料金表をホームページに載せているだけで、営業所にQRコードを貼らないと監督処分の対象になります。
通関業法第18条は、通関業者が通関業務(関連業務を含む)の料金の額を、営業所において依頼者の見やすいように掲示しなければならないと規定しています。この条文を受けて、基本通達18-1はその具体的な運用基準を定めています。
基本通達18-1が強調するのは、「依頼者に対する透明性の確保」という観点です。つまり、料金表は単に数字を貼り出せばよいわけではなく、依頼者にとって分かりやすいものでなければなりません。これが原則です。
実務上で特に重要なのは、料金表に記載しなければならない内容の範囲です。基本通達18-1では以下の2点を明示するよう求めています。
- 割増・割引が生じる場合:貨物の特性、取扱規模等の事情により料金に変動が生じるケースでは、「その適用がある旨」を料金表に記載する必要があります
- 実費を別途請求する場合:掲示した料金の額に含まれない実費(貨物検査のための開梱運搬費、遠隔地への交通費など)を別途請求するケースでは、「その旨」を料金表内に明記しなければなりません
これだけ覚えておけばOKです。料金の数字だけでなく、変動要因と実費の取り扱いを料金表の中でセットで示すことが求められています。
この基本通達18-1は、昭和47年(1972年)3月1日に蔵関第105号として制定された通関業法基本通達の一部であり、平成29年(2017年)の法改正に合わせて内容が大幅に刷新されました。現在の掲示義務のルールは旧来のものと大きく異なるため、改正前の認識のままでいると違反リスクが生じます。
参考リンク(税関):通関業法基本通達(昭和47年3月1日蔵関第105号)全文PDF — 18-1・18-2の条文を直接確認できます
平成29年(2017年)10月8日、通関業法は約50年ぶりの抜本的な改正が行われました。最大のポイントは、輸出入申告官署の自由化と、通関業務料金上限額表の廃止です。意外ですね。
それ以前の基本通達18-1には、「通関業者がその通関業務につき受けることができる料金の最高額は次の表に掲げる額とする」という規定が存在し、輸入申告1件あたり11,800円(通常の申告納税)、輸出申告1件あたり5,900円という上限額が設けられていました。
| 通関業務の種類 | 旧最高額(廃止前) |
|---|---|
| 輸出申告(通常) | 5,900円 |
| 輸入申告(申告納税) | 11,800円 |
| 輸入申告(賦課課税) | 10,500円 |
| 小額貨物・輸入簡易通関 | 8,600円 |
この上限額は1995年に改定されたもので、2017年に上限が撤廃された後も、多くの通関業者が慣例的にほぼ同額を請求し続けていました。日本通運は2025年12月、1995年以来30年ぶりとなる料金改定を発表し、2026年1月から平均25%引き上げると公表しています。これは使えそうです。
法改正後、基本通達18-1の内容は根本的に変わりました。上限額表の規定は削除され、代わりに「依頼者に対する透明性を確保する観点から、分かりやすい料金表を掲示すること」という定性的な基準が中心になりました。つまり、現在の18-1は料金を縛るルールではなく、情報開示の質を求めるルールへと転換しているのです。
参考リンク(税関):平成29年改正・通関業法基本通達新旧対照表 — 18-1がどのように書き換えられたか改正前後を比較できます
基本通達18-1は料金掲示の「内容」を定めるものですが、「方法」については基本通達18-2が補完する形になっています。この2つはセットで理解する必要があります。
基本通達18-2のポイントは、インターネット(ウェブサイト)上での料金公開に関する取り扱いです。多くの通関業者が自社のホームページに料金表を掲載しているかと思います。ただし、ホームページでの掲示のみで営業所内に何も掲示しない場合、それだけでは要件を満たさないとされています。
具体的には、次のルールが適用されます。
- ✅ 営業所内に料金表を直接掲示する場合:そのままで問題ありません
- ⚠️ ウェブサイト上のみで料金を公開する場合(営業所内に掲示しない場合):料金を掲載したホームページのURL、または二次元コード(QRコード)を、営業所において依頼者の見やすいように掲示することが必要
東京税関が発行しているリーフレット(業務部首席通関業監督官名義)でも、「見えない場所に掲示している」「ホームページのアドレスやQRコードが見やすくない」状態は不適切であると明示されています。
