「対象外と思って仕入れた製品が、実はPSE必須で100万円の罰金リスクがあった。」
電気用品安全法(通称:電安法)は、電気用品の製造・輸入・販売を規制し、消費者を電気事故から守ることを目的とした法律です。2001年に施行されてから現在に至るまで、規制対象は段階的に拡大されており、2021年7月時点で合計457品目が指定されています。
法律の構造はシンプルで、対象となる電気用品は大きく2つに分類されます。ひとつは「特定電気用品」(116品目)で、感電・火災のリスクが特に高いとされる製品群です。ACアダプター(直流電源装置)やウォシュレットなどが該当し、国が指定した登録検査機関による適合性検査が義務付けられており、ひし形のPSEマークの表示が必要です。もうひとつが「特定電気用品以外の電気用品」(341品目)で、電気冷蔵庫・洗濯機・照明器具などが含まれ、こちらは丸形のPSEマークが必要です。
「対象外」とは、これら合計457品目のどちらにも当てはまらない電気製品のことを指します。つまり基本原則です。
| 分類 | 品目数 | PSEマーク形状 | 主な検査義務 |
|---|---|---|---|
| 特定電気用品 | 116品目 | ひし形(◇) | 登録検査機関による適合性検査が必須 |
| 特定電気用品以外 | 341品目 | 丸形(○) | 自主検査(記録・保存義務あり) |
| 対象外 | ー | なし(表示不可) | PSE上の検査義務なし |
電気用品安全法が主に対象とするのは、家庭用コンセント(AC100V)から電力を得る製品です。これが最初に理解しておくべき原則になります。逆に言えば、コンセントに直接差し込まない形態の製品は、対象外になる可能性が高いということです。
ただし、注意が必要です。「コンセントに差さないから対象外」という判断は、常に正しいわけではありません。製品の構造・用途・定格電力によって個別に判断される場合があり、このあと詳しく解説する「グレーゾーン製品」が存在するからです。
経済産業省(METI)では、製品ごとの「対象・非対象解釈事例」を公式サイトで公開しています。輸入ビジネスを始める前に、必ず一度確認しておくことをお勧めします。
参考:電気用品安全法 対象非対象解釈事例一覧(経済産業省公式)
対象非対象解釈例一覧(種類別)- 電気用品安全法(METI/経済産業省)
では実際に、どのような製品が対象外になるのでしょうか。主なポイントを整理します。
まず最も重要な判断基準は「電源の取り方」です。AC100Vのコンセントに直接つながらない製品は、基本的に対象外になる可能性があります。具体的には、乾電池で動く製品、USBで充電・給電する製品、シガーソケット(車のDC12V)から電力を取る製品などが代表例です。
次に注目すべきが「組み込み形態」です。ACアダプターを使用するコードレス掃除機本体のように、AC電力を直接使わない製品本体は対象外となります。ただし、そのACアダプター自体は特定電気用品(直流電源装置)として規制対象になります。つまりACアダプターだけは必須です。
| 製品カテゴリ | PSE対象外の条件 | 注意点 |
|---|---|---|
| USB給電製品(デスクライト等) | USB(5V)のみで動作 | USB充電器(ACアダプター)はPSE対象 |
| 乾電池式製品 | 乾電池のみで動作(充電器なし) | 充電台がある場合は要確認 |
| ACアダプター使用の機器本体 | 本体がAC100Vに直接つながらない | 付属ACアダプターはPSE対象 |
| PC本体・通信機器 | 情報機器として対象外 | 付属品・ACアダプターは対象 |
| ポータブル電源(AC出力付き) | 現行法では対象外 | 火災事故増加で法改正検討中 |
意外なポイントとして、ノートパソコン本体はPSE対象外ですが、付属のACアダプターはPSE対象(直流電源装置)になります。これは製品を輸入する際によく見落とされる点です。セット販売する場合、ACアダプターのPSE対応を忘れると違反になります。
また、ポータブル電源(大容量モバイルバッテリーでAC100Vコンセントも搭載した製品)は、現時点では電気用品安全法の対象外となっています。これは法制定時に想定されていなかった製品カテゴリだからです。ただし火災事故が増加しているため、経済産業省が安全性要求事項の中間取りまとめを公表しており、今後法改正が行われる可能性があります。対象外かどうかは永続的ではない、ということは覚えておいてください。
参考:ポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)について
ポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)- 経済産業省
輸入ビジネスで最も危険なのが、「対象外だと思っていたら対象だった」というケースです。これが違法になります。
たとえば、2019年2月以前はモバイルバッテリーもPSE対象外でした。しかし発火事故が相次いだことを受け、経済産業省は「リチウムイオン蓄電池(モバイルバッテリー)」を規制対象に追加しました。2019年2月以降、PSEマークのないモバイルバッテリーの輸入・販売は完全に違法です。この経緯は、対象外が永遠に続く保証はないことを如実に示しています。
