少量だから見本持出の許可は不要と思って搬出すると、点数3点の処分対象になります。
見本持出許可申請をNACCSで行うには、いくつかの前提条件を満たしている必要があります。
対象となるのは、NACCSシステム参加保税地域等に蔵置されており、かつ貨物情報がシステムに登録されている外国貨物に限られます。具体的には、輸入貨物または未通関の積戻し貨物が該当します。
一方、以下の状態にある貨物はMHA業務の申請対象外となるため、注意が必要です。
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 積戻し申告済み | 申請不可 |
| 本船・ふ中扱い承認申請済み | 申請不可 |
| 輸入許可済み(一部例外あり) | 申請不可 |
| 蔵置場所からの保税運送申告済み | 申請不可 |
| 貨物取扱許可申請中または見本持出許可申請中 | 申請不可 |
| 訂正保留中 | 申請不可 |
また、見本として認められる条件について、関税法基本通達32-1では「課税上問題がなく、かつ少量のものに限る」と定められています。目安として、成分分析・荷主検品・他法令確認などに必要な最小限の量が目安です。
ここで重要な見落としポイントがあります。関税法基本通達32-3に規定する「包括許可」の申請は、NACCSによる申請の対象外です。包括許可を活用するケースでは、システムではなく書面で申請を行う必要があります。これを知らずにMHA業務を使おうとすると、処理が止まるだけでなく、対応の遅れが現場に影響します。包括許可の対象かどうかは、事前に税関の保税担当部門へ確認することをお勧めします。
つまり、NACCSのMHA業務で申請できる範囲は思ったより限定的です。
関税法基本通達32-1(見本の一時持出しの許可基準及び申請手続)- 税関
業務コードMHAを利用して実際に申請を行う際、入力が求められる項目は複数あります。全体の流れを把握したうえで、特にミスが起きやすい箇所を重点的に確認しておきましょう。
海上NACCSにおける主な必須入力項目は次のとおりです。
| 入力項目 | 内容・補足 |
|---|---|
| 貨物管理番号(B/L番号) | 必須。輸出管理番号も可 |
| 持出期間開始年月日 | 必須。西暦8桁で入力 |
| 持出期間終了年月日 | 必須。西暦8桁で入力 |
| 持出先 | 必須。分析機関・荷主名等 |
| 持出数量・数量単位コード | 必須。小数点以下第3位まで入力可 |
| 見本品名 | 必須 |
| 価格・通貨種別コード | 必須。JPY以外は小数第2位まで |
| 持出事由コード | 必須。下表参照 |
持出事由コードは以下の4種類です。現場での申請ではどのコードを使うか迷うケースが多いため、事前に確認しておくことが重要です。
| 区分 | コード |
|------|--------|
| 荷主検品 | KNP |
| 他法令該当(食品衛生法) | FOD |
| 他法令該当(食品衛生法以外) | LAW |
| その他 | OTH |
食品衛生法に基づく検査が目的であれば「FOD」を使用します。これが正確に入力されないと、税関の審査で書類提出が求められる可能性が高くなります。
申請官署の欄は、蔵置場所の管轄税関官署と申請先が異なる場合のみ入力が必要です。同一の場合は省略できます。この点を知らずに毎回入力していると、不必要な手間が生じることがあります。
「記事」欄は必須ではありませんが、税関の審査に必要な情報を任意で記載できます。書類審査扱いになりそうな場合は、事前に審査に必要な情報をここに入力しておくと、やり取りがスムーズになります。これは使えそうです。
航空NACCSの場合は業務コードが「MMA」となり、B/L番号の代わりにAWB番号を入力します。海上と航空では業務コードが異なる点も覚えておきましょう。
海上貨物の見本持出許可申請関係手続(NACCS掲示板・税関業務資料)
NACCSにMHA業務で申請を送信すると、システムが自動的に「簡易審査扱い(区分1)」または「書類審査扱い(区分2)」に振り分けます。
区分1(簡易審査扱い) の場合は、申請が受理された時点で即時に許可となり、許可通知情報(SAL0151等)が申請者に配信されます。申請から許可まで待ち時間がほとんどないため、現場の搬出スケジュールに影響しにくい点が大きなメリットです。
区分2(書類審査扱い) の場合は、申請控情報が配信され、その後、税関が「見本持出許可申請審査終了(MHE業務)」を行うことで許可となります。この場合、税関から関係書類の提出を求められることがあります。提出を求められた際は、見本持出許可申請控等の関係書類を税関の保税担当部門に提出してください。
書類の提出には「添付ファイル登録」業務(業務コードMSB)を使うことも認められています。書面を窓口に持参しなくてもよいため、時間短縮が可能です。
注意が必要なのは、書類審査扱いになった際の「見本持出許可情報(SAL0161等)」の配信先です。申請官署が蔵置場所の管轄税関と同一か異なるかによって、配信先が変わります。書類審査扱いの場合は、許可情報が蔵置場所の管轄税関(保税担当部門)に配信されないケースがあるため、必要に応じて税関への連絡が必要になることを覚えておきましょう。
審査区分を事前に予測することはシステム上難しいですが、過去に書類審査扱いになったケース(輸入前に複数回の持出しがある貨物、他所蔵置の貨物など)では、記事欄に詳細を記載しておくことで審査が円滑に進む傾向があります。
簡易審査なら問題ありません。ただし書類審査は余裕を持ったスケジュールが条件です。
7009 MHA 見本持出許可申請の業務概要(NACCS掲示板公式)
見本持出許可が下りて貨物を搬出したら、それで終わりではありません。保税蔵置場の倉主等には、速やかに「見本持出確認登録(MHO業務)」を行う義務があります(関税法施行令第29条の2第1項第6号)。
