海外メーカーにPSEマーク入りの製品を用意してもらっても、そのマークのまま輸入販売すると法人に1億円の罰金が課される場合があります。
電気用品安全法(通称:電安法・PSE法)では、対象となる電気用品を大きく2つに分類しています。「特定電気用品」(116品目)と「特定電気用品以外の電気用品」(341品目)です。この341品目に表示が義務付けられるのが、丸形の〇PSEマークです。
特定電気用品(ひし形マーク)は構造や使用方法から見て特に危険性が高い品目で、第三者機関である登録検査機関による「適合性検査」が必須です。一方、特定電気用品以外(丸形マーク)は自主検査が中心となり、登録検査機関への委託は任意です。つまり丸形は「ゆるい」と誤解されやすい。
ここが最初の落とし穴です。自主検査とはいえ、法律で義務付けられた検査であり、任意で省略してよいものではまったくありません。自社または外部の試験機関で技術基準に基づいた試験を実施し、その結果を検査記録として作成・保存する義務があります。
341品目の内訳を区分別にまとめると、以下のような製品カテゴリが含まれます。
| 区分 | 主な品目の例 |
|---|---|
| 電線類 | ケーブル、蛍光灯電線、電気温床線 |
| 配線器具 | ライティングダクト、リモートコントロールリレー |
| 電熱器具 | 電気ストーブ、電気カーペット、電気アイロン |
| 電動力応用機械器具 | 扇風機、電気冷蔵庫、空気清浄機、電気洗濯機 |
| 光源及び光源応用機械器具 | 電気スタンド、蛍光灯器具、LEDランプ |
| リチウムイオン蓄電池 | モバイルバッテリー(2019年以降追加) |
品目の範囲は「定格消費電力」「定格電流」「本体の構造」等の条件によって細かく区切られています。型番が少し違うだけで対象/対象外が変わるケースもあるため、HS番号だけでなく製品スペックの確認が欠かせません。
経済産業省が公開している341品目の一覧は、通関実務での品目判断の基礎資料として非常に有用です。
通関業従事者が特に意識しておくべきは、PSEに関する義務のタイミングと責任の所在です。電安法が輸入事業者に課す主な義務は3つあります。事業届出・自主検査・PSE表示です。これが原則です。
①事業届出(開始から30日以内)
電気用品の輸入事業を開始した日から30日以内に、「電気用品輸入事業届出書」を所轄の経済産業局に提出する必要があります。注意点は「通関日」が事業開始日とみなされることです。つまり、通関が完了した翌日からカウントが始まると理解しておくと現実的です。届出が遅れた場合、それ自体が違反となります。
②技術基準への適合確認と自主検査
対象製品が国の定める技術基準に適合している必要があります。特定電気用品以外の場合、登録検査機関の適合性検査は不要ですが、自社または外部試験機関による自主検査は義務です。この検査記録は、検査の日から3年間保存しなければなりません。3年です。
記録がない状態で経済産業省の立入調査を受けると、義務違反として指導・公表・命令の対象になります。保存場所の整備まで含めて、輸入者が責任を持って管理する必要があります。
③PSEマーク・事業者名等の表示義務
技術基準への適合と自主検査を済ませた製品にのみ、PSEマークを付けることができます。表示には丸形のPSEマーク本体に加え、届出事業者名(または略称)、定格電圧、定格消費電力などが必要です。
ここで混乱しやすいのが「海外メーカーがPSEマークを付けてくれると言っている」ケースです。これには注意が必要ですね。電安法上の義務履行責任は「日本国内の輸入事業者」にあります。海外メーカーが自社工場でPSEマークを印字してくれても、それだけでは法的義務を満たしたことにはなりません。届出事業者名として「日本の輸入事業者名」が表示されていなければ、正規の表示とはみなされない点を荷主に明確に伝えることが現場での重要な役割です。
経済産業省|電気用品安全法 届出・手続の流れ(製造・輸入事業者向け)
通関実務で実際に起きやすいトラブルのひとつが、品目の対象・非対象の判定ミスです。電安法の品目区分はHS番号とは独立しており、HS番号が同じでも電安法上の扱いが異なるケースが存在します。
たとえば「扇風機」は特定電気用品以外(丸形PSE)の対象品目ですが、定格消費電力が300Wを超えるものは対象外となります。同様に「空気圧縮機」は500W以下のみ対象で、それ以上は対象外です。電気冷蔵庫は定格消費電力500W以下の冷却装置を有するものに限定されています。品目と消費電力を必ずセットで確認するのが基本です。
