古い施行日の項目別対比表を提出すると、税関から差し戻しを受けて船積みが遅れます。
通関業に携わっていると、「外国為替令 別表(外為令 別表)」と「輸出貿易管理令 別表第1(輸出令 別表第1)」という2つの法令名を同時に目にする機会が多いはずです。この2つは非常に似ているため、混同してしまうことも珍しくありません。つまり、整理して覚えることが実務の第一歩です。
外為令 別表は、提供しようとする技術を規制対象とします。一方、輸出令 別表第1は、輸出しようとする貨物を規制対象とします。この区別がそのまま、役務取引許可(技術)と輸出許可(貨物)という申請種別の違いにも直結します。どちらの法令も、1項から15項までをリスト規制、16項をキャッチオール規制と位置づけている点は共通しています。
項目別対比表は、輸出令 別表第1と外為令 別表の両方に対応した帳票として設計されています。CISTECが発行するB01「輸出貿易管理令別表第1・外国為替令別表 項目別対比表」という書名の中に、両方の名称が含まれているのはそのためです。これが基本です。
| 区分 | 規制対象 | 申請種別 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 外為令 別表 | 技術(設計図・ソフトウェア・口頭指導等) | 役務取引許可 | 外為法第25条 |
| 輸出令 別表第1 | 貨物(機械・部品・化学品等) | 輸出許可 | 外為法第48条 |
たとえば、ある工作機械を輸出する場合は輸出令 別表第1で該非判定を行いますが、その機械の設計図やマニュアルを電子メールで送付する場合は外為令 別表での判定が必要になります。同じ製品に関わる業務でも、「物」と「情報・技術」で適用される法令が異なる点は、現場での判断ミスにつながりやすいポイントです。
外為令 別表の1項から15項には、武器関連(1項)、原子力(2項)、化学・生物兵器関連(3項・3の2項)、ミサイル(4項)、先端材料(5項)、材料加工(6項)、エレクトロニクス(7項)、コンピュータ(8項)、通信(9項)、センサー・レーザー(10項)、航法(11項)、海洋(12項)、推進装置(13項)、その他(14項)、機微品目(15項)という品目区分があります。これらの区分は輸出令 別表第1と対応しており、貨物と技術で同じ安全保障上の観点から規制されています。
実務で重要なのは、貨物と技術の両方について同時に該非判定を行う習慣を持つことです。貨物の非該当が確認できても、技術提供の判定を忘れれば外為法違反になり得ます。
参考:外国為替令 別表と輸出貿易管理令の関係法令(e-Gov法令検索)
輸出貿易管理令別表第一及び外国為替令別表の規定に基づき貨物又は技術を定める省令(e-Gov法令検索)
項目別対比表を初めて記入する際、判定欄に使う記号「○」「×」「−」の使い分けに戸惑う方が少なくありません。これは実務上とても重要な箇所です。正確に使い分けないと、税関や経済産業省の担当官が確認した際に意味が伝わらず、書類の再提出を求められることになります。
📌 判定記号の使い分け(必須知識)
対象外「−」と非該当「×」は似た概念ですが、意味が異なります。「測定器かどうか」という種別の問題が「−」、「測定器だが数値スペックが規制値を超えない」という量的・性能的問題が「×」です。この違いを意識せずに全部「×」で埋めてしまうのは、実務上よくある誤りです。厳しいところですね。
記入欄には、単に記号を書くだけでは不十分です。注釈欄(※23)には、非該当・対象外と判定した理由を第三者が見てわかるように簡潔に記述する必要があります。たとえば「当該品は○○型センサーではなく、受動素子であるため対象外」のように、一般人が見て容易に判断できる合理的な理由と数値を記入することが求められています。
判定の構造は、複数の部分判定欄「 」「《 》」「〈 〉」を積み上げて、最終的に最終判定欄「【 】」に結論を記入する積み上げ方式です。「【 】以外が○でも、ただちに該当を意味しない」という点が初心者に理解されにくいポイントです。【 】が○になって初めて「該当」となります。これだけ覚えておけばOKです。
📌 記入時のチェックリスト
