航空貨物では輸入者が支払う前に商品を受け取れます。
d/p貿易とは「Documents Against Payment(手形支払書類渡し)」の略称で、輸入者が銀行で為替手形の代金を支払った時点で初めて船荷証券(B/L)などの船積書類を受け取れる決済方法です。支払いと書類の引き渡しが同時に行われるため、輸出者にとっては代金未回収のリスクを低減できる仕組みとなっています。
参考)D/P - 貿易用語集 - - 内外トランスライン株式会社
通関業務従事者にとって、d/p決済は信用状(L/C)を使わない荷為替手形決済の一つとして頻繁に扱う決済方式です。輸入者は代金を支払わなければB/Lを入手できないため、貨物を税関から引き取ることができません。
参考)決済条件のD/A、D/Pについて – 国際取引統…
この決済方法は、取引先との信頼関係が一定以上ある場合や、比較的短期間で決済が完了する取引で採用されることが多くなります。L/C決済と比較すると銀行手数料が抑えられる一方で、輸出者は銀行の支払保証を受けられないという特徴があります。
参考)https://www.digima-japan.com/knowhow/world/d-globalbusiness-250306-2.php
d/p決済は輸出者、輸入者、銀行の三者が関与して進行します。まず輸出者が貨物を船積みし、B/L、インボイス、パッキングリストなどの貿易書類を準備します。輸出者は取引銀行(買取銀行)を通じて、これらの書類と為替手形を輸入者の銀行(呈示銀行)に送付します。
輸入者側では、呈示銀行から為替手形の提示を受けます。輸入者が銀行に代金を支払うと、銀行は船積書類を輸入者に引き渡します。輸入者は受け取ったB/Lに裏書きをして海貨業者に渡し、通関手続きを進めます。
最終的に、輸入者から支払われた代金が銀行経由で輸出者に送金され、取引が完了します。つまり支払いと引き換えに書類が渡されるということですね。
参考)荷為替手形とは?特徴・記載内容・ポイントをわかりやすく解説
この流れの中で通関業務従事者が関与するのは、輸入者がB/Lを取得した後のタイミングです。通関業者は輸入者から委託を受け、B/Lなどの船積書類に基づいて輸入申告を行い、税関の審査や検査を経て関税と消費税を支払い、輸入許可書を取得します。
貿易取引における主な決済方法には、L/C決済、d/p決済、d/a決済、TT送金決済があります。それぞれリスクの大きさが異なるため、取引相手との信頼関係や取引額に応じて使い分けが必要です。
参考)輸出取引における決済方式の変更を依頼された際の留意点:日本
輸出者にとってはL/C決済、d/p決済、d/a決済、TT決済の順にリスクが高くなります。L/C決済では銀行が支払いを保証するため最もリスクが低く、一方TT送金決済では輸出者が先に貨物を送ってから代金を受け取るため最もリスクが高くなります。
d/p決済とd/a決済の違いは、書類を受け取るタイミングです。d/p決済では輸入者が為替手形を決済しなければ書類を受け取れません。一方d/a決済では、輸入者が手形金額を期日までに支払うことを約束(引き受け)すれば書類を受け取れます。
参考)貿易取引における決済方法 1 - L/C, D/A, D/P…
| 決済方法 | 銀行保証 | 輸出者リスク | 輸入者の資金負担 |
|---|---|---|---|
| L/C決済 | あり | 低い | 高い(銀行手数料負担) |
| d/p決済 | なし | 中程度 | 中程度(支払い後に貨物) |
| d/a決済 | なし | 高い | 低い(貨物確認後に支払い) |
| TT送金 | なし | 非常に高い | 低い |
支払時期でもリスクが変わります。一覧払いよりユーザンス(後払い)の方が、d/pよりd/aの方がリスクは高くなります。
d/p決済には輸入者が船積書類の引き取りを拒否し、代金の支払いも拒否するというリスクが潜んでいます。輸出者がすでに貨物を送った後で書類の引き取りを拒否されると、商品代金を受け取ることができなくなります。
参考)「D/P、D/A決済」に潜む、輸出者のリスクを知ろう!
