サレンダードB/Lの仕組みと通関実務での正しい使い方

サレンダードB/Lは便利な反面、知らないと代金回収不能や通関トラブルに直結するリスクがあります。通関業従事者が現場で即使える知識を詳しく解説。あなたは正しく使えていますか?

サレンダードB/Lの仕組みと通関実務での注意点

サレンダードB/Lは「便利だから使っておけば大丈夫」と思っていると、代金回収不能という大きな損失を招くことがあります。


📋 この記事の3ポイント要約
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サレンダードB/Lはオリジナルの「回収方法」

B/Lの「種類」ではなく、発行済みB/Lを輸出地で回収する運用方法のこと。この違いを知らずに使うと実務でのミスにつながります。

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国際条約・UCP600での位置づけがない

UCP600にはサレンダードB/Lの規定がなく、トラブル発生時の法的根拠が曖昧です。L/C取引には原則使用不可です。

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代金未回収リスクは輸出者が100%負担

サレンダー後は輸入者が代金を払わずに貨物を引き取れる状態になります。信頼関係のない取引先への使用は避けるべきです。


サレンダードB/Lの基本:通関業従事者が押さえる定義と仕組み

サレンダードB/L(Surrendered Bill of Lading)とは、輸出者が発行済みのB/L原本を輸出地の船会社に返却(サレンダー)し、船会社が「SURRENDERED」のスタンプを押したコピーを輸入者へメールやFAXで送ることで、貨物の引き渡しを迅速化する運用方法です 。重要なのは「B/Lの種類」ではなく「オリジナルB/Lの回収方法」であるという点です 。 grandit(https://www.grandit.jp/erp/column/page_145/)


この方式が生まれた背景には、コンテナ船の高速化による「B/L Crisis(船荷証券の危機)」があります 。中国・韓国向けなど短距離航路では、本船出航後わずか2〜3日で貨物が到着してしまうケースが増えました 。通常のオリジナルB/Lでは原本を郵送している間に貨物が先に港へ届き、書類なしで貨物が引き取れない状況が頻発したのです。 trade-adviser.jimdofree(https://trade-adviser.jimdofree.com/%E8%B2%BF%E6%98%93%E5%AE%9F%E5%8B%99/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E8%BC%B8%E9%80%81/b-l%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E/)


つまり実務上の便宜的な対応として広まった仕組みです。


サレンダー処理の手順は以下の通りです。


  • 輸出者がB/L原本(通常3通)を裏書して船会社へ返却する
  • 船会社が「SURRENDERED」「TELEX RELEASE」「ACCOMPLISHED」のいずれかのスタンプを押す
  • スタンプ入りのコピーをメールまたはFAXで輸入者へ送付する
  • 輸入者はコピーを持参するだけで輸入通関・貨物引き取りが可能になる


この流れを通関業従事者が把握していないと、「なぜ原本がないのか」という疑問につながりやすいです。原本不要が前提の仕組みだと覚えておけばOKです。


参考:B/Lの種類と使い分けについてさらに詳しく知りたい場合はこちら。


B/Lの種類 – Original B/L, Surrendered B/L, Sea Waybillについて(HPS Connect)


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サレンダードB/LとオリジナルB/Lの違い:通関手続きへの影響を比較

通関業務では、どちらのB/Lで輸入申告が行われるかによって書類確認の手順が異なります。以下の表で主要な違いを整理しました。


項目 オリジナルB/L サレンダードB/L
有価証券としての効力 あり(権利の移転が可能) なし(回収済みで権利消滅)
輸入者の貨物引き取り 原本提示が必要 コピーのみで可能
L/C(信用状)取引 利用可能 原則不可 ⚠️
国際規則での位置づけ 明確(CMI Rules等) 規定なし(UCP600にも記載なし)
紛失リスク 高い(銀行保証が必要) なし(コピー再送で対応可)
代金未回収リスク 低い(原本と引き換え) 高い(貨物引き取りが先行可能)
裏面約款の適用 あり 適用されない可能性あり ⚠️


特に注意が必要なのはL/C取引との組み合わせです。L/C取引ではCIR(Clean B/L)が必要であり、サレンダードB/Lは信用状の担保として使用できません 。L/C案件なのにサレンダー処理を進めてしまうと、決済そのものが滞るリスクがあります。 service.shippio(https://service.shippio.io/glossary/terms-billoflading/)


