アレルゲン表示が完璧に見えても、原材料名の翻訳ミス1か所で輸入差し止めになります。
アレルゲン表示8品目とは、食品表示法(2015年施行)および食品表示基準に基づいて表示が義務付けられている「特定原材料」のことです。現行の8品目は、えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ)の8種類で、これらは重篤なアレルギー症状を引き起こす可能性が特に高い食品として指定されています。
つまり、8品目すべてに表示義務があるということです。
法的根拠を確認しておきましょう。食品表示法第4条に基づいて策定された「食品表示基準」(内閣府令)の別表第14・別表第14の2に、特定原材料の一覧と表示方法が規定されています。通関実務においても、輸入食品がこの基準に適合しているかどうかを確認することが求められます。消費者庁の公式資料にも、特定原材料8品目と特定原材料に準ずるもの20品目(推奨表示)の一覧が詳細に掲載されています。
なお、2023年3月に「くるみ」が特定原材料(義務表示)に追加されました。それ以前はくるみは推奨表示の位置づけでしたが、アレルギー患者数の増加を受けて義務表示に格上げされています。経過措置期間は2025年3月末までとされていたため、2025年4月以降に輸入される加工食品については、くるみを含む場合の表示漏れは法令違反となります。これは意外と見落とされがちな改正点です。
| 品目名 | 主な含有食品の例 | 表示区分 |
|---|---|---|
| えび | えびせんべい、シーフードカレー | 義務(特定原材料) |
| かに | かにクリームコロッケ、かにみそ | 義務(特定原材料) |
| くるみ | クッキー、グラノーラ、パン | 義務(2023年改正・2025年4月完全施行) |
| 小麦 | パン、麺類、醤油 | 義務(特定原材料) |
| そば | そば麺、そば粉使用製品 | 義務(特定原材料) |
| 卵 | マヨネーズ、洋菓子類 | 義務(特定原材料) |
| 乳 | チーズ、バター、アイスクリーム | 義務(特定原材料) |
| 落花生 | ピーナッツバター、菓子類 | 義務(特定原材料) |
表示区分の確認は基本中の基本です。
消費者庁による特定原材料の詳細・法令根拠については下記を参照してください。
消費者庁|食物アレルギー表示について(特定原材料一覧・食品表示基準)
食品表示基準では、アレルゲンの表示方法として「個別表示」と「一括表示」の2通りが認められています。個別表示とは、原材料名の欄に「(小麦・卵を含む)」のように各原材料の直後にアレルゲンを括弧書きする方法です。一括表示とは、原材料名欄の末尾などにまとめて「(一部に小麦・卵・乳を含む)」と記載する方法です。どちらの方法でも法令上は問題ありません。
ただし、一括表示を選んだ場合には注意が必要です。
一括表示では、原材料名のどの成分に由来するかが消費者に伝わりにくくなるため、消費者庁は個別表示を推奨する立場を示しています。輸入食品の場合、海外での一括表示様式が日本の基準に合致しているかどうかを確認する作業が通関業務に加わります。特に「CONTAINS: WHEAT, EGG, MILK」のような英語表記のみのラベルは、日本語での表示が別途必要になるため、輸入者が国内でラベルを貼り付ける工程が発生します。
原材料名の翻訳が不正確な場合、表示義務違反と判断されるリスクがあります。
また、「醤油(小麦を含む)」のように、最終製品に含まれるアレルゲンが原材料の原材料(いわゆる「キャリーオーバー」)に由来する場合も、表示が必要です。ただし、醤油由来の小麦については、アレルギー表示上の取り扱いが一部異なるケースがあります。具体的には、醤油は製造工程でタンパク質が分解されるため、アレルギー反応を起こしにくいとされますが、消費者庁の通知では「醤油であっても小麦の表示を省略できない」とされており、注意が必要です。これが「知っていると得する」ポイントです。
消費者庁|食品表示基準における食物アレルゲン表示の手引き(PDF)
通関業従事者として輸入食品を取り扱う場合、関税法上の通関手続きに加えて、食品衛生法および食品表示法に基づく書類確認が求められます。輸入食品は日本に到着した時点で食品表示法の対象となるため、国内で流通させるためには日本の表示基準を満たすラベルが必要です。
確認が必要な書類は次のとおりです。
- 📄 インボイス・パッキングリスト:品名・原材料・アレルゲン情報の記載内容の整合性を確認
- 🏷️ 現品ラベル(または貼付予定ラベルの見本):8品目の表示漏れ・誤訳がないか確認
- 📋 食品等輸入届出書(厚生労働省ポータル:FAINS):原材料欄のアレルゲン記載と現品の整合性
- 🔍 製造業者の成分証明書(COA):原材料由来のアレルゲンを含め正確に記載されているか確認
書類間の整合性が取れているかが最重要です。
