関税定率法基本通達14-16の容器免税と無条件免税の手続き

関税定率法基本通達14-16が定める再輸入容器の無条件免税制度、通い容器の同一性確認や帳簿管理の要件を正確に理解していますか?実務で陥りやすい落とし穴を解説します。

関税定率法基本通達14-16による再輸入容器の無条件免税と実務手続き

識別番号のない量産容器は、輸出許可書を出しても免税が認められず関税が丸ごと課税されます。


この記事の3つのポイント
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基本通達14-16とは何か

関税定率法第14条第11号に基づく再輸入容器の無条件免税制度の根拠通達。関税と消費税の両方が免除される強力な制度です。

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同一性確認が鍵

免税の可否は「同一性の確認」ができるかどうかで決まります。識別番号・材質・規格の記録が実務の核心です。

2022年の制度簡素化

令和4年4月からAEO輸出入者を対象に免税手続の簡素化が拡大。AEO承認企業でも79%が未利用という実態があります。


関税定率法基本通達14-16の概要と法的根拠

関税定率法基本通達14-16(以下「通達14-16」)は、関税定率法第14条第11号に規定する「再輸入する容器の無条件免税」の具体的な取扱いを定めた行政通達です。本邦(日本)から輸出された貨物の容器が再び輸入される際に、関税だけでなく消費税(輸徴法第13条)も免除される点が最大のメリットです。これは知っている通関士と知らない通関士では、荷主への提案力に大きな差が生まれる制度です。


対象となる容器は、関税定率法施行令第15条各号に掲げられたたる・箱・パレット・コンテナー・シリンダーなど、貨物の運送または保護のために使用されるものです。中でも、輸出入貨物の運送のために反復して使用される「通い容器」(リターナブルパレット等)が実務上最も頻繁に登場します。


免税が認められる基本要件は次の3点です。


- 本邦から輸出の際、すでに容器としての形状・機能を有していること
- 貨物の容器として必要最低限の大きさであること
- 本邦から輸出された際に使用されたもの、または輸入の際に使用されているもの


つまり容器免税が適用されるのは、日本製・外国製を問わず「もともと日本から輸出したもの」が前提です。これが原則です。容器そのものを国内産業保護の観点から課税する必要がないという政策的判断が背景にあります。


重要な実務ポイントとして、内容貨物と容器は必ず分離して申告しなければなりません(通達14-16(6))。一括して申告してしまうと免税の計算が正確にできないため、輸入(納税)申告書の別欄にそれぞれの価格・税番・税率・税額(容器については免税額)を記入させる必要があります。これは通達上の必須要件です。


なお、税番が異なる通い容器が複数ある場合は、数字上の配列において最初となる税番により一欄にまとめて記入して差し支えないという例外措置も設けられており(通達14-16(6)改正後)、実務負担の軽減が図られています。


税関ホームページのカスタムスアンサーでも制度概要が公開されています。↓


税関カスタムスアンサー1611「日本から輸出された貨物の容器を日本に輸入する場合の免税の手続」(手続フロー・ひな型様式あり)


関税定率法基本通達14-16の同一性確認と輸出許可書の役割

通達14-16の実務で最も頻繁につまずくのが、「同一性の確認」です。シンプルに言えば、今輸入しようとしているこの容器が、確かに過去に日本から輸出したあの容器と同じものかを証明できるかどうか、それがすべての起点になります。


原則の確認方法は、輸入申告の際に当該容器の輸出許可書(またはこれに代わる税関の証明書)を税関長に提出し、そこに記載されている規格・材質等と現物の容器を対査する方法です(通達14-16(8))。これが「個別管理方式」と呼ばれる基本形です。


個別管理方式の場合、毎回の輸入申告ごとに輸出許可書を提示する必要があります。大量・頻繁に容器を往復させる荷主の場合、申告の度に区分2(書類検査)や区分3(現物検査)が入る可能性が高く、通関時間が大幅に延びるリスクがあります。これは痛いですね。


