「16項該当」と書かれた該非判定書を見ても、すぐに許可申請しなくていいケースが9割以上あります。
外国為替令(外為令)の別表は、技術の提供に関する規制品目を1項から16項まで列挙した一覧表です。1項から15項には、武器・原子力・化学兵器・ミサイル・先端素材・エレクトロニクスなど、国際輸出管理レジームで合意された「リスト規制」の対象技術が品目ごとに明記されています。そして16項には、これら1〜15項に該当しない「その他すべての技術」が包括的に規定されています。
つまり、リスト規制から漏れた品目を丸ごと捕まえるための網が16項です。
貨物側では「輸出貿易管理令(輸出令)別表第1の16項」が対応し、技術側では「外国為替令別表の16項」が対応します。通関実務では両方をセットで理解しておく必要があります。
16項に含まれる技術・貨物の範囲は非常に広く、機械製品であれば1〜15項非該当のもの全てが該当します。一方、食料品・木材製品・皮革製品・紙製品などは16項にも該当せず、キャッチオール規制の対象外です。これが基本です。
| 区分 | 内容 |
|------|------|
| リスト規制(1〜15項) | 特定のスペックを持つ品目を品目別に規制。仕向地を問わず原則許可必要 |
| キャッチオール規制(16項) | リスト規制対象外の品目を包括的に規制。用途・需要者・仕向地によって許可要否が変わる |
| 16項非該当(規制外) | 食料、木材製品、皮革製品、紙製品など。キャッチオール規制の対象外 |
経済産業省が公開するキャッチオール規制の公式解説は、制度の全体像を把握するうえで必読です。
通関業務に携わっていると、メーカーや荷主から取り寄せた該非判定書に「16項該当」と記載されているケースに頻繁に出くわします。ここで最もよくある誤解が、「16項該当=経済産業大臣の許可が必要」という思い込みです。
これは正しくありません。
前述のとおり、木材・食品等を除くほぼすべての工業製品が16項の対象になります。つまり、該非判定書の「16項該当」という記載は「キャッチオール規制の対象品目に含まれる」という意味であり、それだけで直ちに許可申請が必要になるわけではないのです。
実際に許可申請が必要となるのは、以下の要件のいずれかに該当する場合だけです。
- 🔴 インフォーム要件:経済産業大臣から「許可申請をすべき旨」の文書(インフォーム通知)を受け取っている場合
- 🟡 客観要件(用途要件):輸出する技術・貨物が大量破壊兵器等の開発・製造・使用・貯蔵、または通常兵器の開発・製造・使用に用いられると知っている、またはそのおそれが明らかな場合
- 🟡 客観要件(需要者要件):取引相手が大量破壊兵器等の開発等を行っている事業者、または外国ユーザーリストに掲載された団体である場合
通常の民間取引では、インフォーム通知が届くことはほとんどありません。客観要件の確認が実務の中心になります。
外国ユーザーリストへの確認は経済産業省の公式ページから無料で行えます。業務フローの中に「外国ユーザーリスト照合」のステップを組み込んでおくと、確認漏れを防げます。
2025年10月9日、補完的輸出規制の大改正が施行されました。通関業従事者にとって最も影響が大きいのが、16項の2分割です。
これまで16項はひとつの項として規定されていましたが、改正後は次の2つに分類されます。
16項(1):特定品目(兵器への転用リスクが特に高いと判断された12カテゴリの汎用品)
1. 電子ビーム・レーザー等を用いた加工機械、ウォータージェット切断機械
2. 金属加工用マシニングセンター、ユニットコンストラクションマシン等
3. 旋盤
4. 金属用のボール盤、中ぐり盤、フライス盤等
5. 研削盤、ホーニング盤、ラップ盤等
6. 平削り盤、形削り盤、ブローチ盤、歯切り盤等
7. レーダー、航行用無線機器および無線遠隔制御装置
8. 集積回路(IC)
9. 航空機・宇宙飛行体・ロケットおよびそれらの部品
10. 航行用機器(羅針盤を除く)
11. 物理・化学分析用機器、熱・音・光の測定用機器等
12. オシロスコープ、スペクトラムアナライザー等
16項(2):上記(1)以外の全品目(従来の16項から(1)を除いたもの)
これは大きな変更です。
実務への影響として最も注意が必要なのは、一般国(グループAや国連武器禁輸国以外の国)向けに16項(1)の貨物・技術を輸出・提供する場合、通常兵器キャッチオール規制の客観要件(用途要件+需要者要件)が新たに追加されたことです。たとえば集積回路を中国向けに輸出する場合、これまでは通常兵器キャッチオール規制の客観要件は不要でしたが、改正後は用途と需要者の両方を確認する必要があります。