作成責任者の記名押印は、「貨物・技術の内容に通じた該非判定責任者」が行うことが求められています。つまり、事務担当者ではなく技術を把握している責任者が署名することが原則です。
参考:CISTECによる対比表の説明と記入要領(公式サンプルPDF)
輸出貿易管理令 別表第1 項目別対比表(該非判定用)記入要領|CISTEC
通関実務において、多くの担当者が気を緩めやすいのが「書式バージョンの確認」です。しかし、これを怠ると税関から差し戻しを受け、船積みが遅延するという実害が発生します。これは使えそうな知識ですね。
項目別対比表の左上には、「2026.2.14施行政省令等対応」のような施行日が記載されています。輸出令・外為令の改正があるたびに、この日付も更新されます。そして輸出申告の際に要求されるのは、常に最新の施行日に対応した版です。古い施行日の書類では税関への提出が認められません。
直近では2026年2月14日に政省令改正が施行され、以下の品目がリスト規制に追加されました。
さらに2025年10月9日には、キャッチオール規制の一部改正を伴う政令が施行されています。この改正はリスト規制ではなくキャッチオール規制の変更であったため、項目別対比表本体の施行日(左上の日付表示)は変更不要でしたが、参考資料部分(P.731〜P.737)の差し替えが必要でした。細かい改正であっても、関係箇所の訂正版をCISTECのウェブサイトで都度確認することが重要です。
📆 近年の主な改正履歴(参考)
| 施行日 | 改正内容の概要 | 対比表への影響 |
|---|---|---|
| 2026年2月14日 | リスト規制 貨物スペック追加(3の2、5、7の項) | 新版発行・施行日更新あり |
| 2025年10月9日 | キャッチオール規制(外為令等)一部改正 | 差し替えページのみ(施行日変更なし) |
| 2025年5月28日 | 政省令改正(通達改正含む) | 新版発行・施行日更新あり |
法令改正は年に複数回行われることがあり、その都度CISTEC発行の書籍も改訂版が発売されます。組織内で使い回す際は、使用している版の施行日を定期的に確認するルールを設けることが現場のベストプラクティスです。CISTECのウェブサイト(https://www.cistec.or.jp/publication/)で最新情報を確認できます。
参考:輸出貿易管理令の改正概要と項目別対比表への影響について
輸出貿易管理令等の改正の概要について(経済産業省)
実務現場でよく見られる行為に「項目別対比表をExcelやWordで作り直して社内共有する」というものがあります。作業効率を上げたい気持ちは理解できますが、これは著作権法に違反する可能性がある行為です。
CISTECが発行する項目別対比表の著作権は、一般財団法人安全保障貿易情報センター(CISTEC)が保有しています。購入した書籍をコピー機でコピーして紙に記入し、通関や許可申請に使用することは問題ありません。しかし、CISTECの許諾なく、Word・Excel・PDF等の電子ファイルとして複製することは著作権法に違反し、CISTECは不正を発見した場合に刑事・民事両面での法的措置を取る可能性があると明示しています。
意外ですね。書式をデジタルで使い回したいなら、正規の手段があります。CISTECが提供する「総合データベース 該非判定コーナー」では、未記入の項目別対比表(Excel形式)および全てのパラメータシート(Excel・PDF形式)がダウンロードできます。利用料は月額制で、登録後1年間は解約不可という条件があります。
📌 電子版の入手方法まとめ
通関業として複数の荷主の案件を扱う場合、書式を社内で電子管理したいニーズは当然あります。その場合は必ず正規のCISTEC総合データベースへの登録を検討してください。コスト削減のためにグレーな複製を行うと、法的リスクが生じるうえ、荷主からの信頼を失うことにもつながります。デメリットが大きいですね。
参考:CISTEC 該非判定帳票(項目別対比表・パラメータシート)の案内ページ
該非判定帳票(項目別対比表・パラメータシート)|安全保障貿易情報センター(CISTEC)
外為令 別表の規制は、物理的な貨物の国際輸送だけを対象にしていると思われがちです。しかし実際には、日本国内で行われる技術の提供も規制対象になる場合があります。これが「みなし輸出(みなし輸出管理)」です。
