PGA規制品を輸入する場合、single entry bondのボンド額は通常の3倍に跳ね上がります。
Single entry bond(シングルエントリーボンド)とは、米国税関・国境警備局(CBP: U.S. Customs and Border Protection)が要求する関税保証金の一種です。1件の輸入申告(エントリー)に対してのみ有効な保証契約であり、輸入者がその輸入取引に係る関税・税金・手数料を確実に支払うことをCBPに対して保証するものです。
CBPが定める計算ルールは明快です。結論は「輸入申告価格+関税・税金・手数料の合計額以上」が原則です。最低金額は$100であり、実際の保険料(プレミアム)は保証額の0.5%程度、最低$50が業界相場となっています。
たとえば、インボイス価格$50,000の貨物に5%の関税($2,500)がかかる場合、ボンド保証額の基準は$52,500です。これに対して保険料は0.5%の約$262.5、最低$50が適用されるため実際の支払いは$262.5となります。この金額のイメージとしては、コンビニコーヒー約260杯分程度です。
ただし、実務では保険料だけでなく、通関業者への申告代行費用($100〜$300程度)、海上輸送の場合はISFボンドフィー($75前後)なども加算されるため、諸費用込みで$150〜$500程度になることが多いのが実態です。
single entry bond calculatorを使う最大の目的は、この複数の変数が絡む計算を手動ミスなしに行うことです。変数の組み合わせを誤ると、提出時にCBPから不足として差し戻されるリスクがあります。それは避けたいですね。
現在、複数の民間サービス(Roanoke Group、Customs Intel、eezyimportなど)がオンラインのbond calculatorを無料提供しており、輸入申告価格と関税率を入力するだけで即時に必要保証額と保険料の目安が算出されます。これは使えそうです。
| 入力項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 輸入申告価格(Entered Value) | インボイス価格(CIF等) | USD建て |
| 関税額(Duties) | 適用税率×申告価格 | HTSコードで確認 |
| 税金・手数料(Taxes & Fees) | MPF・HMFなど | 都度確認が必要 |
| PGA規制対象か否か | FDA・EPA等の管轄品か | 該当で×3倍 |
計算手順を実務に即して整理します。まず基本的なケースから確認しましょう。
【一般商品のケース】
次に、PGA規制品が絡む場合は計算が大きく変わります。これが原則です。
【FDA規制品(食品・医薬品等)のケース】
つまり、FDA規制品では同じ$30,000の貨物でも、一般品の約3倍のボンド保証額が要求されます。これを知らずにcalculatorに通常入力すると、CBP提出時に「insufficientボンド」として弾かれる可能性があります。PGA対象品かどうかの確認が条件です。
【MPFとHMFの計算補足】
MPF(Merchandise Processing Fee)は0.3464%で最低$32.71、上限$614.35という特殊な手数料です。HMF(Harbor Maintenance Fee)は0.125%で海上輸入に適用されます。これらはcalculatorが自動計算してくれるものもありますが、ツールによって入力仕様が異なるため、使用前に対応項目を確認してください。
Customs Intel:無料のCustoms Bond Calculator(Single Entry / Continuous 両対応)
通関業者が輸入者にボンドを提案する際、最も重要な判断軸はコスト効率です。この選択を間違えると、年間で数万円規模の差が出ることがあります。
Continuous bond(継続ボンド)の計算式は全く異なります。「過去12ヶ月または今後12ヶ月に支払う関税・税金・手数料の合計(いずれか大きい方)×10%」が基準額で、最低$50,000(端数は$10,000単位で切り上げ)です。
| 条件 | Single Entry Bond | Continuous Bond |
|---|---|---|
| 年間輸入回数 | 1〜3回程度 | 4回以上 |
| コスト目安 | 1件あたり$50〜$500 | 年$400〜$600($50,000ボンド) |
| ISF申告への対応 | 別途ISFボンドが必要($75程度) | ISF申告もカバー可 |
| 有効期間 | 1回の申告のみ | 1年間・無制限エントリー |
| 向いている輸入者 | スポット輸入、市場テスト段階 | 定期的・継続的輸入 |
業界標準の損益分岐点(break-even point)は年間4件のエントリーとされています。4件以上の場合、continuous bondの年間コスト$400〜$600が複数回のsingle entry bondの累計コストを下回るケースがほとんどです。
さらに見落とされがちな点があります。Single entry bondの場合、海上輸送であれば各エントリーごとに別途ISFボンド(約$75)を手配する必要があります。Continuous bondなら同一のボンドがISF申告もカバーするため、事務手続きの負担が大幅に軽減されます。
ただし、Continuous bondにはCBPによる「rolling 12-month sufficiency review(直近12ヶ月の充足性審査)」があることを忘れてはなりません。ボンドを更新しても、過去12ヶ月の輸入実績が増えていれば新しいボンドでも不足と判定される場合があります。つまり、輸入量が急増した場合は年度途中でもボンド額の見直しが必要になることがあります。これが原則です。
通関業者にとって最も重要なのに最も見落とされやすい落とし穴が、PGA規制品に対する「3倍ルール」です。意外ですね。
CBPのガイドライン「Directive 3510-004(MONETARY GUIDELINES FOR SETTING BOND AMOUNTS)」には、FDA・EPA・USDA・ATF・DOT・CPSC・FCCなどのPartner Government Agency(PGA)が規制する品目について、single entry bondの保証額を「総輸入申告価格の3倍以上」に設定することが明記されています。
具体例を挙げます。
つまり、食品や農産物を輸入する際に通常計算式のcalculatorをそのまま使うと、提出ボンド額が要件を下回る可能性があります。CBPはこれを「insufficient bond」として扱い、最悪の場合は貨物が一時保留(General Order)に回される事態になりえます。
PGA対応のcalculatorを使うか、ツール使用後にPGA該当性を手動で確認するプロセスを業務フローに組み込むことが実務上の安全策です。これだけ覚えておけばOKです。
以下がPGA機関の代表例と対象品目です。
| PGA機関 | 代表的な規制対象品 |
|---|---|
| FDA(食品医薬品局) | 食品、飲料、医薬品、医療機器、化粧品 |
| USDA(農務省) | 植物、農産物、畜産物、木材製品 |
| EPA(環境保護庁) | 農薬、化学物質、自動車の排ガス部品 |
| FCC(連邦通信委員会) | 無線機器、通信機器、電子機器 |
| CPSC(消費者製品安全委員会) | 玩具、電気製品、家庭用品 |
| ATF(アルコール・たばこ・火器局) | アルコール飲料、たばこ、火器・爆発物 |
USA Customs Clearance:PGA対象品のボンド計算ルールを含む実務解説(英語)
海上輸入(ocean freight)を扱う通関業者にとって、single entry bondとは別に存在するISFボンドの費用と手続きは必須知識です。
ISF(Importer Security Filing、通称「10+2」)とは、船積み本船出港の24時間前までにCBPへ電子提出が義務付けられている貨物情報申告のことです。2009年から義務化されており、不提出・遅延・記載誤りには1件あたり最低$5,000の罰則(Liquidated Damages)が課されます。痛いですね。
この罰則はボンドに対して請求される仕組みのため、ISF申告にはボンドが事前に存在していなければなりません。具体的には、single entry bondを取得してからISF申告を行うという順序が必要です。
Single entry bondをISF申告の保証として使う場合、その後の入港申告(entry)にも同一ボンドを使用できません。CBPの規定上、ISF申告用と入港エントリー用は別々のトランザクションとして扱われるためです。これが条件です。
したがって、single entry bondを使う海上輸入では、厳密には以下の費用が発生することになります。