特に落とし穴になりやすいのは、インボイス上の原材料名とラベル上の原材料名が一致していないケースです。たとえば、インボイスには「Cracker (contains wheat)」と記載されているのに、ラベルには「クラッカー(小麦粉使用)」とだけ書かれていて「(小麦を含む)」の括弧書きが抜けているケースが実際の現場で発生しています。この場合、食品表示法違反の可能性があり、厚生労働省の検疫所による輸入食品監視においてもチェック対象となります。
違反が発覚した場合、輸入者は指示に従って当該食品の廃棄または輸出国への積戻しを求められます。廃棄費用は輸入者負担となるため、1コンテナ分の廃棄ともなれば数十万円から数百万円規模の損失につながることもあります。痛いですね。
厚生労働省の輸入食品監視業務・食品等輸入届出制度については下記が参考になります。
実際に問題となった輸入食品の事例をもとに、通関業従事者が実務で取るべき対応を整理します。まず、過去の厚生労働省の「輸入食品の食品衛生法違反事例」公表データによると、食品表示(アレルゲン含む)に関連する違反件数は年間を通じて継続的に報告されています。これらは「違反食品等の公表」としてウェブで公開されており、輸入者・輸入食品名が記載されることもあります。
公表されると信用リスクにつながります。
具体的な見落とし事例として多いのは以下のパターンです。
- ⚠️ 翻訳漏れ:英語原材料表示の「EGG POWDER(卵粉末)」が日本語ラベルで「粉末卵」と記載されるも「(卵を含む)」の括弧書きが省略されたケース
- ⚠️ 成分変更の未反映:製造ロットが変わり原材料に「乳」が追加されたが、輸入者への連絡が遅れてラベルが旧バージョンのままだったケース
- ⚠️ 代替原料の見落とし:コスト削減で製造業者が原料の一部を切り替えた際、COA(成分証明書)への反映が間に合わなかったケース
- ⚠️ くるみ改正への対応遅れ:2025年4月以降もくるみを推奨表示扱いのまま処理してしまい、義務表示漏れとなったケース
これらはすべて「書類上は問題なさそうに見える」状態で発生しやすいのが特徴です。
対策として有効なのは、輸入者から最新のCOA(成分証明書)を毎ロット取得する運用の徹底です。1回の輸入で確認OKだったからといって次回も同じ原材料とは限りません。海外製造業者が原料調達先を変更した場合、アレルゲン構成が変わることがあります。「毎ロット確認」が原則です。
また、複数の輸入案件を同時並行で処理する際は、チェックリストのデジタル化が有効です。EXCELやGoogleスプレッドシートで「アレルゲン8品目確認済み」「くるみ改正対応確認済み」などのチェックボックスを設けておくだけで、確認漏れを大幅に防げます。コストゼロで導入できる対策です。
通関業従事者が混乱しやすいのが、義務表示の8品目と推奨表示の20品目(特定原材料に準ずるもの)の区別です。推奨表示の20品目は、アレルギーの頻度や重篤度が8品目に比べると相対的に低いとされるため、表示は「推奨」にとどまり法的な義務はありません。しかし、表示しないことで違法になるわけではないものの、消費者からのクレームやブランドリスクは発生しえます。
推奨表示も軽視はできません。
2025年時点での推奨表示20品目は、アーモンド・あわび・いか・いくら・オレンジ・カシューナッツ・キウイフルーツ・牛肉・ごま・さけ・さば・大豆・鶏肉・バナナ・豚肉・まつたけ・もも・やまいも・りんご・ゼラチンの20品目です。これらはラベルに表示されていることが多いため、輸入食品の書類確認時にはこれらの記載の有無も確認しておくと、輸入者への情報提供という付加価値サービスにつながります。
| 区分 | 品目数 | 表示の義務 | 違反時のリスク |
|---|---|---|---|
| 特定原材料(義務表示) | 8品目 | あり(食品表示基準) | 行政指導・廃棄命令・公表 |
| 特定原材料に準ずるもの(推奨表示) | 20品目 | なし(任意) | 法的違反なし(クレームリスクはあり) |
違いを正しく理解しておくことが、輸入者への的確なアドバイスにつながります。
通関業者として輸入者に対して「表示義務のある8品目」と「推奨表示の20品目」を明確に区別して説明できると、コンプライアンス対応の信頼性が高まります。輸入者が「全部書けばいい」と思い込んで過剰表示してしまうケースも見られますが、不要なアレルゲン表示が逆に消費者を誤認させるリスクもあります。表示は正確さが条件です。
なお、推奨表示に関しては法的な強制力がないため、輸入食品の通関書類上で推奨表示の記載がなくても通関自体がストップすることはありません。ただし、輸入後に国内の食品表示監視機関(消費者庁・都道府県)による調査が入る可能性はゼロではないため、輸入者には推奨表示の任意表示であることを正しく伝えておくのが親切です。
推奨表示20品目の詳細は消費者庁の下記ページで確認できます。
消費者庁|アレルギー表示に関する情報(特定原材料に準ずるもの20品目一覧・PDF)