絶滅危惧種動物一覧と通関業務の注意点

絶滅危惧種に指定されている動物は世界で4万種以上。通関業務従事者が知っておくべきワシントン条約規制対象種や輸入手続き、違反時の罰則について詳しく解説します。あなたの業務に必要な知識は十分ですか?

絶滅危惧種動物一覧と通関業務

ワシントン条約の許可書があっても、目的外使用で2,000万円の罰金です。

この記事の3つのポイント
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絶滅危惧種の分類と一覧

IUCNレッドリストで4万8,600種以上が絶滅危惧種に指定され、通関業務で扱う可能性のある主要動物を網羅的に紹介

⚖️
ワシントン条約と輸入規制

附属書Ⅰ~Ⅲの分類による輸入承認・事前確認・通関時確認の手続きと必要書類を詳細に解説

⚠️
違反時の罰則リスク

個人で懲役5年または500万円の罰金、法人は最大1億円の罰金という重い処罰内容を具体的に紹介

絶滅危惧種の分類とIUCNレッドリスト


絶滅危惧種とは、絶滅のおそれがある野生生物のことです。2024年時点で、世界では4万8,600種以上の生物が絶滅の危機に瀕しています。
参考)https://www.iucnredlist.org/ja

IUCN(国際自然保護連合)が作成するレッドリストでは、絶滅危惧種を以下のように分類しています。
参考)レッドデータブックの見方



  • 絶滅危惧ⅠA類(CR):ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種

  • 絶滅危惧ⅠB類(EN):近い将来における絶滅の危険性が高い種

  • 絶滅危惧Ⅱ類(VU):絶滅の危険が増大している種

  • 準絶滅危惧(NT):現時点では危険度は小さいが、将来的に絶滅危惧へ移行する可能性がある種

この分類が基本です。
参考)レッドリスト - Wikipedia

通関業務では、これらの分類に該当する動物を扱う際、ワシントン条約の規制対象となるケースが多く、慎重な手続きが求められます。特に附属書Ⅰに該当する種は、商業目的の取引が原則禁止されており、学術目的でも厳格な許可が必要です。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/07_shunohozon/shu_im.html


絶滅危惧種動物の世界的一覧

世界の絶滅危惧種には、私たちがよく知る動物も多数含まれています。通関業務で扱う可能性のある主要な絶滅危惧種動物を以下に紹介します。
参考)【2025年最新】絶滅危惧種に指定されている22種類の有名な…


哺乳類の絶滅危惧種

センザンコウは全種が危機に瀕しています。​
鳥類・爬虫類の絶滅危惧種


  • インコ・オウム類:世界398種のうち394種がワシントン条約の対象、111種が絶滅危惧種​

  • カメレオン:全12属がワシントン条約に記載​

  • アジアアロワナ:観賞魚として人気だが附属書Ⅰに該当​

これらの動物を輸入する際、通関業務従事者は種の正確な特定と適切な書類確認が不可欠です。学術名(ラテン名)での種の特定が必要となるため、事前の照会が重要になります。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/cites_search.html

日本国内の絶滅危惧種動物一覧

日本国内にも多数の絶滅危惧種が存在し、環境省がレッドリストで管理しています。通関業務では、これらの国内希少野生動植物種の輸入に特別な注意が必要です。
参考)https://www.env.go.jp/content/900515981.pdf


日本の主要絶滅危惧種


  • イリオモテヤマネコ(CR):西表島のみに生息、推定個体数100頭以下、交通事故が主な脅威

  • トキ(CR):日本では野生絶滅後、人工繁殖で個体数回復中​

  • ヤンバルクイナ(CR):沖縄北部のみに生息、外来種のマングースによる捕食が原因​

  • ツキノワグマ(西中国個体群・EN):中国山地に約10頭のみ生息
    参考)ぽうぽうぽうず


  • オオサンショウウオ(VU):世界最大の両生類、河川改修と外来種が脅威​

  • ハヤブサ(VU):全国に約1,000羽、開発による生息地減少

  • エゾナキウサギ(NT):北海道の山地に生息​

これは基本的な一覧です。
環境省レッドリスト2020では、哺乳類で26の地域個体群が「絶滅のおそれのある地域個体群」に指定されています。通関業務で国内希少野生動植物種の個体等を輸入する場合、種の保存法に基づく事前確認制度の対象となり、経済産業省への確認申請が必須です。
確認申請書の提出が必要です。輸入通関後1ヶ月以内に輸入状況報告も求められるため、輸入者への事前説明が重要になります。​

ワシントン条約による絶滅危惧種動物の輸入規制

ワシントン条約(CITES)は、絶滅のおそれがある野生動植物を保護するための国際条約です。通関業務従事者にとって、この条約の理解は業務の根幹となります。​
附属書による分類と規制内容
ワシントン条約では、動植物を絶滅リスクに応じて3つの附属書に分類しています。