同様に、ワイヤレスイヤホン(完全ワイヤレスイヤホン)も近年PSE対象に追加されました。外観上は単なるイヤホンなので「電気用品安全法は関係ない」と思いがちですが、充電ケースがAC充電対応の場合は規制対象となります。知らずに中国から輸入して販売を続けていたケースが現実に起きています。
また、「品目リストに製品名がないから対象外」という判断も危険です。電安法の品目区分は製品名ではなく「区分」で決まります。たとえば「電動かくはん機」という品目区分には、一見関係のない工業用装置が含まれる場合があります。リストに自社製品の名前がないことだけを根拠に「対象外」と即断するのは、法令違反リスクを抱えることになります。
輸入事業者は個人であっても電安法の義務を負います。「事業として継続的・反復的に販売する場合」は、個人でも輸入事業者とみなされます。違反した場合、個人でも1年以下の懲役または100万円以下の罰金(両方の場合あり)、法人の場合は1億円以下の罰金が科されます。重いリスクです。
参考:電安法における輸入事業者の義務詳細
電気用品安全法(電安法)の対象製品と輸入事業者の義務 - 技術継承
対象外かどうかを自己判断するのは、思った以上にリスクがあります。正しい確認方法を知っておくことが重要です。
まず最初のステップは経済産業省のウェブサイトで公開されている「対象・非対象解釈例一覧」を確認することです。製品種別ごとに事例が掲載されており、自社製品に近い製品が対象か非対象かを判断するヒントが得られます。ただし、すべての製品がリストに掲載されているわけではありません。
次のステップとして、判断が難しい場合は経済産業省に直接問い合わせる方法があります。電話(03-3501-1511、内線4307〜4308)またはFAX(03-3501-6201)で、製品の用途・仕様等を伝えて確認を取ることができます。回答には時間がかかる場合がありますが、正式な見解を得られる確実な方法です。
さらに権威のある第三者機関として、JET(一般財団法人 電気安全環境研究所)に依頼する方法もあります。JETでは、自社の製品が電気用品安全法の対象外であることを確認した上で、その旨の回答書(証明書)を発行してもらうことができます。取引先から「PSEがないのは大丈夫か」と問われた時に、このJETの証明書があれば信頼性の担保に使えます。
対象外と確認できた場合でも、それが永続的に続く保証はありません。製品の安全規制は時代とともに更新されます。少なくとも年1回は経産省の情報を確認し、規制状況に変化がないかをチェックする習慣をつけることが大切です。
また、PSE対象外の製品にPSEマークを付けることは禁止されています。「念のためマークを貼っておく」という行為は、かえって違法表示となるため注意が必要です。マークなしが条件です。
参考:JET(電気安全環境研究所)公式 PSE関連サービス
電気用品安全法(PSE)|法律に基づく検査・認証 - JET(一般財団法人 電気安全環境研究所)
「PSE対象外なら何もしなくていい」という考え方は、実は輸入ビジネスの視点からすると非常に危険です。これは多くの事業者が見落としているポイントです。
PSE対象外であっても、電気製品である以上、使用中に事故が起きるリスクはゼロではありません。万が一、販売した製品で火災や感電事故が発生した場合、メーカーが海外にある場合は日本側の輸入事業者が製造物責任(PL法)上の責任を問われます。PSE対象外であることは、PL法の免責にはならないのです。PL法は別です。
また、大手の流通業者・卸業者・ECモール(Amazonなど)に製品を卸そうとした場合、「PSEマークはないが、安全性の証明はあるか?」と問われることがよくあります。PSE対象外証明書(JETの回答書)だけでは取引に至らないケースも多く、追加の安全性試験レポートを求められる場合があります。
そこで有効なのが「S認証(Sマーク認証)」と呼ばれる任意認証です。JETによるS-JET認証のほか、JQA(日本品質保証機構)によるS-JQA認証、S-UL Japan、S-TÜV Rheinlandなど4種類があります。これらは取得難易度が高く費用もかかりますが、大手取引先への信頼性向上に大きく貢献します。
もし本格的な認証取得が難しい段階であれば、まず海外の検査機関(中国のCCC認証機関や欧州CE認証機関など)に依頼した安全性試験レポートを取得する方法がコスト的にも現実的な選択肢です。試験レポートがあれば取引先に安全性を説明しやすくなります。
PSE対象外の製品であっても、安全性の証明を持っている輸入事業者と持っていない輸入事業者では、取引先からの信頼度がまったく違います。これは使えそうな知識です。コスト的に厳しい場合でも、まずはJETへの「対象外確認回答書」の取得から始め、段階的に安全性担保のレベルを上げていく戦略が現実的です。
参考:Sマーク認証制度(電気製品認証協議会)
電気製品認証協議会 - Sマーク認証制度について