この登録は保税台帳への記帳に相当するものです。NACCSでMHO業務を行うと、システム上で記帳完了となります。
ここで多くの現場担当者が見落としているのが、登録の期限です。
| 系統 | 登録業務コード | 期限 |
|------|----------------|------|
| 海上NACCS | MHO | 持出期間終了日から7日以内(日祝除く) |
| 航空NACCS | MMO | 持出期間終了日から2日以内(日祝除く) |
この期限を過ぎると、NACCSシステム内の見本持出情報が自動的に削除されます。削除後はMHO/MMO業務での登録ができなくなります。厳しいところですね。
税関が公表している「保税Tips Vol.1」によれば、記帳忘れの原因として「繁忙期のまとめ記帳忘れ」と「貨物管理担当者とNACCS担当者の連絡ミス」が多く挙げられています。この2点が現場での非違発生の典型パターンです。
処分点数については以下のとおりです。
- 記帳を怠った場合(事例1):関税法基本通達48-1 別表1.2②→2点
- 見本持出許可を受けずに搬出した場合(事例2):同別表1.1②→3点
この点数が累積して一定の基準に達すると、搬入停止等の処分が下されます。保税蔵置場の許可維持に直結するため、非常に重大なリスクです。
MHO/MMO業務の実施状況は、ICG(貨物情報照会)業務やIAW業務でも確認できます。定期的にチェックリストと突合させる体制を整えておくと、記帳漏れの防止に役立ちます。
また、MHO確認登録の取消しができる期間は「登録日を含め2日(日祝除く)まで」という制限もあります。入力ミスをした場合、この期間を逃すと訂正できなくなるため注意が必要です。
記帳漏れゼロが原則です。
保税Tips Vol.1「見本持出に係る非違」(財務省税関)
申請内容に誤りがあった場合の対処方法も、通関業従事者として把握しておく必要があります。
まず大前提として、MHA業務には「訂正処理」が存在しません。持出し数量や持出し期間を変更したい場合は、一度取消しを行ってから再申請する流れになります。
取消し手順は、税関の許可前後で異なります。
【税関の許可前の場合】
税関の保税担当部門に事前に申し出た上で、申請者が「見本持出取消(業務コード:MHC)」業務を実施します。取消し後、あらためてMHA業務で再申請します。
【税関の許可後の場合】
「NACCS登録情報変更願」に、取消しが必要な旨・見本持出許可番号・B/L番号・事由等を記入し、見本持出許可通知書を添付して税関(保税担当部門)に提出します。税関が取消し処理を行った後、あらためてMHA業務で再申請します。この際、提出前に税関へ電話連絡を行い、速やかに対応してもらえるよう調整することが推奨されています。
「NACCS登録情報変更願」の提出は、汎用申請業務(業務コード:HYS)でも行えます。この方法では見本持出許可通知書の添付が不要になるため、窓口に出向く手間が省けます。これは使えそうです。
なお、訂正・取消しを繰り返すと、貨物の蔵置期間や搬出スケジュールに影響することがあります。当初申請の段階で、持出期間・数量・持出先を正確に入力することが最大の対策です。
申請前の確認が基本です。
保税手続きQ&A「見本持出許可申請(MHA)の訂正」(神戸税関)
最後に、マニュアルには書かれていない実務上の注意点を整理しておきます。これは公式資料だけでは見えにくい独自視点の情報です。
① 返却前提でも「無許可」は非違になる
税関が2025年3月に公表した「保税Tips Vol.1」では、「消費されずに返却される貨物であったことから、見本持出の許可は不要と誤認した」という非違事例が紹介されています。現場では「すぐ返ってくるから大丈夫」と判断してしまうケースが一定数あります。しかし関税法32条は、持ち出す目的や返却の有無に関わらず、外国貨物を保税地域から持ち出す行為そのものに許可を要求しています。少量・短期間・返却前提のいずれも、許可なしで搬出すれば処分点数3点が加算されます。
② 航空の期限は海上の半分以下
海上のMHO登録期限が7日(日祝除く)であるのに対し、航空のMMO登録期限は2日(日祝除く)です。航空貨物は搬出から搬入までの物流スピードが速く、見本が試験機関に到着・分析される前に期限が来てしまうケースがあります。航空貨物を扱う現場では、許可が下りた当日か翌日に確認登録を行うことを社内ルール化しておくことが安全です。
③ 残余の貨物と合わせて輸入許可を受けた場合、見本の再搬入は不要
GTConsultant.netの解説によれば、見本として持ち出した貨物が持出期間中に残りの貨物と一括して輸入許可を受けた場合は、保税地域への再搬入が不要とされています。運用上も「再搬入を厳しく求められることは少ない」と指摘されています。ただし、MHO登録自体は引き続き必要です。再搬入が不要であることとMHO登録の義務は別の話です。これが原則です。
④ 「少量だから不要」という誤認は今も多い
現場で見本持出の非違が繰り返される主な理由のひとつが「量が少ないから許可は不要」という思い込みです。関税法には「少量」という用語が許可基準として用いられていますが、これは持出しを認める条件(=少量でなければならない)であって、「少量なら許可不要」という意味ではありません。誤解している担当者は意外と多いため、社内研修の際に明示的に訂正しておくことが重要です。
⑤ 取消し後の再申請は素早く行う
MHA業務の取消しから再申請まで時間が空くと、蔵置期間の計算や他の申告手続きとの整合性に影響が出ることがあります。特に許可後取消しの場合は税関手続きが介在するため、1〜2営業日程度かかることを見越してスケジュールを組む必要があります。
実務の落とし穴を知っているかどうかが、非違件数の差に直結します。
保税地域での見本一時持出しの搬出記帳を廃してはどうか(GTConsultant.net)