特恵関税を適用した貨物は減税対象外です
加工再輸入減税制度は、日本から輸出した原材料を海外で加工・組立てた後、製品として再輸入する際に関税を軽減する制度です。これは関税暫定措置法第8条に基づく制度で、国際水平分業を関税面から支援することを目的としています。
参考)https://www.customs.go.jp/tsukan/zanpachi/index.htm
具体的には、製品にかかる関税のうち原材料価格相当分の関税を軽減できます。例えば日本から生地を輸出し、海外で縫製して衣類として輸入する場合、生地の価格分に相当する関税が減税されるということです。つまり加工費用分だけに関税が課税される形になります。
参考)加工再輸入減税制度について。 - 通関士ブログ
この制度を利用すると、海外での委託加工コストを抑えられます。原材料を含む製品全体に関税が課されるのではなく、加工による付加価値部分のみに課税されるため、輸入コストが削減できるわけです。通関業務では頻繁に活用される制度と言えます。
対象品目は政令で限定されており、大きく3つのカテゴリーに分かれています。革製品では、かばん・財布などの第42.02項や革製衣類・衣類附属品などの第42.03項が対象です。
参考)https://www.customs.go.jp/tsukan/zanpachi/zentai.pdf
繊維製品では、じゅうたん(第57類)、編物製衣類(第61類)、織物製衣類(第62類)、カーテン等の繊維製品(第63類)が該当します。革製履物の甲(第6406.10号の1)も対象品目に含まれます。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1605_jr.htm
輸出原材料についても政令で指定されています。革製品向けには牛革・羊革などの各種なめし革、人造毛皮、絹糸・綿糸などの縫糸、プラスチック製ハンガーやボタンなどの附属品が対象です。繊維製品向けには同様の縫糸や織物類に加え、安全ピンやファスナーなども含まれます。ただし、対象品目以外の原材料を使った製品は減税を受けられません。
いくつかの重要な除外要件があります。まず、関税定率法別表で無税とされている製品は対象外です。また、特恵関税の適用を受ける物品も減税制度を利用できません。
この点は実務上の大きな注意点です。特恵関税のほうが有利な場合でも、加工再輸入減税との併用はできないということですね。
どちらか一方を選択する必要があります。
期限についても厳格な要件があります。原材料の輸出許可日から原則1年以内に製品を輸入しなければなりません。ただし、やむを得ない理由がある場合には、税関長の承認を受けることで期間延長が可能です。震災・風水害などの天災や火災などがこれに該当します。
参考)原材料を日本から送り、海外で加工・組み立てし再度輸入する際の…
輸出された原材料は、委託加工契約として契約書を提出したものである必要があります。海外でのストック取引の場合は、別途契約実績表の提出が求められます。
手続きは輸出時と輸入時の2段階に分かれます。輸出時には、輸出申告書に「ZAN8」と記載し、加工・組立輸出貨物確認申告書(税関様式P第7700号)を2通(原本・交付用)提出します。
契約書等の提出も必要です。
確認申告書には、輸出原材料の品名・数量・単価、加工地名・加工業者名、加工の概要などを記載します。同一性確認のため、必要に応じて生地見本を提出することもできます。ただし令和5年4月以降、生地見本の提出は原則省略され、確認申告書とその添付書類で同一性を確認することが基本となりました。
参考)https://www.customs.go.jp/tsukan/zanpachi/qamp;a.pdf
輸入時には、輸入申告書に加え、輸出許可書、加工・修繕・組立製品減免税明細書(T-1060)、附属書、確認申告書、契約書等、加工仕様書などを提出します。附属書には輸出原材料の概要や副産物の情報を記載します。
減税額の計算は、製品の関税額に対し輸出原材料の課税価格相当価格が製品課税価格に占める割合を乗じて算出します。計算は複雑なため、減税計算書を作成して提出するのが一般的です。
財務省税関公式の加工再輸入減税制度マニュアル(PDF)では、具体的な記載例や計算方法が詳細に解説されています
海外で行う加工には制限があります。革製品の場合、原材料をなめすこと、染料・油脂・プラスチック・ゴムなどを染み込ませたり塗布すること、型押しややすりがけなどで表面を変更することは認められません。
繊維製品では、プラスチック・ゴムなどを染み込ませたり塗布・被覆・積層することが禁止されています。革製履物の甲についても、革製品と同様の制限が課されます。
ただし例外規定があります。製品輸入時に原材料貨物の確認が容易にできる程度の加工であれば、上記の一部の加工も認められる場合があります。例えば軽微なコーティングなどが該当する可能性がありますが、判断が難しいケースでは税関への事前相談が重要です。
禁止加工を行った製品は制度適用外となります。そうなると原材料相当分も含めた製品全体に関税が課されるため、コスト増となってしまいます。副産物が生じた場合の処理方法も附属書に記載が必要です。商品価値のある残余生地を別契約に転用する場合は副産物として扱われます。
同一性の確認は再輸入時の重要なチェックポイントです。令和5年4月以降、確認申告書とその添付書類(生地規格書・指図書・写真等)で基本通達8-4(5)に掲げる事項を確認することが原則となりました。生地品番が輸出インボイスや加工仕様書と一致しているかを確認します。
契約変更があった場合の手続きにも注意が必要です。原材料の品名・数量・単価などに変更があれば、変更後の契約書を2通提出します。ただし加工賃の単価変更のみであれば、当初の契約書の提示で足ります。
分割輸入の場合、附属書の裏落し処理が重要になります。使用数量を記載し、残数量を管理していく必要があります。
最終輸入時には「輸入完了」と記載します。
不良生地が発生した場合は、滅却・売却・返送を証明する書類を提出して附属書を訂正します。現地メーカーの滅却費用請求書や売却先の納品書などが該当します。通常の裁断くずや端切れは製造ロスとして扱われ、附属書の訂正は不要です。
事後審査扱いとなった場合の修正手続きも把握しておく必要があります。輸出未完了のため事後審査となった輸入申告は、輸出完了後に附属書の訂正または差し替えを行います。AEO事業者の場合は、確認申告書の交付用や契約書の返付用の作成を省略できる簡素化措置があります。