附属書Ⅱの個人お土産でも輸入承認が必要な場合があります。
ワシントン条約の実施において、日本では複数の省庁が役割分担しています。管理当局として、経済産業省が海洋からの持ち込みを除く一般的な輸出入を担当し、農林水産省が海洋で採取した品などの輸出入を管轄します。
参考)https://www.customs.go.jp/mizugiwa/washington/washington.htm
この区分は意外に思われるかもしれません。
というのも、多くの通関業務従事者は「ワシントン条約=経済産業省」と理解しがちですが、実際には輸入する品目の由来によって所管が変わるためです。たとえば、海で捕獲したサメやウナギなどの水産資源を輸入する場合は、農林水産省の管轄になります。
参考)環境省_ワシントン条約とは|ワシントン条約と種の保存法
この管轄の違いを事前に確認しないと、申請窓口を間違えて手続きが遅延するリスクがあります。
管理当局が許可書を発給する際には、科学当局の助言が必要です。日本では、陸上動物については環境省が、植物および主な水棲動物については農林水産省が科学当局として指定されています。
参考)https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-010911.html?_previewDate_=nullamp;revision=0amp;viewForce=1
科学当局は、取引が種の存続に悪影響を及ぼさないかを科学的見地から判断します。
つまり管理当局と科学当局は別の役割を持っています。管理当局は「許可書を発給する実務担当」であり、科学当局は「生物学的観点から取引の適否を助言する専門家」です。
この二重チェック体制により、商業目的の過度な取引による絶滅を防ぐ仕組みが機能しています。
参考)ワシントン条約
ワシントン条約に該当する貨物は、通関手続きができる税関官署が限定されています。税関では、これらの指定官署に専担者を配置し、迅速かつ適正な通関を行える体制を整備しています。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1808_jr.html
指定官署以外での通関は認められません。
輸入申告の際には、輸出国政府が発給したCITES輸出許可書および経済産業大臣による輸入承認証または事前確認書を税関に提出しなければなりません。これらの書類が揃っていない場合、輸入が差し止められます。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/cites_im.html
限定された官署での審査により、専門知識を持つ職員が判断することで、違反事案を水際で防ぐ効果があります。
参考:経済産業省の公式ページでは、ワシントン条約規制対象貨物の詳細な輸入手続きと申請窓口が解説されています。
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/cites_im.html
輸入承認申請は電子申請(NACCS外為法関連業務)または郵送で行えます。不備のない申請書類を受理してから発給までは、原則として1週間程度(受理した日の翌日から5営業日)かかります。
初回申請者は余裕を持った申請が必須です。
というのも、初めて申請する方は申請内容の確認や修正に時間を要することがあり、予想以上に時間がかかる場合があるためです。また郵送で申請する場合は、受理までに1週間程度かかることもあります。
申請の際には、動植物種の学術名(国際的に共通のラテン語表記)を正確に伝える必要があります。学術名を間違えると、審査が進まずに手続きが大幅に遅延します。
特に輸入スケジュールがタイトな場合は、早めの申請準備が損失を避ける鍵になります。
ワシントン条約では、附属書I・II・IIIの3段階で種を分類し、それぞれ異なる規制を設けています。附属書Iは絶滅のおそれのある種で、原則として商業目的の取引は禁止されています。学術目的や人工繁殖させたものなどのみ取引が可能です。
附属書IIは輸出国の許可が必要な種です。
参考)ワシントン条約
輸入時には輸出許可証等が必要で、外為法と関税法に基づき審査されます。附属書IIは、近い将来附属書Iの条件を満たすことを避けるために、貿易の規制が必要だとわかっているまたは推察される種が該当します。
附属書IIIは一部の国で保護が必要とされる種で、特定国からの輸出時のみ許可が必要になります。
個人がワシントン条約該当物品をお土産として携帯する場合、一定の条件を満たせば輸出入承認手続きが不要になる特例制度があります。一時的に出国して入国する者(日本からの旅行者)は、携帯品・職業用具・お土産品について特例が適用されます。
ただし附属書IIのみが対象です。
お土産品の特例が適用されるには、個人使用目的で携帯(または税関に申告の上で別送)することが条件です。しかし、相手国の税関通関時には手続きが必要な場合があるため、相手国税関への確認が不可欠です。
日本の税関では、CITES輸出許可書を所持せずにワシントン条約対象の動植物や製品を持ち帰り、輸入を差し止めされるケースが多発しています。特例の適用条件を満たしていても、輸出国側で必要な手続きを怠れば没収されるリスクがあります。
参考)ワシントン条約に違反するとどうなる?国際輸送のトラブル事例か…
