担保を忘れると納期限延長は承認されません
納期限延長制度は、関税・消費税・地方消費税の納付を猶予する制度です。通常は輸入許可時に即座に納付が必要ですが、納税者の資金繰りの便宜を図るため、担保提供を条件に支払いを先延ばしできます。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1302_jr.htm
対象となるのは申告納税方式が適用される輸入貨物の税金です。一般的な商業輸入では、通関手続き完了時点で通関業者や物流会社に関税を支払う方法が主流ですが、納期限延長制度を利用すれば、この支払いタイミングを最大3ヶ月間延長できます。
参考)タオバオ・アリババの関税はいつ払う?タイミングと支払い方法
この制度の最大の特徴は、担保の提供が絶対条件である点です。税額に相当する担保がなければ、制度そのものが利用できません。
つまり担保が原則です。
納期限延長制度には3つの方式があり、それぞれ申請タイミングと延長期間が異なります。
個別延長方式は、個々の輸入申告ごとに納期限を延長する方式です。輸入者は申告ごとに納期限延長(個別)申請書を提出し、担保を提供する必要があります。延長期間は輸入許可日の翌日から3ヶ月以内です。
参考)納期限延長制度、Deferred Payment Syste…
包括延長方式は、特定月の輸入申告をまとめて延長する方式です。例えば5月1日・15日・30日に輸入許可された貨物は、1ヶ月分をひとまとめにして8月31日までに納付すればよいことになります。申請は特定月の前月末日までに行い、当該特定月の末日の翌日から3ヶ月以内の延長が認められます。
特例延長方式は、特例輸入申告制度を利用する特例輸入者または特例委託輸入者が使える方式です。特例申告書の提出期限内に申請すると、提出期限から2ヶ月以内の延長が認められます。特例輸入者の場合、担保提供が原則不要なのが大きな特徴です。
納期限延長制度を利用するには、税額相当の担保提供が必須です。どういうことでしょうか?
担保は関税等の合計額に相当する金額を用意する必要があります。包括延長方式を最大限利用するには、4ヶ月分の関税等相当額を用意することが推奨されています。これは特定月の末日の翌日から3ヶ月延長されるため、実質的に4ヶ月分の税額が累積する可能性があるためです。
参考)https://www.tsukangyo.or.jp/files/libs/680/202203281135216451.pdf
担保の種類は「保証書」または「法令保証証券」が一般的です。担保の積み増しも可能ですが、納期限延長制度を継続的に利用する場合は、事前に十分な担保枠を確保しておく必要があります。
特例輸入者だけは例外です。特例延長方式を利用する特例輸入者は、関税等の保全のために必要がある場合を除き、担保提供が不要になります。
納期限延長制度を使わない場合、関税の納付タイミングは輸入形態によって異なります。
個人輸入では「着払い」が一般的で、商品が自宅に届く際に配送業者に関税を支払います。この方法では商品受取時に現金またはクレジットカードで支払うため、通関手続き自体は配送業者が代行してくれます。
商業輸入では「通関時払い」が主流です。商品が税関に到着し通関手続きが完了した時点で、通関業者や物流会社に関税を支払います。この支払いを行わないと、商品は税関を通過せず国内に配送されません。
通常の商業輸入では、納付書が送られてきたらインターネットバンキングのPay-easy(ペイジー)または銀行・郵便局の窓口で納付します。納期限を過ぎると延滞税がかかるため、納期限の管理が極めて重要です。
納期限延長制度の申請先は、輸入申告を行う税関です。具体的には、貨物を輸入する港や空港を管轄する税関長に対して申請を行います。
参考)納期限延長制度とは?メリットやデメリット、実務上の注意を解説…
申請に必要な書類は、選択する方式によって異なります。個別延長方式では「関税(消費税及び地方消費税兼用)納期限延長(個別)申請書」を、包括延長方式では「関税(消費税及び地方消費税兼用)納期限延長(包括)申請書」を提出します。