また、「機器に組み込まれる特殊な構造のもの」は対象外とされているカテゴリが複数あります。たとえばリモートコントロールリレーや変圧器類は、単体製品として販売する場合は対象となりますが、他の機械器具に組み込んで販売する場合は対象外になることがあります。これは意外ですね。
判定が難しい場合、経済産業省では製品ごとの対象・非対象の解釈例を公開しています。通関前に事前確認できる資料として活用できます。
判定を誤って無届で通関・販売した場合、個人では1年以下の懲役または100万円以下の罰金(併科あり)、法人では1億円以下の罰金が課される可能性があります。数字の重さを荷主と共有しておくことが、トラブル防止の第一歩です。
もう一点、見落とされやすいのが「PSE対象外製品への判断」です。たとえばモバイルバッテリーは、2019年2月以前はPSE対象外でした。現在はリチウムイオン蓄電池として341品目に追加されており、丸形PSEが必要です。このように品目リストは改正によって変わります。最新版のリストを参照する習慣を持ってください。
電安法には「例外承認制度」という、あまり知られていない制度があります。通常、PSEマークの表示が義務付けられている電気用品でも、特定の条件下で経済産業大臣の承認を受けることで、技術基準への適合性に関わらず製造・輸入・販売が可能になる制度です。
例外承認の対象になり得るケースは主に3つです。
- 🔬 試験・研究用途:性能試験や技術開発を目的として輸入する電気用品
- 🌍 外国人旅行者向け販売:外国規格適合品を日本で在留外国人や旅行者に限定して販売する場合
- 🔁 再輸出目的:日本国内での販売を目的とせず、そのまま第三国へ輸出する場合
この制度を使えば、製品設計の変更やPSE対応の試験コスト(丸形PSEの場合、試験費用の目安は10万円〜200万円程度)をかけずに輸入できる可能性があります。これは使えそうです。
ただし、申請・審査のプロセスが必要であり、承認が下りるまでに時間がかかります。また承認は品目・用途・数量に限定されるため、汎用的な販売には使えません。輸入貨物の用途が限定されており、それが明確に立証できる場合に限り有効な手段です。
例外承認を活用する場合、通関業者としては荷主が必要な書類(承認書のコピー等)を取得済みかどうかを事前に確認することが重要です。承認書のない状態では通関後の販売が違法となるリスクがあります。
特定電気用品以外のPSE対応において、通関業従事者が荷主への確認を行う際の実務的なポイントを整理します。荷主が「輸入事業者としての義務」を正しく理解しているかどうかが、違反リスクを防ぐ最大のカギです。
通関前に荷主へ確認すべき事項は以下の通りです。
- ✅ 品目の確認:対象品目(341品目)に該当するか、定格条件も含めて確認済みか
- ✅ 届出状況の確認:輸入事業届出書を管轄の経済産業局に提出しているか(初回輸入の場合、通関日から30日以内の提出義務あり)
- ✅ 自主検査の実施有無:技術基準に基づく検査を実施したか、検査記録(3年保存義務あり)を保持しているか
- ✅ PSE表示の内容:丸形PSEマーク・届出事業者名(日本国内の輸入事業者名)・定格電圧・定格消費電力等が製品本体またはパッケージに正しく記載されているか
- ✅ メーカーの表示との区別:海外メーカーが独自に付けたPSEマークを「日本の届出事業者名入り表示」と混同していないか
これらが確認できていない状態で通関を進めると、荷主が輸入後に販売できない事態になりえます。通関業者として関与できる法的なアドバイスには限界がありますが、「少なくともこれだけは事前に整えてほしい」という確認を行うことは、依頼主との信頼関係を守ることにもつながります。
実務対応として有用なのが、経済産業省が公開している「製造・輸入手続きセルフチェックリスト」です。荷主に一次確認を促す際に共有できる公的資料です。
近畿経済産業局|電気用品安全法 製造・輸入手続きセルフチェックリスト(PDF)
また、通関業者として知っておきたい独自の視点として、「輸入事業届出の事業種別欄の記載ミス」があります。届出書には製品ごとに「電気用品名」と「型式区分」を記載しますが、この記載が実際の輸入品と一致していないと、届出が無効になる場合があります。荷主が自力で届出を行っている場合、記載内容の整合性確認を促すだけで大きなトラブルを防げます。これだけ覚えておけばOKです。
特定電気用品以外のPSEは、手続きの流れ自体はシンプルですが、品目判定・届出タイミング・検査記録管理・表示内容の4点が揃って初めて適法な輸入販売となります。通関業従事者としての役割は通関手続きの遂行にとどまりませんが、荷主が見落としがちなポイントを先回りして確認できるかどうかが、実務力の差になるところです。
JETRO|家電製品の輸入手続き(日本向け)電安法・PSE対応の概要