事後調査を受けた輸入者の約74.5%は、申告是認ではなく指摘を受けています。
「申告是認」という言葉は、通関業務に携わる実務者にとって一度は耳にする用語でありながら、その正確な意味や法的根拠を問われると答えに詰まる方も少なくありません。まずは基本から整理しましょう。
申告是認とは、税関または税務当局による調査の結果、申告内容に修正・更正等の必要が認められないと判断された状態のことを指します。法令上の正式名称は「更正決定等をすべきと認められない旨の通知」であり、国税通則法第74条の11に基づいて書面(是認通知書)が交付されます。税関における輸入事後調査の文脈では、同様の手続きが関税法の改正(平成25年1月1日施行)によって整備されました。
つまり是認です。
通関業者が代理申告を行う輸入者にとって、是認とは「申告内容が適正であった」という公式な証明になります。追徴課税は発生せず、特段の手続きも不要です。一方で、是認と「問題なし」を完全にイコールとして捉えると実務上のリスクが生まれます。調査対象の税目・課税期間に限り非違がなかったという意味であり、他の税目や別の課税期間は引き続き調査対象になりえます。
「更正」「修正申告」「是認」の3つを混同しないことが基本です。
| 調査結果の種類 | 意味 | 追徴税額 |
|---|---|---|
| 申告是認 | 申告内容に問題なし | なし |
| 修正申告 | 納税者が自主的に訂正 | あり(加算税の有無は状況次第) |
| 更正処分 | 税関・税務署が職権で訂正 | あり(加算税も付く) |
通関業者が日常業務で「この申告は是認で終わるか?」という視点を持つことは、適正申告のチェック精度を高めるうえで欠かせない習慣になります。
「事後調査を受けたら、どのくらいの確率で是認になるのか?」は、通関業者が輸入者へのリスク説明を行う際に必ず押さえておきたい数字です。
財務省が令和7年11月に公表した「令和6事務年度の関税等の申告に係る輸入事後調査の結果」によると、調査を受けた3,609者のうち申告漏れ等があった輸入者は2,690者で、申告漏れ等の割合は74.5% でした。裏を返すと、是認(申告漏れがなかった者)の割合は約25.5%、つまり4人に1人程度です。
約4分の3は何らかの指摘を受けている計算ですね。
さらにその追徴税額の規模も見逃せません。申告漏れ等に係る課税価格は約1,390億7千万円(前年比15.8%増)、これに対する追徴税額は約157億1千万円(同16.8%増)に上ります。調査1件あたりに換算すると、指摘を受けた輸入者1社平均で約5,800万円超の申告漏れが発見されたことになります。東京ドームのグラウンド整備費と同程度の金額が、1社の申告ミスで動くイメージです。
これは大きな数字です。
申告漏れが多かった品目のトップ5は電気機器、自動車等、光学機器等、機械類、医療用品であり、この5品目だけで納付不足税額の総額の約67%を占めています。取り扱い品目がこれらに当たる通関業者は、課税価格の算定方法や関税分類について特に厳密な確認が求められます。
税務当局(国税)の法人税務調査における申告是認の割合は約20%とも言われており、税関の輸入事後調査(是認率約25%)と似通った水準です。つまりどちらの調査でも、「是認で終わる」ケースはむしろ少数派だという現実を認識しておく必要があります。
是認が「当たり前」ではない、これが原則です。
財務省「令和6事務年度の関税等の申告に係る輸入事後調査の結果」 — 是認・申告漏れ等の件数・追徴税額の詳細データを確認できます
調査が是認で終わった場合、税関または税務署から「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」(是認通知書)が書面で届きます。この通知書の受け取りをもって、一連の調査手続きは正式に終了します。
注意が必要なのは、通知書がすぐに届くとは限らない点です。
税務調査(国税)の場合、是認通知書が届くまでに1か月〜2か月程度かかることがよくあります。税関の輸入事後調査においても同様に、調査終了後に税関内の処理が完了するまで時間を要します。調査官から口頭で「申告内容に問題なし」と伝えられた段階では、法的にはまだ調査中の状態です。書面を受け取るまでは「完全終了」とは言い切れません。