特例延長方式の場合は、特例申告書の提出期限内に「関税(内国消費税及び地方消費税兼用)納期限延長(特例申告)申請書」を提出する必要があります。期限を過ぎてから申請しても延長は認められないため、提出期限の管理が重要です。
いずれの方式でも、申請書とあわせて担保の提供が求められます(特例輸入者の特例延長方式を除く)。担保提供と申請書の提出が揃って初めて、納期限延長が承認されます。
これが条件です。
納期限延長コードの選択ミスは即延滞税
通関業務で最も注意すべきは、納期限延長コードの選択間違いです。輸入申告時に誤ったコードを選択すると、意図せず即納扱いになったり、逆に延長扱いになって担保不足を招いたりします。
納期限延長コードは、輸入申告書の特定欄に入力します。「納期限延長」欄に「T」を入力した場合、一部の入力が不可になるなど、システム上の制約があります。即納分について一括納付の対象から除外して個別納付扱いとする場合も、正しいコードを選択しなければなりません。
参考)https://bbs.naccscenter.com/data/customs/jimu/pdf/tetsu/air/tsukan/tat_010_030_000.pdf
コード選択を誤ると、納付書情報が想定外のタイミングで配信され、納期限管理に混乱が生じます。特に包括延長方式を利用している場合、個別の申告で即納コードを選択してしまうと、その分だけ別途納付が必要になります。
結論は正確な入力です。
輸入申告前に担保残高を確認することが実務上の鉄則です。担保残高が不足している状態で輸入申告を行うと、納期限延長が承認されず、延滞税が発生するリスクがあります。
包括延長方式では、特定月の関税額が担保額を超えないよう管理する必要があります。例えば担保額が500万円の場合、特定月の輸入で発生する関税等の合計が500万円を超えると、超過分については納期限延長が認められません。
担保の積み増しは可能ですが、手続きに時間がかかるため、事前に余裕を持った担保枠の確保が推奨されます。4ヶ月分の関税等相当額を用意しておけば、包括延長方式を最大限活用できます。担保残の確認を怠ると、輸入許可後に納付トラブルが発生し、物流全体に遅延が生じる恐れがあります。
納期限を過ぎると延滞税が発生します。延滞税は納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて計算されるため、遅延期間が長いほど負担が大きくなります。
参考)『第55回通関士試験問題(関税法等科目)ー関税の納期限 ”特…
特例輸入者が特例申告書の提出期限後に特例申告を行った場合、関税に併せて特例申告書の提出期限の翌日から納付日までの延滞税を納付しなければなりません。これは通常の延滞税とは別に発生するペナルティです。
後払い決済の期限切れと同様に、関税の支払い滞納が続くと法的措置に発展する恐れがあります。遅延損害金や延滞事務手数料が発生し、信用力の低下や債権回収業者による財産の差し押さえといったリスクが生じます。
痛いですね。
参考)https://frauddetection.cacco.co.jp/media/ec/12964/
納期限までに支払いそびれた場合、すぐに税関に連絡して対応を相談することが重要です。放置すればするほどペナルティが積み重なり、企業の信用にも傷がつきます。
納期限延長制度は、海上貨物と航空貨物のどちらでも利用できます。貨物の輸送手段によって制度の適用可否が変わることはありません。
ただし、輸送手段によって通関手続きのスピードや実務フローが異なるため、納期限延長制度の利用タイミングも調整が必要です。航空貨物は通関手続きが迅速に進むため、個別延長方式の利用が多い傾向があります。一方、海上貨物は輸送期間が長く、月単位で複数の輸入が発生するため、包括延長方式が適しています。