改正の詳細は経済産業省の公式資料で確認してください。
また、和歌山大学の整理表は改正前後の要件変化を視覚的に確認するのに役立ちます。
キャッチオール規制の見直し(2025年10月9日施行)|和歌山大学
「16項該当」の貨物・技術を扱う際、通関業従事者として押さえておくべき確認の流れを整理します。仕向地・用途・需要者の3軸で考えるのが基本です。
ステップ1:仕向地の確認(グループ分類)
まず、輸出先の国・地域がグループAか、国連武器禁輸国(別表第3の2掲載国)か、一般国かを確認します。グループA(旧ホワイト国)は2026年時点で26カ国(アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・オーストラリア・韓国など)が指定されています。
グループAが基本です。
ただし注意点があります。2025年改正により、グループA向けであっても迂回輸出の懸念がある場合にはインフォーム要件が適用されるようになりました。「グループA向けだから確認不要」という判断は改正後は通用しません。
ステップ2:16項(1)か(2)かの確認
次に、扱う貨物・技術が16項(1)の特定品目(前述の12カテゴリ)に該当するかを確認します。集積回路・工作機械・レーダーなどは(1)に該当します。この区分によって、適用される規制要件が変わります。
ステップ3:インフォーム通知の有無を確認
経済産業大臣からインフォーム通知を受け取っている場合は、仕向地や品目を問わず許可申請が必要です。まずこの確認を行います。
ステップ4:外国ユーザーリストの照合
取引相手が外国ユーザーリストに掲載されていないかを確認します。掲載されている場合、貨物等が大量破壊兵器等の開発等に用いられないことが明らかな場合を除き、許可申請が必要です。これは必須です。
ステップ5:用途要件・需要者要件の確認(客観要件)
特に一般国向けに16項(1)の品目を輸出する場合、取引の用途(何に使われるか)と需要者の属性(懸念のある事業者ではないか)を確認します。「明らかに民生用途であることを示す書類(エンドユーザー証明書等)」を取得しておくことが、後々のリスク管理にも有効です。
この流れを社内のチェックリストとして文書化しておくと、担当者が変わっても一定のレベルを保てます。CISTECが提供する「明らかガイド」も参考にしてください。
外為法に違反して無許可で輸出・技術提供を行った場合の罰則は非常に重大です。「知らなかった」「悪意はなかった」という主張は免責の理由として認められません。厳しいところです。
具体的な罰則は以下のとおりです。
| 対象 | 刑事罰 |
|------|--------|
| 個人 | 10年以下の懲役 または 3,000万円以下の罰金(併科あり) |
| 法人 | 10億円以下の罰金 |
| 行政制裁 | 最大3年間の輸出禁止処分 |
3年間の輸出禁止処分は、事業の存続に関わります。
さらに、企業名や違反内容が経済産業省のウェブサイトに公表されるため、取引先・金融機関・荷主からの信頼失墜というビジネスリスクも避けられません。2022年以降、ロシア・ウクライナ情勢を背景に安全保障輸出管理の摘発事例は増加しており、他人事ではない状況です。
通関業者として現実的に取れる対策は、「ICP(内部規程)の整備」「外国ユーザーリストの定期照合」「エンドユーザー証明書の取得習慣化」の3点が出発点です。
ICPとは Internal Compliance Program の略で、企業が自主的に構築する輸出管理の社内体制のことです。経済産業省がICPモデルを無料で公開しており、中小規模の事業者でも導入できる簡易版が用意されています。ICPを整備している企業は一般包括許可の取得が容易になり、都度の個別許可申請にかかる業務負荷を大幅に削減できます。まずは経済産業省のICPモデルを確認するところから始めましょう。
JETROの相談窓口は初回無料で利用でき、輸出管理の基本的な疑問に対応しています。
安全保障貿易管理におけるキャッチオール規制:日本|JETRO
また、METIのQ&Aページは実務上の疑問に答える事例が多く掲載されており、定期的に確認する習慣をつけることをおすすめします。
キャッチオール関連 規制対象貨物・技術に関するQ&A|経済産業省