飼い魚を捨てても動物愛護法では罰せられず、無申告で輸入すると懲役5年になることがあります。
「動物愛護管理法」と聞いて、犬と猫だけの話だと思っている方は少なくありません。しかし実際には、その対象動物の範囲はかなり広く設定されています。法律の正式名称は「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)で、1973年(昭和48年)に議員立法で制定されました。
この法律が対象とする「動物」は、規定の目的によって3段階に分かれています。まず最も広い層として、すべての動物が「みだりに傷つけてはならない」という基本原則の対象になります。次に、人が占有(飼育・保管)している哺乳類・鳥類・爬虫類が主要な規制対象となります。そして最も具体的な罰則が適用される「愛護動物」として、ウシ・ウマ・ブタ・メンヨウ・ヤギ・イヌ・ネコ・イエウサギ・ニワトリ・イエバト・アヒルが明示されています。
つまり対象は犬猫だけではありません。
ここで関税に興味がある方にとって重要なのは、輸入動物もこの規制の対象に入るという点です。海外から哺乳類・鳥類・爬虫類を輸入した時点で、それらの動物は動物愛護管理法の適用を受ける「人の占有する動物」となります。通関後に関連規定を守らないと、法的リスクが発生することになります。これは原則です。
一方で、魚類・両生類・昆虫といった動物は、たとえ人が飼育していても「愛護動物」の対象外です。金魚やカエルをみだりに殺傷したとしても、動物愛護管理法による罰則は適用されません。ただし、他人が所有する魚類を故意に殺傷した場合には、器物損壊罪が成立する可能性はあります。この点は意外ですね。
参考リンク(環境省:動物愛護管理法の法律概要・対象動物の整理)。
環境省|動物愛護管理法の概要ページ
罰則は3段階に分けて理解すると整理しやすいです。令和元年(2019年)の法改正で大幅に強化されており、関税手続きと合わせて動物を輸入・販売する際には特に意識しておく必要があります。
最も重い罰則が「愛護動物をみだりに殺し、または傷つけた場合」で、5年以下の懲役または500万円以下の罰金です。2019年の改正前は「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」でしたから、刑罰の重さが大きく引き上げられました。
次に、虐待行為(えさや水を与えずに衰弱させる、不必要な苦痛を与えるなどネグレクトを含む)に対しては1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。ペットショップや輸入業者が輸入した動物を劣悪な環境で保管し続けた場合も、この条文が適用される可能性があります。
愛護動物を遺棄(捨てる)行為に対しても1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
罰則が適用される動物かどうかが条件です。
🐾 罰則対象となる「愛護動物」の一覧
| 区分 | 具体的な動物の例 |
|------|----------------|
| 明示された畜産・家庭動物 | ウシ・ウマ・ブタ・メンヨウ・ヤギ・イヌ・ネコ・イエウサギ・ニワトリ・イエバト・アヒル |
| 人が占有する哺乳類 | フェレット・ハムスター・モルモット・リスなど |
| 人が占有する鳥類 | インコ・オウム・文鳥など |
| 人が占有する爬虫類 | カメ・ヤモリ・ヒョウモントカゲモドキなど |
爬虫類も「愛護動物」に入ることを知らずに、輸入後に劣悪な環境で大量保管して虐待罪に問われた事例があります。これは使えそうです。
参考リンク(東京都保健医療局:2019年改正による罰則強化の詳細)。
東京都保健医療局|動物の虐待等に対する罰則強化について
関税に関わる輸入業務をしている方がとくに注意すべきなのが「特定動物」の規制です。特定動物とは、人の生命・身体・財産に危害を加えるおそれの高い動物約650種のことで、トラ・クマ・ワニ・マムシなどが代表例です。
令和2年(2020年)6月1日以降、特定動物は愛玩目的での飼養が全面禁止となりました。これ以前は許可取得で個人飼育が認められていたため、ペット目的で輸入していた事業者にとっては大きな規制転換です。現在、特定動物を飼養できるのは動物園・試験研究施設など特定目的のみで、都道府県知事または政令指定都市の長の許可が必要です。
無許可で特定動物を飼養・保管した場合の罰則は以下の通りです。
- 🔴 個人:6ヶ月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
- 🔴 法人:5,000万円以下の罰金(個人より50倍重い)
法人への罰金が5,000万円というのは痛いですね。
特定動物に指定された種の輸入には、動物愛護管理法の規制に加え、ワシントン条約(CITES)に基づく輸入承認・経済産業省への申請、そして厚生労働省の輸入届出制度への届出も必要です。つまり関税法・動物愛護管理法・ワシントン条約の3つの法律が同時に絡んできます。手続きの一つでも欠けると複数の法律に同時違反するリスクがあります。これが条件です。
