CPを届け出ていない会社でも「輸出者等遵守基準」に違反すれば刑事罰の対象になります。

輸出者等遵守基準は、外国為替及び外国貿易法(外為法)第55条の10第1項に基づき、経済産業大臣が省令で定める基準です。 法律に直接根拠を持つことが、後述する外為法等遵守事項との最大の差異となっています。 blog-shiba-948(https://blog-shiba-948.com/zakki-20220111/)
遵守基準は2段構えの構成になっています。 kay-kay9800.hatenablog(https://kay-kay9800.hatenablog.com/entry/2024/10/08/120000)
- 第1段(全輸出者が対象):業として輸出を行う者すべてに適用される基準で、①組織の基本方針策定・周知、②法令遵守責任者の選任、③該非判定の実施、④取引審査(需要者・用途確認)、⑤法令違反時の報告が含まれます
- 第2段(リスト規制品の輸出者が対象):リスト規制貨物・技術を扱う輸出者に追加で課される基準で、⑥監査、⑦研修、⑧子会社指導等、⑨文書保存が含まれます(ただし努力義務)
法的義務です。外為法第55条の10第4項は「輸出者等は、輸出者等遵守基準に従い、輸出等を行わなければならない」と明文化しています。 通関業者が関与する取引においても、実際に輸出を業として行う荷主企業はこの規定に縛られているため、通関士はその実態を理解しておく必要があります。 blog-shiba-948(https://blog-shiba-948.com/zakki-20220111/)
令和4年(2022年)の改正では、それまで義務化されていなかった子会社指導等が第2段の努力義務として追加されました。 改正のたびに要求水準が上がっている点は見逃せません。 meti.go(https://www.meti.go.jp/policy/anpo/compliance_programs_pdf/r403yusyutsusyakaisei_set.pdf)
なお、遵守基準に違反した場合は外為法に基づく行政処分の対象になります。重大な違反では輸出禁止処分が科される場合もあり、荷主企業のリスク管理実態の把握は通関業者にとっても他人事ではありません。
参考リンク(外為法に基づく輸出者等遵守基準の省令・改正内容の全文)。
輸出者等遵守基準等の改正について(経済産業省)
外為法等遵守事項は、法律・省令ではなく「輸出管理内部規程の届出等について」という経済産業省の通達(別紙1)に根拠を置いています。 根拠が通達である点が、遵守基準との決定的な違いです。 blog-shiba-948(https://blog-shiba-948.com/zakki-20220111/)
遵守事項が適用されるのは、経済産業省にCP(Compliance Program:輸出管理内部規程)を届け出る企業のみです。 CP届出自体は任意ですが、「特別一般包括許可」「役務特定包括許可」などの包括許可(一般包括許可を除く)を取得・維持するには、CP受理票の交付が前提条件とされています。つまり、任意であっても実務上は必須となる企業が多いのが現実です。 kay-kay9800.hatenablog(https://kay-kay9800.hatenablog.com/entry/2024/10/08/120000)
任意、ただし包括許可には不可欠です。
外為法等遵守事項の内容は輸出者等遵守基準と基本的に同じですが、1点だけ重大な違いがあります。 遵守基準では「努力義務」とされている以下の4項目が、遵守事項では必須実施事項に格上げされます。 kay-kay9800.hatenablog(https://kay-kay9800.hatenablog.com/entry/2024/10/08/120000)
| 項目 | 遵守基準(省令) | 遵守事項(通達) |
|------|---------------|---------------|
| ⑥ 監査 | 努力義務 | 必須 |
| ⑦ 研修 | 努力義務 | 必須 |
| ⑧ 子会社指導等 | 努力義務(R4改正で追加) | 必須 |
| ⑨ 文書保存 | 努力義務 | 必須 |
包括許可を使って頻繁に輸出申告を行う荷主企業が、この4項目を適切に実施しているかどうかは、通関業者が顧客の法令遵守状況を評価する際にも参照できる重要な指標です。
参考リンク(外為法等遵守事項の全文・別紙1)。
(別紙1)外為法等遵守事項(経済産業省)
ここまでの内容を一度整理します。
| 比較軸 | 輸出者等遵守基準 | 外為法等遵守事項 |