そこで重要になるのが、通達14-16(8)ただし書きが定める「帳簿等による適切な管理」を事前に税関へ届け出ることで認められる「包括管理方式」です。包括管理が認められるには、次の要件を満たす必要があります。


- 事前資料の提出:通い容器の規格・材質・識別表示(刻印、シール等)が確認できる写真またはカタログ等の資料を税関官署に2部提出し、「受理番号」を取得していること
- 帳簿管理:通い容器の種類ごとに、輸入個数・輸入年月日、輸出個数・輸出年月日、在庫個数を管理し、1年ごとに提出できる状態にしておくこと


帳簿の提出は原則として年1回ですが、税関が必要と認めた場合は随時提出を求められることがある点も押さえておく必要があります。これが条件です。


包括管理方式が認められると、再輸入の都度、輸入(納税)申告書の記事欄に受理番号を記載するだけで同一性の確認ができるようになります。通関の円滑化という点でメリットは非常に大きく、繰り返し容器を往復させる製造業や自動車業界では積極的に活用されています。


一方、ここで見落としがちな落とし穴があります。量産されたプラスチック製トレイや発泡スチロール製容器のように、識別番号等の個体識別手段がないものは、包括管理方式であっても同一性の特定が困難とみなされ、免税が認められないケースがあります。「安い容器だから個別に番号を付けなかった」という対応では、後になって関税を全額課税されるリスクがあるため注意が必要です。


JETRO「貿易取引に反復利用する容器(通い容器)を日本に回収する場合の免税手続」(無条件免税・再輸出免税の適用区分とポイントが整理されています)


関税定率法基本通達14-16の輸出申告における記載要件と省略特例

容器免税は輸入時の手続きだけで完結するわけではありません。輸出時の申告書への記載が、その後の再輸入時の同一性確認を左右します。この点が見落とされがちです。


通達14-16(7)では、容器免税の適用を受けようとする容器の輸出申告に際し、輸出申告書の「個数、記号、番号」欄に、当該容器の規格・材質その他再輸入時における同一性確認のために必要な事項を記載させることが求められています。つまり輸出側の通関業者が適切な記載をしなければ、輸入時に同一性確認ができず免税が否認されるリスクが生じます。


ただし、次のいずれかに該当する場合には輸出申告書への記載を省略できます。


- 規格・材質等を確認できる資料(容器の見本を含む)が事前またはその申告の際に提出されている場合
- 当該容器が通い容器であって、特例輸出入者(令第16条第1項に規定する者、いわゆるAEO特例輸出入者)の特例申告貨物である場合


後者については、令和4年(2022年)4月1日から制度が拡充されており、以前は輸出者・輸入者が同一のAEO輸出入者でなければ適用できなかった簡素化が、輸出者と輸入者がそれぞれ別々にAEO輸出者・AEO輸入者の承認を受けている場合にも適用できるようになりました。特例申告制度(納税前引取り)を利用していない通常の輸入申告貨物にも対象が広がった点は大きな変化です。


一方で、令和8年(2026年)3月時点の国土交通省調査によれば、AEO承認企業の79%がこの簡素化を利用していないという実態があります。認知度は72%と高いにもかかわらず利用が進んでいない背景には、通い容器一つひとつに管理マークを付与しなければならない手間と、種類が多い場合の管理負担の問題があります。「知っているが使いこなせていない」という企業が大半を占める状況は、通関業者にとって提案の余地がある領域といえます。


また、消費税については輸徴法(輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律)第13条により、関税の免除と連動して免除されます。関税だけでなく消費税も丸ごと0円になる点は、荷主にとってコストインパクトが大きく、積極的に情報提供する価値があります。


税関「通い容器に関する免税手続の簡素化」(令和4年4月改正の対象拡大の概要と手続フローが掲載されています)


関税定率法基本通達14-16と再輸出免税(第17条)との使い分け

通関実務では、「再輸入する容器の無条件免税(定率法14条11号・通達14-16)」と「再輸出免税(定率法17条1項2・3号)」を混同しやすい場面があります。この2つを正確に区別することは、誤った申告を防ぐうえで不可欠です。