ワシントン条約の附属書Iに掲載された絶滅危惧種を密輸した場合、税関での不正輸入(密輸)として個人は懲役5年以下または500万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金が課せられます(関税法・外為法に基づく)。この状況で動物愛護管理法の違反も重なれば、刑事上の責任が二重に問われる可能性があります。
参考リンク(環境省:特定動物の種類・飼養許可の手続き)。
環境省|特定動物(危険な動物)の飼養又は保管の許可について
輸入手続きにおいて「通関さえ通れば問題ない」と考えるのは大きな誤解です。動物を輸入する際には、関税法上の通関手続きに加えて、以下の複数の制度への対応が必要になります。
まず厚生労働省の「動物の輸入届出制度」があります。届出対象動物(サル類・アライグマ・ハクビシンなど指定された動物)を輸入する際は、目的(販売・実験・展示・ペットなど)にかかわらず、輸出国政府発行の衛生証明書を取得した上で検疫所へ届け出ることが必要です。この届出を怠ると、感染症法上の違反となります。
次に農林水産省・動物検疫所による輸入検疫があります。犬や猫を輸入する場合には、狂犬病やレプトスピラ症(犬のみ)に関する輸入検疫を必ず受けなければなりません。
🐕 犬・猫を輸入する際の主な手続き一覧
| 手続き | 担当省庁 | ポイント |
|--------|---------|---------|
| 輸入検疫 | 農林水産省(動物検疫所) | 狂犬病・レプトスピラ証明が必要 |
| マイクロチップ確認 | 環境省(動物愛護管理法) | ISO規格のマイクロチップが必要 |
| 輸入届出 | 厚生労働省(感染症法) | 指定動物は衛生証明書+届出必須 |
| CITES手続き | 経済産業省(外為法) | 条約掲載種は輸入承認証が必要 |
マイクロチップに関しても注意が必要です。令和4年(2022年)6月1日の改正動物愛護管理法施行により、犬猫等販売業者がブリーダーや輸入業者から犬猫を取得してから原則30日以内にマイクロチップを装着しなければなりません(生後90日以内の場合は生後90日を経過した日まで)。ISO規格外のマイクロチップが埋め込まれた状態で輸入された犬猫については、事前に動物検疫所への相談が必要です。
これが条件です。違反した場合は関税法に基づく問題だけでなく、動物愛護管理法の動物取扱業者規制の違反にも問われます。手続きは複数省庁にまたがるため、輸入前に専門の通関業者や行政書士に確認する行動を1つとっておくことをおすすめします。
参考リンク(厚生労働省:動物の輸入届出制度とQ&A)。
厚生労働省|動物の輸入届出制度 Q&A
輸入した動物を「個人で転売するだけ」と考えていると、実は動物取扱業の無登録営業に該当するケースがあります。これは見落とされやすいポイントです。
動物愛護管理法では、哺乳類・鳥類・爬虫類に属する動物の「販売・保管・貸出し・訓練・展示・競りあっせん・譲受飼養」を繰り返し継続して行う者を「動物取扱業者」と定義しています。そして営利目的で行う場合は「第一種動物取扱業者」として、都道府県知事または政令指定都市の長への登録が義務です。
つまり、爬虫類の輸入転売も動物取扱業の登録対象になり得ます。たとえば、ヒョウモントカゲモドキ(レオパ)などの人気爬虫類を海外から継続的に輸入して販売する場合、個人であっても「動物販売業」の登録が必要になります。登録をせずに営業を続けると100万円以下の罰金の対象になります。
登録は5年ごとに更新が必要です。
また、動物取扱業の登録には、事業所ごとに「動物取扱責任者」の設置が義務付けられています。動物取扱責任者になるには、愛玩動物飼養管理士・家庭動物販売士などの資格取得、または動物関連業務の実務経験(半年以上)などの要件を満たす必要があります。単に通関知識があるだけでは不十分です。これは条件です。
さらに、第一種動物取扱業者のうち犬猫の販売をする業者(犬猫等販売業者)は、購入希望者に対して動物を実際に見せ、適切な飼育方法などを対面で説明する義務があります。オンラインのみでの犬猫販売は禁止されており、これを知らずに輸入犬猫をネット上だけで取引するとアウトです。
🐈 第一種動物取扱業者に課される主な義務
- 📌 事業開始前に都道府県知事等への登録(5年ごとに更新)
- 📌 事業所ごとに動物取扱責任者を設置
- 📌 動物ごとに適切な飼養スペースの確保(ケージの基準あり)
- 📌 動物の所有状況を帳簿に記録し毎年報告(販売・展示等の業種)
- 📌 購入者への現物確認・対面説明の実施(犬猫等販売業者のみ)
参考リンク(環境省:第一種動物取扱業者の規制内容)。
環境省|第一種動物取扱業者の規制
参考リンク(WWFジャパン:動物愛護管理法と環境保全・外来種問題の関係)。
WWFジャパン|動物愛護管理法の基本の基