでは、国内法の基準(薬機法・食品衛生法)との整合性が問われることもあります。厳しいところですね。
また、商標権者が国内と海外で異なるライセンス構造をとっている場合(いわゆる「商標権分割」)、海外正規品を国内に持ち込んでも商標権侵害と判断されるリスクがあります。これはブランド側の戦略として意図的に設定されることもあり、通関業従事者がラベルや仕入書だけから判断するには限界があります。
差し止めを避けるために実務で確認すべき主なポイントは以下の通りです。
差し止めリスクの高い品目を事前に把握しておくことが基本です。
グレーマーケット品の通関申告において、HSコードの分類と課税価格の決定は特に注意が必要な実務領域です。
HSコード(Harmonized System Code)の分類そのものはグレーマーケット品であっても正規品と同様の基準で行います。問題は課税価格(Customs Value)の算出です。グレーマーケット品は正規ルートを通らない分、仕入価格が正規品より大幅に安いケースが多く、申告価格と実際の市場価格に乖離が生じることがあります。
たとえばあるブランドのバッグが国内正規価格で50万円するとします。並行輸入業者が海外で25万円で仕入れた場合、課税価格は原則として取引価格(25万円)をベースに算出します。これはWTO関税評価協定および関税定率法第4条に基づく取引価格主義によるものです。
上記リンクは関税評価の公式解説ページで、取引価格主義の考え方や特別な関係がある当事者間取引の扱いについて確認できます。課税価格の判断根拠として参照価値があります。
ただし、税関は申告価格が著しく低い場合、「関連者間取引」「価格操作の疑い」として課税価格の見直しを求めることがあります。グレーマーケット品の場合、正規品と比較して価格乖離が大きいほど審査が厳しくなる傾向があります。これは使えそうな知識です。
実務上の注意点をまとめると以下の通りです。
課税価格の正確な申告が原則です。
グレーマーケット品の通関現場では、いくつかのトラブルパターンが繰り返し発生しています。知っておくだけでリスクを大幅に下げられます。
最も多いトラブルが「商標権者からの輸入差し止め申請」への対応です。ブランドメーカーは税関に対して「認定手続き」の申請を行うことができます(関税法第69条の13)。認定手続きとは、輸入者に対して「この荷物は知的財産侵害品かどうか」を争う機会を与える手続きで、輸入者は一定期間内(原則10日以内)に証拠書類を提出して対抗する必要があります。
この期間を過ぎると自動的に差し止めが確定し、貨物は廃棄または積み戻しの対象となります。10日という期間は思ったより短いですね。
次に多いのが「事後調査による追徴課税」です。税関は通関後も事後調査権限を持っており、申告内容に疑義があれば事後的に調査・是正を求めることができます。グレーマーケット品については、申告価格の適正性が事後調査のターゲットになりやすい傾向があります。
こうしたトラブルを未然に防ぐために活用すべきなのが「輸入事前教示制度(事前照会制度)」です。輸入しようとする貨物について、HSコードの分類や輸入規制の適用有無を事前に税関に照会できる制度です。書面(またはオンライン)で申請すると、原則として30日以内に税関から文書回答が得られます。
上記リンクでは事前照会制度の手続き方法・照会できる内容・回答書の効力について確認できます。グレーマーケット品の輸入前リスク確認に特に有用です。
事前照会で得た回答書は、後にトラブルが発生した際の「誠実申告の証拠」にもなります。これが条件です。
通関業法の観点から、グレーマーケット品を扱う通関業者には特有の義務と責任が生じます。ここは独自視点からお伝えします。
通関業法第13条では、通関業者は依頼人から正確な情報提供を受けて申告を行う義務を負い、虚偽申告への加担は通関業務の取消処分や罰則の対象となります。グレーマーケット品の場合、依頼人がグレーマーケットであることを認識していないケースも少なくなく、通関業者がその点を確認・説明しないまま申告を進めると、後のトラブル時に連帯責任を問われるリスクがあります。
依頼人への説明義務として、特に重要なのは以下の3点です。
これらを依頼人に書面で説明・確認しておくことが、通関業者側のリスク管理の基本です。
また、グレーマーケット品は正規品と比較して流通価格が低いため、eCコマース(越境EC)を通じた小口輸入の形態で急増しています。個人輸入代行業者が依頼人となるケースでは、依頼人自身がリスクを十分に認識していないことも多く、通関業者がゲートキーパー的な役割を担う場面が増えています。
実際、日本関税協会が公表している情報によれば、越境ECに関連した通関件数は2023年度に前年比で約15%増加しており、グレーマーケット品を含む小口輸入案件の増加は通関業従事者の実務負荷を高めています。
上記リンクは日本関税協会の公式サイトで、通関業法の解説や実務情報、研修情報を確認できます。グレーマーケット品対応を含む最新の通関実務情報の参照先として有用です。
依頼人との間で書面確認を行うことが原則です。グレーマーケット品に関して「知らなかった」では済まされない局面が増えている今、通関業従事者として依頼人へのリスク説明と自社記録の保全を徹底することが、長期的な業務継続の安定につながります。
継続的なリスク管理体制の構築が、最終的な自己防衛になります。
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