フォームaを出せば必ず関税が無税になると思って申告したら、追徴課税10%が課された人がいます。
フォームa(Form A)とは、「一般特恵制度原産地証明書様式A」の略称で、GSP(Generalized System of Preferences=一般特恵関税制度)に基づいて発行される原産地証明書のことです。日本が1971年に創設したこの制度は、開発途上国からの輸入品に対して通常の関税よりも低い「特恵税率」を適用することで、その国の経済発展を支援することを目的としています。
制度の仕組みはシンプルです。輸出国の税関や商工会議所などの発給機関が、商品の原産地を証明するフォームaを発行する。それを日本の税関に輸入申告時に提出することで、特恵税率の適用を受けられる、という流れです。
重要なのは、フォームaは「輸入者」が用意するものではないという点です。輸出国側の発給機関が発行するものであり、日本側の輸入者は現地の輸出業者に対して「フォームaを取得してほしい」と依頼する立場になります。これが基本です。
フォームaが適用される特恵関税の仕組みを整理すると、以下のようになります。
| 区分 | 対象品目 | 税率の目安 |
|---|---|---|
| 一般特恵(GSP) | 鉱工業品(HS25〜97類)は原則全品目 | 原則無税(一部係数減税) |
| 一般特恵(GSP) | 農水産品(HS1〜24類)は指定品目のみ | 品目ごとに個別設定 |
| 特別特恵(LDC) | 後発開発途上国47か国からの産品 | 例外品目を除き原則無税・無枠 |
鉱工業品は原則すべて特恵の対象です。ただし、関税暫定措置法別表第4に掲げる「特恵関税例外品目」は除かれており、石油製品・合板などが含まれます。農水産品はポジティブリスト方式のため、明示的に指定された約400品目のみが対象です。これが条件です。
なお、特恵受益国であっても経済発展が先進国水準に達した国は「卒業」として除外されることがあります。たとえば2019年4月1日からは、中国・メキシコ・タイ・マレーシア・ブラジルの5か国が多くの品目でGSP適用除外(全面または部分的な「卒業」)となりました。意外ですね。これまで活用していた企業は大きな影響を受けました。
税関の「原産地規則ポータル」では特恵受益国一覧や適用除外品目の最新情報を確認できます。定期的なチェックが必要です。
参考:GSP特恵受益国・地域一覧や原産地規則の詳細はこちらで確認できます。
フォームaを実際に手続きに活用するには、取得から提出までの流れを正しく把握しておく必要があります。特に「誰が・どこで・いつ取得するか」を間違えると、通関が遅延したり特恵関税が受けられなくなったりします。
まず発給の主体は輸出国側です。輸出者が現地の発給機関(税関、商工会議所など。国によって異なる)に申告し、フォームaの発給を受けます。日本の輸入者がすることは、事前に「フォームaを発給してもらうよう」輸出業者に依頼し、原本を日本に送付してもらうことです。
発給のタイミングも重要です。原則として貨物の船積み時またはそれ以前に発給されることが前提ですが、やむを得ない場合には「事後発給」も認められています。ただし、事後発給の場合は証明書に「ISSUED RETROSPECTIVELY(遡及発給)」と記載される必要があります。
提出のルールをまとめると次のとおりです。
有効期限には注意が必要です。発給日から1年を過ぎたフォームaは無効として扱われ、特恵関税の適用を受けることができません。たとえば1月5日に発給されたフォームaは、翌年の1月4日までに日本の税関に提出する必要があります。輸送が遅延した場合などに期限を過ぎてしまうケースがあるため、早めの手配が原則です。
20万円以下の少額貨物は提出不要という点も押さえておきましょう。ただし、この「20万円」はインボイス価格ではなく「課税価格」です。JETROのガイドラインにも明示されている点で、少額と思って提出を省略したら課税価格が20万円を超えていた、というミスが実務では起きています。これは痛いですね。
また、フォームaを提出できなかったとしても、「担保を提供して輸入許可前引取り承認を受ける」ことで事後提出という対応も可能です。災害などのやむを得ない事情がある場合も税関長が認めれば事後提出が認められます。
参考:特恵原産地証明書の提出タイミングや事後提出制度の詳細はこちら。
税関カスタムスアンサー|特恵原産地証明書について(1502)
フォームaさえ持参すれば特恵関税は必ず適用される、と思い込んでいる方は少なくありません。しかし実際には、フォームaを提出してもGSP特恵税率の適用を受けられないケースが複数あります。これは使えそうですね(逆に言えば、知らないと損する知識です)。
まず大きな落とし穴は「特恵関税例外品目」の存在です。関税暫定措置法別表第4に掲げられた品目は、国内産業保護の観点から特恵対象から除外されています。代表的なものは以下の通りです。
たとえばベトナムから衣料品を輸入する際、フォームaを取得して提出しても、品目が「衣類(HS61〜62類)」であれば一般特恵(GSP)の適用は受けられません。ただし、ベトナムはEPA締結国でもあるため、日アセアンEPAや日ベトナムEPAに基づく特定原産地証明書を使えば特恵税率の恩恵を受けられます。品目と原産国の組み合わせが条件です。
