即時撤廃とは関税削減EPA利用の基本

即時撤廃とは経済連携協定発効と同時に関税が0%になる制度です。通関業務従事者が知っておくべき適用条件、原産地証明の注意点、実務上の落とし穴まで具体例とともに解説。あなたの申告は本当に即時撤廃の恩恵を受けられていますか?

即時撤廃とは関税削減の仕組み

即時撤廃を理解していても原産地証明の不備で追徴税額が19百万円発生した事例があります。

即時撤廃の3つの要点
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EPA発効と同時に関税0%

協定が発効した日から即座に関税率が撤廃され、輸入者は関税負担なしで通関可能になる

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原産地証明が必須条件

適用には原産地証明書または原産地申告文が必要で、不備があれば協定税率を受けられない

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段階的撤廃との違い

段階的撤廃は数年かけて引き下げる方式で、即時撤廃は発効日から100%の恩恵を受けられる

即時撤廃の基本的な定義と適用範囲


即時撤廃とは、経済連携協定(EPA)または自由貿易協定(FTA)が発効した日に、対象品目の関税率が0%になる制度です。協定によって関税削減のパターンは複数ありますが、即時撤廃は「A」という記号で表示されることが一般的です。
発効と同時に関税負担が完全になくなります。
日EU経済連携協定では、化学工業製品や繊維・繊維製品などが即時撤廃の対象となっており、品目数ベースで約94%が最終的に関税撤廃されます。工業製品輸出の即時撤廃比率は品目数ベースで86.6%を超え、これにより日本が支払う関税は年間約2,800億円程度削減されると試算されています。
参考)日EU経済連携協定(FTA/EPA)原産地規則に基づく証明手…


即時撤廃の対象品目かどうかは、協定ごとの譲許表で確認できます。輸入者は各協定の譲許内容を事前に調べ、自社の取扱品目がどのカテゴリに該当するか把握しておく必要があります。通関業務従事者にとって、この確認作業は日常的な業務の一部です。​

即時撤廃と段階的撤廃の違い

関税削減には即時撤廃以外に「段階的撤廃」という方式があります。段階的撤廃は、協定発効後に毎年均等または不均等に関税率を引き下げ、最終的に0%にする方式です。
参考)EPAとFTAについて - SANKYU-物流情報サービス(…


例えば11年目に撤廃される品目では、協定発効日から11回の毎年均等な関税引下げが行われ、11年目で関税率が0%になります。つまり東京ドーム約60個分の敷地面積に相当する大規模な輸入拠点であっても、段階的撤廃品目は初年度から完全な恩恵を受けられません。
参考)https://www.customs.go.jp/kyotsu/kokusai/news/rcep/rcep.pdf

即時撤廃なら協定発効日から100%の関税削減効果を得られます。
日英EPAでは、鉄道車両や自動車部品の一部が即時撤廃の対象となり、協定発効後すぐに関税が撤廃されました。一方で乗用車の英国への輸出は段階的に引き下げられ、2026年2月に関税撤廃される予定でした。この違いにより、品目によってコスト削減効果が現れる時期が大きく異なります。
参考)日英EPAで大筋合意 自動車・鉄道部品の関税即時撤廃 - 日…

通関業務では、取扱品目が即時撤廃か段階的撤廃かを正確に把握し、適用税率を間違えないことが重要です。段階的撤廃の場合、発効後の年数に応じた税率を毎年確認する必要があります。

即時撤廃のメリットとコスト削減効果

即時撤廃の最大のメリットは、協定発効と同時に関税負担がゼロになることです。輸入者は関税分のコストを削減でき、商品価格の競争力が向上します。​
具体的には、従来10%の関税がかかっていた商品を1億円分輸入する場合、即時撤廃により1,000万円のコストが削減されます。これは中小企業の年間利益に匹敵する金額です。通関業務従事者は、この削減効果を輸入者に正確に伝える役割を担います。
日EU・EPAでは年間約2,800億円の関税削減効果があります。
参考)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/europe/eu/epa/pdf/euepa202003.pdf