輸入国の経済状況(為替相場など)が急激に変化したり、輸入者自身の経営状況が悪化したりした際に、このような不測の事態が起こる可能性があります。d/p決済はB/Lと商品代金の交換をベースに成り立っているため、書類の引き取り拒否は輸出者にとって深刻な問題です。
さらに問題を複雑にするのが、貨物の返送コストです。タイから米国など長距離の場合、返送費用が非常に高額になり現実的ではありません。このため輸出者は現地で大幅な値引きをして売却せざるを得なくなります。
参考)Document against payment
L/C決済と異なり、d/p決済では輸出者の銀行が支払い義務を負いません。つまり輸入者が為替手形の支払いを拒否した場合、輸出者は自力で代金を回収するしかないということですね。
通関業務従事者としては、輸入者がd/p決済で支払いを滞らせているケースに遭遇した際、貨物が港で長期滞留する可能性を考慮する必要があります。デマレージ(コンテナ延滞料金)が発生し、最終的に輸入者の負担が増大するリスクがあります。
航空便を使用する場合、d/p決済には海上輸送とは異なる特殊なリスクが存在します。航空貨物運送状(Air Waybill:AWB)は船荷証券(B/L)と異なり、有価証券ではありません。
参考)https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_enkatu/manual_2006/pdf/eu_02.pdf
この違いが実務に大きな影響を与えます。航空便では、輸入者が銀行で代金を支払う前に貨物を受け取れるケースがあります。これはB/Lが貨物の引き換え券として機能するのに対し、AWBにはその機能がないためです。
輸入者が航空会社に貨物到着通知を受けた際、指定した航空貨物取扱業者に通関手続きを委託します。L/Cの場合などでAWBの荷受人欄に銀行が指定されていれば、銀行から航空貨物引渡指図書(Release Order)を発行してもらう必要があります。
しかしd/p決済の場合、この管理が甘くなる可能性があります。輸入者が支払いを済ませる前に貨物を入手できてしまうと、輸出者は代金回収の手段を失います。
このため農林水産省の輸出マニュアルでも、航空便使用の場合は送金による前受け決済が望ましいとされています。通関業務従事者は、航空貨物のd/p決済案件では輸入者の支払い状況を特に慎重に確認する必要があります。
丙号T/R(輸入担保荷物保管証)を差し入れることで荷物を引き取る実務がありますが、これは銀行との信頼関係があって初めて成立します。信用が不確かな取引先の場合、この手続きが適切に機能しない可能性も考慮すべきですね。
参考)信用状付荷為替決済(L/C決済)とは? 仕組み、為替手形・開…
通関業務従事者がd/p決済案件で直面しやすいトラブルとして、輸入者の資金繰り悪化による支払い遅延があります。この場合、貨物が保税地域で滞留し続け、保管料が日々増加していきます。
このリスクを回避するには、輸入者から通関手続きの委託を受ける際に、d/p決済であることを確認し、支払い完了予定日を明確にしておくことが重要です。支払い予定日から逆算して、いつまでに船積書類が銀行に到着するかを輸入者に確認させましょう。
もう一つの独自視点は、d/p決済案件での検査対応です。税関検査が入った場合、輸入者がまだB/Lを取得していないタイミングで検査指定される可能性があります。通関業者として検査の立ち会いが必要になりますが、輸入者が最終的に支払いを拒否すると、検査費用の回収が困難になります。
このような状況を避けるため、d/p決済案件では事前に検査費用の取り扱いについて輸入者と合意しておくことをおすすめします。具体的には、検査が発生した場合の費用負担について、通関委託契約書に明記する方法が考えられます。
また、輸入者の経営状況が不安定な場合、d/p決済から前払い(TT送金)への変更を輸出者に打診するよう輸入者にアドバイスすることも、通関業務従事者としての付加価値提供になります。ただし、これは輸入者の立場を悪くする可能性もあるため、慎重な判断が必要です。
参考として、JETROの輸出取引における決済方式変更の留意点に関する情報が役立ちます。
JETRO:輸出取引における決済方式の変更を依頼された際の留意点
この資料では、決済方法ごとのリスク比較や、変更を依頼された際の対応方法が詳しく解説されています。通関業務従事者が輸入者に助言する際の参考資料として活用できますね。