口頭での連絡はあくまでも速報扱いです。
また、是認通知書には「税目」「更正決定等をすべきと認められない課税期間」「調査対象期間」が明記されています。是認の効力はその通知書に記載された範囲のみに及ぶため、複数の税目について調査が行われた場合は、それぞれの税目ごとに通知内容を確認することが大切です。
通関業者として輸入者の代理申告を行っている場合、是認通知書の受領とその内容を荷主(輸入者)へ速やかに共有することがサービスの一環です。通知書の意味を正確に説明できるかどうかは、顧客からの信頼度に直結します。
税関「輸入事後調査手続に関するQ&A」 — 是認通知の手続き・調査終了時の流れ・再調査の条件についての公式解説です
是認通知書を受け取ると「これで終わった」と安心する方が多いですが、実は例外があります。これが通関業務従事者として最も見落とされやすいポイントです。
一度是認で終わった輸入貨物であっても、「新たに得られた情報に照らして非違があると認めるとき」に該当する場合には、税関が再調査を行うことができます(関税法上の規定による)。たとえば、取引先の国内販売先に対する別途の調査(いわゆる反面調査)で、当初の調査では把握されていなかった申告ミスの証拠が出てきた場合などが典型です。
再調査もゼロではありません。
再調査が行われる際、原則として事前通知は行われますが、当初の調査と同様に「なぜ再調査をするのか」という理由の説明は行われません。突然の再調査に直面した場合でも、帳簿書類が適切に保存されていれば対応の幅は広がります。関税法が定める書類の保存期間は輸入許可後5年間であり、是認通知を受けた後もこの期間中は書類を廃棄しないことが鉄則です。
5年間の保存が条件です。
また、是認後の再調査は「不服申立て」の対象にはなりません。再調査の開始自体は処分ではなく調査行為であるためで、納得できない場合でも中断を求めることはできません。これは通関業者が輸入者に事前説明しておくべき重要事項のひとつです。
再調査リスクへの最大の備えは、是認通知後も書類管理を緩めないことです。通関業者自身が社内の保存ルールを整備し、荷主への定期的な書類整備指導を行うことが、長期的な信頼関係の構築につながります。
是認で調査を終えることは、通関業者にとってそれ自体が「適正申告の証明」になります。逆に言えば、申告精度が低いと約74.5%の確率で何らかの指摘を受けるリスクがある、ということです。
実務で最も多い指摘事例を財務省のデータで確認すると、①低価のインボイス等を用いた過少申告、②輸出者への無償提供材料の申告漏れ、③インボイス価格と別途支払われる貨物代金の申告漏れ、の3パターンが目立ちます。
関税評価(課税価格の計算)が最大のポイントです。
特に②の「無償提供した部材・金型の申告漏れ」は、長年の取引関係がある輸入者ほど見落としやすいリスクです。輸出者(製造委託先)に対して金型や原材料を無償で提供している場合、その費用は課税価格に加算する必要があります。これが含まれていないインボイスを額面通りに申告してしまうと、是認ではなく指摘の対象になります。
インボイス金額が全てではない、という認識が重要です。
事後調査の通知が届く前に自主的に修正申告を行った場合、過少申告加算税は免除されます。一方、事後調査の通知を受けた日の翌日以降、更正予知の前に修正申告すると増加税額の5%、更正予知後の修正申告や更正処分を受けると原則10%(累積増差税額が50万円を超える部分は15%)の過少申告加算税が課されます。自主的に申告の見直しを定期的に行うことが、加算税を回避するための最もシンプルな方法です。
自主修正が最善の選択です。
輸入税関の事後調査において通関業者は、輸入者の代理として調査への主張・陳述を業として行うことができる唯一の存在です(関税法に基づく通関業者の権限)。この立場を最大限に活かすためにも、申告段階での精度向上と書類管理体制の強化が不可欠です。
税関カスタムスアンサー「1305 納税申告に誤りがあった場合」 — 修正申告と過少申告加算税の関係、自主修正の重要性について公式情報を確認できます
ジェトロ「税関の事後調査:日本」 — 事後調査の対象期間・確認書類・是認後の再調査条件をまとめたQ&A形式の解説です