適合同等証明書のコピーをPDFで保管しても、法的にまったく効力がありません。
電気用品安全法(電安法)では、規制対象の電気用品を大きく2つに分類しています。「特定電気用品」と「特定電気用品以外の電気用品」です。この分類の違いは、製品につけるPSEマークの形状に直結します。
特定電気用品には「菱形(ひし形)のPSEマーク」が必要で、特定電気用品以外には「丸形のPSEマーク」が必要です。一見すると形の違いだけのように思えますが、実態はまったく異なる規制水準を意味しています。
特定電気用品は、「構造または使用方法により、特に危険または障害が生じるおそれの高いもの」として指定された116品目が対象です。具体的には、電源コード(ゴムコード・ビニルコード・キャブタイヤケーブル)、ACアダプター、コンセント、テーブルタップ、電気便座、電気温水器、電熱器具などが該当します。長時間無監視で使用されるもの、社会的弱者(高齢者・子ども)が使用するもの、直接人体に触れて使用するものが中心です。これが基本です。
一方、特定電気用品以外の電気用品は341品目が対象で、テレビ・冷蔵庫・洗濯機・エアコンなどの一般家電製品、LEDランプ、リチウムイオン蓄電池(モバイルバッテリー含む)などが含まれます。
通関業務で輸入申告書類を確認する際、まず「この貨物は特定電気用品か、それとも特定電気用品以外か」を正確に見極めることが最初のステップになります。
| 区分 | PSEマーク | 品目数 | 代表的な品目 |
|---|---|---|---|
| 特定電気用品 | 🔷 菱形(ひし形) | 116品目 | 電源コード、ACアダプター、コンセント、電気便座、電気温水器など |
| 特定電気用品以外 | 🔵 丸形(円形) | 341品目 | テレビ、冷蔵庫、洗濯機、モバイルバッテリー、LEDランプなど |
品目数のイメージとして、457品目の規制対象全体のうち、約4分の1にあたる116品目が特定電気用品です。残りの4分の3(341品目)が丸形PSEの対象です。
参考リンク(経済産業省・特定電気用品の品目区分と届出手続きの流れ)。
特定電気用品の確認 - 届出・手続の流れ(経済産業省)
製品に菱形PSEマークを表示する場合、マークを貼ればそれで完了ではありません。法令では、マークと近接して記載しなければならない情報が細かく定められています。
菱形PSEマークに必要な表示事項は以下のとおりです。
特に通関実務で重要なのが「登録検査機関名」の記載です。丸形PSE(特定電気用品以外)にはこの記載義務がありませんが、菱形PSE(特定電気用品)では必須です。登録検査機関名のない菱形PSEマークが製品に表示されていた場合、それは法令の表示要件を満たしていない可能性があります。
登録検査機関名が必須ということですね。
日本国内の主な登録検査機関には、一般財団法人電気安全環境研究所(JET)、一般財団法人日本品質保証機構(JQA)、テュフ・ラインランド・ジャパン株式会社(TÜV Rheinland)、UL Japan株式会社、SGSジャパン株式会社などがあります。海外の登録検査機関も経済産業省に登録されており、中国や台湾の機関が利用されるケースも実務上は多くあります。
PSEマークの表示場所についても確認が必要です。原則として製品本体への表示が求められます。本体への表示が物理的に困難な場合(製品が非常に小さいなど)に限り、パッケージや取扱説明書への表示が例外的に認められます。
実務では、製品到着時に本体の表示を確認し、菱形マークの場合は「届出事業者名」と「登録検査機関名」の両方が記載されているかどうかを必ずチェックするようにしてください。
参考リンク(経済産業省・PSEマークの表示方法に関する法令業務実施手引書)。
電気用品安全法 法令業務実施手引書(Ver 5.0.2)(経済産業省)
菱形PSEマークを製品に表示するためには、必ず「登録検査機関による適合性検査」を受けなければなりません。丸形PSEでは不要な第三者検査が、菱形PSEでは法的に義務化されているわけです。
この適合性検査では、製品サンプルそのものと、製造工場の検査設備の両方について、技術基準への適合性が確認されます。検査合格後に発行されるのが「適合性証明書」または「適合同等証明書」です。
ここで通関業従事者が必ず覚えておくべき重要事実があります。輸入事業者が保管する書類は「適合同等証明書の写し(副本)」でなければなりません。コピー機でコピーした紙やPDFデータは、この「副本」には該当しません。登録検査機関が正式に発行した「副本」の原紙が必要です。
つまり、PDFで保管はダメということです。