  • 附属書Ⅰ:絶滅のおそれがあり、商業取引は原則禁止


    • 輸出国・輸入国双方の許可証が必要

    • 学術目的や繁殖事業など一部目的のみ取引可能

    • 該当例:ジャイアントパンダ、トラ、アジアアロワナ​


  • 附属書Ⅱ:現時点では絶滅危惧ではないが、規制なき取引で絶滅のおそれがある種


    • 輸出国の許可証が必要

    • 商業取引は可能


  • 附属書Ⅲ:各締約国が自国内での保護のため他国の協力を必要とする種


    • 該当国からの輸出には許可証が必要

附属書Ⅰが最も厳格です。
輸入手続きの3つの類型
日本でワシントン条約規制対象貨物を輸入する際、種の分類に応じて以下3つの手続きが必要です。


  1. 輸入承認:附属書Ⅰ該当種の輸入時に経済産業大臣の承認が必要
    参考)ワシントン条約に関する輸入手続き


  2. 事前確認:附属書Ⅱ・Ⅲ該当種の生きている動物や特定国からの輸入時に確認が必要

  3. 通関時確認:上記以外の附属書該当種で、税関での書類確認が必要​

事前確認を受けた貨物は、輸入申告時に確認書を税関に提示し、輸入通関後1ヶ月以内に輸入状況報告を提出する必要があります。この報告義務を怠ると、次回以降の確認申請に影響する可能性があるため注意が必要です。​
輸出国が発行するCITES輸出許可書の原本提出も税関で求められます。コピーでは通関できません。​

絶滅危惧種動物輸入時の違反リスクと罰則

ワシントン条約違反は、想像以上に重い罰則が科せられます。通関業務従事者として、違反リスクを正確に理解しておく必要があります。
参考)ワシントン条約とは?いつ制定された?対象の動物・植物を一覧リ…

外為法による罰則
日本では、ワシントン条約違反に対して外国為替及び外国貿易法(外為法)が適用されます。​


  • 許可を得ての違法輸入


    • 個人:懲役1年以下または100万円以下の罰金

    • 法人:2,000万円以下の罰金


  • 無許可での密輸入


    • 個人:懲役5年以下または500万円以下の罰金

    • 法人:1億円以下の罰金​

法人への罰金は最大1億円です。
目的外使用の罰則
輸入許可を受けた絶滅危惧種でも、許可された目的以外の用途で使用すると別の罰則が適用されます。例えば、研究目的で輸入した個体を販売や展示に使用する行為は違法です。​
この場合、2年以下の懲役または2,000万円以下の罰金が科せられます。輸入者に対して、許可目的の厳守を事前に説明しておくことが、通関業務従事者のリスク管理として重要です。​
通関時に虚偽の書類を提出した場合も、同様に厳しい処罰の対象となります。書類の真正性確認は、業務の最重要ポイントといえます。​

通関業務における絶滅危惧種動物の独自チェックポイント

通関業務で絶滅危惧種動物を扱う際、法定手続き以外にも独自の確認ポイントがあります。これらを押さえることで、トラブルを未然に防げます。
学術名による種の特定
ワシントン条約では、学術名(ラテン名)で種を特定します。一般的な和名や英名では、同じ呼び方でも複数の種が該当する場合があり、規制内容が異なるケースがあります。​
経済産業省のウェブサイトには、ワシントン条約規制対象種の検索システムがあります。輸入前に必ず学術名で照会し、附属書の分類を確認してください。あいまいな判断は避けるべきです。​
種の特定が困難な場合、野生動植物貿易審査室へ事前相談することで、誤った手続きによる違反を防げます。相談は無料で、電話やメールで対応してもらえます。​
加工品・器官の扱い
絶滅危惧種の規制は、生きている個体だけでなく、その器官や加工品にも適用されます。例えば、象牙製品、毛皮、漢方薬の原料など、形を変えた状態でも規制対象です。​
輸入申告書の品名欄に「動物由来」と記載があれば、その原料動物が絶滅危惧種に該当しないか確認が必要です。特に東南アジアや中国からの輸入貨物では、センザンコウの鱗を使った漢方薬など、規制対象品が混入している可能性があります。​
センザンコウの密輸は年間2兆円規模ともいわれ、世界4番目に大きな犯罪です。見逃しは許されません。​
繁殖個体と野生個体の区別
同じ種でも、人工繁殖された個体(Captive-bred)と野生捕獲個体では、取り扱いが異なる場合があります。CITES輸出許可書には、この区別が明記されているため、書類の記載内容を丁寧に確認してください。
繁殖証明書が添付されている場合、その発行機関の正当性も重要なチェックポイントです。偽造書類を使った密輸事例も報告されているため、不自然な点があれば税関に相談することをおすすめします。

絶滅危惧種動物の通関後管理と報告義務

通関業務は、輸入許可で終わりではありません。絶滅危惧種動物の場合、通関後の管理と報告義務が残っています。
輸入状況報告の提出
事前確認制度を利用して輸入した貨物は、通関後1ヶ月以内に輸入状況報告を経済産業省の野生動植物貿易審査室へ提出する必要があります。この報告を怠ると、次回以降の確認申請が受理されない可能性があります。​
報告内容には、実際に輸入した数量、輸入年月日、通関した税関名などを記載します。確認申請書の裏面に報告欄があるため、そこに記入して提出する形式です。​
1ヶ月が期限です。
輸入者が報告義務を理解していないケースも多いため、通関業者として事前に説明しておくとトラブル防止になります。報告書の控えを保管しておくことも、後々の確認作業で役立ちます。
国内流通後の追跡可能性
附属書Ⅰに該当する種を学術目的で輸入した場合、その後の使用状況が追跡される可能性があります。目的外使用は2,000万円の罰金対象となるため、輸入者には使用記録の保管を推奨してください。​
特に大学や研究機関が輸入者の場合、研究終了後の個体の取り扱い(展示への転用、他機関への譲渡など)についても、事前に確認が必要です。すべて追加の許可が必要になります。
運輸業界でも、絶滅危惧種の違法取引撲滅に向けた取り組みが進んでいます。通関業務従事者として、この流れを理解し、適切な管理体制を構築することが求められています。​




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