区別の基準はシンプルです。


| 区分 | 適用条件 | 免税規定 |
|------|----------|----------|
| 無条件免税(通達14-16) | 日本から輸出された容器を再輸入する場合 | 定率法第14条第11号 |
| 再輸出免税 | 外国から輸入した容器をその後1年以内に再輸出する場合 | 定率法第17条第1項第2・3号 |


つまり、もとが「日本から出て行った容器」なら無条件免税、「外国から来た容器を一時的に使って再び外国へ送り出す」なら再輸出免税、という区分になります。これが原則です。


再輸出免税の場合は輸入時に「再輸出貨物減免税明細書(T-1340)」の提出が必要で、再輸出後には「再輸出減免税貨物の輸出の届出書(T-1385)」も提出しなければなりません。手続きが漏れると、免除された関税が事後的に徴収される事態になります。再輸出免税は期限管理が重要です。


再輸出の期限は輸入許可の日から原則1年以内と定められています。1年を超えると関税が徴収される可能性があるため、帳簿やシステムで期限を管理する体制を整えておくことが重要です。なお、やむを得ない事情がある場合は、「再輸入・再輸出・輸入期間延長承認申請書(T-1065)」を輸入許可税関官署に提出することで期間延長が可能です。


もう一つ注意が必要な点として、無条件免税と再輸出免税のいずれも、他の規定による減免戻し税の適用を受けた貨物については、適用除外となる場合があることが挙げられます。複数の減免税制度を同時に活用しようとする場面では、優先関係を確認する必要があります。


国土交通省「国際物流におけるリターナブル物流容器(RTI)利活用の手引き」(再輸入免税・再輸出免税の違いと具体的な適用フローが図解されています)


関税定率法基本通達14-16を活かした実務改善の独自視点

通関業者として荷主にアドバイスできる「通達14-16の活用実務」は、単なる手続き知識にとどまりません。制度設計を深く理解することで、荷主のサプライチェーン全体のコスト最適化に貢献できる可能性があります。


第一に、容器のデザイン段階からの関与です。量産されたプラスチックトレイなどに識別番号(シリアルナンバーや刻印)を付与するかどうかは、製造コストに影響します。しかし識別番号がなければ免税が受けられない場合があります。1個数百円のパレットでも、年間数千個規模で往復させる場合は、識別管理にかかる費用以上の関税免税効果が生まれます。荷主の設計部門や調達部門への情報提供が有効な場面です。


第二に、AEO制度との組み合わせ効果です。AEO輸入者の認定を取得している荷主は、通達14-16(8)ただし書きおよび(9)の特例により、通い容器の同一性確認のための資料提出が不要になります。輸出入双方がAEO承認を受けていれば、輸出申告書への材質記載・輸出許可書の提示・再輸出貨物減免税明細書の提出がすべて省略できます。これは使えそうです。


ただし、AEO輸入者が通い容器の輸出入状況を自主管理し、税関から求められた際にその管理状況を確認できる体制を維持することが前提です。管理体制が不十分だと判断された場合、簡素化の適用が取り消される可能性があります。簡素化の恩恵を受けるためには帳簿管理の質が求められます。


第三に、実務上見落としやすい「輸出申告の遡及的な欠陥」への対応です。輸出時に通関業者が輸出申告書の「個数、記号、番号」欄に容器の規格・材質等を記載していなかった、または事前資料の提出もなかった場合、再輸入時に同一性確認ができず免税が否認されます。この問題は輸出時の手落ちが輸入時に発覚するという時間差があるため、気づいたときには対処が困難です。輸出申告時点での確認が条件です。


実際の手続きでは、税関の窓口(相談官室)への事前照会が効果的です。包括管理の申請書ひな型は税関ホームページに掲載されており(新規・変更・容器追加・廃止の4種類)、まずドラフトを作成して税関に電話相談してから正式申請する流れをとることで、受理率が上がります。申請前の一本電話は必須です。


税関カスタムスアンサー1611「申請資料のひな型(PDF・WORD)」(新規・変更・種類追加・廃止の各様式が公開されています)