CIPで売主が手配した保険、実はあなたの輸入者が追加で掛けた保険料も課税価格に加算されます。
CIP(Carriage and Insurance Paid to / 輸送費保険料込条件)は、売主が指定された目的地までの輸送費用と保険料を負担するインコタームズの取引条件です。この条件では、売主が最初の運送人に貨物を引き渡した時点でリスクが買主に移転しますが、売主は目的地までの輸送費と保険料を支払う義務を負います。
参考)https://www.digima-japan.com/knowhow/world/d-globalbusiness-240702.php
通関業務従事者にとって重要なのは、CIP条件では輸出通関手続きが売主手配となる点です。輸入通関業務では、売主が手配した保険証券の内容確認が必須です。
参考)CIP - 貿易用語集 - - 内外トランスライン株式会社
インコタームズ2020では、CIP条件での保険内容に関して大きな変更がありました。売主は最高ランクの保険(ICC-A)を適用する必要があり、これによりCIPはより手厚い保険カバーを提供することになりました。
つまり基本です。
CIPは複数の輸送手段を組み合わせるコンテナ輸送で特に効果的です。海上輸送のみに適用されるCIF条件と異なり、CIPはすべての輸送手段に適用できる規則として位置づけられています。
参考)インコタームズ2020とは?2010年版との違いと変更点を図…
インコタームズ2020で最も重要な変更点は、CIP条件での保険がICC(A)=オールリスク補償に引き上げられた点です。インコタームズ2010ではCIF/CIP共にICC(C)約款での保険でしたが、2020年版ではCIPのみICC(A)約款が義務化されました。
参考)【インコタームズ CIFとCIPの保険内容】CIFとCIPの…
ICC(A)はほぼすべての損害に対応するオールリスク型です。火災・座礁・沈没だけでなく、盗難・水濡れ・破損・事故等の広範なリスクをカバーします。一方、CIF条件のICC(C)は火災・海難・沈没など基本的な事故のみの最低限補償です。
どういうことでしょうか?
売主がインコタームズ2010時代の計算でCIP保険料を設定し続けている場合、保険料を最新の条件で計算しなおす必要があります。ICC(A)はICC(C)より保険料が高額になるため、見積もり段階での確認が不可欠です。
通関業務では、輸入申告時に保険証券の内容を確認し、ICC(A)相当の補償がなされているかチェックすることが重要です。売主と買主の両当事者が合意すれば、CIPにおいてICC(C)約款の保険を掛けることに制限はありませんが、その場合は契約書に明記されている必要があります。
買主がCIPの標準保険では不十分と判断した場合、追加保険を検討・付保することがあります。この追加保険料は後述する通り、課税価格への加算対象となります。
参考)【深堀】CIF、CFR、CIP、CPT違いや注意点は?インコ…
貨物海上保険の保険金額(付保金額)は、通常CIF価格の110%、またはCIP価格の110%です。この110%という数字には明確な理由があります。
参考)貨物海上保険の商品価格、保険金額、保険料の関係
100%部分は商品本体の価格(CIF/CIP価格)をカバーします。残りの10%は「期待利益」と呼ばれ、貨物が無事到着した場合に得られるはずだった利益を補償するものです。つまり、貨物損害が発生した際に、商品代金だけでなく販売による利益機会の損失も補填される仕組みです。
これが原則です。
通関業務従事者が注意すべきは、この110%という数字が「保険金額」であって「課税価格」ではない点です。関税評価では、実際に支払われた保険料のみが課税価格に算入されます。保険金額110%は、万一の事故時に支払われる保険金の上限額を示すものです。
実務では、保険証券に記載された保険金額がCIF/CIP価格の110%になっているか確認することで、適切な保険手配がなされているか判断できます。110%を大きく下回る場合、期待利益分が補償されていない可能性があります。
CIP条件で輸入する際、売主が保険を手配済みでも、輸入者が追加で保険を掛けるケースがあります。この場合、重要な税関実務上のルールがあります。
売主の保険部保の有無に関係なく、輸入者が自己負担で追加または二重に保険を付保し、その費用を負担した場合、その追加保険料は関税法第30条第1項第6号の「輸入港までの運賃・保険料等」として実際支払価格に加算されます。
厳しいところですね。
参考)관세무역FTA Insight : 네이버 블로그
一般的なCIF/CIP条件では、輸入港または指定目的地までの運賃・保険料等を売主が負担するため、これらは既に実際支払価格に含まれています。したがって運賃・保険料の別途加算は不要です。
しかし輸入者が独自に追加保険を掛けた場合は状況が異なります。この追加保険料は買主が実際に支出した費用であり、貨物の輸入に直接関連するコストです。関税法上、輸入港までの保険料は課税価格に含めるべき要素とされているため、申告時に加算する必要があります。
通関業務では、輸入者に対し「売主手配の保険以外に、御社で追加保険を掛けていませんか?」と確認することが重要です。追加保険料の申告漏れは、後日の税関調査で指摘されるリスクがあります。
この確認を輸入申告前に行うことで、適正な課税価格での申告が可能になります。特にCIP条件のようにICC(A)義務化で保険範囲が広がった後も、輸入者が特定リスク(戦争危険・ストライキ危険など)に対する追加補償を求めるケースは存在します。
CIP条件でのリスク移転のタイミングは、通関業務における責任範囲の理解に直結します。売主が商品を最初の運送業者に引き渡した時点で、リスクは買主に移ります。
参考)https://hongocean.com/ja/cip-incoterm/
これはCIF条件と大きく異なる点です。CIFでは積出港で商品が船の舷側を通過した時点でリスクが買い手に移りますが、CIPでは運送業者への引き渡し時点という、より早い段階でリスクが移転します。
つまり運送人への引き渡し後に発生した貨物の滅失・損傷は、買主のリスクということですね。
ただし売主は目的地までの保険料を負担するため、この期間の損害は保険でカバーされます。通関業務従事者としては、貨物事故が発生した場合、事故発生時期がリスク移転前か後かを確認し、保険求償の手続きを適切に進める必要があります。
実務上の注意点として、輸送開始後は買主がリスクを負うものの、輸送費と保険料は売主が負担し続けます。このため、事故時の保険求償権は売主が保険契約者であっても、実質的な被害者である買主に譲渡される形で処理されることが一般的です。
保険証券を確認し、被保険者が適切に設定されているか、また保険金請求権が買主に譲渡可能な条件になっているかをチェックすることが、通関業務におけるリスク管理の基本です。貨物到着前に保険証券の写しを入手し、内容を精査しておくと、万一の事故時にスムーズな対応が可能になります。
CIP条件のメリット・デメリットについて詳しく解説した記事(Digima~出島~)
CIFとCIPの保険内容の違いをインコタームズ2020の観点から解説した専門記事(株式会社コノセル)
貨物海上保険の種類と留意点についてのJETRO公式解説ページ