ストライキ保険とは通関業務の貨物リスク対策

通関業務に携わる方なら知っておきたいストライキ保険の仕組みと補償範囲について解説。特約での付帯が必要な理由や保険期間の制限、実務で見落としがちな注意点まで詳しく紹介しています。あなたの取扱貨物は本当に守られていますか?

ストライキ保険とは通関業務の貨物リスク対策

通関後60日経つと貨物保険は切れます。


参考)https://www.aig.co.jp/content/dam/aig/sonpo/jp/ja/documents/products/pamphlets/6A1-16H.pdf


📦 3つのポイントで理解するストライキ保険
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特約付帯が必須

ICC条件だけではストライキ危険は補償対象外。協会ストライキ約款の付帯が別途必要

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保険期間に制限あり

本船荷卸後60日(航空機は30日)で保険終了。保管中の損害は対象外

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別料金での加入

海上危険とは別に料金設定。London War Scheduleが基準となる

ストライキ保険の基本的な仕組みと補償内容

ストライキ保険は外航貨物海上保険の一種で、労働争議に伴う貨物の損害を補償する制度です。通関業務に携わる方であれば、荷主から保険条件について問い合わせを受けることも多いでしょう。


この保険で補償されるのは、ストライキ・職場閉鎖・労働紛争・騒擾・暴動による損害です。加えて、一切のテロ行為や政治的・思想的・宗教的動機から活動する者による損害も対象となります。日本国内ではストライキが珍しいものの、諸外国では頻繁に発生するため、国際輸送では重要な補償項目です。


参考)ストライキ危険 « JAIBO 日本輸入ビジネス…


協会ストライキ約款(ISC)による補償が基本です。


参考)国際輸送の貨物に「貨物保険」を必ずかけましょう!

保険金額はCIF価格に10%の希望利益を加えた額が限度となります。この仕組みは海上危険と共通していますが、保険料率の決定方法は異なり、London War Scheduleが準用される点に注意が必要です。保険料率は貨物の種類・保険条件・輸送期間・契約者の過去実績を勘案して保険会社が決定します。


世間的にストライキが発生している国でも補償外となる可能性があります。


付保時に必ず保険会社へ確認してください。


ストライキ保険が適用される具体的なケース

実際の補償対象は約款によって詳細に規定されています。2009年制定協会ストライキ約款では、ストライキ中やロックアウトされた労働者による損害、暴動に加わっている者による損害が該当します。これらの加担者であるか否かを問わず、悪意をもって行動する者による損害も補償対象です。


参考)補償内容|外航貨物海上保険


港湾労働者のストライキで荷役作業が止まり、貨物が野積み状態で盗難や破損に遭うケースが典型例です。空港職員の労働争議による航空貨物の取り扱い遅延中の損害、運送業者の騒擾による輸送中断時の事故も補償されます。テロリストによる貨物への意図的な破壊行為、政治的動機による放火や投石による損害も対象範囲内です。

ただし対象外となる損害も多数あります。

ストライキ発生による貨物運搬の遅れそのものは補償されません。故意的な損害と判断されたケース、放射線などによる汚染、輸送中ではない保管中の損害も対象外です。化学・生物・生物化学・電磁気等の兵器による損害も除外されます。通常の輸送過程ではない状況での損害は基本的に補償対象外と考えておくべきでしょう。


ストライキ保険の保険期間と通関業務への影響

保険期間は海上危険と同じ扱いです。保険契約で指定された仕出地の倉庫や保管場所から貨物が輸送目的で初めて動かされた時に開始し、通常の輸送過程にある間継続します。終了時期は仕向地の最終倉庫または保管場所への搬入時、または本船荷卸後60日(航空機の場合は30日)のいずれか早い方です。