具体的な流れを整理すると、海外製造事業者が登録検査機関に試験を依頼し、適合同等証明書を取得します。そして海外製造事業者から輸入事業者へ、登録検査機関が発行した「副本」の原紙が手渡されます。輸入事業者はこの副本を保管することで、適合性検査の受検義務を果たしたものとみなされます。
輸入事業者が直接、適合性検査の受検をすることはできません。これも実務上よく誤解されるポイントです。
適合同等証明書には有効期間があります。品目により3年から7年の間で設定されており、有効期間内は同一型式の特定電気用品について再検査が不要です。ただし、有効期間が切れた後は再検査が必要になります。また、製品の設計変更があった場合も、変更内容によっては再検査の対象となります。
適合性検査にかかるコストは、試験費用・工場審査費用を含めて数十万円から数百万円、期間は1か月から3か月程度が一般的です。東京ドーム5つ分の面積をもつ大型工場であっても、工場審査の費用が変わるわけではなく、製品の試験項目数と複雑さによって変動します。
参考リンク(経済産業省・適合同等証明書の副本に関するFAQ)。
電気用品輸入事業者向けFAQ(関東経済産業局)
電気用品安全法は、通関の観点からは少し特殊な位置づけの法律です。税関は電安法の執行機関ではないため、通関申告の審査段階でPSEマークの適否が必ず確認されるわけではありません。しかし、税関が輸入貨物を電安法の規制対象と判断した場合には、経済産業省の指示に基づいて通関を保留することがあります。
つまり通関はできても、販売時点での問題になるということですね。
通関業従事者として実務上押さえておくべきチェックポイントは次のとおりです。
インボイスの作成段階でも、輸入担当者と連携して電安法の対象品目かどうかを事前に確認しておくことが、後のトラブル回避につながります。
2025年12月25日からは、製品安全4法(PSE・PSCを含む)の改正が施行され、日本国内に直接販売する海外事業者に対する「特定輸入事業者」制度が開始されています。海外事業者が30日以内に届出をする義務や、国内管理人の選任が必要となる制度です。越境ECを通じた輸入案件では、この新制度の動向にも注意が必要です。
参考リンク(ジェトロ・家電製品の輸入手続きに関する解説)。
家電製品の輸入手続き:日本(ジェトロ)
PSEマークに関する実務上の見落としは、大きく3つのパターンに分類できます。これは検索上位の記事では詳しく触れられていない、通関実務固有の視点です。
パターン①:同一カテゴリの製品でも、仕様次第で区分が変わる問題
電源コード全般が特定電気用品に分類されると思われがちですが、実は定格電圧・断面積などの仕様によって、特定電気用品に該当するものとそうでないものに分かれます。例えばケーブル類でも、導体の公称断面積が22mm²を超えて100mm²以下の一定条件に該当するものは「特定電気用品以外」に分類されます。インボイス上の品名だけを見て判断すると、誤った区分で申告してしまうリスクがあります。仕様の確認が条件です。
パターン②:付属品と本体で区分が異なるケース
製品本体が特定電気用品以外に該当する場合でも、付属するACアダプターや電源コードが特定電気用品に該当することがあります。この場合、本体の丸形PSEとは別に、付属品の菱形PSEの適合性証明書(副本)の保管が必要です。セット品の輸入では、付属品ひとつひとつの区分確認が欠かせません。
パターン③:マークはあるが表示内容が不完全なケース
製品に菱形PSEマークが印字されていても、登録検査機関名の記載がない、または届出事業者名がマークと離れた場所に記載されているケースがあります。形の上ではPSEマークがついているように見えて、実は法令の表示要件を満たしていません。これは違反です。
法人の場合、PSEマーク未表示または虚偽表示による違反の罰則は「1億円以下の罰金」です。個人(輸入事業者の担当者が個人として問われる場合)は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」、あるいはその両方が科されます。さらに、経済産業省から製品回収命令・販売停止命令が下される可能性もあります。経済的損失は罰金だけにとどまらず、回収コスト・廃棄コスト・取引先への賠償まで波及することになります。痛いですね。
通関業者として依頼人の利益を守るためには、電安法の対象品目かどうかを通関申告書類のチェック段階で確認し、疑わしい場合は依頼人に確認を促すことが重要です。通関書類上で問題がなかったとしても、後日の税務調査や経済産業省の立入検査で発覚した場合には、輸入事業者である依頼人が責任を問われます。
参考リンク(電気用品安全法違反の罰則内容の解説)。
電気用品安全法の違反には罰則があります(行政書士あだち事務所)