揚地検査で書類不備があると7万円の検査費用が無駄になります。
揚地検査とは、輸入貨物を船舶や航空機から降ろす港または空港で実施される検査のことです。貿易用語では「揚地(Port of Discharge)」は船荷証券(B/L)に記載される貨物を船から揚げる港を指し、その場所で行われる検査が揚地検査と呼ばれます。
参考)貿易検査用語集
通関業務従事者にとって揚地検査は輸入通関プロセスの中核です。検査内容は動物検疫、植物防疫、食品衛生検査など法令に基づく各種検疫検査と、税関による現物検査が含まれます。これらの検査が完了しないと輸入許可が下りず、貨物を国内に持ち込めません。
つまり通関業務の進行を左右します。
参考)輸入畜産物の検査手続:動物検疫所
中国向け中古機電製品では船積前検査と揚地検査の2段階検査が義務付けられており、揚地での着時検査が必須です。このように輸出国での検査と揚地検査の両方が必要なケースもあり、貨物の種類や仕向地により検査要件が異なることを理解しておく必要があります。
参考)https://www.nkkk.or.jp/customer/menu_attach/42.pdf
揚地検査は保税地域内または税関指定場所で実施されるのが原則ですが、特定条件下では本船上や航空機内での検査も認められています。検査場所の選択は検査効率とコストに直結するため、事前確認が重要です。
揚地検査には現物検査と書類検査の2種類があります。現物検査は貨物を開梱して内容物を直接確認する方法で、家畜防疫官や税関職員が実物と申告書類の照合、法令違反の有無、病原体汚染などをチェックします。一方、書類検査は輸入申告書、インボイス、パッキングリスト、輸出国政府機関発行の検査証明書などの書類のみで検査を完了させる方法です。
現物検査の実施率は貨物の種類やリスク評価により異なります。動物検疫では開梱数が関係要領で規定されており、無作為抽出された貨物に対して実施されます。税関検査では通関システムのリスク評価により区分が決まり、区分3に該当すると現物検査が行われます。
密閉式コンテナで輸送され、開扉されずに保管された後、同一埠頭から積み出される貨物の一部は、書類検査のみで仮陸揚げが認められるケースもあります。
これは検査効率化のための例外措置です。
ただし例外です。
書類検査で済む場合は検査時間とコストが大幅に削減されますが、現物検査が必要な場合は荷役作業、検査立会い、再梱包などの追加費用と時間がかかります。保税地域での保管料は日割り計算のため、検査遅延は直接的な損失につながります。検査区分を事前に予測し、必要書類を完備しておくことで、書類検査での通過率を高められます。
船積前検査(Pre-Shipment Inspection)は輸出国で貨物を船積みする前に実施される検査で、揚地検査は輸入国で貨物を降ろした後に行う検査です。
この2つは実施場所と目的が異なります。
船積前検査は主に輸入国政府が指定した検査機関により、輸出価格の妥当性、品質、数量、通関分類などをチェックし、不適合品の輸入を予防します。セネガル向け輸出ではFOB価格300万XOF(CFAフラン)以上の貨物が対象で、300万XOF未満でもFCL貨物は検査対象です。検査に合格すると検査証明書が発行され、これが揚地での輸入通関に必要になります。
中国向け中古機電製品のように、船積前検査と揚地での着時検査の両方が義務付けられている貨物もあります。この場合、輸出国での検査証明書がないと揚地検査を受けられず、通関が止まります。
船積前検査の証明書取得漏れは致命的です。
通関業務従事者は、輸出先国の規制を事前に確認し、船積前検査の要否と揚地検査の内容を把握しておく必要があります。輸出国での検査証明書原本を確実に入手し、揚地の動物検疫所や税関に提出できるよう準備することが、スムーズな通関の条件です。
精密検査は、輸出国政府機関発行の検査証明書が日本の要求条件を満たしていない場合や、現物検査で異常が認められた場合に実施されます。家畜防疫官が必要と判断したものについて検査材料を採取し、精密検査が行われます。
精密検査の対象になると、検査結果が判明し家畜防疫官が指示するまで当該貨物を移動できません。検査には数日から数週間かかることもあり、その間は保税地域での保管料が発生し続けます。1日あたりの保管料が1万円とすると、10日間の精密検査で10万円の追加コストが発生する計算です。
これは使えそうです。
精密検査を回避するには、輸出国での検査証明書の記載内容を日本の家畜衛生条件に完全に適合させることが必須です。検疫要件は品目ごと、輸出国ごとに異なるため、動物検疫所のホームページで事前確認が必要です。証明書の記載ミスや漏れがあると、精密検査行きです。
動物検疫所の輸入畜産物の検査手続には、検査申請から現物検査、精密検査の流れまで詳細な手続きが記載されており、事前確認に役立ちます。
誤揚げとは、輸入予定港とは異なる港に貨物が誤って揚げられてしまう事態です。この場合、誤揚げした港で輸入検疫を終了するか、予定港へ回送するかを選択できますが、いずれも追加の検査手続きが必要になります。
誤揚げした港で輸入検疫を終了する場合、輸入予定港に保管されている輸出国政府機関発行の検査証明書のコピーを取り寄せ、管轄動物検疫所の家畜防疫官による原本対照済確認印を受ける必要があります。このコピーを誤揚げ貨物のある港の動物検疫所に提出して検査を受けます。原本対照の手続きに時間がかかると、その分保管料が増えます。
予定港へ回送する場合は、仮陸揚げ申請が必要です。仮陸揚げのための検査は貨物の陸揚げ以前に本船上で実施され、船長または職務代行者の立会いが必要です。密閉式コンテナでコンテナのまま陸揚げされ、開扉されずに保管された後、同一埠頭から積み出される貨物は、書類検査で仮陸揚げが認められることもあります。
誤揚げは船会社や物流業者のミスで発生しますが、通関業者がその後処理を担当することが多く、手続きを知っておくと対応がスムーズです。誤揚げ発生時は速やかに動物検疫所と連絡を取り、検査証明書の原本確認手続きまたは仮陸揚げ申請を進めることで、損失を最小限に抑えられます。