裏面約款が適用されない点も見落とされがちです。サレンダーによってB/L原本が「存在しない」扱いになるため、貨物紛失や損傷が発生した際の賠償責任追及が困難になります 。厳しいところですね。 note(https://note.com/mio_0525/n/nca1241d28169)


高額貨物や新規取引先との場合は、たとえ短距離航路であってもオリジナルB/Lを検討する価値があります。


参考:Sea WaybillとSurrendered B/Lの詳細比較はこちら。


サレンダードB/Lと海上運送状の違いとは(OTS Japan)


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サレンダードB/Lの通関実務でよく起きるトラブルと対処法

現場でよく見られるのが「Master B/Lがサレンダーになっていない」というトラブルです 。フォワーダーがHouse B/Lをサレンダー処理したものの、船会社発行のMaster B/Lがサレンダーされていないケースです。その場合、輸入者側でいくら手続きを進めても貨物は引き取れません。 hps-connect(https://hps-connect.com/column/documents-procedures/p7044/)


もう一つ頻発するのがB/Lの記載ミスです。修正にはUSD50程度の費用がかかり 、その間デマレージ(超過留置料)や保管料が積み上がっていきます。日本の主要港では1コンテナあたりのデマレージが1日数千〜数万円に達するケースもあり、B/Lミスが直接的な金銭コストに直結します。 hps-connect(https://hps-connect.com/column/documents-procedures/p7044/)


確認すべき主なチェックポイントを挙げておきます。


  • 🔲 Master B/LとHouse B/Lの両方がサレンダー処理されているか
  • 🔲 SURRENDERED/TELEX RELEASE/ACCOMPLISHEDのスタンプが押されているか
  • 🔲 Consignee(荷受人)が具体的に記載されているか("To Order"は不可)
  • 🔲 L/C案件でないか、事前に依頼主へ確認済みか
  • 🔲 品名・数量・重量など記載内容にミスがないか


これらを出港前に確認する習慣があれば大丈夫です。


特にConsigneeの記載について補足します。オリジナルB/LはTO ORDER形式で第三者への転売・譲渡が可能ですが、サレンダードB/Lは必ず荷受人を特定しなければなりません 。これを知らずに処理を進めると通関が通らないトラブルになります。意外ですね。 trade-adviser.jimdofree(https://trade-adviser.jimdofree.com/%E8%B2%BF%E6%98%93%E5%AE%9F%E5%8B%99/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E8%BC%B8%E9%80%81/b-l%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E/)


参考:B/Lのよくあるトラブル事例を実務担当者視点でまとめた記事はこちら。


よくあるB/Lのトラブルについて(HPS Connect)


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サレンダードB/LにおけるL/C取引・代金回収リスクの実態

サレンダードB/Lを使う最大のリスクは、輸出者の代金未回収です 。サレンダー処理が完了した時点で、輸入者は代金を支払わなくても貨物を引き取れる状態になります。代金回収が不能になるリスクは輸出者が全額負担することになります。 trade-adviser.jimdofree(https://trade-adviser.jimdofree.com/%E8%B2%BF%E6%98%93%E5%AE%9F%E5%8B%99/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E8%BC%B8%E9%80%81/b-l%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E/)


これが現実になった場合の損失は貨物金額そのものに及びます。通関業従事者としては、依頼主(輸出者)に対して「代金前払いの入金確認後にサレンダー手続きを進める」ことを強くアドバイスする立場にあります 。これは単なる注意喚起ではなく、依頼主の事業を守るための重要なアドバイスです。 trade-adviser.jimdofree(https://trade-adviser.jimdofree.com/%E8%B2%BF%E6%98%93%E5%AE%9F%E5%8B%99/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E8%BC%B8%E9%80%81/b-l%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E/)


結論は「信頼関係のある取引先限定で使う」が原則です。


下記のシチュエーションではサレンダードB/Lの使用を避けるか、慎重に判断するべきです。


  • 💡 新規取引先(信用調査未実施)への輸出
  • 💡 高額貨物(代金未回収時の損失が大きい)
  • 💡 L/C取引案件(UCP600に基づく書類要件を満たさない)
  • 💡 転売・譲渡が予定されている取引
  • 💡 貨物トラブル時の補償を明確にしたい取引


