ETAを入港確定日だと思い込むと、フリータイムを数え違えて数万円のデマレージが発生します。
入港予定日とは、貨物を積載した本船が仕向港に到着する予定日のことを指します。英語では「Estimated Time of Arrival」、頭文字をとって「ETA」と表記されるのが一般的です。「Estimated(推定・予定)」という言葉が示すとおり、これはあくまでも予定であり、確定日ではありません。
ETAはB/L(船荷証券)やインボイス、アライバルノーティス(A/N)など、輸入通関に関わるほぼすべての書類に本船名とともに記載されています。通関業者にとっては、輸入申告の準備スケジュールを組む際の基準となる最重要情報のひとつです。
ETA(入港予定日)と対になる用語として、ETD(Estimated Time of Departure=出港予定日)があります。さらに、実際に入港した日時を示すATA(Actual Time of Arrival)、実際に出港した日時を示すATD(Actual Time of Departure)とも混同しないよう注意が必要です。それぞれが「予定」か「実際」かを意識するだけで、スケジュール管理のミスは大幅に減ります。
ETAとATAの区別は基本です。
実務では、船会社のシステムやNACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)、マリントラフィックなどの船舶追跡サービスを活用して、ETAの最新情報を継続的に確認することが求められます。ETAは本船が出港した後も随時更新されるため、一度確認したからといって安心してはいけません。
本船入港予定日(ETA)の基本的な定義と貿易書類への記載について(貿易.jp)
ETA通りに本船が到着するとは限らない、という現実を通関業務に従事するなら深く理解しておく必要があります。実際、ETAは日常的に変動します。変動の原因としては、悪天候(台風・暴風など)、寄港地での積み下ろし遅延、港の混雑によるバース待ち、ストライキ、ロールオーバー(積み残しによる次便繰り越し)などが挙げられます。
変動幅も決して小さくありません。短い遅延であれば数時間から1日程度ですが、港が大幅に混雑している場合や航路の途中での遅延が重なると、数日単位でETAが後ろにずれることもあります。2020〜2022年のコロナ禍のサプライチェーン混乱期には、主要港での滞留が常態化し、北米西岸などでは1〜2週間単位の遅延が発生した事例も報告されています。
ETA変更には即対応が必要です。
ETAが変わると、通関業者が管理しなければならない複数のスケジュールが連動して変化します。具体的には次のような影響が出ます。
| 影響を受ける項目 | 具体的なリスク |
|---|---|
| 予備申告のタイミング | ETA前に申告済みでも、大幅遅延で課税価格の換算相場(外為相場)がずれる可能性 |
| フリータイムの管理 | ETA遅延でコンテナ引き取り手配が早くなりすぎ、ディテンションが発生する場合も |
| ドレージ(陸送)手配 | 予約済みのトラックや倉庫の日程変更が必要になり、追加費用が発生することがある |
| 荷主への納期連絡 | ETA変更情報の連絡遅れがクレームにつながるリスク |
ETAの変動情報は、フォワーダーや船会社に対してこまめに確認するのが原則です。特に荷主から納期が厳しく設定されている貨物や、連休をはさむスケジュールの貨物については、週1回以上の頻度でETA更新状況を追跡することを習慣にするとよいでしょう。
ETAがよくずれる理由と実務上の対応方法について詳しく解説(Hunade)
フリータイムとは、輸入貨物がCY(コンテナヤード)に搬入されてから無料で保管できる期間のことです。この期間を1日でも超過すると、デマレージ(超過保管料)が発生します。フリータイムとデマレージの関係を正しく理解することは、通関業者にとって顧客の余計なコストを防ぐための基本スキルです。
ここで注意すべきなのは、フリータイムの起算日が「ETA(入港予定日)」ではないという点です。起算日は船会社によって異なり、主に以下の3パターンがあります。
ETAと実際の起算日が1日違うだけで、フリータイムの残り日数が変わります。例えば、ある船会社では20フィートコンテナのデマレージが超過1〜6日目で1日あたり4,000円、7日目以降は1日あたり8,000円という累進課金になっています。40フィートコンテナであれば、超過1〜6日目が6,000円、7日目以降は12,000円です。土日祝日もカウントに含まれる場合が多く、3連休をはさむと一気に超過日数が積み重なります。
