不開港(ふかいこう)の扱いを甘く見ると、申請漏れ一件で貨物が全量差し押さえになる場合があります。
関税法第2条第1項第11号によれば、開港(かいこう)とは「貨物の輸出入ならびに外国貿易船の入出港が政令によって許可された港」のことです 。そして不開港(ふかいこう)は「港、空港その他これらに代わり使用される場所で、開港および税関空港以外のもの」と定義されています 。つまり、不開港という「指定リスト」が存在するわけではなく、開港に指定されていない港がすべて自動的に不開港になります。 laws.e-gov.go(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000061)
開港として指定されているのは、関税法施行令の別表第一(第一条関係)に掲げられた港です 。この一覧には全国で約120港が収載されており、代表例には横浜港・東京港・大阪港・神戸港・名古屋港などの主要港が含まれます。空港については「税関空港」として別途指定されており、成田国際空港・関西国際空港・中部国際空港などが該当します 。 mlit.go(https://www.mlit.go.jp/common/001235039.pdf)
つまり原則が重要です。
- 開港・税関空港:外国貿易船・外国貿易機が自由に入出港し、貨物の輸出入手続きができる
- 不開港:それ以外のすべての港・空港・場所。原則として外国貿易船等の入出港が禁止
通関業従事者として日常業務を行う港が「開港」に指定されているか否かは、業務の基盤となる知識です。この区分を誤れば、後述する申請漏れや貨物差し押さえのリスクが生じます。
税関庁公式:開港・税関空港別の問い合わせ先一覧(令和7年7月1日現在)
手続きの流れを把握することが実務の出発点です。
外国貿易船等の船長または機長は、税関長の許可を受けた場合を除き、不開港に出入させてはならないと関税法第20条第1項で規定されています 。ただし、次の2つの例外があります。①検疫のみを目的として検疫区域に出入する場合、②遭難その他やむを得ない事故がある場合、この2ケースに限り許可なしの入港が認められます 。 robi.pecori(https://robi.pecori.jp/2025/03/26/kaijidairishi-fukaikojo/)
申請手続きの具体的な流れは以下のとおりです 。 kxxr.hatenablog(https://kxxr.hatenablog.com/entry/2020/07/27/%E4%B8%8D%E9%96%8B%E6%B8%AF%E3%81%A7%E3%81%AE%E8%8D%B7%E6%8F%9A%E3%81%92%E6%89%8B%E7%B6%9A%E3%81%8D%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%80%82)
1. 不開港出入許可申請書(税関様式C-2100)を記入
2. 原則として、出入を予定する不開港を所轄する税関に提出
3. 船舶詳細情報(船名・船籍・積荷内容)を添付
4. 税関長の許可が下り次第、入港が可能
注意点があります。所轄外の税関に提出することも認められていますが、その場合の許可は「外国貿易船が開港を経由して不開港に出入する場合に限り」行うとされています 。これを知らずに申請先を間違えると、許可が下りるまでの時間ロスにつながります。 kxxr.hatenablog(https://kxxr.hatenablog.com/entry/2020/07/27/%E4%B8%8D%E9%96%8B%E6%B8%AF%E3%81%A7%E3%81%AE%E8%8D%B7%E6%8F%9A%E3%81%92%E6%89%8B%E7%B6%9A%E3%81%8D%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%80%82)
NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)では、不開港出入許可申請を電子的に登録することも可能です。不開港コードは半角英数字5桁で入力し、国連ロカント(UN/LOCODE)を参照します 。電子申請を活用することで処理時間を短縮できます。これは使えそうです。 bbs.naccscenter(https://bbs.naccscenter.com/data/webnaccs/reference/WCP00W11E.pdf)
NACCSセンター:不開港出入許可申請の電子登録マニュアル(NACCS操作手順)
多くの通関業従事者が最初に抱く疑問があります。「不開港の一覧表はどこかにあるのか?」という問いです。
結論はシンプルです。不開港の一覧表は存在しません。これが最大のポイントです。関税法は「何が不開港か」を列挙するのではなく、「何が開港・税関空港か」を施行令別表で正定し、そこに含まれないすべてが不開港になるという構造をとっています 。 ja.wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%8B%E6%B8%AF)
