猟銃のスコープマウントを無承認で輸入すると、懲役刑になる可能性があります。
武器等製造法(昭和28年法律第145号)は、武器の製造事業を許可制にすることで国民経済の健全な運行に寄与しつつ、武器・猟銃等の製造・販売・取扱を規制して公共の安全を確保することを目的とした法律です。関税や輸入を扱う実務者にとって、まずこの法律の「武器」の定義を正確に把握することが、手続き全体の出発点になります。
同法第2条では、「武器」を次のように定義しています。
ここで重要なのが「産業・娯楽・スポーツ・救命の用に供するものを除く」という括弧書きです。つまり、猟銃・空気銃・捕鯨砲・もり銃・と殺銃といった民間用途の銃砲は、同法でいう「武器」の定義からは外れており、別に「猟銃等」として規定されています。
つまり、武器等製造法上の「武器」と「猟銃等」は別カテゴリです。
これを混同したまま輸入手続きを進めると、申請先や必要書類の選択を誤るリスクがあります。「武器」の製造・輸入許可は経済産業大臣が管轄し、「猟銃等」の製造・販売許可は都道府県知事が管轄するという二層構造が本法の根幹です。関税実務では、まず対象品目がどちらのカテゴリに該当するかを確認することが条件です。
武器等製造法の解釈は、単独では完結しません。実際の輸入手続きでは、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく輸入貿易管理令・輸入承認と、関税率表の品目分類(HSコード)が密接に連動しています。これは関税を扱う実務者にとって特に重要な視点です。
武器・銃砲類に関連する輸入規制は、関税率表の第93類(武器及び銃砲弾並びにこれらの部分品及び附属品)に集約されています。対象品目の主な分類は次のとおりです。
| 関税率表番号 | 品目 |
|---|---|
| 93・01 | 軍用の武器 |
| 93・02 | けん銃 |
| 93・03 | その他の火器(発射火薬により作動するもの) |
| 93・04 | その他の武器(ぬんちゃく・三節こんを除く) |
| 93・05 | 上記各項の部分品・附属品 |
| 93・06 | 爆弾・手りゅう弾・ミサイル・銃砲弾など |
| 93・07 | 刀・剣・やりなど |
第93類に該当する品目を輸入しようとする者は、原則として外為法に基づく経済産業大臣の輸入承認を取得しなければなりません。承認を受けずに輸入すると、外為法第69条の6に基づき、個人で最大10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、法人では最大10億円の罰金が科されます。これは非常に重い罰則です。
厳しいですね。
ただし、2019年(令和元年)5月7日以降、武器類・部分品・附属品の一部については輸入承認対象から除外されました。たとえば、スコープリング・スコープマウント・スリング・シェルバンド・リコイルパッド・スナップキャップ・チークパッドといった銃本体以外のアクセサリー類が対象から外れています。これにより、一定のパーツ輸入の実務負担が軽減されました。
これは使えそうです。
ただし、除外品目に該当するかは関税率表の第9305・99号の細目まで確認する必要があり、判断が難しい場合は税関や経済産業省に事前照会することが推奨されます。
関税を扱う実務の中でも特に混乱が多いのが、猟銃・空気銃などの「猟銃等」の輸入承認です。猟銃等の輸入は武器等製造法の許可証と銃刀法の所持許可の両方が絡む構造になっており、申請資格の確認が不可欠です。
散弾銃・ライフル銃(関税率表93・03)を輸入できる者は、次のいずれかに該当する必要があります。
つまり、個人の猟銃所持許可者でも、輸入の申請資格を持てるということです。意外ですね。
ただし、申請にはカタログ類・申請者の資格を証する書類の写し・機械類輸入承認申請明細書(別紙様式1)などを原本2通ずつ準備する必要があります。散弾銃・ライフル銃の場合は別紙様式2の明細書も追加で求められます。書類の漏れが通関トラブルに直結するため、経済産業省が公開している様式を事前にダウンロードして確認することを強くお勧めします。
猟銃等の場合、許可先が都道府県知事です。
武器等製造法に基づく都道府県知事の許可を取得している猟銃等製造事業者・販売事業者は、申請資格書類の一部省略手続きが認められるケースもあり、継続的に輸入を行う事業者は早めに管轄局に確認しておくと実務上の負担を減らせます。