|--------|---------------|---------------|
| 根拠 | 外為法第55条の10+省令 | 経産省通達(別紙1) |
| 法的性格 | 法的義務 | 任意(ただし包括許可の前提) |
| 対象者 | 業として輸出を行うすべての者 | CPを届け出る企業のみ |
| 監査・研修・文書保存・子会社指導 | 努力義務 | 必須実施事項 |
| 違反した場合 | 行政処分・刑事罰の可能性あり | 包括許可の取消等 |
対象者の範囲が大きく異なる点がポイントです。遵守基準は1件でも業として輸出を行えば自動的に適用されます。年間数件しか輸出しない中小企業の荷主であっても、①〜⑤の基本事項は遵守しなければなりません。
一方、遵守事項はCP届出企業のみに適用されるため、CP未届出の荷主は対象外です。ただし、CP未届出のまま特別一般包括許可などを活用しようとすることはできません。
通関業者として顧客に説明するとき、この2つを混同してしまうと誤った法令解釈を伝えることになります。「義務か任意か」「根拠が法律か通達か」という軸で整理するのが最も間違いのない方法です。
「第1段は全員対象、第2段はリスト規制品対象」という構造は、実務でどう活きるでしょうか。
第1段の基準(①〜⑤)は、たとえ非リスト規制品の輸出であっても、業として行うすべての輸出者に法的義務として課されます。 「うちはリスト規制品を輸出していないから関係ない」という認識は誤りです。 tkc(https://www.tkc.jp/cc/senkei/201206_consult02/)
具体的には。
- 責任者選任:該非判定の責任者を組織内で選任すること
- 指導・指示:輸出等業務に従事する者に対し法令遵守のための指導を行うこと
- 取引審査:需要者・用途の確認(キャッチオール規制への対応)
- 報告体制:違反のおそれが生じた際、経済産業大臣に速やかに報告する体制の整備
特に「報告体制」は見落とされがちです。 違反が発生した後ではなく、「おそれがあるとき」から報告義務が生じる設計になっています。荷主から通関書類の誤りや不審な取引の申告があった場合、通関業者としても報告義務の存在を荷主に伝えられる体制が望まれます。 meti.go(https://www.meti.go.jp/policy/anpo/compliance_programs_pdf/gaitamehoutoujyunshujikou.pdf)
厳しいところですね。
第2段(⑥〜⑨)はリスト規制品を扱う輸出者のみが対象ですが、「努力義務」という表現に油断は禁物です。遵守事項では同内容が必須化されており、将来的な改正で義務化が進む可能性も否定できません。実際、令和4年改正では⑧子会社指導等が追加されており、徐々に要求水準が高まっている傾向があります。
参考リンク(通関業者・輸出者向けの安全保障貿易管理早わかりガイド)。
「安全保障貿易管理」早わかりガイド(JETRO・2024年版)
CP受理票には有効期限があります。CP受理票の有効期限は発行から3年で、更新には最新の外為法等遵守事項を満たした内部規程の再届出が必要です。 meti.go(https://www.meti.go.jp/policy/anpo/compliance_programs.html)
これは通関実務に直結します。荷主企業が包括許可を使って輸出申告を続けている場合、その包括許可の有効性はCP受理票の有効性に依存しています。CP受理票が失効している状態で包括許可を使い続けることは、輸出管理違反に当たるリスクがあります。
注意が必要な場面です。
通関業者側としては、荷主企業からCP受理票のコピーを入手し、有効期限を管理するか、少なくとも「包括許可を使っているなら受理票の有効期限を確認してください」と案内できるかどうかが、リスク管理の分かれ目になります。
もし荷主企業が受理票の期限切れに気づかず個別許可が必要な案件を包括許可で申告してしまった場合、申告事業者責任が問われる可能性もあります。通関業者が輸出申告を代行している場合は「申告された内容の正確性の確認義務」という観点からも、CP受理票の確認は意味を持ちます。
包括許可の種類によっては、輸出管理内部規程の届出(CP届出)が前提条件でない場合もあります。代表的な「一般包括許可」は届出なしで利用できるため、一般包括許可のみ使用している荷主には外為法等遵守事項は適用されません。顧客がどの種類の包括許可を使っているかによって確認事項が変わる点を整理しておきましょう。
参考リンク(経済産業省のCP届出制度・安全保障貿易管理の自主管理促進ページ)。
企業等の自主管理の促進(経済産業省 安全保障貿易管理)