したがって、確認方法は逆引きになります。
- 開港一覧は関税法施行令別表第一に掲載(約120港)
- 税関空港一覧は関税法施行令別表第二に掲載
- 開港・税関空港以外の港・空港・場所はすべて不開港
この「逆引き方式」を知らないと、地方の中小港湾に貨物を陸揚げする際に「ここは開港だろう」と思い込み、許可申請を省略するミスが起きます。厳しいところですね。
さらに注意が必要なのは、開港は廃止されることがある点です。開港した翌年以降に「年間輸出入額が5,000万円以下かつ外国貿易船の入出港が11隻以下の状態が2年継続」するか、貨物の輸出入・入出港がない場合は廃止されます 。廃止された開港はそのまま不開港に戻るため、定期的に施行令別表の最新版を確認する習慣が求められます。 ja.wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%8B%E6%B8%AF)
関税法施行令(2024年1月1日現在):開港・税関空港の条文と別表第一の参照ページ
緊急時に何が許され、何が許されないかを把握しておく必要があります。
遭難や嵐・エンジントラブル・燃料不足・病人発生などの「やむを得ない事故」が発生した場合、外国貿易船は許可なしに不開港へ緊急入港できます 。ただし、ここからが重要です。緊急入港はできても、貨物の積み下ろしは別問題です。 note(https://note.com/brain_friendly_0/n/n9933dcd37c2d)
関税法基本通達によれば : note(https://note.com/brain_friendly_0/n/n9933dcd37c2d)
- 船舶の修理のための仮陸揚げや必要な船用品の積み込みは許可不要
- それ以外の商業貨物の積み下ろしには、改めて不開港出入の許可が必要
- 検疫の停留中に他の行為(船用品補給など)をした場合も許可が必要
通関業の実務場面では、船会社や荷主から「遭難で入港したのだから荷物を下ろせるはず」と依頼が来ることがあります。この場合、修理以外の目的での荷役には必ず申請が必要だと正確に伝えることが、トラブル回避につながります。つまり「緊急入港=何でも可」ではありません。
また、船舶法第3条では外国船舶に対し、国土交通大臣の特許がある場合には商業目的での不開港寄港が認められています 。この「特許」は関税法上の「税関長の許可」とは異なるルートであり、定期的な商業寄港を計画する案件では両者の手続きを並行して確認することが不可欠です。 robi.pecori(https://robi.pecori.jp/2025/03/26/kaijidairishi-fukaikojo/)
関税法第20条の口語訳解説:遭難時の緊急入港・Q&Aつき(実務参考)
罰則の理解は自己防衛の第一歩です。
関税法違反として、不開港への無許可出入が確認された場合、船長または機長は刑事罰の対象となります 。具体的には関税法基本通達に「不開港不許可入港」として列挙されており、行政処分・刑事訴追の対象行為として位置づけられています。貨物は差し押さえ・没収のリスクがあります。 customs.go(https://www.customs.go.jp/kaisei/zeikantsutatsu/kihon/TU-S47k0105.pdf)
通関業従事者にとっての直接リスクは次のとおりです。
- 通関業者が違反に関与した場合:通関業法に基づく業務停止処分または許可取り消しの可能性
- 通関士が申請書類を誤作成した場合:虚偽届として処罰対象になり得る
- 荷主への損害賠償リスク:貨物が差し押さえられた場合、荷主から損害賠償請求を受ける事態もある
通関業法は「通関業者は通関業務の適正な運営を図る」ことを求めており、不開港関連の申請ミスも業務の適正性に関わります 。通関業の許可が不正手段で取得された場合や欠格事由に該当した場合には許可取り消しが可能であり 、積み重なった違反は最終的に許可維持に影響します。 kanzei.or(https://www.kanzei.or.jp/tsukanshi/word/word_ta.htm)
予防策として実務上有効なのは、船会社から入港予定地の情報を受け取った時点で、当該港が関税法施行令別表第一の開港一覧に掲載されているか即座に確認することです。確認は1分以内にできます。チェックリスト化して手続きフローに組み込むだけで、申請漏れのリスクを大幅に減らせます。
税関庁:所管法令等一覧(関税法・通関業法など改正情報を含む最新版)
| 制度名 | 申告者 | 必要な認定 | 保税地域搬入 |
| ---------- | -------------- | -------------- | ------ |
| 特定輸出申告 | 輸出者本人 | 特定輸出者認定 | 不要 |
| 特定委託輸出申告 | 認定通関業者(輸出者の委託) | 認定通関業者+特定保税運送者 | 不要 |
| 特定製造貨物輸出申告 | 認定通関業者(製造者の委託) | 認定通関業者+特定保税運送者 | 不要 |