厳しいところですね。デジタル化が進む中でウェブ掲示に切り替えた事業者ほど、この細かなルールを見落としやすい傾向があります。料金表のURLやQRコードを目立つ場所に掲示しているか、定期的に確認することが重要です。
参考リンク(東京税関):通関業務料金表の掲示確認リーフレット — 掲示の適否を図解で確認できる実用的な資料です
料金掲示義務の違反は、単なる「うっかりミス」では済まされない可能性があります。通関業法第34条に基づく監督処分の対象となりえます。
監督処分の種類は、軽い方から順に以下の通りです。
- 📋 口頭または文書による厳重注意
- 🚫 1年以内の通関業務の全部または一部の停止
- ❌ 通関業の許可の取り消し
- 📝 業務改善命令
料金掲示義務違反は、直接的には「業務の停止」に至るケースは少ないものの、税関が監督の観点から確認を求めた際に違反が発覚した場合には、指導・改善命令の対象となります。また、通関業務停止といった重大処分が下された事例としては、2025年5月にケイラインロジスティックスが関税法違反により6拠点・51日間の通関業務全面停止処分を受けたケースがあります。これは料金掲示の問題ではありませんが、監督処分が事業継続に直結する重大リスクであることを示しています。
料金掲示義務の違反そのものへの罰則は刑事罰ではなく行政処分ですが、税関の定期的な業務実態確認(いわゆる実地監査)において指摘されると、改善計画書の提出が求められる場合もあります。痛いですね。特に、2017年改正後の新しい掲示ルールに更新されていない旧様式の料金表をそのまま使い続けているケースは、税関の指導対象になりやすい点に注意が必要です。
社内でコンプライアンス確認を行う際は、基本通達18-1が求める「割増・割引条件の明記」「実費別途請求の旨の記載」の2点が漏れていないか、年1回程度を目安に点検するのが現実的です。
日々の業務の中で、基本通達18-1の解釈に迷いやすいポイントが存在します。ここでは、現場の通関業従事者が実際に直面しやすい3つの論点を取り上げます。
① 関連業務(第7条業務)の料金も掲示対象か
基本通達18-1の根拠条文である通関業法第18条は、「通関業務(第7条に規定する関連業務を含む。)の料金」と明示しています。つまり、輸出入申告といった中核的な通関業務だけでなく、関連業務(輸出入申告に付随する許可・承認の申請代行など)の料金も掲示の対象です。これが条件です。
「関連業務は通関業務と一体で請求しているから別に掲示しなくていい」と判断しているケースがありますが、実際には関連業務の料金がどのように設定されているか、または主たる申告料金に含まれているかについても、依頼者が理解できる形で示す必要があります。
② 割増料(5割増し)はどんな条件で請求できるか
旧最高額表の時代には、割増料は基本料金の5割と明示されていました。現在の料金自由化後においても、割増料の考え方は引き継がれています。割増料を請求できる代表的なケースは、インボイス記載品目が非常に多く関税定率法別表の品目分類(HSコード判定)に特別な手数を要した場合、税関検査・分析対応で特別な手数を要した場合、修正申告・更正の請求対応で手数が増加した場合などです。
重要なのは、割増料を請求する場合には「その適用条件がある旨」を料金表に事前に記載しておかなければ、請求の正当性が損なわれるという点です。請求時になって初めて割増を告知するのではなく、掲示段階での記載が原則です。
③ 用紙代・交通費はどこまで別途請求できるか
旧最高額表の備考には「用紙代、通関手続に要した通常の交通費等の経常的経費は料金に含まれる」と定められていました。この考え方は現在も踏襲されています。つまり、日常的な申告に伴う書類代や通常範囲の交通費は、別途請求できないのが基本です。一方で、遠隔地への税関官署への申告に要した交通費、貨物検査のための開梱・運搬に要した労賃・運送料については、実費の別途請求が認められています。
この区分を料金表に明記しないまま実費請求を行うと、依頼者との間でトラブルになる可能性があるほか、基本通達18-1が求める「支払額に係る予見可能性の確保」に反すると判断されるリスクがあります。実費の別途請求ルールだけは例外です。料金表に「別途実費を請求する場合がある旨」と条件を明示しておくことが、実務上のリスク管理として有効です。
参考リンク(税関):平成20年改正・通関業法基本通達新旧対照表 — 旧来の最高額表の構成と備考欄の内容を参照できます