また、万が一の紛争時に備えて、取引条件・保険の付保状況・相手国の法制度を事前に確認しておくことも実務上は重要です。貿易保険(日本貿易保険:NEXI)を活用することで、代金未回収リスクを部分的にカバーできるケースもあります。


参考:輸出代金の回収リスクと対策については日本貿易保険の情報が参考になります。


日本貿易保険(NEXI)公式サイト


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サレンダードB/LとSea Waybillの違い:通関業従事者が混同しやすい2つの書類

実務でよく混同されるのが、サレンダードB/LとSea Waybill(海上運送状)の違いです。どちらも輸入者が原本なしで貨物を引き取れる点は共通していますが、性質は大きく異なります。


service.shippio(https://service.shippio.io/glossary/terms-billoflading/)

比較項目 サレンダードB/L Sea Waybill
有価証券か もともとB/Lとして発行(後に権利消滅) 最初から有価証券ではない
発行の流れ 原本発行→回収→スタンプ 最初からWaybillとして発行
印紙税(日本) B/L発行時に課税対象 運送契約書として課税対象の可能性あり
貨物引き取り コピー提示で引き取り可 身分証明のみで引き取り可
L/C利用 不可 不可
転売・譲渡 不可(権利消滅後) 不可(有価証券でないため)


Sea WaybillはWaybill上に記載された荷受人のみが貨物を引き取れる仕組みであり、第三者への転売が一切できません 。グループ会社間取引や継続的な信頼関係がある取引先向けに向いています。 trade-adviser.jimdofree(https://trade-adviser.jimdofree.com/%E8%B2%BF%E6%98%93%E5%AE%9F%E5%8B%99/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E8%BC%B8%E9%80%81/b-l%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E/)


一方、サレンダードB/Lは「もともとオリジナルB/Lとして発行し、その後回収した」という経緯があるため、書類上の扱いや船会社への手数料が異なります。


どちらを選ぶかは取引先との関係性・航路・決済方法の3点で判断するのが基本です。


参考:Sea WaybillとB/Lの全体像を比較した解説記事はこちら。


船荷証券の種類を完全網羅!オリジナルB/L・サレンダーB/L・Sea Waybill(内外トランス)


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サレンダードB/Lを使うべきシーンと避けるべきシーン:通関業従事者の独自視点

通関業従事者として依頼主から「サレンダーでいきますか?」と聞かれたとき、単に「はい」「いいえ」で答えるだけでは不十分です。依頼主の取引構造や決済条件を把握した上でアドバイスすることが、プロとしての付加価値になります。


使うべきシーンは以下の通りです。


  • ✅ 代金前払い(T/T Advance)が確認済みの取引
  • ✅ 近隣国(中国・韓国・台湾など)向けの短距離輸送
  • ✅ 親会社・子会社間などグループ内取引
  • ✅ 長年の継続取引で信頼関係が確立された取引先
  • ✅ 書類到着前に貨物がデマレージを発生させるリスクがある場合


避けるべきシーンも明確にしておきます。


  • ❌ 初回取引・新規取引先(代金回収リスクが計算できない)
  • ❌ L/C取引(UCP600の規定外であり銀行が受け付けない)
  • ❌ 高額かつ輸送中の事故リスクが高い貨物
  • ❌ 取引中に所有権を第三者に転売する予定がある場合


これは使えそうです。


依頼主が「サレンダーにしたい」と希望している場合でも、「代金前払いの入金確認はお済みですか?」のひと言を確認するだけで、後のトラブルを防げます。通関業者はB/Lの内容を審査するだけでなく、依頼主のリスクに気づいて一声かける立場にあります。


また、サレンダードB/Lはテレックスリリース(Telex Release)とも呼ばれますが、厳密には処理方法が異なる場合があります。船会社によって「SURRENDERED」「TELEX RELEASE」「ACCOMPLISHED」と異なるスタンプが使われており、どのスタンプが有効かを輸入地の代理店に確認してから処理を進めることが、トラブルを防ぐ実務上のポイントです。


参考:B/Lの種類別に実務の流れをまとめた解説はこちら。