参考)https://www.ms-ins.com/pdf/business/cargo/20210331_gaiko.pdf


これが基本です。

通関業務の実務では、この60日制限が重要な意味を持ちます。輸入通関後に保税倉庫や一般倉庫で長期保管する場合、60日を超えた時点で保険が切れるため注意が必要です。倉庫業者に貨物を預けている間にストライキが発生しても、輸送過程ではないため補償されません。


CIF輸出の場合、売主の倉庫から買主の最終倉庫までが保険期間となります。輸出者が輸入者のために保険を手配しますが、危険負担は輸入者側にあります。FOB条件では輸入者が保険を手配するため、通関業者として輸入者に保険期間の説明をしっかり行うことが求められます。


参考)https://www.ms-ins.com/pdf/business/cargo/gaiko.pdf


インコタームズによっては外航貨物海上保険が必須です。日本の輸入通関では運賃と保険料も含めた申告が求められるため、保険条件の確認は通関業務の重要な一部となります。


参考)https://www.konoike.net/solution/detail/20251230151441.html

ストライキ保険の付帯方法と料金体系の特徴

ストライキ保険はICC(協会貨物約款)の3条件(A)(B)(C)だけでは補償されません。特約扱いとなるため、2009年制定協会ストライキ約款を別途付帯する必要があります。一般的には「ICC3条件のいずれか+戦争保険+ストライキ保険」のセットで付保されます。


参考)https://www.kyoeikasai.co.jp/pdf/corp/distribution/gaiko.pdf


特約の付帯が必須です。


保険料率の決定には特殊な基準が適用されます。London War Scheduleが準用されるため、該当する国や保険料率は保険会社により適宜更新されています。例えば保険料率が「ICC(A)条件で戦争危険およびストライキ危険を含めて50銭」と提示される場合、この50銭の中に海上危険・戦争危険・ストライキ危険の全てが含まれています。


どの保険条件を選ぶか、戦争保険やストライキ保険をかけるかの方針は取引内容や会社によって異なります。通関業者として荷主に確認を促すことが重要です。わからない場合は社内で確認するよう案内しましょう。

補償を受ける保険会社の規定によって、1963年の旧協会貨物約款、1982年の新協会貨物約款、2009年の最新約款のいずれが基準となるか異なります。主に使用されている約款以外にも、状況に応じて別の約款で対応することが可能です。予め約款の内容を確認しておくことが大切でしょう。

通関業務で見落としがちなストライキ保険の注意点

保険手配のタイミングミスが最大のリスクです。輸出者が保険手配を忘れてCIF条件で輸出してしまうと、輸入者が無保険状態で貨物を受け取ることになります。通関業者として輸入申告時にインボイスやパッキングリストとともに保険証券(Insurance Certificate)の有無を確認する習慣をつけておくべきです。

保険証券がない場合は要注意です。


輸送遅延そのものは補償対象外という点も重要です。ストライキで船積みが3週間遅れても、その遅延による機会損失や追加費用は保険金として支払われません。あくまで貨物自体の物理的損害が補償対象となります。納期遅延による違約金リスクは別途カバーする必要があります。

保管中の損害が対象外という制限も実務上の盲点です。港湾ストライキで荷卸しができず船上に長期間留まった場合、その間の損害は輸送過程とみなされ補償されます。しかし通関後に倉庫で保管中にストライキが発生して盗難に遭った場合、輸送過程ではないため対象外となります。


参考)補償内容|サポートワン(新・物流包括保険)


国や地域による補償除外も確認が必要です。戦争やストライキが実際に発生している国でも、保険会社が引受を制限している場合があります。高リスク地域向けの貨物では、付保前に必ず保険会社に補償可否を確認してください。この確認を怠ると、荷主に重大な損害を与えかねません。

日本貿易振興機構(JETRO)の貿易実務Q&Aでは、荷主としての貨物保険の種類と留意点について詳しく解説されています
東京海上日動の外航貨物海上保険ページでは、戦争危険・ストライキ等危険の具体的な補償内容を確認できます