「T/T後払いは信用があれば大丈夫」と思っているなら、代金が100%回収できなくなる可能性があります。
T/T(Telegraphic Transfer)とは、銀行の電信送金による決済方法のことで、貿易取引において現在最もよく使われている手段のひとつです。国内の銀行振り込みに近い感覚で使えるため、手続きが比較的シンプルなのが特徴です。
T/Tには大きく「前払い(Advance Payment / T/T in advance)」と「後払い(T/T after shipment / T/T after B/L date)」の2種類があります。前払いは輸出者にとってリスクがほぼゼロである反面、輸入者には商品を受け取る前に代金を払うという信用上の負担がかかります。後払いはその逆で、輸出者が代金を回収できないリスクを丸ごと負う構造です。
実務でよく使われる書き方として、以下のような表現が挙げられます。
| 種類 | 英語表記の例 | 意味 |
|---|---|---|
| 全額前払い | 100% T/T in advance | 船積前に全額送金 |
| 30%前払い・70%後払い | 30% T/T in advance, 70% T/T against B/L copy | 頭金を先払い、残金はB/L写しを受け取り後に送金 |
| B/L日から30日後払い | T/T within 30 days after B/L date | 船積から30日後に全額送金 |
この書き方のポイントは「起算点」を明確にすることです。単に「30 days after shipment」と書いても、「shipment」が本船積み日なのか、B/L発行日なのか、あるいはインボイス日なのか、解釈が分かれる可能性があります。トラブルを防ぐには、"after B/L date"や"after receipt of invoice"のように起算日を具体的に指定するのが原則です。
また、送金手数料の負担者も明記しておく必要があります。「sender bears all bank charges(送金人負担)」「recipient bears all bank charges(受取人負担)」のいずれかを契約書やインボイスに明示しておかないと、後から手数料を巡って揉めるケースが実際に起きています。これは条件が抜けやすい箇所です。
後払いT/Tは手続きが簡単な分、与信管理が甘くなりやすい点に注意が必要です。取引実績が少ない相手や新興国の取引先に対してT/T後払いを承諾してしまうと、代金を受け取れないまま商品だけが引き渡されてしまうリスクがあります。東京商工会議所の資料でも「後払いはトラブルが多く、未払代金の回収は国内取引以上に困難」と明記されています。
つまり後払いT/Tは、十分な信用力を確認できた相手先にのみ使うべき条件です。
ジェトロ:輸出代金の請求方法と送金に関する銀行諸費用の負担(T/T決済の実務を詳細解説)
L/C(Letter of Credit:信用状)は、銀行が輸入者に代わって支払いを保証する決済方法です。貿易決済の中で最も安全性が高い手段として長く活用されてきました。
L/C決済の仕組みはシンプルに言えば「買主が銀行にL/Cを開設→銀行が売主への支払いを確約→売主が定められた書類を提出→銀行が代金を支払う」という流れです。銀行が間に入るため、売主は取引先の信用度にかかわらず代金を回収しやすくなります。
L/Cには主に以下の種類があります。
英文契約書での記載例として、代表的なのが以下の表現です。
> At least thirty (30) days prior to the date of shipment, Purchaser shall open an irrevocable and confirmed letter of credit, payable in United States Dollars, negotiable against a draft at sight.
>
>(訳):船積時期の少なくとも30日以上前に、買主は取消不能の確認信用状を開設するものとし、米ドルで一覧払い手形に対して交渉可能なものとする。
記載するうえで特に注意すべき点が「ディスクレパンシー(discrepancy:書類の不一致)」のリスクです。L/Cに記載された条件と、実際に提出した船積書類の内容が1文字でも違うと、銀行から支払いを拒絶される可能性があります。たとえば、L/Cに「to order of shipper」と書いてある場合に「to order」とだけ記載したB/Lを提出しても、それがディスクレパンシーとして扱われるケースがあります。
L/Cの開設が遅れた場合に備えて、契約書に「L/Cが期日までに開設されない場合は、買主は直ちに現金で支払う(immediate cash payment)」といった条項を加えておくと、輸出者側のリスクをさらに低減できます。条件として詳細な規定が必要です。
D/PとD/Aは、信用状(L/C)を使わずに荷為替手形で決済する方法です。両者はよく混同されますが、輸出者のリスクという観点でまったく別物です。
D/P(Documents against Payment:支払渡し)は、輸入者が為替手形を決済した(代金を支払った)場合にのみ、船積書類が引き渡される条件です。代金を払わない限り貨物を受け取れないため、輸出者にとって比較的安全な条件といえます。
一方、D/A(Documents against Acceptance:引受渡し)は、輸入者が手形を「引き受ける(Acceptance)」だけで船積書類が交付される条件です。手形を引き受けた段階では代金はまだ支払われておらず、実際の支払いは手形の期日(通常30日・60日・90日後)になります。つまり「書類だけ受け取って代金を払わない」リスクを輸出者が丸ごと負う構造です。
英文契約書への記載例を見てみましょう。
D/Aには通常、ユーザンス(usance)が付きます。「at 90 days after B/L date」「at 60 days after sight」のように期日を具体的に書くことが重要です。なお、期日の起算点には「B/L date(船積日起算)」「sight(一覧後起算)」「date of acceptance(引受日起算)」の3種類があり、それぞれ資金回収のタイミングが変わります。
また、D/P決済においても「B/L直送条件」が付いている場合は注意が必要です。本来D/Pは書類が代金支払いと同時に引き渡されるはずですが、B/Lを輸入者に直接送付してしまうと、手形決済前に商品を引き取れてしまう場合があります。この場合はD/Aと同等のリスクが発生するため、三井物産クレジットコンサルティングをはじめとした与信管理の専門家は「D/P決済でもB/L直送条件が付く場合はD/Aと同様のリスク管理をすること」と指摘しています。
D/AはD/Pより危険です。
三井物産クレジットコンサルティング運営「CONOCER」:貿易決済条件の選択と注意点(D/P・D/A・L/Cのリスク管理を詳述)
決済条件はインボイス(Commercial Invoice)にも必ず記載すべき項目です。インボイスは貿易において「請求書・明細書・納品書」の3役を兼ねた書類であり、通関手続きや関税の算出根拠にもなります。記載内容に不備があると、税関での通関手続きが止まってしまいます。
インボイスに記載すべき主な項目は以下の通りです。
支払条件(Payment Terms)の欄には、使用する決済方法と起算点・期日を具体的に書きます。たとえば「T/T within 30 days after B/L