2022年5月1日の外為法改正通達により、みなし輸出管理の範囲が明確化されました。それまでは「居住者から非居住者へのメール・口頭による技術提供」が主な対象でしたが、改正後は以下の行為も対象に含まれるようになっています。
特定類型とは、外国政府や外国の法人等との間に雇用・役員等の関係がある居住者を指します。平たく言えば、「日本在住の外国人社員でも、外国政府と雇用関係があれば規制対象になり得る」ということです。通関業者が直接行う業務ではありませんが、荷主(輸出者)のコンプライアンス状況に影響するため、理解しておく価値があります。
たとえば工場見学や技術指導の場面で、外為令 別表の1〜15項に該当する技術情報を外国人研究者に口頭で伝える行為も、みなし輸出として役務取引許可の要否を判定する必要があります。これを怠った場合の罰則は外為法違反として、個人に最大10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金(または併科)という非常に重いものです。
通関業者として荷主への確認事項のひとつとして、「みなし輸出管理の対象取引はないか」を輸出申告前にヒアリングするフローを設けることは、荷主との信頼関係構築にもつながる独自の付加価値になります。これは業界全体では意識されにくい視点です。
📌 荷主へのヒアリング確認例(みなし輸出チェック)
参考:経済産業省「安全保障貿易管理の制度について(みなし輸出の明確化)」
安全保障貿易管理の制度について(2022年改正・みなし輸出管理の明確化)|経済産業省
CISTECが発行する該非判定帳票には、項目別対比表(B01)とパラメータシート(B02〜B08)の2種類があります。どちらを使うべきか迷う場面は通関実務でもよく起こります。両者の違いを正確に理解することで、判定の精度と効率が上がります。
項目別対比表は、外為令 別表・輸出令 別表第1の全ての項(1〜16項)に対応した万能型の帳票です。規制されているすべての貨物と技術を一括してチェックできるため、どの品目を扱う場合にも対応できます。初めて使う場面や、品目が不明確なときは、こちらを選ぶのが原則です。
パラメータシートは、分野別のチェックシートです。CISTECではB02〜B08として以下の分野別に用意しています。
パラメータシートの特徴は、特定分野の技術スペックと規制値の照合に特化した設計になっていることです。たとえばB02(コンピュータ)のパラメータシートでは、CPUの処理能力(CTP)の数値を記入するだけで、規制該当の可否を迅速に確認できます。
どちらを使えばよいかの判断は、「初心者・品目不明確・幅広い確認が必要」なら項目別対比表、「特定分野・繰り返し同品目・スペック照合が主作業」ならパラメータシートというのが目安です。どちらも通関・許可申請に使用できますが、混用は混乱を招くためどちらか一方に統一する方が実務上はシンプルです。
なお、B08(別表第2化学品関連)のパラメータシートは、2025年10月時点でCISTECのサイトからPDF版を無償でダウンロードできます。化学品を扱う通関業者にとって、まず入手しておくべき資料です。
📌 項目別対比表 vs パラメータシート 選び方まとめ
| 条件 | 推奨帳票 | 理由 |
|---|---|---|
| 初めて使う / 品目不明確 | 項目別対比表 | 全項目網羅・初心者向け |
| コンピュータ・通信品の繰り返し判定 | パラメータシート(B02・B03) | スペック照合が高速・簡便 |
| 化学品(別表第2品目) | パラメータシート(B08) | PDF無償提供あり・化学品専用 |
| 複数分野にまたがる品目 | 項目別対比表 | 複数項番が同時確認可能 |
なお、同一品目でも複数の項番で規制される場合があります。法令の「○○は除く。」という文言で安易に非該当と判断するのは危険で、除外された品目が別の項番で規制されているケースがあります。これは該非判定の中でも特に見落とされやすい落とし穴です。
参考:CISTECによる項目別対比表・パラメータシートの一覧と入手方法
該非判定帳票(項目別対比表・パラメータシート)一覧|CISTEC