痛いですね。
さらに、船会社によってはコンテナタイプによってフリータイムが大きく異なります。冷凍・冷蔵コンテナ(リーファーコンテナ)は電源コストがかかるため、通常のドライコンテナより短い2日程度に設定されていることも珍しくありません。季節商品の輸入や食品輸入に関わる通関業者は特に注意が必要です。
フリータイムを超過しないための実務的な対応として、以下の3点を徹底することが推奨されます。
フリータイムの日数の数え方と超過費用の具体例(丸一海運株式会社)
デマレージ・ディテンションの仕組みと実務での削減対策(CargoPicks)
通関業者がETAを把握する最大の実務的意義のひとつは、予備申告のタイミングを適切に設定することにあります。輸入申告は原則として「保税地域に貨物が搬入された後」に行うものですが、予備申告制度を利用すれば、貨物の搬入前、つまりETA前の段階から税関審査を進めておくことができます。
予備申告の最大のメリットは、通関許可までのリードタイムを大幅に短縮できる点です。具体例で確認してみましょう。
| 区分 | スケジュール例(入港日:4月1日) |
|---|---|
| 予備申告なし | 4/1 入港 → 4/2 搬入後に輸入申告(9:15)→ 審査終了・輸入許可(13:00) |
| 予備申告あり | 4/1 入港直後に予備申告(10:30)→ 税関審査終了(14:00)→ 4/2 搬入(9:00)→ 本申告切替(9:15)→ 輸入許可(9:20) |
予備申告ありの場合、輸入許可が翌9:20には下ります。許可が早い分、コンテナを当日中にCYから搬出できる可能性が高まります。これはフリータイムの節約にも直接つながります。
これは使えそうです。
予備申告のもうひとつのメリットは、申告時点で申告区分(税関検査の有無)が判明することです。区分3(現物検査)となった場合は、ドレージ会社のトラック手配や倉庫のスケジュールを変更する必要があります。この情報が貨物搬入前に分かっていれば、荷主への連絡や手配変更を余裕を持って行えます。
予備申告を行うタイミングについては、通関業者のオペレーション方法によって異なりますが、一般的には搬入予定日の前日までに行うことで、搬入時点で税関審査が完了している状態を目指します。ただし、予備申告の際の輸入申告税額の計算には、申告予定日の外国為替相場(公示相場)を使用するため、ETAが大幅にずれた場合は相場が変わり、申告額の修正が必要になるケースもあります。これが原則です。
予備申告のメリット・デメリットと通関スケジュールへの影響(丸一海運株式会社)
輸出入通関の便利な制度(予備審査・到着即時輸入申告扱い)公式情報(税関 Japan Customs)
通関業者が入港予定日(ETA)を最初に公式に確認できるのは、多くの場合アライバルノーティス(Arrival Notice、A/N)の受け取り時です。A/Nは船会社またはNVOCC(無船舶運送業者)が、B/Lに記載されたNotify Party(着荷通知先)宛てに発行する書類で、本船の入港予定日・到着港・搬入先情報・貨物明細・D/O(荷渡し指図書)の取得に必要な情報などが記載されています。
A/Nの発行タイミングは一般に「ETA数日前〜前日」とされていますが、航路や船会社の運用によって異なります。長距離航路(欧州・北米など)であれば1週間前に発行されることもある一方、アジア域内の短距離航路では2〜3日前に届くこともあります。A/Nが届いたら即日確認が基本です。
A/Nを受け取ったらまず以下の3点を確認するのが実務上の鉄則です。
なお、CY貨物(FCL:コンテナ単位の貸切輸送)とCFS貨物(LCL:混載輸送)では、フリータイムの起算日が異なる点にも注意が必要です。CY貨物の場合、フリータイムの起算は入港日または着岸日が基準になるケースが多い一方、CFS貨物の場合は船の入港日ではなく、CFSへの搬入完了後から起算されることが一般的です。この違いを知らずに「入港日から計算」としてしまうと、CFS貨物でフリータイムが実際より短いと誤認してしまうおそれがあります。
CY貨物とCFS貨物は起算日が違うということですね。
A/Nを受け取ってから輸入許可を得るまでの主なステップをまとめると、次のとおりです。
この一連の流れを入港予定日(ETA)を基点として逆算してスケジューリングすることが、無駄なコストを生まないための実務の基本といえます。
アライバルノーティスの見方と搬入確認番号の解説(Hunade)