見本品費で処理すると10万円の判定を見落とす
見本品を処理する際の勘定科目には、主に「見本品費」「広告宣伝費」「販売促進費」の3つがあります。
どの科目を使用してもよいのですが、いったん選択した処理方法は継続的に適用する必要があります。
これは継続性の原則に基づくものです。
参考)見本品 - [経済]簿記勘定科目一覧表(用語集)
会社ごとにルールを決めて処理すれば問題ありません。例えば「見本品費」で統一すれば、経理担当者にとって内容が分かりやすくなります。
参考)「サンプル品の購入に対する仕訳について」
ただし、広告宣伝費と販売促進費には明確な違いがあります。広告宣伝費はテレビやインターネットを通じて間接的に宣伝する経費を指し、販売促進費は試供品やノベルティなど直接お客様に手渡しする経費のことです。
参考)広告宣伝費の仕訳・勘定科目、販売促進費との違いを解説
見本品は直接配布するものなので、厳密には販売促進費が適切といえますね。
商品を見本品として提供する場合、仕入勘定を見本品費に振り替えます。
具体的な仕訳は以下の通りです。
商品を見本品に回した場合の仕訳例
自社製品の見本品を提供する場合は、製品原価を製品勘定から見本品費に振り替えます。
他勘定振替高を使用する方法もあります。これは損益計算書上で売上原価から見本品費などを間接的に控除して表示する方法です。
参考)見本品費(見本費)の仕訳
他勘定振替高を使う仕訳は次のようになります。
単なる振替取引ですので税区分は「対象外」です。直接「仕入高」をマイナスしても構いませんが、他勘定振替高を使うことで売上原価の内訳が明確になります。
参考)見本品を配った。 【勘定科目・仕訳大全集】 - 経理お役立ち…
損益計算書では売上原価の控除項目として「他勘定振替高」が表示され、見本品原価分など販売以外の原因による商品の減少要素を売上原価から控除すると同時に販売費及び一般管理費に振り替える形になります。
これが正しい表示方法です。
見本品の税務上の取扱いは、単価10万円を境に大きく変わります。
参考)見本品とは?仕訳のポイントや注意点を詳しく解説 - ジンジャ…
10万円未満の見本品は、事業年度の費用として処理されるケースがほとんどです。新商品発表に合わせて定期的に発生するサンプルは、取得日の会計年度に費用計上します。
一方、見本品の単価が10万円以上の場合、税務上では「展示用固定資産」となります。展示用固定資産は減価償却資産として取り扱うことができ、耐用年数に応じて償却が可能です。
ここで注意が必要なのは、すべての見本品が展示用固定資産に該当するわけではないという点です。展示用固定資産は、サンプル品の実演をするのが前提となります。
単に展示されているだけのものは該当しない可能性があります。その場合は「棚卸資産(在庫)」として処理され、減価償却ができなくなります。
つまり実演が基本です。
従来は展示用の減価償却資産については、通常の耐用年数の判定と異なりますので注意が必要です。
基本的には、見本品を提供したときに仕訳を行います。何個提供したのかを数えておき、その分のみを「販売費及び一般管理費」として計上します。
提供した数を数えるよりも、提供前の数とその後の数を記録して差額を求めて計上するのが一般的です。
差額で計上すれば数え間違いが減りますね。
ただし、例外として商品を購入したときに費用計上することもできます。
これには以下の条件があります。
参考)サンプルを配った・見本品を置いたときの会計・税務処理の注意点…
購入時に費用計上できる条件
これは法人税基本通達に定められており、見本品その他これらに準ずる棚卸資産について、各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限り認められます。
継続が条件です。
通関業務従事者にとって重要なのが、見本品輸入時の免税措置です。
注文の取り集めのための見本として輸入する場合は、関税だけでなく輸入の際の消費税も免除されます。これは関税定率法第14条第6号と輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律第13条第1項第1号に基づくものです。
参考)見本を輸入する場合の免税について。 - 通関士ブログ
免税を受けるには以下の条件を満たす必要があります。
免税の条件
輸入手続きは、輸入申告書に該当する貨物を「関税定率法第14条第6号による関税免除を受ける旨」を記載して税関に提出します。
この記載がポイントです。
「注文取り集めのための見本」とは、すでに生産されている特定の種類の貨物を代表する物品、または生産が計画されているものを示す物品で、これらの市場需要傾向などの調査のために輸入されるものを指します。
見本であることを示すラベル等も、見本のための物品の一部とみなされます。
ラベル込みで判断されますね。
通常の商品輸入時の会計処理についても理解しておくと、見本品との違いが明確になります。
参考)商品輸入時の仕訳と会計処理を解説
一般的に国内取引では商品を実際に受け取った時点で仕入計上を行いますが、輸入仕入の場合は海外の取引先が商品の船積みを行った時点で仕入計上を行います。
タイミングが違うということですね。
輸入通関時に税関に関税と輸入消費税を納付しますが、会計上、関税は仕入高、輸入消費税は仮払消費税等で処理します。
関税は支払った段階で仕入(費用勘定)に計上されますが、輸入消費税は支払った際に「仮勘定」の科目として仮払消費税等に計上されます。この処理は一般的な国内の商取引とは異なる点です。
見本品の場合は免税措置があるため、これらの処理が不要になるのが大きなメリットといえます。
手続きが簡素化されます。