荷為替手形決済の流れと仕組み解説

荷為替手形決済は通関業務で欠かせない貿易決済方法ですが、銀行を介した複雑な流れやD/P・D/Aなど方式の違いを正確に理解していますか?船荷証券や為替手形の取扱いミスが代金回収リスクに直結するため、実務担当者には正確な知識が求められます。この記事では、荷為替手形決済の基本的な流れから各決済方式の特徴、実務上の注意点まで詳しく解説します。あなたの業務に役立つ情報が見つかるでしょうか?

荷為替手形決済の流れ

D/P決済でも手形引受前に書類を渡すと代金回収が困難になります。


この記事の3ポイント
📋
荷為替手形決済の基本構造

輸出者・輸入者・両国の銀行が関与する4者間取引で、船荷証券を担保に為替手形を発行し代金を回収する仕組み

🔄
決済方式の違いとリスク

D/P(支払渡し)・D/A(引受渡し)・L/C(信用状付き)では書類引渡しタイミングと代金回収リスクが大きく異なる

⚠️
実務上の重要ポイント

手形は2通作成が原則、印紙税は10万円以上で一律200円、書類の紛失・延着リスクは銀行が責任を負わない

荷為替手形決済の基本的な取引構造

荷為替手形決済は、国際貿易における代金決済方法の一つで、輸出者と輸入者の間に両国の銀行が介在する4者間取引です。


参考)荷為替手形とは?仕組みや仕訳をわかりやすく解説


この決済方式では、輸出者が商品を船積みした後に船会社から受け取る船荷証券(B/L)を担保として為替手形を発行します。船荷証券は商品の引渡請求権を表す有価証券であり、これを持っていなければ輸入者は商品を受け取れません。


参考)荷為替手形決済の仕組みと為替手形の形式 - BUSINESS…


つまり基本構造はシンプルです。


輸出者は「商品と引き換えに代金を受け取る」という国内取引と同じ原則を、遠隔地にいる輸入者との間で実現するために、船荷証券と為替手形を組み合わせています。これは国内の代金引換配送(キャッシュ・オン・デリバリー)と同じ効果を国際取引で発揮する仕組みといえます。

荷為替手形決済の6つのステップ

荷為替手形決済は以下の6段階で進行します。


  1. 商品船積と船荷証券の受領:輸出者が商品を船積みし、船会社から船荷証券(B/L)を受け取る
  2. 為替手形の発行:輸出者が商品代金相当額の為替手形を振り出す
  3. 仕向銀行への提出:輸出者が為替手形と船荷証券をセットにして自社の取引銀行(仕向銀行)に持ち込み、代金取立を依頼する
  4. 取立銀行への送付:仕向銀行が輸入国にあるコルレス銀行(取立銀行)に荷為替手形を送付する
  5. 輸入者への呈示と決済:取立銀行が輸入者に為替手形を呈示し、輸入者が代金を支払うまたは手形を引き受けることで船荷証券を受け取る

    参考)貿易特有のD/P決済、D/A決済(信用状なし荷為替手形決済)…


  6. 代金の送金:取立銀行が受領した代金を仕向銀行経由で輸出者に送金する​

各ステップが順序通り進むことが重要です。


この流れでは、輸入者が代金を支払わない限り船荷証券を入手できないため、輸出者は代金回収の確実性を高められます。一方で、書類の輸送中に紛失や延着が発生するリスクもあり、そのため為替手形は通常2通作成されます。

荷為替手形におけるコルレス銀行の役割

コルレス銀行とは、送金の支払委託や手形の取立依頼などについてあらかじめ取決めを行っている他の銀行、つまり「取引先銀行」を指します。

荷為替手形決済では、輸出地の仕向銀行が輸入地のコルレス銀行に書類を送付し、そのコルレス銀行(取立銀行)が輸入者への手形呈示と代金回収を代行します。国際間で直接取引のない銀行同士でも、コルレス関係を通じて決済ネットワークを構築できるのです。


これが国際決済の基盤となっています。


ただし、取立銀行の責めに帰すべき事由や、輸送中の紛失・損傷・延着などの事故によって生じた損害については、仕向銀行は責任を負わないのが一般的です。また取立銀行の営業停止や支払不能、支払地の法令による回収不能なども免責事項となります。


参考)https://www.shinkin.co.jp/himeshin/guideline/pdf_kitei/gaikoku_tegatatoritate.pdf

荷為替手形決済における船荷証券の重要性

船荷証券(Bill of Lading:B/L)は、船会社が貨物を受け取ったことを証明し、指定港で貨物を引き渡す義務を負うことを示す有価証券です。


荷為替手形決済では、この船荷証券が為替手形に添付されることで担保としての機能を果たします。銀行は船荷証券という商品の支配権を握っているため、手形の買取(割引)リスクが低いと判断し、輸出者への早期資金化に応じやすくなります。


船荷証券が取引の安全弁です。


輸入者は船荷証券を入手しなければ船会社から商品を受け取れないため、代金を支払わざるを得ない立場に置かれます。この仕組みにより、遠隔地間の取引でも「商品と代金の同時交換」という原則が実現されるのです。

荷為替手形の手形割引による早期資金化

輸出者は仕向銀行に荷為替手形を持ち込む際、単に取立を依頼するだけでなく、手形を買い取ってもらう(手形割引する)ことも可能です。

手形割引とは、満期前の手形を銀行が譲り受け、手形金額から満期までの利息(割引料)を差し引いた金額を輸出者に交付する融資方法です。例えば額面5万円の荷為替手形を割引料5,000円で買い取ってもらった場合、輸出者は45,000円を即座に当座預金に受け取れます。