EMS(国際スピード郵便)などの個人向け貨物は通関手続き時間が短く、数時間で完了することもあります。しかし法人の一般貨物では、通関手続きに時間がかかる場合もあるため、納期限延長制度を活用して資金繰りを調整する実務上のメリットがあります。
参考)【長過ぎる!】通関手続きに要する時間とリアルな現場事情
納期限延長制度の支払いは、マルチペイメント(Pay-easy)に対応しています。インターネットバンキングを利用すれば、わざわざ銀行窓口に足を運ばずに納付できます。
具体的には、通関業者から納付書が送られてきたら、納期限までにインターネットバンキングのPay-easyで納付するか、銀行・郵便局の窓口で現金納付します。マルチペイメントを利用すれば、24時間いつでも納付でき、振込手数料も銀行窓口より安くなる場合があります。
納期限の管理が何より重要です。納期限を過ぎれば延滞税がかかるため、納付書を受け取ったらすぐにカレンダーに記録し、期限前に支払いを済ませる習慣をつけましょう。
特例輸入者は担保不要で納期限延長可能
特例輸入者が特例延長方式を利用する場合、担保提供が原則不要になります。これは通常の納期限延長制度とは大きく異なる特典です。
どういうことでしょうか?通常の個別延長方式や包括延長方式では、税額相当の担保提供が絶対条件ですが、特例輸入者には信用力があると税関が認めているため、担保なしで納期限延長が認められます。
ただし「関税等の保全のために必要がある場合」は例外的に担保提供を求められることがあります。これは特例輸入者であっても、納税実績に問題があったり、税額が極めて高額だったりする場合に適用されます。
特例延長方式の延長期間は、特例申告書の提出期限から2ヶ月以内です。個別延長方式や包括延長方式の3ヶ月より短いものの、担保不要という大きなメリットがあります。
つまり資金負担が軽いです。
特例輸入申告制度では、引取申告と特例申告が分離されています。引取申告で貨物を輸入許可した後、特例申告書の提出期限内に特例申告を行う必要があります。
特例延長方式を利用する場合、特例申告書の提出期限までに納期限延長(特例申告)申請書を提出しなければなりません。期限内に申請すれば、特例申告書の提出期限から2ヶ月以内の納期限延長が認められます。
期限内に特例申告書を提出し、かつ関税を納付すべき期限に関し延長申請を行えば、延滞税は発生しません。しかし特例申告書の提出期限後に特例申告を行った場合、特例申告書の提出期限の翌日から納付日までの延滞税が発生します。
一括納付対象の特例申告について、特定日までに特例申告等が受理された場合は、一括納付対象外となり、申告の都度個別に納付書情報が配信されます。
特定日の管理が重要です。
納期限延長制度を利用しない場合、即納扱いになります。即納分は一括納付の対象から除外して個別納付扱いとすることもできます。
「納期限延長」欄に「R」を入力すると、即納分について一括納付の対象から除外して個別納付扱いになります。全ての税科目について直納により納付する場合も、この設定が必要です。
一括納付は、複数の輸入申告をまとめて納付する方法です。包括延長方式を利用している場合、特定月の輸入をまとめて一括納付できます。しかし特定の申告だけ即納したい場合は、納期限延長欄に適切なコードを入力して個別納付扱いにします。
即納と延長、一括納付と個別納付の使い分けは、企業の資金繰り計画に直結します。どの方法が最適かは、輸入頻度や税額、資金繰りの状況によって異なるため、通関士は輸入者のニーズを正確に把握する必要があります。
厳しいところですね。
災害その他やむを得ない理由により、関税の納期限までに納付できない場合、税関長は納期限を延長できます。この特例措置は、通常の納期限延長制度とは別の救済制度です。
税関長は、財務大臣が当該理由に係る地域及び期日を指定する前であっても、納税者の申請により期日を指定して納期限を延長できます。つまり災害発生直後でも、個別に納期限延長の申請が可能です。