ワシントン条約に違反した場合、物品は原則として没収または再輸出となります。さらに、違反の重大性によっては関税法や種の保存法に基づいて処罰の対象となり、法人が違反した場合には最大1億円の罰金が科される可能性もあります。
違反事案の過半数はワシントン条約関連です。
経済産業省によれば、2016年4月から2021年3月までの5年間に発生した輸出入違反事案のうち、過半数がワシントン条約に関連するものでした。もっとも多い原因は、対象物品が規制下にあることを知らずに発送してしまうケースです。
「装飾品だから大丈夫」や「市販されているから問題ない」と判断し、象牙や爬虫類製品を送った結果、税関で押収される事例もあります。
違反を避けるには、事前に対象物品が規制対象かを確認し、必要な手続きを確実に行うことが重要です。輸出に関与した取引先や関係者全体からヒアリングをすることも含め、違反内容を正確に把握する体制を整えましょう。
参考)ワシントン条約に違反してしまった場合
参考:税関・通関に関するトラブル対応の専門ページでは、ワシントン条約違反時の具体的な対処法が解説されています。
日本におけるワシントン条約の履行措置は、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づいています。日本は1980年にワシントン条約を批准し、「輸出貿易管理令」と「輸入貿易管理令」として法令に反映しました。
これが水際規制の法的根拠です。
外為法では、ワシントン条約該当物品の輸出入について、経済産業大臣の承認を受けなければならないと規定しています。この規制により、条約で定められた取引制限が国内法として強制力を持つことになります。
輸入承認を受けずに貨物を輸入しようとすると、外為法違反として行政処分や刑事罰の対象となります。
輸出国政府が発給したCITES輸出許可書に記載漏れや誤りがあった場合でも、一定の条件下で輸入通関が認められる場合があります。輸出国政府による記載漏れや誤りについて説明した確認レター等を入手した場合、その書類の提出をもって例外的に輸入通関が認められます。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/cites_qa.html
軽微な誤記でも通関可能な場合があります。
たとえば、学術名のスペルミスや発給日の記載ミスなど、実質的に取引内容に影響しない軽微な誤記であれば、税関や経済産業省の判断により輸入が認められることがあります。
ただし、こうした判断は個別ケースごとに行われるため、不明な点がある場合は申請窓口に事前に問い合わせることが確実です。
参考:経済産業省のFAQページでは、輸出許可書の記載誤りや軽微なミスへの対応方法が詳しく説明されています。
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/cites_qa.html
ワシントン条約が規制する動植物かどうかを調べるには、まず種の学術名を特定する必要があります。学術名が特定できたら、その種が附属書I・II・IIIのいずれに該当するかを確認します。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/cites_search.html
学術名の確認が第一歩です。
経済産業省のウェブサイトでは、ワシントン条約規制対象種の検索方法が公開されており、学術名(ラテン語表記)をもとに該当するかどうかを調べることができます。商品名や一般名では正確な判定ができないため、必ず学術名で確認することが重要です。
誤った種名で申請すると、審査が止まったり許可が下りなかったりするため、輸入業者や専門家に確認して正確な学術名を把握しましょう。
永住の目的をもって入国する者(一時的に出国して入国する者を除く)は、携帯品・職業用具・引越荷物について特例が適用されます。一方、一時的に入国する者(外国からの旅行者)は、携帯品と職業用具のみが特例対象です。
引越荷物は永住者のみ適用されます。
引越荷物として持ち込む場合にも、ワシントン条約の規制対象外となる場合があります。ただし、特例適用範囲は貨物の種類によって異なり、相手国側に同様の特例があるか、税関に申告しているか等、留意事項があるため注意が必要です。
条約適用より前に取得した象牙製品であっても、経済産業大臣の輸入承認を受けなければ日本に持ち込むことはできません。
通関業務従事者がワシントン条約該当貨物を取り扱う際には、輸入者に対して事前の手続き確認を徹底することが重要です。輸入承認証または事前確認書の取得状況、CITES輸出許可書の有無、通関可能な指定官署の確認など、複数のチェックポイントがあります。
事前確認の徹底が違反を防ぎます。
特に初めてワシントン条約該当物品を輸入する荷主に対しては、手続きの流れと所要日数を丁寧に説明し、余裕を持ったスケジュールで申請を行うよう助言することが大切です。また、学術名の確認や附属書の区分、管轄官庁の違いなど、専門的な知識を持って対応することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
輸入者が「市販されているから大丈夫」と誤解しているケースも多いため、通関士としてのチェック機能を果たすことが求められます。