参考:経済産業省「機械類並びに武器及び銃砲弾並びにこれらの部分品及び附属品の輸入承認申請について」
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/03_import/17_buki/index.html
武器等製造法の解釈で関税実務者が特に注意すべきなのが、武器・銃砲類の「部品(部分品)・附属品」の取り扱いです。本体は輸入できないものと認識していても、部品についての規制を見落として税関でトラブルになる事例は少なくありません。
関税定率法第21条第1項第2号では、「けん銃、小銃、機関銃及び砲ならびにこれらの銃砲弾並びにけん銃部品」を輸入してはならない貨物(輸入禁制品)として規定しています。特に注意が必要なのは、けん銃の部品が明文で禁制品に含まれている点です。たとえ「部品として申告しているから問題ない」と思っていても、けん銃部品は税関で没収・廃棄されるだけでなく、関税法違反で刑事罰の対象になり得ます。
痛いですね。
一方、散弾銃・ライフル銃の銃身・弾倉といった部品(関税率表93・05)については、輸入承認の申請は必要ですが、所持許可を持つ個人や猟銃等販売事業者であれば正規の手続きを経て輸入が可能です。散弾銃用バレルや弾倉の輸入を希望する場合、輸入承認申請書に加え、別紙様式2の明細書も必要です。
部品の種類によって手続きが全く異なります。
さらに、インターネット通販(海外ECサイト)でスコープ、バレル、グリップ、マガジン類を購入し、「個人使用なので大丈夫」という認識で個人輸入を試みる人が増えています。しかし、税関では実際の発射能力・銃刀法・武器等製造法の適用可能性を総合的に判断するため、外観が「アクセサリー」に見えても専門機関への事前照会なしに輸入を進めることは非常に危険です。事前に「輸入承認要否照会フォーム(武器類)」(経済産業省ウェブサイト上で提供)を活用することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
参考:外務省「行動計画に関するナショナル・レポート(関税定率法解説含む)」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/arms/sw/j_kk_rpt.html
武器等製造法の「武器」定義には「産業・娯楽・スポーツ・救命の用に供するものを除く」という除外規定がありますが、この境界線は実務上しばしば曖昧になります。これは、検索上位の記事ではあまり触れられていない重要な視点です。
具体的な例として、競技用シューティング向けの空気銃や競技用ライフルがあります。これらは「スポーツ用途」として武器等製造法上の「武器」からは除外されますが、引き続き「猟銃等」(空気銃)または銃刀法の規制対象として扱われるケースがあります。ただし、国際競技大会での使用を前提に一時的に輸入される場合は、関税法や外為法上の特例(一時輸入免税制度など)の活用を検討できます。
つまり「武器から除外=規制ゼロ」ではありません。
もう一つ見落とされがちなのが、モデルガン・エアソフトガン(遊戯銃)の輸入です。これらは「娯楽・スポーツ用」として武器等製造法の「武器」定義から除外される可能性がありますが、銃刀法の「けん銃に類似する外観を有する銃砲」の規定や、出力・弾速によっては「準空気銃」に該当し、銃刀法第21条の3による規制を受けることがあります。税関では、外観が遊戯銃であっても一定の基準(弾丸が1ジュール以上の運動エネルギーを持つなど)を超える場合は規制対象と判断されます。
また、「スポーツ用途」を主張して輸入しても、その後に用途が変わった場合は改めて法的リスクが生じ得ます。輸入時の申告内容と実際の使用実態に一貫性を持たせることが、後々のトラブルを防ぐ鍵です。用途を証明する書類(競技団体の推薦状・大会参加証明など)を事前に準備しておくことが実務上の重要な自衛策になります。
参考:e-Gov「武器等製造法(条文全文)」
https://laws.e-gov.go.jp/law/328AC0000000145
参考:大阪税関「インターネット通販で販売されている玩具と称した拳銃についての注意喚起」
https://www.customs.go.jp/osaka/news/20250618154721.html