この特例措置は、災害や感染症の流行など、納税者の責任によらない事由で納付が困難になった場合に適用されます。通常の納期限延長制度では担保提供が必須ですが、災害時の特例措置では担保要件が緩和される場合もあります。
災害時の特例措置は、納期限延長制度を利用していない即納扱いの関税にも適用されます。通常の業務では使う機会は少ないですが、緊急時の対応として知っておくと役立ちます。
いいことですね。
納期限延長制度は資金繰り改善に直結する
納期限延長制度の最大のメリットは、資金繰りの改善です。関税・消費税の支払いを最大3ヶ月延長できるため、手元資金を他の事業活動に回せます。
包括延長方式を利用すれば、5月の輸入許可分を8月末まで支払わなくてよいため、約4ヶ月間の資金繰り改善効果があります。例えば月間の関税額が100万円の企業なら、400万円分の資金を他の用途に活用できます。
これは使えそうです。
輸入許可がスムーズになるのも大きなメリットです。通常は関税を即座に納付しなければ貨物を引き取れませんが、納期限延長制度を利用すれば、資金が手元になくても輸入許可を受けられます。
包括延長方式では、月単位で納付をまとめられるため、事務処理の効率化にもつながります。個別に納付書を処理する手間が省け、経理部門の負担が軽減されます。
納期限延長制度にデメリットはあるのでしょうか?最大のデメリットは、担保提供のコストです。
担保として保証書や法令保証証券を用意する場合、保証料が発生します。保証料は担保額や保証期間に応じて変動しますが、継続的に納期限延長制度を利用する場合、年間で数十万円から数百万円の保証料負担が生じる可能性があります。
4ヶ月分の関税等相当額を担保として用意する必要があるため、中小企業にとっては担保枠の確保自体が負担になる場合もあります。銀行の信用枠を使う場合、他の融資枠を圧迫する恐れもあります。
納期限の管理が複雑になるのもデメリットです。包括延長方式では月ごとに納期限が異なるため、納付スケジュールの管理を誤ると延滞税が発生します。経理担当者は常に納期限カレンダーを確認し、支払い漏れがないよう注意する必要があります。
納期限延長制度と即納、どちらを選ぶべきかは、企業の資金状況と輸入頻度によって異なります。
資金繰りに余裕があり、輸入頻度が低い企業は即納が適しています。即納なら担保提供が不要で、保証料などのコストも発生しません。
納期限管理の手間も省けます。
一方、輸入頻度が高く、資金繰りを改善したい企業は納期限延長制度が有利です。特に月間の関税額が大きい企業にとって、数ヶ月分の納付を延長できるメリットは大きいです。
特例輸入者は担保不要で特例延長方式を利用できるため、積極的に活用すべきです。担保コストがかからず、2ヶ月間の納期限延長が受けられるため、資金繰り改善効果が純粋に得られます。
個別延長方式は、スポット的に大口の輸入を行う場合に便利です。包括延長方式ほど手続きが複雑ではなく、必要な時だけ利用できます。
納期限延長制度の詳細については、税関のカスタムスアンサーが最も権威性の高い情報源です。特に「1302 関税等の納期限延長制度の概要」では、3つの方式の違いや申請方法が詳しく解説されています。
税関カスタムスアンサー「1302 関税等の納期限延長制度の概要」
納期限延長制度の3方式(個別・包括・特例)の違いや、延長期間、担保提供の要件について、税関が公式に解説しています。
個別納期限延長の具体的な申請手続きについては、「1304 個別納期限延長の申請と担保提供手続」が参考になります。包括延長方式については「1303 包括納期限延長の申請と担保提供手続」を確認しましょう。
実務上の疑問点や個別の相談については、税関相談官に直接問い合わせることができます。税関手続等に関する相談は、最寄りの税関相談官が対応してくれます。
通関士試験の学習者向けには、フォーサイトの通関士講座コラムも参考になります。納期限延長制度のメリット・デメリットや実務上の注意点が、初学者にもわかりやすく解説されています。