ただし即時撤廃の恩恵を受けるには、原産地証明書または原産地申告文が必要です。これらの書類に不備があると、協定税率が適用されず通常税率が課されます。実際に原産地証明書の証拠書類に不備があった場合、関税削減相当額と合わせてペナルティが課される事例があります。
通関業務では、即時撤廃のメリットを最大限活用するために、原産地証明の正確性を事前にチェックする体制が必要です。書類不備による追徴課税は企業にとって大きな損失となるため、申告前の確認が欠かせません。

即時撤廃が適用される主な品目例

即時撤廃の対象品目は協定ごとに異なりますが、日EU経済連携協定では化学工業製品、繊維・繊維製品、皮革製品などが即時撤廃の対象です。これらは工業製品の中でも貿易量が多く、関税撤廃の効果が大きい品目群です。​
日英EPAでは、鉄道車両や自動車部品の一部、航空機向けカーボンファイバー製品やエンジン部品が即時撤廃の対象となりました。これにより英国への輸出企業は協定発効と同時にコスト削減効果を享受できます。​
品目ごとの撤廃スケジュールは譲許表で確認します。
通関業務従事者は、取扱品目のHSコード(関税率表番号)と協定ごとの譲許内容を照合し、即時撤廃対象かどうかを判断します。この作業を誤ると、適用できる優遇税率を見逃したり、逆に適用できない税率で申告してしまったりするリスクがあります。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/download/gensanchi/eparo.pdf


実務では、協定ごとの譲許表をデータベース化し、HSコードを入力すれば自動的に適用税率が表示されるシステムを導入する企業も増えています。こうしたツールを活用することで、申告ミスを減らし業務効率を高めることが可能です。

即時撤廃を活用した通関業務の独自視点

即時撤廃を最大限活用するには、協定発効前の準備が重要です。協定発効日以降の輸入分から即時撤廃が適用されるため、発効前に輸入した貨物は対象外となります。
そのため輸入者の中には、協定発効日を見越して船積みスケジュールを調整するケースがあります。発効日直後に大量の貨物が到着するよう手配することで、即時撤廃のメリットを最大化できます。通関業務従事者は、こうした輸入者のニーズに応じて最適な通関タイミングをアドバイスする役割を担います。
到着即時輸入申告を活用すればさらに効率化できます。
参考)https://www.customs.go.jp/kaisei/zeikantsutatsu/kobetsu/TU-H15z0889.pdf

到着即時輸入申告扱いとは、貨物の保税地域搬入前に輸入申告を行い、到着後すぐに輸入許可を受けられる制度です。コンテナ詰めされた海上貨物が対象で、審査終了後は保税地域搬入前でも申告できます。この制度を使えば、協定発効日に貨物が到着した場合でも迅速に通関を完了し、即時撤廃の恩恵を即座に受けられます。​
また複数のEPA/FTAが同時に利用可能な場合、どの協定を適用するかの選択も重要です。同じ品目でも協定によって原産地規則や証明手続きが異なるため、最も有利な協定を選ぶことでコストと手間を削減できます。通関業務では、こうした戦略的な判断力が求められます。
JETROのEPA/FTA解説資料には、即時撤廃を含む関税譲許の詳細情報が掲載されています。
税関の不備のある原産地証明書の取扱いに関する資料では、原産地証明の具体的なチェックポイントが確認できます。
税関の輸入事後調査による非違事例では、原産地証明の不備による追徴税額の実例が紹介されています。
通関業務従事者は、即時撤廃の制度を正確に理解し、輸入者に最大限のメリットを提供できるよう日々の業務に取り組むことが求められます。協定内容の変更や新たな協定の発効にも常にアンテナを張り、最新情報をキャッチアップすることが重要です。




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