つまり資金繰りが改善されます。


銀行にとって荷為替手形は船荷証券という担保が付いているため、通常の手形より買取リスクが低く、割引に応じやすいのです。輸出者は船積後すぐに代金を現金化でき、満期まで待つ必要がなくなります。

荷為替手形決済の種類と特徴

信用状なし荷為替手形決済のD/PとD/A

信用状なし荷為替手形決済には、D/P(Documents against Payment:支払渡し)とD/A(Documents against Acceptance:引受渡し)の2種類があります。


D/P決済では、取立銀行が輸入者に為替手形を呈示し、輸入者が代金を支払った時点で船荷証券などの船積書類を引き渡します。一覧払手形が使われるため、輸入者は手形を見たらただちに支払わなければなりません。
参考)【荷為替手形の存在💵】手形に関する基礎知識とその決済方法につ…


支払と同時に書類が渡されます。


D/A決済では、輸入者が手形を「引き受ける」(将来の支払いを約束する)だけで船積書類を受け取れます。期限付手形が使われ、輸入者は満期日まで実際の支払いを延期できるため、D/Pより代金回収リスクが高くなります。対抗手段としては輸出手形保険でリスク軽減する程度しかありません。
参考)スタンドバイ信用状にD/Pないしは送金決済方式を組み合わせた…


信用状付荷為替手形決済(L/C決済)の仕組み

信用状付荷為替手形決済(Letter of Credit:L/C決済)は、輸入者の取引銀行が発行する信用状と荷為替手形を組み合わせた決済方法です。

信用状とは、輸入者の依頼により銀行が発行する支払確約書で、輸出者が信用状の条件通りに船積書類を提示すれば、銀行が代金支払いを保証します。つまり輸出者にとっては輸入者の支払能力に関わらず、銀行の信用で代金回収が確実になります。


双方の負担が軽減されます。


L/C決済では、通知銀行(輸出地の銀行)が荷為替手形と信用状の内容を照合した上で輸出者への支払いを行い、その後発行銀行(輸入地の銀行)に荷為替手形を送付して代金を請求します。輸入者は発行銀行に代金を支払うか手形期日までの支払いを保証することで船荷証券を入手します。

荷為替手形決済における為替手形の記載事項

為替手形(Bill of Exchange)には、手形法上の必須記載事項があります。

実務で使用される為替手形には以下の項目が記載されます:

  • 為替手形である旨の文字手形番号(輸出者の整理番号)​
  • 手形金額(数字表記と英字スペルアウトの両方)​
  • 振出地と振出日(必須記載事項)​
  • 手形期限一覧払いの場合は「At sight」、期限付きの場合は「60 days after sight」など)​
  • 受取人(通常は仕向銀行で「or order」と記載して裏書譲渡可能とする)​
  • 名宛人(支払人=輸入者)​
  • 振出人(輸出者)​

D/P決済では必ず一覧払いです。


為替手形は2通(第1券・第2券)作成され、到着遅延や紛失に備えて別便で送付されます。第1券で決済されると第2券は無効となります。日本で発行する場合、額面10万円以上の荷為替手形には一律200円の印紙税がかかりますが、貼付・消印は第1券のみで済みます。

荷為替手形決済のリスクと注意点

荷為替手形決済には複数のリスクが存在します。


参考)https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_enkatu/manual_2006/pdf/malay_02.pdf


最大のリスクは不渡り(支払人が支払日に資金不足で手形が引き落とされない状態)です。不渡りが発生すると支払人の信用度が下がり、取引先や金融機関からの信用を失います。さらに6ヶ月以内に2回不渡りを出すと取引停止処分を受け、2年間取引や融資ができなくなり、事実上の倒産となります。


参考)為替手形とは?仕組みや利用方法、メリット・デメリットをわかり…

代金回収リスクの大きさが異なります。


D/A方式では手形引受時点で書類が引き渡されるため、満期日に実際の支払いがなされるかどうかの不確実性が高く、輸出者にとって代金回収リスクが最も大きくなります。一方L/C決済では銀行が支払いを保証するため、輸出者・輸入者双方のリスクを回避できます。


通関業務従事者が押さえるべき実務ポイント

通関業務従事者は、荷為替手形決済に関連する書類の正確な取扱いが求められます。


特に船荷証券(B/L)は商品の引渡請求権を表す重要書類であり、紛失や記載内容の誤りがあると輸入通関や商品受取に支障が出ます。また信用状付取引では、信用状の条件と実際の船積書類(インボイス、パッキングリスト、原産地証明書など)の内容が完全に一致していなければ、銀行は支払いを拒否できます(ディスクレパンシー)。


参考)輸出入における決済方法について!信用状?銀行送金?|サンプラ…


書類の精度が決済を左右します。


為替手形に関しても、D/P決済では必ず一覧払手形を使用し、手形期限欄を「At sight」として余白をXXXXXで埋めるなど、形式面の正確性が重要です。また手形は2通作成し、印紙税の扱いも理解しておく必要があります。実務では取引銀行との事前の取決めに従った手形様式を使用するため、銀行との連携も欠かせません。

通関業務に関する詳しい情報は、JETROの貿易実務オンライン講座が参考になります。


貿易決済で使用される為替手形の必要記載事項 | JETRO
また日本貿易振興機構(JETRO)が発行する輸出手続マニュアルには、決済方法の選択基準やリスク管理について詳細な解説があります。


日本国内の輸出手続 第2章 | 農林水産省