次の落とし穴は「EPA締結国ではGSPが原則使えない」点です。日本がEPAを締結している国(例:タイ、インドネシア、インドなど)については、EPA税率が一般特恵税率に優先します。そのため、EPA締結国からの輸入では、フォームaではなくEPA用の「特定原産地証明書」が必要になります。フォームaでは特恵適用不可となるケースが出てきます。
さらに「積送基準」の問題もあります。フォームaを利用するには、原則として原産国から日本へ直送されることが条件です。輸送の都合で第三国を経由する場合は、通し船荷証券(スルーB/L)など第三国での加工・転用がないことを証明する書類が別途必要になります。第三国経由の場合は要注意です。
一方で、特別特恵受益国(LDC:後発開発途上国、47か国)からの輸入であれば、例外品目を除くほぼ全品目が無税・無枠になります。バングラデシュ、カンボジア、ミャンマー、エチオピアなどが該当します。これは使えそうです。
参考:JETROが公開する特恵関税制度の適用条件・例外品目の解説はこちら。
フォームaの内容に不備があると、特恵関税の適用が否認されます。つまり、せっかく輸出国でフォームaを取得しても、記載ミスがあれば通常税率で課税されてしまいます。実務では「書類は揃っているのに税関で弾かれた」というトラブルが少なくありません。厳しいところですね。
フォームaは全部で12の記載欄から構成されています。主な欄と確認ポイントを以下にまとめます。
| 欄番号 | 記載内容 | よくある不備 |
|---|---|---|
| 1欄 | 輸出者の名称・住所 | 住所・国名の記載漏れ |
| 2欄 | 輸入者(荷受人)の名称・住所 | 住所・国名の不記載、余分な情報の記載 |
| 4欄 | 船積地点・輸入国 | 輸入国の記載漏れ |
| 8欄 | 原産地基準(PまたはW+数値) | 基準の誤記・不記載 |
| 11欄 | 発給機関の認証(署名・スタンプ) | 印影脱落・署名不備 |
| 12欄 | 輸出者の申告(署名・日付) | 日付の欠落・船積前の日付誤り |
中でも11欄(発給機関の認証)の不備は致命的です。発給当局の署名や印影が欠けている場合、「原産地証明書の真正性」に直結するため、軽微な誤りとして扱われることなく特恵が否認されます。これは必須の確認事項です。
8欄の「原産地基準」も見落としが多いポイントです。完全生産品であれば「P」、実質加工品であれば「W」の後に付加価値の割合(例:W45など)を記載します。この記載が抜けていたり、実際の製造実態と合わない数値が記入されていたりすると、事後確認の対象になります。
フォームaの不備に関しては、「明らかな印字の誤り(タイプミスなど)」は有効と判断される場合もありますが、判断は税関長の裁量によります。コピーとして提出した場合は問答無用で無効です。原本が必須です。
書類の真正性が疑われる場合、日本の税関は輸出国の発給機関に対して「事後確認」を求めることができます。事後確認で原産性が否認された場合は、輸入許可後であっても追徴課税が行われ、不足税額に加えて過少申告加算税(10%)が課されます。輸入許可から5年遡って調査が入ることもあります。
不備ゼロが原則です。書類を受け取ったら輸入申告前に必ず全欄をチェックする習慣をつけましょう。
参考:東京商工会議所がまとめた原産地証明書の不備事例と対策はこちら。
フォームaとEPA用の「特定原産地証明書」は、どちらも特恵関税を適用するための原産地証明書ですが、使い分けのルールを知らないと、申告を誤るリスクがあります。実際に使う場面でどちらを選ぶべきか、判断軸を整理します。
結論から言えば、「相手国が日本とEPAを締結しているかどうか」がまず最初の分岐点です。EPAを締結していない国からの輸入なら、GSP(フォームa)を使います。EPA締結国であれば、基本的にEPA用の特定原産地証明書を使います。
ただし例外があります。EPA締結国であっても、当該品目についてEPAでは関税の撤廃・削減の約束がない場合や、一般特恵の税率がEPA税率を下回る場合は、引き続きフォームa(GSP特恵)が使えます。つまり〇〇が条件です。
さらにもう一つの違いとして、発給機関の差があります。
EPA用の特定原産地証明書の有効期限は、原則として発給日から1年(日フィリピンEPAのみ6か月)です。フォームaと同じく、期限切れでの提出は無効です。有効期限には期限があります。
もう一点、重要な独自視点として「フォームaが廃止・縮小されていく流れ」があります。近年は各国とのEPA締結が進んでおり、フォームaを使えた国が「GSP卒業」や「EPA移行」によって、フォームaの対象から外れていくケースが増えています。特に東南アジア各国(タイ・インドネシア・マレーシアなど)はEPA締結済みであり、多くの品目でフォームaの出番が少なくなっています。自国関与の概念が異なる点も含め、定期的なアップデートが必要です。
現時点でフォームaが有効活用できる代表的な国・地域としては、インド(一部品目はEPA税率を一般特恵が下回る)、バングラデシュ・カンボジア・ラオスなどのLDC(後発開発途上国)が挙げられます。この情報を得た輸入担当者であれば、仕入れ先の国と品目に応じて証明書の種類を的確に判断できます。
判断に迷う場合は、税関の「事前教示制度」を活用するのが確実です。文書で照会すれば30日以内に回答を受け取れ、その回答書は発出後3年間、輸入申告時の審査で尊重されます。これは使えそうです。
参考:ジェトロが公開するEPA/FTAの基礎知識と証明書の使い分けガイドはこちら。
JETRO|これだけは知っておきたいEPA/FTA(PDF)